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ここ数年、日本ではブサカワの鼻ぺちゃ犬が大人気です。鼻ぺちゃ犬とは、一般的に短頭種と呼ばれている犬種のこと。犬の顔を真正面から見た時に、頭蓋骨の幅に比べてマズル(口から鼻先にかけて)の長さが短い犬のことです。簡単に言ってしまえば、犬の顔の出っ張っている部分が短い犬のことですね。
この記事では、人気の鼻ぺちゃ犬について解説しています。「え、この犬種も短頭種だったの!?」という人気犬種も含まれていますよ。
鼻ぺちゃ犬の種類9個
■1. フレンチブルドッグ
つぶれた鼻と、コウモリのような耳が可愛い中型犬です。イビキをかいたりオナラをしたりと、人間臭い仕草は愛嬌たっぷり。いまやかなりの人気ですが、実は病気の多い犬種としても知られています。
特に関節と皮膚には要注意!日常的に脱臼、ヘルニアに気をつけて運動させなければなりません。また、皮膚トラブル防止のためにも、ドッグフードは高品質のものが必要。医療費+ドッグフード代がかさむため、フレンチブルドッグはお金がかかる犬でもあります。
◯フレンチブルドッグの性格
甘えん坊の寂しがり屋で、家族に対する愛情が強い犬。成犬になっても子犬のように遊びたがるので、お子さんのいるにぎやかな家庭でも楽しく過ごせますよ。
■2. シーズー
昔から人気のある小型犬。懐っこい性格とそれほど運動量が必要ないことから、高齢者だけの家庭や、初めて犬を飼う人にも向いている犬種です。
ただし、食事の管理をしっかりしないと、すぐに体重過多になりやすいので注意が必要。気管虚脱(喉がつぶれて呼吸が苦しくなる)にかかりやすいため、シーズーにとって肥満は大敵です。しかし、健康管理をしっかりすれば平均寿命の長い犬種でもあります。
◯シーズーの性格
比較的穏やかな性格で、ゆったりと過ごすことを好みます。小さな子どもや他の動物とも上手にやれますが、社会化が上手くいかないと、やや攻撃的になることも。シーズーはいろいろな人と触れ合うことに向いている犬です。
■3. パグ
シワシワに鼻ぺちゃの顔で、キョトンと首を傾げる仕草は、まさにブサカワの王様です。あまり大きく見えないのに6kg以上ある犬が多いのは、筋肉質でがっちり系の体をしているから。短頭種の宿命ともいえる呼吸器系が弱いため、熱中症には要注意です。
また、シワシワの顔はキュートですが、溝に汚れがたまりやすく、それが原因で皮膚病になることも。ダブルコートの被毛はかなりの抜け毛があるので、パグは日常的なお手入れが欠かせない犬種です。
◯パグの性格
陽気で人懐っこい性格ですが、かなりのマイペースです。飼い主の言うことを聞かないというよりは、そもそも聞く気がないようなところも。しかし、そんな頑固なところもパグの魅力です。
■4. ペキニーズ
ペキニーズは、ライオンの威厳とサルの愛嬌を持って生まれてきたと表現される、小さいのにやたらと堂々とした犬です。ボリュームのある豊かな被毛と、体を横に揺らして歩くローリング歩行が特徴的。独特の歩き方は、短い前足とガニ股によるものです。
比較的丈夫なことで知られていますが、短足ゆえの椎間板ヘルニアには要注意。また、白内障やドライアイなど目の病気にかかりやすいので、日常的なグルーミングの際には、目のチェックが必要です。
◯ペキニーズの性格
ペキニーズは自立心が旺盛で、怖いもの知らず。ネコのようにマイペースと表現される誇り高い頑固さこそが、ペキニーズの魅力です。抱っこをあまり喜ばない珍しい愛玩犬でもあります。
■5. ボストンテリア
白黒のフレンチブルドッグのように見えますが、体型は足が長くスマートです。この犬種は小型犬でありながら、体重別の3種類に分かれているのが特徴。一番小さな「ライト」は6.8kg未満で、一番大きな「ヘビー」は9kg以上です。
ボストンテリアは太りやすい体質で、毎日の運動が欠かせません。しかし短頭種ゆえに体温調節が苦手なため、激しすぎる運動はNGです。
◯ボストンテリアの性格
番犬にはあまり向かないとされる、とても人懐っこい犬です。小さいお子さんや他の動物とも上手にやっていける明るい性格で、少し神経質なところのあるテリアとは一味違った犬。JKCの分類でも「テリア」ではなく「愛玩犬」にカテゴライズされています。
■6. 狆(ちん)
絹糸のようにフワフワの被毛と小さめの体は、まさしく抱っこをするための愛玩犬です。中国原産の犬と思われがちですが、狆はれっきとした日本原産。江戸時代には綱吉公に愛された、由緒正しい犬種です。
狆は股関節が浅めの犬が多く、膝の脱臼にも要注意です。そのため、過度の運動はご法度で、近所を軽く散歩させる程度で充分。短頭犬種ゆえに体温調節が下手なため、しっかり空調をきかせた室内で、お姫様のように大切に扱うことがふさわしい犬です。
◯狆(ちん)の性格
穏やかで物静かな狆は、過度に興奮することが滅多にありません。静かに暮らせる環境に向いているため、小さな子どもがいるにぎやかな家庭よりは、大人だけの世帯に適している犬種です。
■7. ボクサー
見た目は強面の大型犬ですが、かつて闘犬に使われたとは思えないほど、フレンドリーで飼いやすい犬種です。筋肉質の精悍な体型と、愛嬌たっぷりの鼻ぺちゃ顔のギャップがボクサーの魅力。被毛はスムースコートですが、シングルコートのため、抜け毛はあまり多くありません。
大型犬ゆえの胃捻転や椎間板ヘルニアに注意が必要。また、不整脈源性右室心筋症は別名ボクサー心筋症と呼ばれるほど、ボクサーに多く発症しています。
◯ボクサーの性格
闘犬に使われていたとは思えないほど、ボクサーは陽気で小さな子どもとも遊べる犬です。また、とても忍耐強い犬でもあるため、いろいろなことを教えると、一生懸命覚えようとする真面目な気質の持ち主です。
■8. チワワ
ウルウルの大きな瞳と、丸みを帯びたアップルヘッドがあまりにもキュート。鼻のことはつい忘れがちですが、チワワはれっきとした短頭犬種です。体格の小さな体の気管は極細なため、気管虚脱になりやすいので注意が必要。
また、水頭症やてんかんなどの脳疾患が多いだけではなく、マラセチア皮膚炎、肛門のう疾患、膝蓋骨脱臼に僧帽弁閉鎖不全症などなど、気をつけるべき病気が多い犬種でもあります。
◯チワワの性格
小さくて可愛らしい見た目からは想像できないほど、チワワは勇猛で負けん気の強い犬です。体格の小ささからつい甘やかしがちですが、きちんとしつけをしないと無駄吠えの多い困った犬になることがあります。
■9. キャバリア・キングチャールズ・スパニエル
キャバリアのマズルは本来あまり短くありませんでした。しかし、ヨーロッパで短頭犬種が流行した折りに、キャバリアのマズルも短くなるよう改良がされ、今のような顔立ちになったのです。
キャバリアが発症しやすい病気の筆頭は、なんと言っても僧帽弁閉鎖不全症です。脊髄空洞症も比較的多くみられるため、キャバリアを飼うなら、若いうちから定期的な健康診断を受けさせるのは必須。また、目のケガやドライアイにも注意が必要です。
◯キャバリアの性格
社交的で人見知りしない犬の代表がキャバリアと言われています。あまりにもフレンドリーなため、むしろ番犬に向いていません。その分、小さな子どもや他の動物と仲良くできるところが魅力です。
鼻ぺちゃ犬がなりやすい病気
鼻ぺちゃの短頭種がなりやすい病気は、やはり呼吸器に関連するものが多くみられます。
◯短頭種気道症候群
気管支や肺に障害が起きる、閉塞性気道障害の総称。以下の病気が合併して発症することがあります。
・狭窄性外鼻孔
・喉頭室外反
・喉頭虚脱
・気管低形成
・気管虚脱
・熱中症
◯目の病気やケガ
短頭犬種は眼球そのものが大きく、また眼窩から飛び出している形状のため、目のケガや病気には注意が必要です。
・自然発生性角膜潰瘍
・乾燥性角膜炎
・深部角膜潰瘍
・色素性角膜炎
・眼球突出
◯皮膚病
短頭種の犬は鼻ぺちゃの顔や体にシワが多く、溝に汚れや皮脂がたまってしまうと、皮膚病の原因になることがあります。
・膿皮症
・脂漏性皮膚炎
・趾間(しかん)皮膚炎
・アトピー性皮膚炎
◯歯周病
短頭種の犬は上顎と下顎の大きさの差から噛み合わせが悪くなり、歯周病にかかりやすい傾向にあります。
鼻ぺちゃ犬は飛行機に乗れない?
飛行機に乗る時、犬を飼い主と同じ座席に持込むことはできません。貨物として預けることになりますが、各航空会社は短頭犬種の受け入れに制限をかけています。
◯日本航空(JAL)
ブルドッグ、フレンチブルドッグは通年、その他の短頭犬種は夏季期間中(5/1~10/31まで)の受入不可。
◯全日空(ANA)
短頭犬種は夏季期間中(5/1~10/31まで)の受入不可。
なぜ短頭犬種の受け入れに制限をかけているのかといえば、短頭犬種は舌を出してハァハァしても体温が下がりにくく、外気温の影響を受けやすいからです。
基本的に飛行機の貨物室は座席と同じ空調。しかし、飛行機に積み込まれる過程で空調のない場所を通過することになり、気温が高くなる時期は貨物コンテナ内の温度が上昇することが考えられます。
また、預けられた犬が興奮することで、体温が上昇する可能性もあるため、短頭犬種は飛行機搭乗に制限がかけられているのです。
鼻ぺちゃ犬を飼う時の注意点
鼻ぺちゃの短頭犬種はブサカワで愛くるしいですよね。しかし、飼う時には以下のことに注意する必要があります。
・呼吸器系の病気にかかりやすく、イビキ、鼻水、呼吸数に注意が必要
・体温調節が苦手なため、一年を通して空調の必要あり
・全身麻酔をかけたときに気道閉塞を起こす可能性がある
・気道がつぶれないように、体重管理と食事のコントロールが必要
鼻ぺちゃ犬のイビキは一見すると可愛いですが、実は呼吸がしづらくなっている状態です。イビキをかけばかくほど、犬の体に負担がかかっているため、見過ごすのはNG!
また、鼻ぺちゃ犬を飼うなら体重管理がとても重要。肥満は気道を圧迫してしまうため、呼吸器の病気を引き起こす原因になるからです。
ところが、困ったことに鼻ぺちゃ犬の多くは食いしん坊。だからこそ、鼻ぺちゃ犬を長生きさせるには、飼い主さんによる食事のコントロールが欠かせないのです。
まとめ
鼻ぺちゃ犬の愛くるしい顔は、クセになる可愛さがありますよね。しかし、マズルが短いからこそ引き起こされる問題があることを、絶対に忘れるべきではありません。
少しぐらいのイビキなら微笑ましく眺めていられますが、気道がつぶれて呼吸困難に陥っている短頭犬種の姿は、見ているだけ辛くなります。