セレンディピティの意味・語源とは？類語・使い方・事例9個と能力

セレンディピティという言葉を聞いたことはありませんか？最近ではビジネスの場でも良く用いられる言葉です。セレンディピティの高い人は、幸運に恵まれやすく、仕事でも高い成果を出すことができます。

今回は、セレンディピティの意味や語源を徹底解説！セレンディピティの事例を紹介し、鍛え方も伝授します。

セレンディピティの類語であるシンクロニシティとは、偶然の一致には意味があるという概念です。日本語では「共時性」「同時性」「同時発生」と表現します。

例えば、日本には古くから「茶碗が欠けると不吉なことが起こる」という迷信がありますが、「茶碗が欠けるという小さな不幸と、全く別の大きな不幸が同時に起こった」というシンクロニシティがあったのではないかと推測できます。シンクロニシティは不幸なことだけではなく、「出会った瞬間運命を感じた相手と後に結婚した」といった、幸運にも当てはまる言葉です。

セレンディピティが「偶然の幸運を自分の力で引き寄せる力」に対して、シンクロニシティは「全く関連性がないように思われる偶然には、実は深い意味がある」という考え方になり、主に現象を表します。偶然に自分への成果を求めるかどうかが、セレンディピティとシンクロニシティの大きな違いになります。

セレンディピティを英語で表現すると、語源である「serendipity」となります。いくつか例文を紹介します。

・I have been blessed with serendipity many times today.
・He excels in serendipity.
・Nature has created a wonderful serendipity.

日本語と同じく、セレンディピティを能力と捉えるかどうかで、使い方に違いが生まれます。

実はあなたの身近にも、セレンディピティが深く関わっているものがいくつもあるんですよ。セレンディピティの身近な事例、具体例を紹介します。

ニュートンの「リンゴが木から落ちる様子を見て、引力の法則がひらめいた」というのは、あまりにも有名なセレンディピティの事例です。万有引力の法則は、当たり前の風景の中に、探し求めていた真実が見つかったセレンディピティの賜物なのです。

19世紀半ばに禁酒法が施行され、ペンバートンはアルコールではない飲料の開発をしていましたが、なかなか良いものができません。

そんな時、たまたま水と間違えて炭酸水を入れてしまったら、想定外に美味しい飲料ができました。これがコカ・コーラです。試行錯誤の末、うっかり間違いがセレンディピティを引き起こしたのでしょう。

日本でも有名なシリアル、ケロッグのコーンフレークも、セレンディピティが大きく関係しています。元々はパン生地の原料として扱っていた茹でた小麦を、うっかり忘れてそのまま放置してしまったところ、小麦がパリパリとフレーク状になっていたのです。

この時、「もう使えない」と捨てるのではなく、他の使い方を考えて焼いてみたところ、香ばしくカリカリになりました。これが、コーンフレークの起源です。いつもとは違った変化に興味を持ったのが、セレンディピティを引き起こしたのです。

アレクサンダー・フレミングがブドウ球菌の研究をしていたところ、誤って青カビが発生してしまいました。いつもは青カビが発生した時点で研究続行不可能となり、即破棄するのですが、この時偶然青カビの周辺だけ、細菌が繁殖していないことに気付きます。これが、後に抗生物質の代表格となるペニシリンの開発につながります。

普段ならば見過ごす小さな気付きから、大きな開発につながるのは、科学におけるセレンディピティの良くある事例です。

今やオフィスに欠かせないポストイットも、実はセレンディピティの具体例になります。スリーエム社は強い接着剤を開発中でした。その中で、たまたまできあがったのが、粘着力が弱い接着剤です。最初は「活用方法がない」と、そのまま放置されていました。

しかし、しばらくたってから研究員の1人が「この弱い接着剤でしおりが作れないか」と再度研究を始めます。完成したのがポストイットです。失敗したものから、最初の目的とは全く違う新しいものを生み出したのは、まさしくセレンディピティと言えます。

切りづらくなった刃を割ることで長く使用できるのは、カッターの画期的なところですよね。実は、これもセレンディピティが関わっています。

カッターができる前は、カミソリを使うのが一般的でした。しかし、カミソリだと刃を変えられないため、すぐに切れなくなって買い替えなければなりません。

何か良い方法はないかと考えていたところ、板チョコを食べている人を見て、「切れなくなった刃を折る」というアイディアがひらめき、カッターが作られました。普段から良い方法がないかと考えていたからこそ、セレンディピティが高まったのでしょう。

キッチンの必需品であるサランラップですが、最初はアメリカ軍兵士のブーツ用中敷きでした。第二次世界大戦終了後に需要が激減。

その後、たまたま食品を包むと水分が蒸発せず、しかも衛生的であることにひらめいたのがきっかけで、現在の用途になりました。靴と食品、全くつながりがないのに、素晴らしいセレンディピティによって使い方の形を変えたのです。

電子レンジもキッチン家電として世界的に広がっていますが、これも軍事品からのセレンディピティです。軍事用レーダーの開発をしていた研究者が、レーダーの近くにあるチョコレートが柔らかくなっていることに気付いたのがきっかけです。

「なぜチョコレートが溶けるのか？」に注目し、その後マイクロ波には過熱現象が起こることがわかりました。電子レンジはこの現象を活かしたセレンディピティによる副産物と言えます。

世界的なSNSであるTwitterは、元々は社員が作ったショートメッセージのツールでした。それが社内で広まっているのを幹部が気付き、改良を重ねて商品化したのです。

社員が商用ではなく趣味の延長的に作ったツールを見過ごさない着眼点と、商品化するために研究、改良を重ねた努力は、セレンディピティの高さを表しています。新たなものを生み出し成長する企業は、セレンディピティに溢れているのです。

セレンディピティは本人の言動や思考によって引き寄せられるところがあります。彼らの行動には学ぶべき点が多いです。そこで、セレンディピティが起こりやすい人の条件を解説します。

セレンディピティが起こりやすい人は、人好きが多いです。人間観察が趣味で、どんな人にも興味を持って接します。人への好き嫌いがないのも特徴です。興味津々に人と接しているので、相手の表情から気持ちを察したり、小さな違いに気付いたりするのが得意です。

人が好きなので、人とのつながりが多くなります。そのため、「偶然バッタリ会う」「共通の知り合いがいた」など、必然的にセレンディピティなことが多く起こります。

社交性が高いのも、セレンディピティが起こりやすい人の特徴です。人好きなので、自然と人の輪に入っていきます。質問上手で聞き上手なので、相手からも好印象です。相手に警戒心を抱かせず、いろいろな話を引き出します。また、高い社交性で誰とでも仲良くなれるので、相手に自分を深く印象づけます。

相手の記憶に自分が残れば、人とのつながりから起こるセレンディピティな出来事も増えます。高い社交性で、セレンディピティを引き寄せているのです。

セレンディピティが起こりやすい人の興味の対象は人だけではありません。ありとあらゆるものに好奇心旺盛です。興味の幅が非常に広く、何でも「もっと知りたい」「やってみたい」と思います。そして、知的好奇心を満たすために、積極的に自分から行動します。

何にでも好奇心を持って取り組むから、多くの気付きがあるのです。気付きを行動に移せるから、セレンディピティが起こります。

セレンディピティの中には、「全くつながりがないものを見て閃く」という事例が少なくありません。常識的に考えれば、到底思い浮かばないアイディアを出せるのは、固定概念がないからです。

セレンディピティが起こりやすい人は、思考がとても柔軟なのです。固定概念がないため、自由な発想ができます。常識に邪魔されず、広い視野を持てるので、思わぬセレンディピティを起こせるのです。

セレンディピティが起こりやすい人は、相手を尊重できる広い価値観を持っています。自分とは違う意見でも、「そういう考え方があるんだ」と素直に受け取れるのです。尊重された相手は好感を持ち、自分の気持ちや意見をどんどん発言してくれます。多くの意見交換ができ、とても有意義な時間を過ごせます。

広い価値観を持つと、気付きも多くなります。自分だけの考え方に囚われないので、セレンディピティを起こしやすくなるのです。

セレンディピティが起こりやすい人は、洞察力に優れている特徴があります。普通の人が見過ごすようなことでも、鋭い洞察力で「いつもと違う」「何かのヒントになる」と、多くの気付きを得られるのです。

人とのセレンディピティも、相手のわずかな表情の動きや普段とは違う仕草に気付き、気持ちを察することから起こるケースもあります。洞察力に優れた人は、相手の気持ちの動きにも敏感です。人より多くに気付けるから、セレンディピティを起こせるのです。

直感はセレンディピティを起こす大きな要素です。直感がするどい人は、セレンディピティが起こりやすくなります。セレンディピティには偶然の幸福という意味がありますが、直感が鈍っていると、身近に怒っているセレンディピティを見逃してしまいます。セレンディピティが起こりやすい人は、元々アンテナが敏感なのです。

また、根拠がなくても直感を信じて行動できることも大切です。慎重で警戒心が強すぎる人は、セレンディピティに気付いても成功に至りません。

セレンディピティが起こりやすい人は、日頃から物事を良く考える思慮深い人が多いです。小さな気付きを大きな成功につなげられるのも、思慮深く物事の仕組みや原因を考えているからです。「そういうことか！」というセレンディピティな発見の土台には、根拠となる思考があります。

特に、ビジネスでのセレンディピティ能力が高い人は、思慮深い傾向が強くなります。あらゆる事項を仕事につなげて、点ではなく線で物事を考えています。

セレンディピティが単なるラッキーではなく、大きな成功につなげられる人は、粘り強く努力できるのが特徴です。

自分の直感を信じて、結果が出るまでコツコツと努力を続けられるのです。失敗してもくじけない粘り強さが、セレンディピティの発見につながります。

セレンディピティが起こりやすい人はポジティブ思考です。人の善意を疑わないので、積極的に関われます。きっと上手くいくと思えるから、粘り強く努力を続けられます。

「良いことが起こるかもしれない」という期待感が好奇心を刺激し、何事にも意欲的になれます。これらは全て、セレンディピティな気付きにつながっているのです。

セレンディピティは偶然や運だけではなく、あなたの言動にも大きな影響を受けるので、鍛えることが可能です。そこで、セレンディピティ能力の鍛え方を紹介します。

セレンディピティは人が運んでくることが少なくありません。また、いろいろな人と接すると多くの価値観に触れられるので、自分の視野が広がり、自然と直観力が鍛えられます。ですので、人とのつながりを日頃から大切にしましょう。

・身近な人を大切にする
・親しい間柄じゃなくても興味を持って接する
・誘いには前向きに応じる
・人の善意を信じる
・感謝の気持ちを言葉と行動で表す
・人の幸せを願えるように心がける

好奇心を持ち、誠意を持って接すれば、相手もあなた関心を持ってくれます。自分を中心としたつながりだけではなく、自分以外の人と人とのつながりも意識すると、新たな発見があるでしょう。

人とのつながりはとても大切ですが、ひとりの時間も持つようにしましょう。自分をしっかり認識する力も、セレンディピティには必要です。集団と個のバランスがあって、セレンディピティ能力は鍛えられます。

短い時間でも良いので、1日のどこかに1人の時間を作りましょう。過ごし方はあなたの自由です。

・ホッと一息コーヒータイムを作る
・自分をじっくりメンテナンスする
・趣味の時間に充てる
・瞑想する
・1日を振り返る

また、短時間ではなく「今日は1日1人で好きに過ごす」というのもおすすめです。1人時間を有効活用し、自分らしさを失わないようにしましょう。

セレンディピティは家の中にいては起こりません。家が落ち着くのは、ハプニングがなく、自分が過ごしやすいようにカスタマイズされているからです。偶然のトラブルが起きにくい代わりに、偶然なハッピーもありません。

セレンディピティ能力を高めたいなら、積極的に外に出ましょう。外の世界は刺激と偶然に溢れています。そして、外に出たら興味を持って周囲を観察しましょう。歩きなれた道も、好奇心を持てばセレンディピティな発見があるでしょう。

ビジネスで大成功を収めている人がセレンディピティな発見をするのは、常に思考を働かせているからです。漠然と物事を眺めるのではなく、「どうすれば良いのか」「どのような原理なのか」を深く試行錯誤しています。小さな発見を成功につなげられるのは、日頃の思考が根拠となって、直感が確信につながるからです。

セレンディピティ能力を鍛えたいなら、疑問を大切にしましょう。「わからない」で済ませず、疑問があれば追求して深く考える習慣をつけるのです。失敗やトラブルはチャンスだと思って、上手くいく方法や解決策をじっくり考えましょう。失敗は成功の基。思考の先にセレンディピティは存在します。

セレンディピティで大きな成功につなげたいなら、先送りにしてはいけません。「後でやろう」と先送りされたことは、必要に迫られない限り取り掛からずに終わります。あるいは、先送り中に他の人が行動を起こし、先を越されるかもしれません。

「ちょっとやってみようかな」「これっていいかも」と思ったら、即行動しましょう。行動してこその成果です。セレンディピティな発見を成功につなげた人は、自分から率先して行動を起こしています。

セレンディピティの事例や具体例の中には、失敗から生まれたものも多いです。彼らが失敗をセレンディピティにつなげられたのは、直感が働いただけではなく、事態をポジティブに受け止めたからです。セレンディピティを鍛えるためには、ポジティブにならなければなりません。

ですので、ネガティブワードは封印しましょう。思考や気持ちは言葉に大きな影響を受けます。「だって」「でも」「どうせ」など、否定につながるワードは可能な限り使わないのがポイントです。肯定的な言葉を意識的に使いましょう。言葉に影響を受けて、思考がポジティブになるだけではなく、人との関係も良好になります。

恋愛でもセレンディピティは素晴らしい力を発揮します。しかし、運命の相手に出会うには、能力としてのセレンディピティが必要です。そのためには、受け身の恋愛から脱しなければなりません。自分から幸せを掴みに行く積極性と行動力が、恋愛でのセレンディピティの活かし方なのです。

具体的には、次のような行動を起こすと良いでしょう。

・人の誘いには喜んで参加する
・自分から出会いの場に足を運ぶ
・笑顔で人を惹きつける
・ポジティブ思考になる
・自分から積極的に話しかける
・相手の表情を良く見て気持ちを読み取る
・自分の情報を開示する
・相手の話を聞いて偶然の一致を探す
・好奇心旺盛に行動する
・現在の友人や同僚を大切にする

恋愛には人とのつながりが不可欠です。新しい出会いだけではなく、今までの人間関係も大切にしましょう。ひょんなことから、恋愛のきっかけが見つかる可能性が広がります。

セレンディピティはビジネスでも大いに活用されています。あなたの仕事にセレンディピティを取り入れれば、可能性が広がるでしょう。具体的なビジネスでのセレンディピティの活かし方を紹介します。

・会議に一見なんの関わりもない専門家を招待する（思わぬ指摘や偶然の発見から、ビジネスを大きく飛躍させる可能性が高まる）
・ネットショッピングで検索時に表示する「関連する商品」の中に、全く別のジャンルを混ぜる（消費者が偶然発見することで興味を惹かれ、最初の目的とは別物でも購入につながる）
・ネット検索関連の商品の在庫がある店舗の前を通ると通知が来る（クロスチャンネルキャンペーンマネジメントと呼ばれ、偶然の一致を見逃さず通知を受けることで購買が広がる）

ネットやAIが発展し、セレンディピティは偶然だけではなく、必然的にも起こせる時代になり、ビジネスシーンで大いに活用されています。

2001年に「セレンディピティ」という映画が公開されました。内容はタイトルの通り、セレンディピティによってハッピーエンドを迎えるストーリーになっています。以下、ネタバレありのあらすじを紹介します。

主人公であるジョナサンとサラは、クリスマス前のニューヨークで同じ手袋に偶然手を伸ばします。これが2人の出会いです。惹かれあった2人ですが、お互い恋人がいたので、連絡先だけを交換してその日は別れます。

数年後、ジョナサンは恋人と婚約。サラも恋人からプロポーズを受けていました。しかし、あの時の出会いが忘れられない2人は、お互いを探し始めます。映画を盛り上げるすれ違いが起こった末、サラは婚約者と決別しますが、ジョナサンは恋人と結婚を決意。

落胆したサラの元に、ジョナサンの結婚キャンセルの知らせが入り、最終的に2人は無事再会を果たして結ばれます。自分の直感を信じて行動を起こしたからこそ、2人は幸せになれたのです。

セレンディピティは運や偶然が大きく関わっています。しかし、セレンディピティ能力は自分で高めることも可能です。感覚を研ぎ澄まし、多くの気付きを発見して、それを成果につなげれば、あなたは大きな成果を出せるでしょう。

見方を変えれば、セレンディピティは日頃の努力の成果とも言えます。全くの偶然が引き起こすセレンディピティもありますが、最終的に幸運を掴むのは、自分から努力できる人なのです。