※研究論文の内容や研究から分かったことをこの記事ではお伝えします。
友達や家族と恋愛・結婚について話していると「恋人はいらないけど、結婚はしたい」なんて、誰か1人が言い出すのを聞いたことありませんか?
その時は「なるほどね~、そういう意見もあるかも」って、何気なくスルーしたのに、あとになって考えると「恋人と結婚するのが普通だと思うけど、結婚相手と恋人で求める条件が違うって聞いたことある。
そもそも、本当に恋人はいらないけど、結婚はしたいなんて思ってたのかな?」と、恋愛と結婚の近いようで遠い関係がわからなくなってしまったり。。。
今回は若者の結婚観を中心に、「恋愛と結婚の関係」に1つの答えを教えてくれる2000人規模のアンケート調査にもとづいた研究を紹介します。
試験目的
調査と分析の目的は、若者(大学生)の結婚願望と結婚観(可能性)をアンケート調査と分析で明らかにすることです。
試験内容
結婚観に関するアンケート調査を19歳前後の男性:749人、女性:1103人の計1864人に実施し、回答をもとにアンケート対象者を恋愛に積極的な「恋人がいる」「恋人がほしい」と、恋愛に消極的な「恋人は要らない」の3つのグループにわけました。
更に、消極的なグループには追加で「なぜ恋人を要らないか」をたずねるアンケートに回答してもらいました。こうして集められたアンケートをもとに若者が持つ結婚観を因子分析とパス解析で紐解きました。
試験結果
詳しい分析の前に、男性と女性の恋愛状況の違いを見てみると、女性の33.5%が「今、恋愛をしていて恋人がいる」と男性の26.9%よりも多く、逆に男性の24.4%は「恋人は要らない」と回答して女性の19.0%よりも多くなっており、男性よりも女性が恋愛に積極的な様子が垣間見えます。
結婚観アンケートから因子分析で結婚観の52%を占める7つの要素を特定しました。これらの要素が結婚意欲(結婚願望、結婚可能性)に与える影響を分析すると、すべてのグループで「結婚がもたらす幸せイメージ」が、結婚意欲を高めていること。また、恋人がほしいグループと恋人は要らないグループは「異性の友人と遊びにくくなること」や「家族を作ること」を理由に結婚意欲が低いことが分かりました。
また、恋人は要らない理由をたずねたアンケートからは6つの要素が特定されました。この6つの要素と先ほどの結婚観と結婚意欲をあわせて分析したところ、恋愛を負担に感じたり、現在の生活に満足していたりすると、結婚による不自由を意識して結婚意欲が低くなっていること。恋愛の意義がわからないうえに、結婚による幸せイメージを持てないことから結婚意欲が低くなっていることが分かりました。
逆に、恋人は要らないと思いつつも、いつか恋人ができるだろうと楽観的な予期を持っていて、結婚が幸せだと感じている人の場合には結婚意欲が高くなっていました。この楽観的な予期の持ち主は、結婚すると異性の友人と遊びにくくなるとは思っていても、このことが結婚意欲を低下させることはありませんでした。
試験に対する考察
どのグループでも「結婚による幸せ」をイメージできたり「恋愛よりも結婚のほうが楽」だと捉えていると結婚意欲が高く、反して「他の異性と遊ぶ」「家族を持つこと」にとらわれていると、結婚意欲を阻害していました。
また、恋人は要らないグループでも「いつか恋人ができる」「結婚に対してポジティブ」「周囲にコミュニケーションを取れる異性がいる」という場合には結婚意欲が高いといえます。
つまり、「恋愛はしたくないけど、結婚はしたい」というのは一見ネガティブな態度に見えるものの「今のところ恋愛はしたくないけど、周りに異性の友人もいるし、結婚もしてもいい、そのうち恋人もできるだろう」という、恋愛と結婚への楽観的な姿勢の裏返しだと言えます。
結論
恋愛や結婚を計算してしまうと、リスクが大きく見えて尻込みしてしまいがち。損得で考えるよりも、結婚が持つぼんやりとした幸せに目を向けることで結婚に前向きでいられるようになるはずです。
そして「恋愛はしたくないけど、結婚はしたい」という悲観的な発言とは裏腹に、実際には恋愛、結婚どちらに対しても楽観的な思いと期待が背景にありました。もしかしたら、すんなり結婚してしまうタイプかもしれません。
※結婚意欲はわかりやすいように結婚願望・結婚可能性の2つをまとめています。
※文献名:「大学生における結婚観と結婚願望・結婚可能性との関連―恋愛状況に着目して―」(2018) 中村悠里恵 日本青年心理学会大会発表論文集26