自己欺瞞という言葉を知っていますか?本当はわかっているのに間違いを認められなかったり、できない言い訳を探して逃げたりすることが多いなら、もしかしたらあなたは自己欺瞞に陥っているかもしれません。
思うように行かない自分の人生を呪わないためにも、自己欺瞞とは何かを理解した方が良いでしょう。
今回は、自己欺瞞する人の心理や特徴を解説し、克服する方法を伝授します。
自己欺瞞の意味とは?読み方は?
自己欺瞞の読み方は「じこぎまん」です。欺瞞には「あざむく」「だます」という意味があります。自己欺瞞の意味は、自分自身を騙しあざむくことです。
では、自分自身を騙すとは、どんな状態を指すのでしょうか。別の言葉に例えると、自己欺瞞に最も近い状態は自己正当化になります。自分を正当化するために、都合よく解釈したり、責任逃れをしたりするのは、自己欺瞞しているのと同じです。本当は自分に悪い原因があるとわかっているのに、正当化するために気づかないふりをして自分を騙しているのです。
また、自分を無理矢理納得させるため、理由を並び立てて何かをあきらめる行為も自己欺瞞になります。「本当はやりたい」という気持ちにフタをして自分を騙し、「仕方のないことだ」と思い込もうとして、未練を断ち切ろうとします。自己欺瞞とは、認めたくない事実から逃れるための防衛策でもあるのです。
自己欺瞞の使い方と例文
自己欺瞞は無意識に行われることが多いです。わかっていると認めたら心にダメージを受けるので、防衛本能として脳が無意識に自己欺瞞を行い、精神を一時的に守ろうとします。ですので、本人が現在進行形で自己欺瞞を使うシーンは殆どありません。自己欺瞞は人を評価したり、自分の過去を振り返ったりしたときに使われます。
自己欺瞞を使った例文をいくつか紹介します。
<例文1>
彼は自己欺瞞が自分を追い詰めていることに気づいていないようだ。
<例文2>
自己欺瞞は人間関係を破滅に導く原因になる。
<例文3>
あのとき自分は、自己欺瞞に陥っていたのだろう。
<例文4>
昔の自分を思い出すと、自己欺瞞がひどくて恥ずかしくなる。
自己欺瞞には深く重い意味が含まれるため、日常会話ではあまり使われません。
自己欺瞞する人の心理
自己欺瞞する人の心理は自己防衛です。「自分は悪くない」「負けを認めたくない」という思いが強すぎて、正当化に必死になります。周囲からは言い訳して責任逃れをしようとする見苦しい姿でも、「自分は悪くない!」と本気で思っています。
これが、自己欺瞞の恐ろしさです。自己欺瞞するようになると、自分の言動を客観的に評価できなくなります。自分基準で物事を考え、都合良く事実を曲げてしまうのですが、その自覚がありません。自己欺瞞がひどくなると、自分がついたウソを事実だと信じ込んでしまいます。周囲からの的確な指摘も、「自分を落とし入れるワナだ!」と信じられず、自ら人間関係を壊してしまいます。
自己欺瞞する人は「自分は正しい」と思うあまり、周囲との信頼関係を築けなくなってしまうのです。しかも、自己欺瞞している間は原因が自分にあると気づけないため、「どうして皆は自分をわかってくれないんだ」と、強い孤独に陥ります。
自己欺瞞する人の原因は?うつ?病気?人格障害?
自己欺瞞する人の原因の多くは成育歴にあります。過保護で甘やかされて育つと、「自分は万能だ」と勘違いしてしまいます。親は子供がつまづかないよう、先回りして障害物を取り除いてきたため、トラブルへの耐性もありません。いざ社会に出て壁にぶつかると、上手くいかない現実を受け入れられず、「自分を理解しない社会が悪い」「本当の自分はこんなもんじゃない」と、自己欺瞞に走りやすくなります。
また、厳しいしつけや教育も、自己欺瞞の原因になります。自我を押し殺して親の望む通りの振る舞いを続けると、自分の希望をあきらめるクセがついてしまいます。望んでいることをあきらめるために、自己欺瞞が定着してしまうのです。
自己欺瞞は長年培われた思考のクセのようなもので、病気ではありません。しかし、自己欺瞞から人間関係に深刻な問題が発生すると、ストレスから二次的障害を起こし、うつ病や人格障害になる可能性があります。
自己欺瞞する人の特徴8個[性格編]
自己欺瞞する人はどのような性格傾向があるかを解説します。
■1. 自分に甘く他人に厳しい
自分に都合よく正当化するのが、自己欺瞞から起こる思考の特徴です。このような考え方をするのは、自分に甘く他人に厳しい性格をしているからです。自分に対しては「仕方なかった」と大らかですが、他人には「なぜやらない?」「放っておかれても自己責任」と、厳しく冷たい突き放し方をします。
■2. プライドが高い
自分の弱さを認められず自己欺瞞で正当化するのは、プライドの高さが原因です。低く評価されたり雑に扱われたりすると、プライドの高さが邪魔をして、自分にある原因に目をつむり、相手を攻撃してしまいます。
■3. 承認欲求が高い
承認欲求の高さも自己欺瞞する人の特徴です。プライドが高くても、実は自分に自信が持てません。だから、周囲からの評価を過剰に期待して、自分を認めてほしい気持ちが人一倍強くなります。
しかも、本当は自分の努力の足りなさや実力のなさに気付いていても、楽をしたくて「認められればがんばる必要はない」と考えています。そのため、自分が望む評価を得られないと、楽な方向に流れたくて「周りの判断がおかしい」と、周囲を糾弾してしまうのです。
■4. 負けず嫌い
自己欺瞞する人は負けず嫌いです。負けを認めたくないから、自己欺瞞で自分を正当化してしまいます。勝つ方法ではなく、負けを認めない方法ばかりを探してしまうのです。負けず嫌いの性格は、上手にパワーに転換すれば素晴らしい長所になりますが、自己欺瞞する人にとっては短所でしかありません。
■5. 自己中心的
自分基準で自分のルールで生きているので、自己欺瞞する人は例外なく自己中心的な性格をしています。しかし、タイプは2つに分かれます。
・思考も行動も自己中心的で周りに迷惑をかけるタイプ
・自己中心的な思考がネガティブで自己犠牲に走るタイプ
同じ自己中心的な性格でも、表出する言動は真逆になります。一見全く別タイプですが、「客観的判断ができず、自分基準で認知をゆがませる」という根っこは同じです。
■6. 人の気持ちに鈍感
自己欺瞞する人は、人の気持ちに鈍感です。相手の本当の気持ちを察する能力が低く、自分に都合よく解釈してしまいます。自分の解釈が間違っていても、思い込みが激しいので気づきません。自己中心的な振る舞いができるのも、人の優しさや不快感に鈍感だからです。
■7. イマジネーション力が弱い
イマジネーション力とは、想像する能力を意味します。自己欺瞞する人は目先の問題に囚われやすく、先を見越して考えるのが苦手です。イマジネーション力が弱いので、自分の言動が与える影響がわからないのです。だから、自己欺瞞で楽な方へ流れて、結果的には事態を悪化させてしまいます。
■8. 内向的
自己欺瞞が「やりたいことをあきらめる理由探し」になる人は、とても内向的な性格になります。自分を過小評価し、「どうせダメに決まっている」とチャレンジする前に諦めてしまうのです。人との摩擦で傷つくことを恐れるので、自分から積極的に行動せず、周囲から手を差し伸べられるのをひたすら待ってしまいます。
自己欺瞞する人の特徴3個[恋愛編]
自己欺瞞する人の興味は、常に内側に向いています。そのため、1対1で向き合う恋愛は苦手な人が多いです。自己欺瞞する人の恋愛にはどんな特徴があるのか、解説していきましょう。
■1. 恋愛に消極的で受け身
傷つくことを恐れて守りに入るので、自己欺瞞する人は恋愛に消極的で、基本的に受け身になります。自分から告白することは殆どなく、好きな人ができても「どうせ相手にされないに違いない」「すでに恋人がいるだろう」と、相手の気持ちを確かめる前に自己完結してしまいます。
また、恋愛に奥手な自分を認めたくないので、興味のないフリをして、「恋人なんかいらない」と公言してしまいます。そのため、恋のチャンスを自ら逃してしまうことが多いです。
■2. 恋人に支配的
自己欺瞞する人に恋人ができると、今までの消極的で受け身な姿勢から一転、支配的になります。自分に自信がないため、横暴な自分を受け入れてもらうことで、愛情を試そうとするのです。
また、恋人の予定を知りたがったり、週末は必ず会う約束をさせたりと、束縛するのも特徴です。いつ恋人が自分から離れてしまうのか心配で、不安を解消したくて束縛してしまいます。
■3. 交際が長く続かない
正当化は交際中も変わりません。自己欺瞞する人は恋人に対しても自分の都合を押し付け、自分勝手に相手の心情を解釈します。恋人が一生懸命向き合おうとしても、疑心暗鬼に囚われて素直に向き合えません。恋人を疲弊させるので、交際は長く続きません。
しかも、別れても自分の中にある原因を認められず、恋人を責め続けます。結局交際から何も学べず、同じことを繰り返してしまいます。
自己欺瞞する人の特徴6個[仕事編]
自己欺瞞は仕事へも大きな悪影響を与えます。表面上は隠しても、仕事のやり方や態度に自己欺瞞が表れてしまうのです。
■1. 愚痴が多く嫉妬深い
仕事をしていれば、多かれ少なかれ理不尽さを感じたり不満を持ったりするものですが、大人の対応をしてやり過ごすものです。しかし、自己欺瞞する人は不平不満を隠しません。仕事の愚痴が多く、優秀な人に対してすぐに嫉妬します。
■2. ミスをしても素直に認めない
仕事でミスをしても、自己欺瞞する人は素直に認めません。ミスしてしまった言い訳を並び立て、「仕方なかったんだ」と訴えます。もちろん、感情論なので説得力などありません。周囲の人は面倒なので責任の追及をせず、言い訳も適当に聞き流します。「この人に何を言ってもムダ」と諦めているのです。
■3. 責任転嫁する
仕事が上手くいかない原因が自分にあっても、自己欺瞞する人は決して認めません。自分のプライドを守るために、人や環境に責任転嫁します。また、人のミスを見つけると、ここぞとばかりに強く責めて、自分のミスを責任転嫁でごまかそうとします。
■4. 協調性がなくチームの輪を乱す
仕事はチームワークが大切です。しかし、自己欺瞞する人は保身ばかりを考えます。そのため、協調性がなくチームの輪を乱してしまいます。正当化する姿は見苦しく、周囲からの心象も悪くなります。それでも自分の非を認められないので、職場の人間関係でのトラブルが後を絶ちません。
■5. ルールや規約に囚われ柔軟性がない
輪を乱す人がいる一方、頑なにルールや規約に囚われるタイプもいます。自己欺瞞から「職場ではこうしなければならない」という義務を、自分に課してしまうのです。仕事には臨機応変さが求められますが、このタイプは柔軟性がないので、周囲にもルールや規約を強制します。
■6. がんばり過ぎてある日ポッキリ折れる
自己欺瞞から高い理想を追求するタイプは、常に全力でがんばり過ぎてしまいます。「全力でいれば非難されない」「ミスしても仕方なかったと言い訳ができる」という思考で、がんばる姿を見せて周囲にアピールするのです。「手を抜く=隙をつくる」という思考なので、疲れても走り続けてしまいます。そして、ある日ポッキリ心が折れてしまうのです。
自己欺瞞のメリット
人間関係をこじらせ、自分を本当の目的から遠ざけるのが、自己欺瞞の大きなデメリットです。それでも、なぜ人は自己欺瞞をしてしまうのでしょうか。その理由は、一時的なメリットがあるからです。
自己欺瞞は自分を正当化する行為です。また、やるべきことから逃げ出す理由付けをする行為でもあります。自己欺瞞は「本当は良くないよね」という罪悪感を、正当化や理由付けで消し去ってくれるのです。そのため、自己欺瞞をしているときは面倒事から逃げられて、一時的に楽ができます。
努力が必要、全力でやり尽くした方が効果は出る、そんなことは誰もが実はわかっています。しかし、全力で走り続けると、肉体や精神がボロボロになってしまう人もいるのです。自己欺瞞は暴走を抑える役割を担っています。自己欺瞞だらけはデメリットをもたらしますが、ある程度の自己欺瞞は、防衛処置としてのメリットがあるのです。
自己欺瞞に気づくためには?
自己欺瞞が厄介なのは、無意識に行ってしまう点です。自己欺瞞がひどい人ほど、自分の行為に気付けません。自分がすべて正しく、周囲が間違っているという認識なので、人の意見やアドバイスも歪んで受け止めてしまいます。
だけど、あなたは今この記事にたどり着きました。自己欺瞞に興味を持ち、「もしかしたら自分にも当てはまるのではないか」と少しでも感じたならば、気付きの一歩を踏み出しています。日常的に自己欺瞞をしていないか、行いを振り返ってみましょう。
・「めんどくさい」とやるべきことを後回しにしていないか
・「でも」「だって」とやらない理由を探していないか
・損するのが嫌で困っている人に気づかないフリをしていないか
・相手を攻撃して自分を守っていないか
思い当たる節があるなら、その時どうするべきだったか考えてみましょう。総合的な視点で周囲とウィンウィンの関係を築く方法を見つけることが、自己欺瞞の気づきにつながります。
自己欺瞞する人の直し方・克服方法10個
自己欺瞞は長い時間をかけて染みついた思考のクセのようなものです。克服するには、今まで無意識に行っていた思考回路を直さなければならず、決して簡単ではありません。
それでも、自己欺瞞する自分を克服したいなら、できることから始めましょう。「変わりたい」という思いがあれば、なりたい自分に近づけます。
■1. 自己欺瞞を自覚する
自己欺瞞を克服したいなら、まずはあなたの自己欺瞞を自覚しなければなりません。自己欺瞞という言葉が気にかかり、このサイトに訪れた時点で、あなたはすでに気付いています。しかし、見過ごしている自己欺瞞もあるでしょう。無意識な自己欺瞞に気付くために、自分の思考を意識しましょう。特に、次のような思考展開になっていないか、注意してください。
・「疲れた」と休憩を先にとろうとする
・ギリギリになるまで行動しない言い訳をしてしまう
・上手くいかない理由を考えてしまう
・「あの時こうしてくれれば良かったのに」と人に対して思う
・他人に厳しい評価を下す
・自分に対してはつい甘くなる
・やりたいことでも先延ばしする
これらは、自己欺瞞する人の考え方の特徴です。24時間全力でがんばる必要はありませんが、「今自分は自己欺瞞しているな」と、小さなことでも自覚できるようになりましょう。
■2. 自分を客観的に評価する
自己欺瞞する人は、自分をイメージで捉えて、過小評価や過大評価をする特徴があります。自分を都合よく評価して、正当化してしまいます。例えば、動くべきときに「自分には到底無理だ」と過小評価して何もしなかったり、不本意な評価を受けたときに「たまたま調子が悪かっただけ」「周囲に人を見る目がない」と過大評価して自分を慰めたりといった感じです。
自己欺瞞から抜け出すには、自分を客観的に評価して、本当の能力を把握しなければなりません。周囲からの評価や意見は真摯に受け止め、できるかできないか、やるかやらないかを、気分ではなく自分の能力で判断できるようになりましょう。
自分の評価に自信が持てない場合は、誰が見てもわかりやすい資格試験などを受けると良いでしょう。自分の実力を客観的に評価するだけではなく、周囲の評価に対しても納得しやすくなります。
■3. 自分の短所や欠点を受け入れる
自分の弱さを認めたくない気持ちは、人として当然の心理です。だけど、受け入れたくなくて周囲の認知をゆがませると、あなたの環境を悪化させるだけになります。弱さに目をつむれば、いつまでも成長できません。周囲に責任転嫁をし続ければ、当然人間関係は悪くなる一方です。
辛い作業になりますが、自分の短所や欠点を一度受け入れなければなりません。「自分は何が苦手なのか、どんな短所があるのか」を、ゆっくり考えて書き出してみましょう。書き出した項目を、信頼できる人に見てもらうのも良いでしょう。
■4. 自分の常識を一度捨てる
自分本位な考え方は自己欺瞞を助長します。あなたが「こんなの普通」「皆そう考えている」と思っていることが、一般常識とは限りません。自分は多数派だと思っている限り、自己欺瞞を直すのは困難です。公共のルールや一般的な礼儀作法以外であなたが思う常識を、一度完全に捨て去りるのです。
「これが普通」と考えている自分に気付いたら、別の視点から物事を観察してみましょう。そして、普通に沿うのではなく「どうしたら今の状況が最もハッピーになるか」を考えるのです。考えた結果、あなたの手間が増えるかもしれません。だけど、一時的な苦労を背負って結果が良くなるなら、労力の先行投資だと考えて行動してみましょう。きっと、今までとは違った反応が見られます。
「いつもと違う行動をしたら、いつもより好転した」という経験を積むことで、自己欺瞞のデメリットに気付き、本当に自分のためになる行動を選択できるようになるでしょう。
■5. 多くの人と接して多様な価値観に触れる
自分の常識を取っ払うためにも、多くの人と接して多様な価値観に触れるのはとても重要です。積極的に人と関わっていきましょう。次のような方法で、あなたの世界を広げることができます。
・SNSやブログを見て、いろいろな人の意見や気持ちを知る
・たくさんの本を読んで、登場人物の心境を疑似体験する
・日常的に会う人の話に耳を傾け、良く観察する
・人からの誘いは都合が許す限り応じる
・人を頼り、悩みを相談する
・自分から人を誘ってみる
・SNSで自分の意見を発信する
・習い事などを始めて、新しい人間関係に飛び込む
・恋愛に興味を持ち、恋活を始める
・ボランティア活動に参加する
あなたができる方法でたくさんの人と接して「世の中にはさまざまな考え方や価値観があり、人によって違う」と実感できる経験を積み重ねていきましょう。
■6. 心理学を学ぶ
心理学を学べば、自己欺瞞について深い理解ができます。自己欺瞞する人は、つい自分に都合よく解釈してしまうので、確かな知識を取り入れて、冷静かつ客観的な判断力を身に着けるために、心理学を学ぶのはとてもおすすめです。心理学を学ぶ方法を紹介します。
・心理学に関する本を読んで独学する
・心理学関係のセミナーに参加する
・通信講座を学んで資格を取得する
・通信制や夜間大学に通って本格的に勉強する
本格的に学ぶには予算が必要ですが、図書館で心理学に関する本を借りて読むならお金はかからず、しかも今すぐ始められます。
■7. 目標を掲げる
自己欺瞞する人は自分を正当化するため、目標を後付けする傾向があります。本来の目的から目をそらし、言い訳を並び立てて、自分の行く先をあたかも最初から目的にしていたかのように思い込んでしまいます。これでは、本当に目指す場所に辿り着けるはずがありません。
自己欺瞞から抜け出すためにも、目標をしっかり掲げましょう。当面は「自己欺瞞を克服する」が目標になるでしょう。しかし、目標への道のりが漠然としていると、結局自己欺瞞に逃げてしまいます。自己欺瞞で道を逸らさないためにも、目標に到達するために必要な計画を練って、小さな目標を立てていきましょう。
■8. 意識的に自分で決断する
目標を掲げたら、達成するために必要な決断を、意識的に自分で行いましょう。誰かからの指示を待つのではなく、自分から能動的に動いてください。自分で決断し、自分から行動した責任は、すべて自分に付きまといます。傷つくこともあるでしょう。「やめとけばよかった」と思うときもあるでしょう。それで良いのです。
自己欺瞞は傷つくことから逃げ、責任を回避する行動を呼び込みます。自己欺瞞を直したいなら、失敗の経験も必要です。「自分の選択は間違っていたが、自分で決めたことだから仕方ない」と、責任をあなたが引き受けましょう。責任転嫁するよりしんどいですが、自分の決断が成功したとき、大きな達成感と喜びを感じられます。
また、自分で決断を増やせば、人の努力も想像できるようになります。成功の裏には努力と苦労があるとわかれば、人に寄り添える気持ちを持てるでしょう。
■9. 人や環境のせいにするのをやめる
自己欺瞞の克服は簡単ではありません。「直したい」と思っても、あきらめたり消極的な選択をしたりすることもあるでしょう。だけど、人や環境のせいにしてはいけません。自分にとってマイナスの選択も、自分自身で決断したのだと自覚を持つのが重要です。
自己欺瞞すると、失敗や不利な状況に陥る原因を、自分以外に責任転嫁してしまいます。しかし、今あなたが置かれている状況は、あなた自身が招いているのです。自己欺瞞して一時的に楽な方へ流れた結果、より悪い状況を生んでいるのだと気付いてください。
あなたが考えるべきは、「なぜこうなってしまったのか」の原因追求ではなく、今の状況を良くする具体的解決策です。
■10. 感謝の気持ちを持つ
責任転嫁して人を責めるのは、自己欺瞞の特徴です。無意識に身についた思考のクセを直すには、人に対して感謝の気持ちを持つのがポイントになります。見方を変えるだけで、感謝の気持ちは芽生えます。やってもらって当たり前という考えを捨てて、小さなことでも「自分のために動いてくれてありがたい」と思えば良いのです。
感謝の気持ちはどんどん言葉にしましょう。感謝されて嫌な気持ちになる人はいません。むしろ、「喜んでもらえて良かった」と、うれしくなります。「この人のために、またがんばろう」と思うようになります。
感謝の気持ちは人間関係を良好にします。自己欺瞞で責任転嫁をしたくなったときこそ、目の前にいる人があなたに敵意がない事実を受け止め、やってくれないことではなく、してもらったことを探してくださいね。
自己欺瞞の診断チェックリスト
あなたが日頃どれくらい自己欺瞞に陥っているかを診断できるチェックリストを作りました。
「はい」か「いいえ」でお答えください。「はい」が多いほど、自己欺瞞度は高くなります。
・周囲は敵だらけだ
・自分は正当に評価されていない
・SNSで見栄を張ったことがある
・正論を言われると辛い
・面倒事は避けて通りたい
・他人が上手くいかないのは自業自得だ
・必要以上の責任を負いたくない
・人に決断してもらった方が楽だ
・できるだけ責任を背負いたくない
・我ながら不平不満が多いと思う
・「人のせいにするな」と言われたことがある
・成功者は環境に恵まれただけだと思う
・自分より能力の高い人に嫉妬してしまう
・もっと体が強ければ人生は違ったと思う
・自分と似た価値観の人としか付き合わない
・親の教育に不満がある
・努力しても報われるとは限らない
・無駄な努力をしたくない
・今さら何かを始めても遅いと思う
・自分を卑屈だと感じる
自己欺瞞を知るためにおすすめの本
より深く自己欺瞞を理解したいあなたにおすすめの本を、いくつか紹介します。
・ありのままの自分―アイデンティティの常識を超える(著者:アルボムッレ・スマナサーラ)
・しらずしらず―あなたの9割を支配する「無意識」を科学する(著者:レナード・ムロディナウ)
・自分の小さな「箱」から脱出する方法(著者:アービンジャー・インスティチュート)
・日常の小さなイライラから解放される「箱」の法則―感情に振りまわされない人生を選択する(著者:アービンジャー・インスティチュート)
・人が自分をだます理由: 自己欺瞞の進化心理学(著者:ケヴィン・シムラー、ロビン・ハンソン)
・不幸論(著者:中島義道)
・不道徳お母さん講座:私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか(著者:堀越英美)
まとめ
自己欺瞞は一時的に自分を正当化して守る効果しかありません。その時は救われても、自己欺瞞を続ければ、あなたの本当の目的や理想から遠ざかり、人間関係にも暗い影を落とします。
今、あなたは自分の自己欺瞞に気付き始めました。「変わりたい!」と強い気持ちを持って、克服する努力を始めてみましょう。「今はまだ時期じゃない」「もう少し準備が整ってから」と先延ばしするのは自己欺瞞です。今すぐできることから始めるのが、自己欺瞞を直す第一歩となるでしょう。