カスハラが近年増加傾向なのを知っていますか?中には離職の原因になったり、心を病んでしまったりするケースも増えているようです。カスハラする人はどのような心理で行っているのでしょうか。
今回は、カスハラの意味や原因を解説。カスハラの具体的事例と対策方法も紹介します。
カスハラ(カスタマーハラスメント)の意味・定義とは?
カスタマーハラスメントを略した言葉であるカスハラ。カスタマーは「顧客」という意味で、カスハラは顧客によるハラスメント行為のことです。
カスハラとは簡単に言うと「客側が店や企業に行う嫌がらせ」という意味になります。
カスハラには正確な定義はありませんが、以下のような行為はカスハラになります。
・無意味に言葉を荒げて威圧する
・理不尽な理由で商品交換や値引き、無償提供を強要する
・商品やサービスとは全く関係ない要求をする
・自分の要望が受け入れられないと脅しや仕返しをする
・商品やサービスとは全く関係ない内容で責め立てる
・人格否定や名誉を傷つける発言をする
・事実とは異なる悪評を広める
・言いがかりやウソの理由で訴訟を行う
また、契約を理由に体の関係や過度な接待を要求するのもカスハラです。カスハラと聞くと、「カスタマーセンターに電話をするクレーマー」というイメージがありますが、顧客が行うすべてのハラスメントが対象になります。
カスハラとクレームの違い
クレームとは、商品やサービスに不具合や不備があったときに、苦情を伝えたり、改善を要求したりすることです。例えば、レストランで頼んだメニューが間違って提供されたときに、「頼んだのはこれではありません」と伝えるのはクレームです。
一方、頼んだメニューがきちんと届いたのに、「マズイ」などと根拠のない理由で、店側に謝罪や無償提供を強要するのは「カスハラ」になります。
カスハラが一方的な嫌がらせなのに対し、クレームは根拠のある正当な訴えです。クレームは顧客の権利であり、訴えることによって正しいサービスを受けられます。それだけではなく、クレームを受けることで、お店や企業側も改善点がわかり、今後の向上が見込めます。
ストレス発散や自分だけの利益のために行うカスハラとは違い、クレームはお互いの信頼関係が根底にあるのです。文句ではなく、「もっとこうした方が良くなるのでは?」という意見も、ポジティブなクレームです。
カスハラする人の心理と特徴
カスハラする人の心理を一言で表すと、「お客様は神様」になります。自分はお金を払ったのだから、「サービスを受ける権利がある。店側は自分を神様のように大切に扱わなければならない。自分の要求に応えるのが当然」と思っているのです。
そのため、自分がカスハラを行っている自覚がない人が多く存在します。論点がズレていたり、正当性が全くなかったりすることに気付いておらず、常識的な意見として訴えているのです。「自分は正しい」という心理なので、店側の意見など耳に入るはずがありません。何か言おうものなら、「口答えするのか!」と、さらに激昂します。
もちろん、中には故意にカスハラを行う人もいます。日頃のストレス発散を、自分より立場が弱い相手にぶつけているのです。「客には逆らえない」という間違った認識が、安易なカスハラにつながります。
どちらにしても、「自分を認めてほしい」という心理が働いているのです。
カスハラが増加する原因4個
残念ながらカスハラは近年増加傾向です。株式会社エス・ピー・ネットワークが2019年に行ったカスタマーハラスメント実態調査では、直近3年間でカスハラが増えている、あるいはとても増えていると回答した人が55.8%もいたのです。
なぜ、カスハラは増加するのでしょうか。原因について考えられる事項を解説します。
■1. サービス品質の向上
顧客獲得のため、サービス品質が向上しています。常識的な人ならば、どこまでがサービスなのかを把握し、過剰な期待をすることはありません。
しかし、一部の人は過大解釈をしたり、企業努力の末のサービスを「最低限の取り組み」と思ったりして、過剰なサービス提供を要求します。そして、自分の要求水準に対応が達しないと、不満が爆発してしまうのです。
売り上げを伸ばすには、集客を増やさなければなりませんが、そのためのサービスがカスハラを増やしている一面があるのです。
■2. ネットによる情報社会の発展
ネットによる情報社会も、カスハラを増やす原因の1つです。今は誰もが簡単にSNSで持論や日々の行動を世間に向けて発信できます。中には「こんなふうに対応したら、こんな得をした」「対応の悪い店員を叱ってやった」など、カスハラ行為を自慢げに披露するものもあります。
それを見た人が、「そういう対応が正解なのか」「これをすれば得をするのか」と間違った認識をして類似行為に走り、カスハラ増加を助長してしまいます。
■3. 高齢化による自制心の衰え
日本は世界1位の高齢化社会ですが、高齢者になると老いにより自制心も衰えます。もちろん個人差はありますが、いろいろなことが我慢できなくなってしまい、小さなことでも怒りやすくなり、本人の自覚なくカスハラ行為をしてしまいます。
特に、今の高齢者は年功序列の世代です。自分を対応する人のほとんどが自分より年下のため、「(年上だし客だし)自分は偉い」という思考に陥りがちです。絶対的強者としてのゆるぎない自信があり、不満があると声を大にして訴えます。
過去自分が年配者から叱られれば、我慢して耐えていたため、それが通ると思っているのです。そのため、無自覚なカスハラ者となってしまいます。
■4. ストレス社会の背景
現代はストレス社会と言われています。多くの人がストレスを抱え、小さなきっかけでキレてしまう人も増えています。カスハラも例外ではありません。
本人は正当なクレームを訴えるつもりが、いつのまにか逆上してしまい、カスハラしてしまうケースは少なくありません。ストレス社会で誰もが怒りやすくなっている社会背景も、カスハラが増える原因になっています。
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カスハラ事例まとめ5個
カスハラとは、一体どのような行動を指すのでしょうか。カスハラの具体的な事例をまとめて紹介します。
■1. 飲食店で異物混入を指摘し過度な謝罪を強要
飲食店で異物が混入していたら、明らかに店側の不備ですよね。当然店側は謝罪すべき事例です。普通に「異物が入っていました」と訴え、提供されたメニューを新しいものに変えてもらい、店側が謝罪するなら、カスハラではなくごく普通の流れです。
しかし、カスハラの場合は、異物混入に対して烈火のごとく激怒します。店員を呼びつけ、店長を呼びつけ、「土下座しろ!」と過度な謝罪を求めます。場合によっては、「全てを無料にしろ!」「健康被害が出たら治療費をもらうからな!」と、支払いを拒否したり金銭を要求したりするケースもあります。
■2. スーパーの欠品に激怒
スーパーは商品を売るのが仕事ですが、時には欠品してしまいます。もちろん、欠品しないように受注していますが、100%欠品を防ぐのは困難です。予約の品ならば話は別ですが、店内の商品が欠品しても、落ち度とまではいきません。常識的な人ならば、文句も言わずに諦めます。
しかし、カスハラする人は自分が求めている商品が欠品だと、店員を探し出して「なんでないんだ!」と激怒します。店側としては、急いで発注する対応しかできません。
今すぐ欠品の商品を提供するのは不可能です。それをわかっていて、カスハラする人は「今すぐ用意しろ」「わざわざ店に足を運んでやったのに」と、怒り収まらずいつまでも店員に罵詈雑言を浴びせます。
■3. コールセンターで延々3時間文句を言い続ける
コールセンターでは相手の顔が見えないため、カスハラが酷くなる傾向があります。論点のズレたクレームを訴え続け、延々と同じ話を繰り返し、解決策を明示せず、3時間も文句を言い続けるケースもあるのです。
中には「絶対に電話切らないからな!」と、謎の粘りを見せるカスハラも存在します。電話でコールセンターの人を拘束するという嫌がらせを、ただただしたいのでしょう。
■4. 百貨店で子供が迷子になった責任を問う
百貨店で自分が子供から目を離したのが原因で迷子になってしまったのに、「なぜうちの子をちゃんと見てくれていないの!?」と、店員を糾弾してカスハラする人もいます。子供の管理は百貨店の仕事ではないのに、「お客様である自分が商品を見ているのだから、その子供に目を配るのは店員として当然」と思っているのです。
もちろん、百貨店側にはなんの落ち度もありません。できる対応と言えば、店内放送と店員の目が届く範囲で子供を探すことくらいです。これも百貨店側の善意なのですが、「うちの子に何かあったら許さない!」と、激昂し続けます。
「お子様からは目を離さないでください」という当たり前のことまで店側が注意喚起するのは、このようなカスハラをする人が一部存在するからです。
■5. 接客に文句を言い動画を撮って「SNSで炎上させてやる」と脅迫
インターネットはカスハラ方法を多様化させています。接客に不満な人が、文句を言いながら動画を撮り、「SNSで炎上させてやる」とカスハラをするのです。これは脅迫行為に相当します。また、肖像権や個人情報の侵害にもなります。自分の行っていることが違法になる自覚がありません。
悪質なカスハラになると、動画や写真に編集を加えて、真実とは異なる内容をSNSに乗せてしまいます。名誉毀損や営業妨害になる行為です。自分の行動が自分の首を絞めることがわかっていないのでしょう。
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カスハラする人への法律と罰則
悪質なカスハラは法律による罰則を課せられます。カスハラが罪になる事例をいくつか挙げましょう。
・恫喝や脅し文句は、脅迫罪や強要罪の可能性あり。場合によっては実刑になるケースも。
・カスハラにより対応者の心身に異常が出た場合、治療費や休業損害など、賠償責任を負う場合あり。金額はケースバイケースだが、数百万円の事例もある。
・カスハラによる極度の嫌がらせで経営困難になった場合、業務妨害となり損害賠償責任が生じるケースがある。
・実名をネットに出して悪評を乗せたり、SNSに嘘の事実を書き込んだりした場合、業務妨害や名誉棄損に当たり、損害賠償責任が生じるケースがある。
最初は正当なクレームでも、ヒートアップして語調が強くなったり、言葉の選択を誤ったりすると、カスハラになってしまいます。発した言葉は元に戻せません。場合によっては罪になるのだと肝に銘じておきましょう。
カスハラ対応が難しい理由
カスハラ対応が難しいのは、クレームとは違い理不尽な要求が多いからです。カスハラする人は、店や企業側に難癖や言いがかりをつけます。
結局、企業が対応できるサービスでは納得できず、「こうすれば解決」という着地点がありません。しかも、自分がカスハラをしている自覚がないため、「なぜ正当な要求が通らないのか」と、更に腹を立ててしまいます。
「自分の要求は度が過ぎている」と、カスハラする人が気付かなければ、円満解決はできません。しかし、カスハラを自覚させるのは至難の業。その理由は、一度強く出た手前、今更「自分の主張が間違っていた」と修正できないような人が、一方的なカスハラをしやすいからです。
「とりあえず文句だけ言いたい」という確信犯的なカスハラは別として、感情を高ぶらせてしまったカスハラを治めるには、1対1ではなく、1対お店・企業としての冷静な対応が必要です。
カスハラへの厚生労働省指針
カスハラを受けた人が離職したり鬱病になったりなど、社会問題になっており、厚生労働省でも問題視されています。定期的に行われている「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」では、カスハラについて、以下のように厚生労働省指針が述べられています。
一部割愛
事業主が、労働者の安全に配慮するために対応が求められる点におきましては、顧客や取引先からの迷惑行為は職場のパワーハラスメントと類似性があるということは指摘できるのではないかということがあります。
事業主は労働者の安全配慮の義務があり、いわゆるカスハラは職場のパワハラに相当するというのが、厚生労働省の指針です。カスハラが起こった場合、個人の問題にせず、事業主は被害を受けた労働者を守るべきなのです。
カスハラの対策・撃退方法11個
カスハラに遭ってしまったら、どうすれば良いのでしょうか。カスハラの対策、撃退方法を伝授します。
■1. とにかく謝る
カスハラには、とにかく謝る、とりあえず謝るのが基本の対処法です。「謝る=相手の要求を飲む」にはなりませんので、相手の気が済むまでひたすら謝るしかありません。何を言われても、「申し訳ございません」で通しましょう。
いくつか謝る例文を紹介します。
・「さっさと対応しろ!」→「お忙しいところお時間をいただき、大変申し訳ございません。対応を急いでおりますので、今しばらくお待ちくださいませ」
・「そんなこともわからねーのか!」→「勉強不足でご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ございません。お調べ致しますので、もうしばらくお待ちいただけませんでしょうか?」
・「とにかく不愉快なんだよ!」→「不愉快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ございません」
・「電話が全然つながらない!」→「電話が大変込み合っておりまして、ご不便をおかけしてしまい申し訳ございません」
謝ることで、カスハラする人は「話を聞いてもらえている」と納得できます。中には「謝ればいいってもんじゃない!」と、更に責め立てる人もいますが、謝罪しつつ話をつなげていきましょう。
■2. ゆっくりと落ち着いた口調で話す
話し方と感情はリンクします。早口で話すと、焦燥感や切迫感を持ちやすくなり、ゆっくり話すと気持ちもゆったりと落ち着きます。カスハラする人は感情が高ぶっているので、落ち着いてもらうためにも、あなたがゆっくりと落ち着いた口調で話すことが大切です。
話し方は伝染しやすいので、カスハラする人から早口でまくしたてられると、焦りと恐怖を感じて、ぼそぼそと声が小さく早口になりがちです。日頃からゆっくりと聞き取りやすい発声を心がけて習慣化し、カスハラに遭ったときは、より一層「ゆっくり」「はっきり」を意識して話しましょう。
■3. 相手の話をじっくり聞く
カスハラする人は怒りで支離滅裂な主張をすることが多いです。思わず「こういうことですか?」と聞きたくなるかもしれませんが、相手の言葉が終わるまで、話をじっくり聞くことが大切です。最後まで話を聞いて、相手が何を求めているのか本筋を見極めましょう。
話をじっくり聞くことで、カスハラする人は「自分に時間を割いている」「自分の話をきちんと聞いている」という実感を持ちます。じっくり話を聞くのは、「認められたい」という欲求が少々満たされ、冷静さを取り戻す効果もあります。
「きちんと聞いてますよ」とアピールするために、適度な相づちをうちながら、相手の言葉を1つずつ丁寧に聞きましょう。相手の要求を見極め、可能な限り満たすのが、カスハラを穏便に治める対処法です。
■4. 反論しない
カスハラする人の主張は理不尽なものが多いです。常識的に考えれば、無理な要求ばかり。論理的ではなく、筋が通っていないこともあります。じっくり聞けば聞くほど「それは違う」「でも」「いやいや」と、反論の言葉が思い浮かんでくるでしょう。
だけど、反論はカスハラする人の怒りに火を注ぐだけです。どんなに正当な反論でも、相手は「生意気だ!」「こっちが間違っているっていうのか!」と、更に怒って絶対に認めません。
反論するだけ無駄です。正論でカスハラは対処できないと悟った方が良いでしょう。何があっても反論と思われる発言は控えるのが、カスハラを悪化させないポイントです。
■5. 状況を詳細に聞き出す
カスハラする人には、なるべく穏便に退場してもらいたいですよね。そのためには、状況を詳細に聞き出して、相手の要望にどこまで応えられるのかを明確にしなければなりません。謝罪の言葉と相づちを使いながら、相手を饒舌にさせて、どのような状況にクレームを言いたいのか聞き出しましょう。
相手の発言を掘り下げる質問方法を紹介します。
・「こっちが間違っているって言うのか!」→「そのようなことは断じてございませんが、そのような問題の前例がなく、念のため、もう一度詳細をお聞かせいただけませんでしょうか?」
・「普通に考えればこの対応はおかしい!」→「大変申し訳ございません。どのような対応についておっしゃっているのか、お教えいただけませんでしょうか?」
・「法律的な問題はないと言い切れるのか?」→「申し訳ございません。どの法律について問題だとお考えでしょうか?」
・「言いたいこと、全然わかってないじゃねえか!」→「大変申し訳ございません。もう一度、状況をお聞かせいただけませんでしょうか?」
詳細を聞き出すには、「こちらはあなたの話をもっと理解したいのです」という姿勢を見せるのが大切です。相手の説明の下手さはグッとこらえて、怒りの言葉から質問に切り返し、状況を細かく説明してもらいましょう。
■6. 結論を急がない
カスハラする人は理不尽な対応を求めてきます。正式なクレームや問い合わせの対応とは違い、マニュアルにないことを求められた場合は、結論を急いではいけません。1人で判断せずに、必ず上司に相談しましょう。どんなに「すぐ答えを出せ」と言われても、「YES」「NO」で答えず「検討させていただきます」と、先送りにするのがポイントです。
■7. できないことはできないと言い切る
マニュアルで「対応不可」と明確な規則がある場合は、相手側から求められても「申し訳ございません。そのような対応は行っておりません」と、わかりやすく「できない」と言い切りましょう。
カスハラする人は「なんでできないんだ」「そっちが悪いんだろ」と、更に難癖をつけてくるでしょうが、「申し訳ございません。対応できません」で通すしかありません。一貫した返答と態度が、「何をしても対応は変わらない」と相手を悟らせます。
■8. あきらかな脅迫には毅然とした対応をとる
性質の悪いカスハラする人は、脅迫をしてくることがあります。「恐がらせれば言う事を聞く」と思っているのでしょう。しかし、脅迫には毅然とした対応をとるのが正解です。
明らかな脅迫に対する対応例をいくつか紹介します。
・「ふざけるな!殺すぞ!」→「不愉快なお気持ちにさせてしまい、申し訳ございません。しかし、そのような発言を控えていただけますでしょうか?これ以上の発言があると、当社の規則により警察に通報しなければなりません」
・「マスコミにタレこんでやる!」→「どのような内容なのかわかりかねますが、弊社に実害が生じた場合は、然るべき対応をとらせていただくことになります」
・「裁判で不当な扱いを受けたんだと訴えるぞ!」→「お客様の考えをお止めすることはできません」
カスハラする人が自分の言動にどのようなリスクがあるのか気付けば、引き下がってくれるでしょう。それでも脅迫が続くなら、迷わず上司に相談しましょう。
■9. 録音・録画で記録を残す
悪質なカスハラの場合、司法に訴えなければ解決が難しいケースもあります。カスハラを訴えるには、被害を受けた証拠が必要です。録音や録画で記録を残せる体制を作りましょう。
もっともわかりやすい例が、電話のカスタマーサポートです。顧客が電話をかけると、「サービス向上のため、内容を録音させていただきます」という音声案内から始まります。最初に録音していると告げることによって、カスハラする人にとっては「下手なことは言えない」という警告になります。店舗では、防犯カメラなどが有効です。
このような対策は個人で行うのは難しいので、会社側が従業員を守るためにも、体制を整えるべきです。
■10. 違法行為の知識を身に付ける
カスハラから身を守るためには、企業レベルでの努力はもちろん、個人でも違法行為の知識を身に付けて自衛した方が良いでしょう。どのような言動が法的にNGなのか、知っているだけで安心感が違い、落ち着いて対応できます。
ただし、知識を身に付けるのは、カスハラに遭ったときに糾弾するためではありません。適切な対応をして、上手にスルーするためです。
そして、万が一の事態に備えるためです。カスハラする人は激情しやすく、正当な指摘にも逆ギレして暴れるかもしれません。その場では穏便に済ませるのが鉄則です。
■11. 細やかなマニュアルを作成する
カスハラへの速やかで適切な対応をとるためには、細やかなマニュアルを作成して、いざという時のために準備すると良いでしょう。さまざまなカスハラのケースを想定し「Aの場合はBで対応」といったように、取るべき行動がわかるように示します。
細やかなマニュアル作成には、企業の取り組みが必要です。従業員を守るためにも、現場の情報を吸い上げて、常にマニュアルの更新をしていきましょう。
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カスハラの相談窓口
カスハラの相手は顧客ですが、職場のハラスメントに相当します。カスハラを受けたら、まずは上司に相談しましょう。上司が取り合ってくれない場合は、社内にハラスメント問題を扱う部署に直接問い合わせると良いでしょう。職場に対応部署がない、あるいは充分な対応をとってくれないならば、外部への相談を検討しましょう。
カスハラの相談窓口をいくつか紹介します。
・総合労働相談コーナー(各都道府県の労働基準監督署内などに設置。無料・予約不要・秘密厳守)
・法テラス(法トラブル全般を扱う電話相談。相談に応じて相談機関等を紹介)
・みんなの人権110番(法務省管轄の電話相談。ハラスメント他、虐待や差別など人権問題全般を扱う)
職場で相談する際、解決が難しいなら「外部への相談も考えている」と伝えてみましょう。あなたが本当に苦しんでいることが伝わり、職場の対応が変わるかもしれません。1人で悩まず、然るべき場所に相談してくださいね。
まとめ
カスハラはハラスメント行為です。企業はカスハラを受けた従業員を守る義務があります。「自分の対応が悪いのだ」「1一人で何とかしなければ」と悩みを抱え込まず、カスハラ被害の情報を職場で共有し、会社としての対策を考えましょう。
中には人格まで否定するカスハラもありますが、あなたは立派に仕事をしています。心無い言葉に傷つけられ辛いでしょうが、自分を否定せず自信を持ってくださいね。