丑の刻参りとは？効果とやり方！遭遇・目撃して大丈夫？

「丑の刻参り」という言葉を知っていますか？それは、日本の古来より伝わる「呪い」の方法です。憎い相手を殺すことを目的とした恐ろしい呪術です。

深夜、神社のご神木に藁人形を釘で打ち付け、呪い殺すことができると言われています。江戸時代に最も盛んに行われ、葛飾北斎の版画にも、髪を振り乱した女性が、深夜の丑の刻参りに行く途中で、烏（からす）天狗に襲われている光景を描いたものがあります。

「丑の刻参り」（うしのこくまいり）の丑の刻とは、昔の時刻を表す言い方です。

一日を十二支で区切り、子（ね）の刻（前日の午後11時から翌日の午前１時まで）から数え始めます。丑（うし）は次の2時間を指しますので、夜中の午前1時から3時までのことを言います。「草木も眠る丑三つ時」というと、午前2時を言います。

丑の刻参りは、午前2時頃に神社に行き「呪詛」（じゅそ）を行う方法です。呪詛と言うのは憎い相手を呪い殺す方法です。

平安時代に、祈願成就の方法として、「丑の刻参り」が始まりました。

有名な阿倍晴明（あべのせいめい）という陰陽師（おんみょうじ）が活躍し、「丑の刻参り」には、式神と呼ばれる妖怪を使い、神木に釘を打ち結界を破り、災いをもたらす邪神や妖怪を呼び出して調伏しました。

その後、「丑の刻参り」は、祈願成就よりも呪い殺すための「呪詛」（じゅそ）に変わっていきました。

藁人形に釘を打ち付ける場所により効果が違うとされています。例えば、頭を釘で打ち抜くと、相手の頭に病気が生じます。脳に関する重い病気など。

手を打ちぬいた場合は、相手の浮気癖が直ると言われています。妻以外の女性に「手」を出さないようにという願いが込められています。

胸を釘で打ち抜いた場合、心臓にかかわる病気となります。

足の場合は、遊び癖が直ると言われています。江戸時代には、男性の遊ぶ場所として、遊郭などが各所にあり、そこで遊興にふける男性が多くいました。家を守る女性は、夫に文句を言うことは許されませんので、せめて丑の刻参りで、夫の行いを改める努力をしたのでしょう。

丑の刻参りの基本的な装束と道具類は、次のようなものがあります。

◯白装束（白い着物）・・・白い着物を着ます。死人に着せる死に装束です。
◯胸につるす鏡・・・鏡は魔除けのためです。
◯一本歯の高下駄・・・修験者などが山で修業する時に履きます。

◯3本の蝋燭（ろうそく）・・・五徳を逆さまに被り、五徳の3本の足に、蝋燭（ろうそく）を立てます。鬼の角に模したものとも言われています。

◯五徳（ごとく）・・・コンロなどにかける道具で、逆さまにして頭に被り蝋燭（ろうそく）を立てるためのものです。鉄の輪で作られたものもあります。

◯櫛（くし）・・・櫛は別れを招く呪力を持っているとされ、女性の怨念を表す物として扱われています。

◯刀（かたな）・・・短い護り刀、魔除けとして使います。
◯藁人形・・・憎い相手に見立てた藁人形です。
◯五寸釘・・・藁人形に打ち付けるための釘です。
◯かなづち・・・釘を打ち付ける道具です。

上記のようなものが、丑の刻参りに必要な物となります。

時代劇やミステリー・ドラマなどで、「丑の刻参り」のシーンをご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。

（1）丑の刻参りをする時刻は、寝静まった真夜中、午前2時頃です。
（2）白装束に着替えます。
（3）白粉を顔に塗り、口紅をさします。
（4）頭に五徳を載せ、蝋燭を灯します。
（5）藁人形を持ちます。

（6）五寸釘を口に咥えます。
（7）金づちを持ちます。
（8）人に見られないように神社に向かいます。
（9）神社に着いたら、ご神木に藁人形を釘で打ち付けます。
（10）これを7日間続けると、呪いの効果が現れます。

丑の刻参りをしている姿は、他人に見られてはいけないことになっています。万が一見られた場合は、目撃者を殺してしまわなければならないとされています。

藁人形を作るには、藁を用意します。それに丈夫な糸か紙紐を用意します。

（1）最初に腕の部分を作ります。藁を適量まとめ20センチの長さに揃えます。藁の束を4か所、糸でグルグル巻き、藁の束を作ります。

（2）次に胴体を作ります。もう1本、太めに藁をまとめ、30センチほどに揃えます。頭になる部分をしっかりと糸で縛ります。首に当たる部分にも糸で縛り付けます。

（3）胴にする藁束を2つに分けて、脚を作ります。2つに分けた間に腕になる藁束を差し込んで、糸で固定します。胴体の胸の辺りで固定すればバランスが良いです。

（4）胴体になる部分を2か所ぐらい糸で縛ります。

（5）最後に脚になる部分をしっかりと2本に藁束を分けて、糸で縛ります。これで完成です。

（6）藁人形の使用法は、ご神木に五寸釘で打ち付けることにより、恨みを晴らすことができます。

古代の神話時代から、呪術は重要な儀式であり、巫女と呼ばれる女性に神霊が憑依して神霊の力を得ます。神聖な憑依行為に際しては、神霊を汚さないように関係者以外は入室禁止です。

丑の刻参りにしても、神霊に祈願して、霊力を使って呪い殺す儀式ですので、他人の余計な乱入行為は儀式の邪魔になると考えられます。従って、丑の刻参りは、他人に見られるという侵害行為を受けると、効力を失うと言われています。

◯目撃した時の対処方法
目撃者がある場合、殺さないと祈願は成就しません。もし、目撃してしまったら、急いでその場を立ち去らなければ、生命の危険があります。できれば、目撃したことを気づかれないようにして下さい。

もし気が付かれたら、見ていないふりをして、立ち去るようにしてください。いずれにしても、逃げるが勝ちです。絶対に興味本位で、丑の刻参りを見に行こうなどと思わないようにしてください。

丑の刻参りを目撃されれば、目撃者を殺さないと効力がなくなります。恨みが深いほど、決意は固く必死です。憎い相手を殺すためには、誰にも邪魔はさせない固い決意があります。

もしそこに遭遇した場合、殺されるかもしれないという危機感を持たないと大変なことになります。護り刀で刺されてしまうかもしれません。話せば分かる相手ではないことを認識しておくべきでしょう。

◯もし目撃してしまったときの対処方法
偶然に丑の刻参りを目撃してしまったら、相手に気づかれないように隠れるか、すぐに立ち去るべきです。

丑の刻参りの当事者にとって、他人の目撃によって台無しにされては、無念としか言いようがないからです。目撃者を追いかけて殺そうとするでしょう。

丑の刻参りは、狂気の沙汰ですが、当事者の思いは真剣です。逃げても追いつかれたら、殺されることを覚悟しなくてはなりません。くれぐれも興味本位で丑の刻参りを扱ってはいけません。

伝統的に丑の刻参りで有名な神社があります。京都府にある貴船神社（きふねじんじゃ）と岡山県にある育霊神社（いくれいじんじゃ）です。

京都府左京区にある貴船神社は、全国に約450社ある貴船神社の総本社です。創建は神話時代と言われています。

◯丑の刻参りの起源となった貴船神社の宇治の橋姫伝説

嵯峨天皇の御代に、ある公卿の娘が嫉妬に狂い、貴船神社に詣でて7日間こもりました。姫の願いは、鬼神になり男を盗った女を殺したいというものでした。

貴船大明神は哀れに思い、「宇治の河瀬に行き21日間身を清めなさい」と答えました。姫は喜んで、家に帰ると早速支度にかかりました。長い髪を5つに束ね鬼の角をつくり、頭には鉄輪をかぶり、松明を咥え、深夜、宇治の河原に行き身を清めました。21日目に願いが叶い鬼になりました。

その後は、女を殺しただけでなく、だれかれ構わず殺しました。この大惨事に対し、剣豪で名高い渡辺綱（わたなべのつな）に勅命が下り退治することになりました。渡辺綱は、一条堀川の戻橋で、美しい女に化けた鬼に遭遇しました。

親切に送ろうとすると、女は鬼の姿を現し襲いかかってきました。渡辺綱が鬼の腕を切り取ると鬼は逃げていきました。この伝説が、丑の刻参りの起源となっています。

岡山県新見市にある育霊神社（いくれいじんじゃ）は、680年の歴史があると言われています。古来より丑の刻参りが行われており、神社に保存されている藁人形は、奈良時代に使われていたものが残されています。

◯育霊神社の残る伝説

室町時代末期、戦国の世に斎藤尾張守影宗という武将がこの地を収めておりました。敵が城に攻め入り、玉依姫が愛していた猫が殺され、玉依姫も自害して死にました。それを聞いた影宗は姫と猫のために祠を建てて敵を呪いました。

その結果、敵は全て呪い殺されたという伝説です。その猫を祀った祠が育霊神社に残っています。この話がもとで育霊神社は呪いの神社と言われていますが、逆に呪いをかけられた人を救う神社でもあるということです。

「丑の刻参り」で有名な刑事事件は、昭和29年、秋田県秋田市で起きた事件です。

◯事件の概要

田中義江さんが、突然胸の痛みを訴えて倒れました。医者に診てもらいましたが原因は分かりませんでした。数日後、交際相手の山本鉄也さんが、警察に行き、義江さんの病気の原因は、「丑の刻参り」の呪いのせいだと訴えました。

実は「丑の刻参り」をしていたのは、山本さんの元の交際相手の堀田清子さんでした。山本さんは、堀田清子さんと交際中に、田中義江さんのことが好きになり、別れ話を持ち出しました。

清子さんは、諦めきれず怒りを義江さんに向け、「丑の刻参り」を行いました。警察は、清子さんを脅迫容疑で逮捕しました。すると途端に義江さんの病気は治りました。

丑の刻参りを代行依頼できる業者は、いくつかあります。しかし、丑の刻参り自体、本来自分自身で行って初めて霊験あらたかな魔力を授かるわけですから、代行で効果があるかどうかは分かりません。費用も安いというわけではなく、頼む場合は慎重に考えてください。

どうしても自分一人で神社に行くことができない事情をお持ちの方には代行を頼むしかないでしょう。しかし、恨むこと自体は善い事とは言えません。

仏教の「因果応報」によれば、現世に悪い業（ごう）を残せば来世に引き継ぐことになるので、熟慮して行ってください。

昔から「人を呪わば穴ふたつ」という格言があります。他人を呪い殺そうとすれば、自分にも災いがふりかかり、自分も墓穴に入ることになるという意味です。

この言葉の由来は、平安時代、陰陽師が人を呪殺しようとする時、呪い返しに遭うことを覚悟して、自分のための墓穴も用意した事から、この格言が生まれました。

しかし、恨んでも決して報われることはありません。聖書（マタイによる福音書5章）にも、「汝の敵を愛せよ」という言葉があります。怒りや恨みは、脳内にノルアドレナリンやコルチゾールを増加させ、病気の原因となります。気持ちを入れ替えて健康的な毎日を過ごしましょう。