人事を尽くして天命を待つの意味とは？誰の言葉？中国語・英語

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉は、多くの受験生やビジネスマンの座右の銘として親しまれている言葉です。

大学受験や就職・転職の面接などのときに使われることが多いでしょう。

「人事（じんじ）を尽くして天命（てんめい）を待つ」という言葉の意味は、力の限りを尽くしてやり遂げた後は、運を天に任せるという意味です。物事の成り行きは、人智を越えたところにあり、思い通りにならなくても後悔はしないという覚悟を示したものです。

この言葉は、中国の南宋時代に儒学者の胡寅（こいん 1098~1156年）が、彼の著作「読史管見」（とくしかんけん）に取り上げた歴史的な出来事がもとになった故事成語です。

もとになった歴史的故事とは、以下です。

東晋の政治家で名臣の謝安（しゃあん）が、華北の前秦軍と戦った「淝水（ひすい）の戦い」（383年）において、勝利した時の心境を「人事を尽くして天命に聴（まか）す」と言ったことが、「読史管見」（とくしかんけん）に書かれています。この言葉が、「人事を尽くして天命を待つ」のもとになりました。

「人事」とは、辞書を引くと、
①人間にできる事柄。人としてなすべきこと。
②人間社会の出来事。人間関係。
③個人の身分・職務・能力に関する事柄。
④俳句の季語のうち、天文・地理・動植物以外の人間に関する分類
と記載されています。

「人事を尽くして」の意味は、人間にできる事柄を全部やり遂げることです。

「天命」とは、辞書を引くと、
①生まれた時から定められている運命
②天の与えた使命
③天から与えられた寿命
と記載があります。

「人事を尽くして天命を待つ」の意味は、
「自分にできる事柄を全てやり遂げた後は、天が自分の運命を定めるのを待つ」という意味と、「自分にできる事柄を全てやり遂げた後は、天から与えられた使命を待つ」という意味も成り立ちます。

引用した辞書：明治書院 精選 国語辞典

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉は、南宋時代の儒学者の胡寅（こいん）の言葉です。

胡寅（1098～1156）は、字は明仲。現在の福建省の出身。幼い頃から利発で、学問を良く学び、進士に合格しました。南宋初代皇帝、高宗の命により官職につきました。

出典は中国の「読史管見」（とくしかんけん）という書物から出た故事成語です。著者は、南宋時代の政治家であり儒学者の「胡寅」（こいん）です（1098～1156）。

「読史管見」の意味は、史書を読んだ感想という意味です。東晋の謝安の言葉として「人事を尽くして天命に聴（まか）す」という言葉がもとになりました。

「人事を尽くして天命を待つ」の類義語として、「果報は寝て待て」と「天は自ら助くる者を助く」という言葉があります。

「果報（かほう）」は、良い結果の意味です。「寝て待て」の意味は、何もせず待てという意味です。もともとは仏教の「因果応報」の教えです。善いことをすれば楽になるという意味で、「善因楽果」の考え方によるものです。

英語にすると、「Heaven helps those who help themselves.」です。自ら問題を解決する人々には、神様の恩恵が施されるという意味です。

イギリスの著述家サミュエル・スマイルズの著書「SELF HELP」の冒頭にも引用されている格言です。人事を尽くして自分自身を助ければ、天が助けるという意味になります。

「人事を尽くして天命を待つ」を中国語の現代語訳では、中国の簡体字で表すと、

「尽力等待自己的命运」
Jinli dengdai zijide mingyun
（ジンリ　ドンタイ　ツージーダ　ミンユン）

カタカナ音は正しく中国語の発音を表すことはできませんが、こんな風に発音するという意味で参考までに付け加えました。

【語句】
尽力　出来る限りの力を尽くす
等待　待っている
自己的　自分の
命运　　運命

日本語訳：出来る限りの事を尽くして自分の運命を待つ


「人事を尽くして天命を待つ」の漢文で表すと、

「盡人事待天命」或いは、「盡人事而待天命」という文になります。

書き下し文：人事を尽くして天命を待つ

現代語訳：出来る限りの努力をした後は、結果を運命に任せて待つ。

「人事を尽くして天命を待つ」の四字熟語は、「人事天命」です。

南宋の儒学者、胡寅（こいん）の著作「読史管見」（とくしかんけん）の中で、「人事天命」という言葉を使っています。

「人事天命」も人事を尽くした後は、成り行きにまかせるという意味です。「人事天命」と言った方が、標語としても短く済みますので、座右の銘として、壁に貼り付けるのに便利です。

「人事を尽くして天命を待つ」を英語で表現すると、どんな英語になるでしょう。

①Man does what man can do then awaits the verdict of heaven or fate.

【語句】
verdict 評決
fate 運命

【日本語訳】
人はできるだけの事をやり、その後は、神の御心或いは運命を待つのみ。


②Do the likeliest, and God will do the best.

【語句】
the likeliest 最も有力なこと、ふさわしいこと
do the best 最善をつくす

【日本語訳】
最もふさわしいことをすれば、神が最善の結果をもたらしてくれます。


③You do your best, and God will do the rest.

【語句】
do your best 最善をつくす
do the rest 残りを処理する

【日本語訳】
あなたが最善を尽くせば、後のことは神が取り計らいます。


④God helps those who help themselves.

【語句】
those who ~する人々

【日本語訳】
神様は自分自身を助ける人々を助ける
（天は自ら助くる者を助く）

（1）明日は合格発表ですが、今まで猛勉強をしてきたので、「人事を尽くして天命を待つ」という気持ちでいます。

（2）昨夜救急病院に運ばれてきた少年は瀕死の重傷でした。手術後、医師は、「人事を尽くして天命を待つ」と言っていました。

（3）社長は新聞記者を前に「このプロジェクトが成功すると信じている。人事を尽くして天命を待つとはこの事だ」と誇らしげに述べました。

（4）織田信長は総勢2千という少ない軍勢で、2万を越える今川軍に対し、桶狭間で奇襲をかけ勝利しました。彼の心境は、「人事を尽くして天命を待つ」思いであったことでしょう。

徹底的に人事を尽くす経営者として、ジェフリー・プレストン・ベゾス氏は有名です。彼はアマゾンの創始者でありCEOです。彼の仕事ぶりは、極端なほど仕事に徹しているので、批判的な人もいます。

彼の経営についての名言で、その片鱗を窺い知ることができます。

（1）変わらないものを軸に戦略を立てよ。
「選択肢は多く」、「価格は安く」、「配達は迅速で確実に」

（2）顧客に執着せよ。（会議室に常に空席を設け顧客がいると仮定）

（3）会社には2種類ある。高く売るために努力する会社と、安く売るために努力する会社だ。我々は後者になる。

彼の部下の重役が「人間らしい生活をするために休暇を取りたい」と言いに来た時に、「それならこの会社を辞めて良い」と答えたそうです。とても厳しい答えですが、現在のアマゾンの成功は、社員全員が「人事を尽くして天命を待つ」を実践しています。

「人事を尽くして」理想の相手を見つけ、恋愛を成功させるにはどうしたら良いでしょう。

◯出会いで成功するには？

例えば、女性にとって男性は、背が高く、ハンサムで、お金持ちが良いという固定観念を捨てましょう。理想の相手と出会うには、個性を尊重し、容姿、学歴、職業などの枠を取り払い、選択の余地を広げることが大切です。人事を尽くして探しましょう。

◯相手の価値観を知る

離婚の原因に、「価値観の違い」という言葉がよく出てきます。「恋は盲目」といって、好きになると相手が見えなくなると言いますが、相手の価値観をよく知ることは大切です。理想の相手と出会うには、固定観念を捨て、人事を尽くして相手を探し、そして相手の価値観を知り、「理想の人」が現れるのを待つことです。

成功するためには、「引き寄せの法則」を知らなければなりません。人事を尽くせば、必ず成功を引き寄せることができるという法則です。

例えば、新しい契約を取るためには、受注に必要な品質、価格、数量、納期など、詳細な条件を調査します。新規参入の場合は、競合がいるのか、競合はどんな戦略で事業を行っていて、自社はどのようにすれば勝つことができるのか調べて考える必要があります。

このように「引き寄せの法則」で効果を得るには、手抜きや落ち度は許されません。全てを完璧にして初めて「人事を尽くして天命を待つ」ことができます。

アニメの世界でも、登場人物が「人事を尽くして天命を待つ」という言葉を座右の銘にしている物語があります。「黒子のバスケ」という題名の作品です。作者は、藤巻忠利氏です。

＜緑間慎太郎のプロフィール＞
このアニメに登場する緑間慎太郎（みどりま　しんたろう）は、「人事を尽くして天命を待つ」という言葉を座右の銘にしています。帝光中学時代はバスケ部で副主将を務め、秀徳高校に進学、「超長距離3ポイントシュート」が得意技です。

＜努力と練習、技の向上＞
彼は、万全を尽くせば結果がついてくると信じています。連携プレーによる「空中装填式3Pシュート」も編み出し、身体を鍛えなおして、全試合中を通じて3Pシュートを投げ続け、「限界などとうの昔に越えている」という彼の言葉は名言となりました。

「人事を尽くして天命を待つ」という言葉を座右の銘にすることで、成功の第一歩が始まります。成功を手にするプロセスが、この短い言葉の中に凝縮されています。

それには、「行動」が必要です。「行動」のパターンについて、世界のジョークの中に、「ドイツ人は考えてから行動する。フランス人は考える前に行動する。イギリス人は考えながら行動する」という言葉があります。

あなたは、どのパターンに近いですか？「人事を尽くす」には、時間をうまく使い、効率よく努力したいものです。毎日「人事を尽くす」ことで、確実に成功に近づくことができます。