「晴耕雨読」という言葉を聞いたことがありますか?文字通りの意味にとらえると、晴れた日に耕し、雨が降れば読書すると解釈できます。
贅沢を望まず、清貧な生活に甘んじて生きるという意味にもとれます。また経済的にゆとりがあり悠々自適の生活ができるという意味にもとれます。
どちらにしても、精神的な充足感があります。しかし、現実的に、貧乏に喘いでいる人には満足感はないかもしれません。
裕福な人であっても、それに満足して遊んで暮らしている人は少ないでしょう。「晴耕雨読」は、厳しい現代社会の中で、私たちにとっては、夢の生き方もしれません。
「晴耕雨読」について、意味や由来、読み方など詳しくご説明致します。
晴耕雨読の意味とは?読み方は?
◯晴耕雨読の意味
晴耕雨読の意味は、晴れた日には田畑を耕し、雨の日には家の中で読書をするという意味になります。都会の喧騒から離れて、静かな田舎で心静かに悠々自適の生活を楽しんでいる様子を表しています。
◯晴耕雨読の読み方
読み方は、「せいこううどく」と読みます。
◯世界の人々の晴耕雨読
世界でガーデニングの好きな国民は、ブルガリア、スロベニアと言われていますが、東欧諸国の人たちは、花を楽しむのではなく、食料になる植物を植えることに熱心です。
米国も読書に使う時間は多いのですが、主な読書は聖書と言われています。ほとんどの家が広い庭に芝を植えているので、芝刈りが大変なようです。
英国人は、ガーデニングが好きなことで有名です。読書も人一倍好きです。
日本人も読書が好きな国民ですが、残念ながら、広い庭でガーデニングを楽しめる人は少ないので、現在のところ、晴耕雨読は英国人に軍配が上がりそうです。
晴耕雨読の語源・由来は?
「晴耕雨読」は、中国由来の故事成語ではなく、日本で生まれた四字熟語と言われています。由来は、明治時代の中国文学者、塩谷節山(しおのやせつざん 1855~1925)が、彼の詩の中に「晴耕雨読、優游(ゆうゆう)に足る」という一節があり、これが語源となったと言われています。
◯十八史略の故事に似た表現
十八史略の中に「鼓腹撃壌」(こふくげきじょう)という故事があります。天子の堯が、視察のため城下に出ました。その時、一人の老人が言いました。
「日出而作、日入而息、鑿井而飲、耕田食、帝力何有我哉」
この意味は、
「日が昇れば働き、日が沈めば憩う。井戸を掘って飲み、田を耕して食う、帝王の力など私には関係なく、私は自由だ」
という意味です。
毎日の過ごし方「日出而作、日入而息」において、この老人は自由の境地だと言っています。「晴耕雨読」の場合も、日々の過ごし方において悠々とした自由の境地を得るという意味で共通しています。
晴耕雨読の類語・同義語
晴耕雨読の類語・同義語になる言葉は、「晴耕雨読」と同様に、富貴にこだわらず、平和で安定した暮らしの中で、気ままに自由に、何ものにも束縛されない生活を意味しています。
悠々自適(ゆうゆうじてき)・・・のんびりと心静かに過ごすこと。
悠々閑閑(ゆうゆうかんかん)・・・ゆったりと落ち着いたさま。
無事平穏(ぶじへいおん)・・・何事も起きず安全なさま。
閑雲野鶴(かんうんやかく)・・・何の束縛も受けずのんびり暮らすこと。
日々安穏(ひびあんのん)・・・毎日が穏やかに何事もなく暮らすこと。
安穏無事(あんのんぶじ)・・・日々穏やかなこと。
安居楽業(あんきょらくぎょう)・・・住居などに不満がなく仕事を楽しむこと。
昼耕夜誦(ちゅうこうやしょう)・・・昼間は耕し、夜は勉強すること。
無為自然(むいしぜん)・・・無理をせずありのままに生きること。
名利共休(みょうりともにきゅうす)・・・名誉もお金も追い求めないこと
晴耕雨読の対義語・反対語
晴耕雨読の対義語・反対語になる言葉は、次のようなものがあります。俗事に追われ休みなく働かなくてはならない状況の中で、心の余裕もない状態を表す言葉です。
多事多端(たじたたん)・・・仕事が多く忙しいこと。
多事多難(たじたなん)・・・事件が多く、困難なことが多いこと。
多岐多端(たきたたん)・・・いろいろな出来事で忙しいこと。
多岐亡羊(たきぼうよう)・・・逃げた羊を見失うほど多方面なこと。
終歳馳駆(しゅうさいちく)・・・多忙な日々続くこと。
汲汲忙忙(きゅうきゅうぼうぼう)・・・多忙すぎて苦しいこと。
応接不暇(おうせつふか)・・・多忙で対応もできないこと。
東奔西走(とうほんせいそう)・・・東へ西へとあちこち走り回ること。
御用繁多(ごようはんた)・・・公務で忙しい事。
南船北馬(なんせんほくば)・・・絶え間なく忙しく移動すること。
昼夜兼行(ちゅうやけんこう)・・・昼も夜も関係なく、一日中仕事をすること。
晴耕雨読の例文・使い方
「晴耕雨読」を使った例文を以下にご紹介致します。
(1)良寛さんは出家後に小さな庵に住み、村人から五合の米をもらい晴耕雨読の生活をしました。
(2)吉田兼好は官職を退き30歳で出家し、「徒然草」を書きながら、晴耕雨読の生活を楽しみました。
(3)竹中半兵衛は、隠居して晴耕雨読の生活を続けていましたが、木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)が三顧の礼を取り、彼を仕官させることに成功しました。
(4)吉田茂は政界引退後、風光明媚な大磯の邸宅に住みましたが、内外の要人が頻繁に訪れるので、晴耕雨読のような生活はできませんでした。
(5)未来の生活は、ロボットが代わりに働き、私たちは趣味で田畑を耕し、雨の日には読書ができるという「晴耕雨読」の生活が可能になります。
(6)宇宙人には、「晴耕雨読」がありません。なぜなら、宇宙には太陽があっても畑がなく、雨は宇宙空間に降らないからです。
晴耕雨読の英語表現
「晴耕雨読」を英語に表すと下記のような表現になります。
◯英文1つ目
「I am always cultivating fields when it is a sunny day. On rainy days, I devote myself to my books.」
日本語訳:天気が良い時には、私は必ず畑を耕しています。雨の日には私は読書にいそしんでいます。
◯英文2つ目
「Sunny days allow me to cultivate fields. Rainy days allow me to read my books.」
日本語訳:天気の日は畑を耕すことができます。雨の日は本を読むことができます。
◯英文3つ目
「晴耕雨読」は、悠々自適という意味ですが、雨の日に読書することで精神的なレベルアップも意味しています。ご参考までに、W. サマセットモームの言葉もご紹介致します。
「What kind of lifestyle do you want? W. Somerset Maugham said, “To acquire habit of reading is to construct for yourself a refuge from almost all the miseries of life.”」
<語句>
construct:建設する、作る
refuge:危険や脅威から身を守るための避難所、隠れ家
日本語訳:あなたはどんなライフスタイルを望みますか? W.サマセットモームは、「読書を習慣にすることは、人生のほとんどの惨めさから自分自身を救う避難所を作ることになります」と言いました。
読書は、「晴耕雨読」の人生に必須です。
晴耕雨読の生活の意味とは?
「晴耕雨読」の生活とは、大いなる自然の中で、日が昇れば田畑を耕し、雨の日には読書をするという悠々自適な生活を表す言葉です。
世間の喧騒から離れて、人間らしい生き方をする生活をめざす生き方です。どちらかと言うと厭世的な隠遁生活を意味するイメージがあります。しかし、若い人達の「晴耕雨読」は違います。
◯地域おこし協力隊に参加、晴耕雨読の生活
最近、若い人達の中に都会の生活から離れて、農業にチャレンジする人達が増えています。「地域おこし協力隊」から始まり、最終的には移住する計画です。めざす農業は、農薬を使わない有機農業です。
◯晴耕雨読の現代的な意味
高齢化によって休耕地は増える一方です。若い人達が移住し、休耕地を耕作地に再生すれば、安全な農作物を提供することができ、田舎も活性化します。現代の「晴耕雨読」の意味は、積極的に社会との関わり合いを持ち、個人の生き方を充実させる方向に変わりつつあります。
まとめ
日本は、GDPでは世界第3位で豊かな国と見られています。しかし、少子高齢化の時代となり、晴耕雨読の心境で人生を楽しんでいる高齢者は、あまり多く見られなくなりました。国連の「世界幸福度ランキング」では、日本は62位となっています。
それに比べて、世界で一番幸せと言われる国はブータン王国です。主な産業は農業と畜産業、そして観光業などです。GDPは高くなく世界の中では貧乏国と言われますが、食料自給率は高く、食べることに困ることはありません。しかも国民の9割以上が「幸福」と感じています。
晴耕雨読は、お金持ちであるかに関係なく、心の満足を表す言葉です。「幸福とは何か」もう一度考えてみてはいかがでしょうか。