ここでは「ネットリテラシー」について解説します。ネットリテラシーなんて言葉、聞いたことがない、という人も多いでしょう。聞いたことはあるけど意味は良く知らない、という人もいるかもしれませんね。
しかし、インターネット関連のニュースを良く見ている人なら、ネットリテラシーに関る事例をたくさん見ているはずなのです。例えば、フェイクニュースの問題、あるいは個人情報の流出、さらに、コンピュータウイルスやネット詐欺などもネットリテラシーに関係する問題です。
インターネットで起こるトラブルのほとんどはネットリテラシーに関わると言っても良いほどです。さて、ネットリテラシーとはどんなものでしょうか。
ネットリテラシーの意味とは?
ネットリテラシーの意味とは「インターネットを正しく使いこなすための知識や能力」のことです。インターネットリテラシーともいいます。
この説明では、Google ChromeやFirefoxなどのウェブブラウザの使い方を良く知っているとか、便利な裏技をたくさん知っているとかいう意味にもとれます。しかし、ネットリテラシーの中心は「インターネットを通じたトラブルの被害者にならず、知らないうちに加害者にもならずにインターネットを利用する力」です。
ネットリテラシー検定機構では「インターネットの便利さと脅威、ルールを理解し、適確な情報を利用して、よりよい情報発信をすることができる能力」と定義しています。
正確なのでしょうが、ちょっとわかりにくいですね。ざっくりいうと「インターネットで不利益や不愉快に出会わないためのコツ」というイメージです。
ネットリテラシーの類語・同義語
ネットリテラシーの類語・同義語はインターネットリテラシーのほかに「ITリテラシー」「コンピュータリテラシー」「情報リテラシー」などがあります。
リテラシーとはもともとは「読み書き」のことでした。そこから知識や応用力という意味でも使われるようになりました。ネット上の買い物や、SNSへの書き込みなどの操作が正しくできることの他、ネット上の情報が正しく読み取れること、プライバシーや著作権、セキュリティなどに正しく配慮できること、といった能力が含まれます。
コンピュータに関する知識や能力はコンピュータリテラシー、総合的なITに関する知識や能力はITリテラシー、または情報リテラシーです。
ネットリテラシーの使い方・例文
「ネットリテラシー」という言葉を使った例文を紹介します。
・スマートフォンを持つ前に、ネットリテラシーを持つことが重要だ。
・今では、小学校でネットリテラシーについて教えるようになった。
・インターネットのヘビーユーザーだからネットリテラシーが高いとは言えない。
・ネットリテラシーがない会社は情報流出の危険性が高い。
・ネットリテラシーが高いので、情報発信には慎重だ。
・パスワードの管理が甘いのはネットリテラシーが低い証拠だ。
・他人のプライバシーに配慮せずにネットに写真を公開するなんて、ネットリテラシーが低過ぎる。
・彼は悪気はないのだが、ネットリテラシーが低いので迷惑する。
・スマートフォンが急激に普及拡大したので、市民のネットリテラシーの向上が重要だ。
・いわゆる「炎上」が少ないことがネットリテラシーの高さを示している。
・インターネット環境は年々変化するので、持っているネットリテラシーは世代によって違う。
ネットリテラシーが低下する原因
情報流出問題やSNSやブログの炎上など、ネットトラブルのニュースを見ない日はありません。どうやらネットリテラシーは低下しているようです。
内閣府によると、小学生の85%は何らかの形でインターネットにアクセスできる機器を持っているそうです。スマホが普及している上に、インターネットに接続できるゲーム機もあります。このような機器を通じたSNS利用者の低年齢化がネットリテラシー低下の原因の一つと考えられます。
総務省が高校生を対象にしたアンケート調査では、ネットの利用時間の短い人ほどネットリテラシーが低いという結果が出ています。調査の内容は、違法なウェブを見分けたり、不必要なファイルをダウンロードしないなど、セキュリティ対策に関するものでした。
小学生などの低年齢なときは、物事の良し悪しの判断がまだつかないまま使用するため、ネットリテラシーが低いと言われる原因となるのでしょう。高校生の場合は、逆に慣れていない人たちがネットリテラシーが低いと言われる原因となるようです。
ネットリテラシーがない・低い人の特徴
ネットリテラシーがない人の特徴は、全般的に「情報に対して無頓着」であることです。ネット上の情報はクリック一つで簡単に手に入る上に、手に取れるような形も重さもないので、気軽なもの、重要性の低いものと思っているのでしょう。そのため、管理にも発信にも用心がありません。
ネットトラブルに多いのが、間違った情報を拡散させて、関係者に迷惑をかけることです。そういう人の特徴として「すぐに情報をシェアする」ことがあります。検索して見つけた情報をすぐにシェアしてしまうと、結果としてフェイクニュースになることがあります。ツイッターも、すぐにリツイートするのはトラブルのもとです。
もう一つの特徴として「コンピュータやスマホの画面に表示された情報は、耳から聞いた噂話よりも信頼できる」と無根拠に思い込んでいる人も危険です。
こういう人に限って頑固で、自分の間違いを認めようとしないので、しばしば炎上の原因にもなります。
ネットリテラシー欠如によるリスク・炎上事例5個
■1. 瞳に映った景色から住所特定
2019年9月、ある女性アイドルが自宅マンションの入り口でファンの男に襲われる事件が起きました。すぐにアイドルが悲鳴を上げると男は逃げ去りました。男は16日後に逮捕されました。
住所などを公開していなかったアイドルの自宅を男が調べ出した方法が、世間を驚かせました。そのアイドルの顔写真の瞳の中に映っていた風景から、その場所を割り出したというのです。デジタルカメラの解像度が急速に上がってきたために、撮影した人が意図しない情報までもが、写真に入り込んでいたのです。
対策としては、自宅の近くや、場所を特定されて困る場所では写真を撮らない、そういう場所で撮った写真はネットに公開しないようにします。
■2. バイトテロの不適切画像の投稿問題
ある飲食店で、アルバイト店員がゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻す動画をネットに投稿し、炎上したことがあります。その後店舗の場所、店員の高校、名前も特定されて公開されました。
また、関係したアルバイト店員は解雇され、同時に刑事および民事で訴えられました。このような、飲食店、コンビニエンスストアなどのアルバイト店員による不適切画像の投稿は「バイトテロ」と呼ばれ、毎回厳しい処置がなされるのですが、なくなるということがありません。
こういった動画はインスタグラムの「ストーリー」という機能を使うことが多くなっています。ストーリーの投稿は24時間で消えるので、安心するのでしょう。また「友達だけに公開しているから大丈夫」という考えもあるようです。しかし、このような「消える」「友達だけ」のはずの投稿が、いつの間にか広がっていて炎上につながるのです。
■3. 安易なリツイートで加害者に
2019年8月、常磐自動車道で、男性ドライバーが前方車にあおり運転をした後、車を降り暴力事件を振るうという事件が起きました。車に同情していた女も、容疑者を匿ったとして逮捕されました。
事件発生直後、女の逮捕前に「犯人はこの女です」という画像が、個人情報とともにネットに拡散されました。ところがこれは人違い、全くの別人だったのです。犯人扱いされた女性は記者会見を開き、デマを流した人物と拡散した人間を名誉毀損で訴える意思を示しました。
最初に投稿した人はもちろんですが、その投稿を拡散するだけでも名誉毀損などの罪に問われる可能性があります。ツイッターには、他人の書き込みを簡単にフォロワーに流せる「リツイート」という機能がありますが、リツイートしただけでも罪になりかねません。情報を拡散するときには、その内容の正しさを確認するのがネットリテラシーです。
■4. コンピュータウイルスにかかる
コンピュータウイルスは、パソコンやスマホにこっそり入り込んで、悪意のある働きをするソフトウェアです。
ウイルスに感染すると、メールが勝手に送信されたり、重要なファイルが外部に流出したりと、困ったことが起きます。以前は、メールの添付ファイルや、アダルトサイトなどから感染することが多かったものです。
しかし、最近はごく普通のサイトに一般の広告の振りをしてクリックさせようとしてきます。有名な大手のサイトにもこのような広告が紛れ込んでいることがあります。
■5. フィッシングサイトで情報を盗まれる
フィッシングサイトは、銀行や通信販売のサイトにそっくりな偽サイトへ誘導して、パスワードなど入力させてを盗み出す手口です。
大手のネットショッピングの偽サイトから、クレジットカード番号盗むフィッシングサイトも存在します。
ネットリテラシーを身につけるべき重要な理由
インターネットで不利益を被ったり、不愉快な思いをしたりしないためにはインターネットリテラシーが必要です。
インターネットでは誰でも自由に情報を発信することができます。素晴らしいことです。しかし、そのために、間違った情報や嘘の上方法も膨大です。そのため、信頼できる情報や、本当に必要な情報を見付け出す力が必要になります。
また、ブログやSNSにおいて、ユーザー同士のトラブルになることも増えています。インターネットの情報は拡散しやすく、一度公開した情報を取り消すことは困難です。
自分の書き込みによって人を不愉快にさせたり、傷付けたりすることもあります。プライバシーや著作権を侵害したり、重要な情報を流出させたりすれば訴えられるかもしれません。
そういったリスクを回避しながらインターネットを活用するために、ネットリテラシーを身につけることが重要なのです。
ネットリテラシーの教育方法6個
■1. 情報の正確さを客観的に判断する癖をつける
インターネットにあふれる情報の中には、間違った情報が非常に多く混ざっています。思い込みや記憶違いもあれば、悪意のある嘘もあります。
一つの記事を鵜呑みにせず、複数の記事を見比べてみましょう。その情報の出所はどこか、根拠は何か、とさかのぼってみることが有効です。
■2. 拡散された情報は取り消せないことを知る
拡散された情報を全て追跡して消去することはほぼ不可能です。そのため、情報を公開する前には、公開して問題がないかどうかをよく考えてみましょう。
一度投稿してしまえば、誰かにキャプチャや録画され、消せないものとなり、責任が自分にのしかかります。
■3. SNSは広く公開された場であると知る
SNSは匿名で投稿していても、ある程度知識のある人なら、さまざまな方法で個人を特定できる場合があります。
投稿に含まれる場所や持ちもの、衣服などの情報から個人を特定する場合もあります。
公開範囲を制限しているからといって、安易に秘密を書き込んだり、誰かを攻撃するような投稿は止めましょう。特に危険なのは自分自身の個人情報を公開することです。
■4. 公私の別をはっきりさせる
メールやLINEはパーソナルコミュニケーション、つまり個人同士のやり取りで、二人かごく少数の人たちだけの話し合いです。閉じている、という言い方もできる私的なコミュニケーションです。
しかし、TwitterやInstagramなどのSNSは不特定多数の人が見るオープンなコミュニケーションです。公の場と言っていいでしょう。当然、言って良いことと悪いことがあります。
匿名で投稿する場合など、奇妙なほど攻撃的になったり、多くの人が不快になる内容を書き込む人がいます。メールやLINEなどの私的な場との区別が充分についていないのでしょう。
■5. 軽々しくフリーソフトやアプリをダウンロードしない
パソコンのフリーソフトやスマホのアプリはとても便利です。楽しいものもたくさんあります。インストールも簡単です。
しかし、その中にはウイルスが付いている悪質なものもあります。削除も難しい場合が多いので、あまり気軽に良く知らないものをダウンロードしないようにしましょう。
■6. 著作権とプライバシーに注意
漫画や映画、テレビ番組などをアップロードすることはもちろん違法です。著作権の侵害となります。それだけでなく、違法にアップロードされた作品をダウンロードするだけでも犯罪になります。それらの作品を作った人の利益を奪っているということです。
この法律は2012年に強化され、違反すれば刑事事件として逮捕される可能性もあります。
プライバシーもトラブルの原因です。投稿者と一緒に知り合いが映っている写真を本人の許可なく投稿する人がいますが、実はそれは問題なのです。
自分の姿を勝手に公開されない権利は「肖像権」といいますが、そんな法律用語を出さなくても、自分の写真や動画が、自分の知らないところで勝手に公開されたら、いい気持ちはしないでしょう。投稿する前にちょっとその人の気持ちを考えましょう。
ネットリテラシー診断の質問例
以下の質問に正しく回答できるかどうかでネットリテラシーがあるかが分かります。
(1)歌詞の一部なら、SNSに投稿しても問題はないか?
(2)個人で楽しむためなら、違法サイトから漫画をダウンロードしても良いか?
(3)間違ってクリックしたリンク先で「有料ページだから金を払え」という意味の文章が出てきたら、どうすれば良いか?
(4)無料と書いてあるゲームは、一切料金が生じないか?
(5)友人と一緒に撮った写真を投稿したいときはどうすれば良いか?
(6)知ったばかりの情報をすぐにシェア、リツイートして良いか?
まとめ
ネットリテラシーとは「インターネットを正しく使いこなすための知識や能力」のことです。ネットリテラシーが身についていないと、ネット上のさまざまなトラブルに巻き込まれたり、不利益を被ったり、不愉快な思いをしたりします。また、他人に迷惑を掛けたり、場合によっては訴えられることもあります。
インターネットは便利で楽しいものですが、さまざまな危険もあります。そのような危険を意識することが、ネットリテラシーの基本でしょう。