日本には、色々な種類の妖怪がいます。ゲゲゲの鬼太郎や妖怪ウォッチなど、アニメにもたくさんの妖怪が出てきており、恐ろしい存在というより身近でかわいい存在に感じる方もいるでしょう。
妖怪の歴史は古く、神話時代から江戸時代、現代の妖怪まで、いろいろなキャラクターの妖怪がいます。それぞれの妖怪には独特の特徴があり、恐ろしいばかりでなく、中には人を守る優しい妖怪もいるのです。
本記事では、有名な日本三大妖怪をはじめ、マイナーなものから可愛いものまで、40種類の妖怪をイラスト付きで紹介します。妖怪図鑑として楽しんでください。
妖怪の名前一覧(50音順)
※名前をクリックするとその妖怪の詳しい解説にジャンプします。
青頭巾 | 垢なめ | 小豆洗い | アマビエ | 安少啼 |
一反木綿 | 一本だらら | 海坊主 | ||
お歯黒べったり | 隠神刑部 | 河童 | 髪切り | 唐傘小僧 |
烏天狗 | 口裂け女 | 蜘蛛息子 | 小町のどくろ | 座敷童 |
酒呑童子 | 神社姫 | 崇徳天皇 | ダイダラボッチ | 玉藻前 |
提灯お岩 | 照兜魚 | 鵺 | ぬらりひょん | |
ぬりかべ | 猫又 | のっぺらぼう | 人さらい地蔵 | 一つ目小僧 |
山爺 | 山姥 | 夜道怪 | 雪女 | ろくろ首 |
妖怪とは
妖怪とは、人間の理解を超えた怪奇現象、奇怪な物体のことです。「妖(あやかし」や「物の怪(もののけ)」とも呼ばれます。
昔から、人知を超えた物事や災いなどが起きたとき、それを妖怪の仕業と認識することで、不思議な現象の発生を納得させてきたのです。
また、日本では古来から、「八百万の神」のように、万物全てに神や精霊が宿ると考えられてきました。妖怪もそれと同じで、人間の身近なところに住まう不可解な生き物、物体として扱われています。
日本の有名な妖怪
まずは、日本の有名な妖怪について解説します。妖怪にも様々な種類が存在しますが、古くから日本に根付いている「日本三大妖怪」と「日本三大悪妖怪」を見ていきましょう。
■日本三大妖怪(三種族)
日本の三大妖怪は、「鬼」「河童」「天狗」の3種族です。これに「狐」と「狸」を加えて「日本五大妖怪」と定義する説もあります。
■日本三大悪妖怪
日本三大悪妖怪とは、日本の民話・伝説に登場した妖怪の中でも、特に非道な厄災や被害を人々にもたらしたとされる妖怪です。
【妖怪図鑑】妖怪の種類一覧
次は、40種類の妖怪について詳しく解説した「妖怪図鑑」を見ていきましょう。日本の妖怪は、有名なものからマイナーなもの、人を守る妖怪や可愛い妖怪まで様々です。
各妖怪の起源やエピソードなどをイラストや画像と一緒に紹介します。
青頭巾
青頭巾は、栃木県に伝わる妖怪です。大中寺というお寺に真面目な僧侶が住んでいました。身の回りの世話をしてくれる稚児(ちご)と呼ばれる小僧を大変可愛がっていました。
ところが、この稚児が突然、病で亡くなってしまいました。僧侶は、「なぜ運命は稚児の命を奪ってしまったのか、仏の慈悲はないのか」と嘆きました。その悲しみと恨みは、底の見えない谷のように深く、とうとう発狂してしまいました。
葬式も出さず、稚児の腐った肉を食べ、骨を舐めるなど、異様な可愛がり方を続けました。その結果、僧侶は妖怪となり、村人を襲うようになりました。
妙慶禅師(みょうけいぜんじ)は、村人からこの話を聞き寺に向かいました。寺では恐ろしい妖怪が待ち構えていました。妙慶禅師は、ひるむことなく法力を使い、妖怪となり果てた僧侶に青頭巾を被せて成仏させました。
垢なめ
垢なめは、古い風呂屋や荒れた屋敷に棲む妖怪とされています。足に鋭い鉤爪(かぎつめ)があり、ざんぎり頭で、頭髪はバラバラで短く、人々が寝静まった後、風呂場に忍び込んで、長い舌で、「ピタピタ」と音を立てて、垢をなめると言われています。
「垢ねぶり」とも呼ばれています。垢をなめる以外に悪いことをする妖怪ではありませんが、人々は妖怪が風呂場に現れるのを恐れて、風呂場を綺麗に洗い、垢をためないようにしました。
小豆あらい
小豆あらいは、ショキショキと音をたてて川で小豆を洗うとされる妖怪です。全国に広く知られる妖怪で、地方によって名称が変わります。「小豆とぎ」、「小豆アゲ」、「小豆ごしゃごしゃ」などの別称があります。
江戸時代、越後の国(にいがたけん)の法華宗の寺にいた日顕(にちげん)という少年の僧がいました。小豆の数を数えるのが得意で、一升の小豆を正確に数えることができる聡明な少年でした。
それを妬んだ仲間の円海(えんかい)という僧が、日顕を井戸に落として殺してしまいました。その夜から日顕は妖怪となり、井戸の中から奇妙な声と共に小豆を寺の雨戸に投げつけるようになりました。
アマビエ
アマビエは、九州に古くから伝わる妖怪です。海中から光を放射して豊作や疫病に関する予言をすると言われています。
熊本県の海の沖合に光を発するものが現れ、役人が調べに行くと、アマビエが現れて、「今年から6年の間、豊作が続くが、疫病も流行る」と予言しました。
アマビエの話によると、アマビエの姿を描いたものを家に貼ると疫病から逃れることができると言われ、役人はアマビエの姿を紙に写し取り、人々に配りました。
上記の話から、コロナウイルスが流行した際に、疫病退散のご利益があるとSNSなどで話題になりました。
安少啼
安少啼は、頭と手足は鳥、手には鉄の輪を持ち、額には矢が突き刺さっています。安少啼は、幼くして殺された美しく鳴く鳥のことを意味しています。
この世に恨みを残して妖怪になったものです。安少啼の霊魂は、美しい母の姿を求めて、この世をさ迷います。
安少啼は美しい女性を見つけると母だと思い離れません。そのため安少啼の夢を見た女性は、彼の悲しみを受けて重い病気になると言われています。
一反木綿
一反木綿は、アニメの世界の妖怪としても有名です。鹿児島県を中心に西日本に伝わる妖怪です。一反の長さは、約10メートルあります。夜になると空をフワフワと飛び、人の首に巻き付き窒息死させる恐ろしい妖怪です。
ある晩、ひとりの侍が家路を急いでいたところ、白い布が飛んできて首に巻き付き絞め殺そうとしたので、刀を抜いて切りつけたところ、布は消えてしまいました。
現在でも、福岡県で新幹線から猛スピードで飛ぶ一反木綿が目撃され、兵庫県ではUFOビデオ撮影友の会が、六甲山上空に飛ぶ一反木綿のような飛行物体を撮影しています。
一本だらら
奈良県、和歌山県などに伝わる妖怪です。「ひとつだたら」とも呼ばれます。雪の上に一本足で立ち、目が皿のように大きい妖怪です。
師走(しわす)と言われる旧暦の12月の20日に現れ、人間に危害を与えると言われています。そのため、この日は「果ての二十日(はつか)」という厄日(やくび)になっていました。
牛鬼
牛鬼は、主に西日本に伝わる獣の妖怪です。頭が牛で、身体が鬼という形や、反対に頭が鬼で身体が牛という場合もあります。
近畿地方や四国地方では、山間部の湖や沼などに現れるので、「牛鬼淵」とか「牛鬼滝」という地名が多く残っています。
東京の向島(むこうじま)にある牛島神社には、牛鬼が「牛玉」という玉を残したという伝説があります。また、この神社は狛犬の代わりに狛牛(こまうし)が置かれています。境内に鎮座する「撫で牛」をなでると病気が治ると言われています。
海鹿
海鹿は、鹿児島県の屋久島(やくしま)に伝わる妖怪です。南海に棲む海鹿は、漁師たちに大変恐れられていました。
旧暦の5月16日は、神様の行事がある日で、仕事を休む風習になっていましたが、漁師たちは船を出し、たくさんのカツオを釣り上げました。そこへ突然大きな黒い影が海上に現れました。
「海鹿だ」と漁師たちは叫びました。帆を上げて全速力で走る船を海鹿は追いかけてきました。せっかく獲ったカツオを海に撒いて、海鹿の注意をそらしながら、なんとか港に戻ってきました。
この事があってからは、毎年5月16日は漁に出ず、海の神様にお供え物をして感謝の宴を開くことにしました。
海坊主
海坊主は、海に住む妖怪です。海の中から現れる黒い大きなタコのような頭をしています。東北地方では、漁で最初に獲れた魚を海の神に捧げる風習があります。それを怠ると海坊主が出てきて船を襲うと言われています。
現代では、1971年4月に、宮城県の漁船がニュージーランド沖でマグロ漁をしていたところ、海から大きな生物が現れました。頭の大きさは数メートルあり、目が大きく、鼻や口はなく、海中から船を襲おうとしていました。船員がモリで突くと、海坊主は逃げていきました。
お歯黒べったり
お歯黒べったりは、女性の妖怪です。江戸時代の書物に出て来るお歯黒べったりは、目も鼻もなく大きな口だけが顔にある妖怪と書かれています。大きな口を開くと「お歯黒」の歯を見せて驚かせます。
そのため、「のっぺらぼう」と同じく、人に声をかけさせて、振り向いた時に驚かせるのが、この妖怪の特徴です。源氏物語の「手習い」にも「昔いたという目も鼻もない女鬼(めおに)」という記述があります。
隠神刑部
隠神刑部は、伊予国(いよのくに)、現在の愛媛県に伝わる狸の妖怪です。隠神刑部は、四国最強の神通力を持っています。松山藩の守護神として松山藩の城主にも認められ、「刑部」(ぎょうぶ)という役職名をもらいました。
江戸時代、享保(きょうほ)の大飢饉(だいききん)が起きて、松山藩の御家騒動が起きました。隠神刑部は城代家老の奥平久兵衛(おくだいらきゅうべえ)の謀反側に利用されてしまいました。
謀反は失敗し、隠神刑部は、捕らえられて久万山(くまやま)に封じ込められました。奥平久兵衛は殺され、お家騒動は終わりました。
河童
河童は日本の妖怪、或いは未確認の伝説上の動物と言われています。和名の「かっぱ」は、「かわ(川)」と「わらわ(童)」が合わさり、「かっぱ」となったと言われています。
体格は子どもぐらいの大きさで、全身緑色をしています。頭の上に皿があり、渇いたりすると元気がなくなります。背中に甲羅があり、手足には水かきがあります。
キュウリが大好物なことから、キュウリを巻いた寿司をカッパ巻きと言います。河童はもともと水神(すいじん)でしたが、落ちぶれて水の妖怪となりました。キュウリは水神への供え物でした。
髪切り
髪切りは、人間の頭髪を秘かに切ると言われる妖怪です。江戸時代の説話によると、元禄時代に男女が夜中に道を歩いていると髪を元結(もとゆい)から切られる事件が多発しました。
明治時代にも、東京都本郷で同じような事件が起きました。女性が夜中に家のトイレに行くと、突然髪を切られたので、驚いてそのまま気絶してしまいました。
唐傘小僧
唐傘小僧は、傘の妖怪です。唐傘とは、和傘の総称で、蛇の目傘や番傘、紅葉傘があります。捨てられた唐傘が恨みの力で妖怪になったものとされています。
一つ目で長い舌を持つ傘が一本足で飛び跳ねます。お芝居やアニメの登場する大変有名な妖怪です。
烏天狗
烏天狗は、山伏の衣装を着て、カラスのような嘴(くちばし)と顔をしている妖怪です。剣術と神通力に優れているので、幼少の牛若丸を鞍馬山で剣術や戦略を教えたと言う伝説も残っています。
烏天狗は、もともとはインド神話に登場する神の鳥ガルダから仏教を守る迦楼羅天(かるらてん)となったものとされています。そのため、人に害を与えることはなく、人を守る妖怪と言われています。
口裂け女
昔から現代に至るまで、実際に出没している妖怪です。福島県、神奈川県、北海道釧路市、埼玉県などでは、口裂け女が出たという連絡を受け、パトカーまで出動しました。
目は狐のようで、声は猫に似ています。身長は2メートルを超える大柄です。真っ赤な服、或いは真っ白な服を着ているという噂があります。いろいろな刃物を隠し持っているので危険です。口裂け女に出会ったら、食い殺されてしまうので逃げるしかありません。
蜘蛛息子
蜘蛛息子は、岩手県遠野(とおの)に伝わる妖怪です。蜘蛛息子は人を守る妖怪です。ある村に貧乏な家に父と娘が住んでいました。ある日、娘は山で若い青年に遭いました。それがきっかけで、若者の子どもを宿しました。
父親に相談し、子どもを産むことにしました。生まれた子どもは、上半身は人間で下半身は蜘蛛のようでした。ある時、村の長者の娘が重い病気になり、医者に診てもらいましたが悪くなるばかりです。
蜘蛛息子は、山の湧き水で病気が治ることを長者に伝えました。その通りにすると病気はたちまち治りました。蜘蛛息子は大評判となり、多くの人々に治療法を教えたので、人々から感謝され、貧乏だった父と娘の家は、大いに豊かになりました。
小町の髑髏
小町の髑髏は、平安時代の絶世の美女と言われた小野小町(おののこまち)の髑髏(どくろ)の妖怪です。小野小町の晩年は不明で小町の墓が各地にあります。
有名な歌人の在原業平(ありわらのなりひら)が奥州に旅行をした時に、野原から声がして、「秋風の吹くにつけても、あなめあなめ」(秋風が吹くと目が痛い)という歌の上の句が聞こえました。人の姿はなく、野ざらしの髑髏(どくろ)が見つかりました。
村の人に聞くと、小野小町の髑髏だと言います。業平は哀れに思い、「小野とは言わじ、薄(すすき)生いけり」(この髑髏をあの美しい小野小町と言うのも忍びない。目には薄が生えているのだから)と下の句をつけて、厚く弔ったと言います。
座敷童
座敷童子は、主に岩手県に伝わる妖怪です。家に現れてイタズラをしますが、見た人には幸運が訪れ、また座敷童子の出る家は財に富み繁栄すると言われています。座敷童子の姿は、家の者以外には見えませんが、子どもには見えます。
白い座敷童子は幸運をもたらしますが、赤い座敷童子は不幸をもたらすと言われています。家によっては、子ども部屋を作り、子どもの喜びそうなものを置いて、座敷童子を呼び込むようにしています。
酒呑童子
酒呑童子は、京都市と兵庫県にまたがる丹波(たんば)の国に大江山という山があります。そこに棲む恐ろしい妖怪が酒呑童子です。夜の都を荒らしまわり、多くの娘たちを誘拐しました。天皇の命を受けた源頼光たちは山伏に化けて、大江山に登りました。
酒呑童子の隠れ家に着くと、「酒を持参したので、どうぞお飲みください」と大量の酒を飲ませて、酔ったところを退治しました。酒呑童子の首は、京都の首塚大明神に祀られました。この神社は首から上の病気にご利益があると言われています。
神社姫
神社姫は、人魚と同類の妖怪と言われています。長さは約6メートルあり、角と人の顔を持ち胴体は魚のような妖怪です。
ある時、肥前(佐賀県)の国の浜辺に神社姫が現れました。「私は龍宮の使者です。7年の豊作がありますが、コロリ(現在のコレラ)が発生するので、私の姿を描いた絵を持っていれば病気にならない」と言って消えてしまいました。人々は、コロリの恐ろしさから、争って神社姫の写し絵を買い求めたと言われています。
崇徳天皇
崇徳天皇(1119~1164)は実在の人です。死後、妖怪となりました。父親の鳥羽天皇の譲位によって、満3歳で崇徳天皇となりました。ところが、22年後に鳥羽上皇から無理やり近衛天皇に譲位することを強いられました。
このことが後の保元の乱(ほうげんのらん)となり、崇徳上皇は戦いを始めましたが敗北し、讃岐(さぬき)の地に流刑となりました。経文を写したものを朝廷に贈り、京の寺に納めて欲しいと願い出ましたが、呪詛(じゅそ)が込められていると疑いをかけられて、送り返されてしまいました。
怒りに狂った崇徳上皇は、日本国の大魔王となり、天皇を滅ぼすと誓い、夜叉の如く恐ろしい鬼となったと言われています。
ダイダラボッチ
ダイダラボッチは、古くから日本の各地に伝わる妖怪です。山や湖などを作った大巨人と言われています。語源は大男を意味する「大太郎」と「法師」を組み合わせたもので、「大太郎法師」がもとになっています。
ダイダラボッチが作ったものとして、「富士山」、「琵琶湖」、「榛名湖」、「浅間山」、「筑波山」などがあり、その他にも全国にはダイダラボッチが作った山々や湖や沼がたくさんあります。
玉藻前
玉藻前とは、平安時代の鳥羽上皇の愛した女性でしたが、狐の妖怪と言われています。幼い時に藻女(みくずめ)と呼ばれ美貌であったので18歳で宮中に仕えました。鳥羽上皇に仕える女官になってから玉藻前と呼ばれるようになりました。
その後、鳥羽上皇が病に倒れ、陰陽師(おんみょうじ)の安倍泰成(あべのやすなり)が、玉藻前が九尾の狐(きゅうびのきつね)と見破ったので、宮中を逃げ出し行方不明となりました。
追討軍が出て退治され、玉藻前は、「殺生石」となりました。この石に近づくと生き物は死ぬと言われています。
提灯お岩
提灯お岩は、江戸時代の浮世絵師の葛飾北斎(かつしかほくさい)が描いた「お岩さん」という絵に描かれています。破れた提灯の不気味さと恐ろしいお岩さんの顔に模して描かれています。
お岩さんは江戸時代の実在の女性です。夫の田宮伊右衛門が、上役の娘と浮気をして子どもができてしまいました。そのことを知ったお岩さんは発狂してしまいました。そのため、お岩さんの祟りで田宮家の者18名が次々に死にました。
於岩稲荷田宮神社(おいわいなりたみやじんじゃ)は、お岩さんを祀った神社として有名です。歌舞伎で、「東海道四谷怪談」を演じる時は、祟りがあるといけないので、必ず歌舞伎俳優の方々はお参りに行きます。
土蜘蛛
土蜘蛛は、日本を「魔界」にしようとする妖怪です。「大蜘蛛」、「山蜘蛛」とも言います。「平家物語」に出て来る「土蜘蛛」は、源頼光(みなもとのよりみつ)が寝ているところに、土蜘蛛が現れて殺そうとしましたが、頼光が刀を抜いて切りつけたので、土蜘蛛は逃げ去りました。
翌日血痕をたどると北野神社の裏に土蜘蛛が倒れていました。頼光たちは土蜘蛛を鉄串に刺して河原にさらしました。都の人々は、これを見て安心し頼光の働きを褒めたたえました。
照兜魚
照兜魚は、魚の妖怪です。江戸時代、出雲の国の説話に、魚の妖怪の話があります。大谷甚内(おおたにじんない)という武士は、子どもが無かったので、大神山神社が子授けのご利益があると聞き、夫婦でお参りした結果、女の子を授かりました。
実は、この女の子は照兜魚という名の魚の妖怪でした。16歳で縁談が持ち上がりましたが、赤松池に飛び込んでしまいました。
彼女は甚内に手紙を残して、「私は大神山神社の使いの照兜魚です」と言い、両親に感謝して結婚できない理由を書き残しました。甚内は、赤松池のそばに神社を建て、照兜魚を祀ったと言われています。
鵺
鵺の妖怪は、姿は、猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇とされています。もともとの鵺は、キジに似た鳥ですが、寂しげな鳴き声が不吉とされ、天皇や貴族たちは、この鵺の声が聞こえた時は祈祷をしてお祓いをしたと伝えられています。
「平家物語」には、源頼政(みなもとのよりまさ)に鵺退治をした話が出ています。大きな鵺が清涼殿の屋根の上にいて黒煙を吐きながら暴れていました。頼政は弓矢で退治し、鵺の死骸を塚に埋めましたが、明治時代に、塚が壊され鵺がよみがえり祟りが復活したと言われています。
ぬらりひょん
「ぬらりひょん」は、とらえどころが無い妖怪と言われています。妖怪の総大将とも言われていますが、特徴的な禿げ頭の老人で、着物や袈裟(けさ)のようなものを着ています。
「ぬらりひょん」の由来は、はっきりしていませんが、遊女がたくさんいる遊郭(ゆうかく)通いに狂った放蕩者とも言われています。「ぬらり」という言葉は、「ぬらりくらり」とつかみどころがない者を意味していますが、「ひょん」が奇妙な者を表しているので、つかみどころがない化け物という意味となりました。
家に現れても特に悪いことをするわけではないので、お茶や御菓子などをあげていると自然に出ていくと言われています。
ぬりかべ
ぬりかべは、九州北部に伝わる妖怪です。夜間歩いていると、見えない壁で邪魔をします。大分県では動物などが起こす怪奇現象と言われ、目の前が真っ暗になるというものもあります。
「狸のぬりかべ」とか、「イタチのぬりかべ」とか呼ばれています。ぬりかべに遭ったら、慌てずにタバコを吸って待っていると自然にいなくなると言われています。現代では、アニメの世界で人気のキャラクターです。
猫又
猫又は、年齢を重ねた猫が妖怪になったものです。山奥に棲み人を襲う獣の妖怪と言われています。
外見は猫ですが、身体はライオンや豹ぐらいあり、鳴き声も大きく恐ろしく、山中に響き渡ります。尾が2本あり、魔力を持ち人間に化けたり、死者をよみがえらせたりすることができます。
性格は多種多様で、凶暴なものもいますが、元の飼い主に恩返しする猫又もいます。猫を殺すと7代まで祟ると言われています。
のっぺらぼう
のっぺら坊は、顔に目や鼻、口のない顔を持つ妖怪です。古くからいる妖怪で、源氏物語の「手習」(てならい)の記述の中に「昔いたという目も鼻もない女鬼(めおに)」という言葉が出てきます。
近代においては、小泉八雲(こいずみやぐも)の「怪談」にも登場する妖怪としても知られています。小泉八雲は、本名がパトリック・ラフカディオ・ハーン(1850~1904)というギリシャ人で、日本の民俗学の研究に貢献しました。1896年に日本国籍を取得しました。
人さらい地蔵
ひとさらい地蔵は、鳥取県の伝説にある妖怪です。その伝説によると、ある村で化け物が人をさらうので困っていました。
ひとりの猟師が退治しようと、農家に潜んで待ち構えました。化け物が現れたので猟師は発砲しました。外に倒れていたのは、血だらけの地蔵でした。地蔵は、「このあたりの人たちは信仰心がなく、地蔵も放置されたまま汚れ放題になっている。人をさらって改心させようとした」と言いました。
それを聞いた村人は、立派なお堂を建てて供養したところ、さらわれた人々が全員村に帰ってきました。
一つ目小僧
一つ目小僧は日本の妖怪で、額の真ん中に目が一つだけある坊主頭の子どもの姿をしています。特に悪さをするような妖怪ではなく、突然現れて人々をびっくりさせることが楽しみとしている妖怪です。大好物の食べ物として豆腐(とうふ)があります。
一つ目小僧の由来として、山の神が、もともと一つ目であったという言い伝えが残っていることから、一つ目小僧は山の神の落ちぶれた姿であると言われています。
山爺
山爺は、一つ目、一本足の老人の姿をした妖怪です。高知県をはじめとする四国地方に伝承されています。身長は90センチから120センチほどの高さがあり、全身にねずみ色の短い毛が生えており、本当は二つ目ですが片方が大きく片方が小さいため一つ目に見えます。
イノシシなどを食べるくらい頑丈な歯を持っているので、猟師は山爺を手なずけて、オオカミを追い払うのに使っていたと伝えられています。
性格は山姥にくらべると大人しく人に騙されるという話もあります。正月に現れた時に、餅を食べさせると、その年は豊作となると言われています。
山姥
山姥は、山奥に棲む老婆の妖怪です。昔の旅は、山を越えて行く旅は野宿もしなければなりません。山姥は綺麗な女性に化けて、そうした旅人を家に誘い込み、安心させて寝入った所を、夜中に殺して食べてしまうという恐ろしい妖怪です。猟
師が鉄砲で退治しようとしたところ、発砲した弾丸を手でつかんだという伝説も残っています。しかし、高知県では、山姥が家に入ると、その家は急に富むという伝説が残っています。
夜道怪
夜道怪は、埼玉県に伝わる妖怪です。姿は白装束に白足袋、草鞋(わらじ)、行灯(あんどん)を持ち、人家の裏口や裏窓から入ってくると言われています。
姿かたちが高野聖に似ているため、高野聖を夜道怪とした地域もありますが、多くは偽者で、高野聖の装束を着て、品物を売りつけた者や、法力などがあると脅し、金品を盗るなどした者が夜道怪と呼ばれていました。
雪女
雪女は、東北や北陸などの雪の多い地域に伝えられる雪の妖怪です。雪の降る晩に白い着物を着て現れ、人間の命を奪います。
岩手県遠野地方の雪女は、小正月の夜や満月の夜に子どもをたくさん連れて来ます。青森県西津軽郡の雪女は、元旦に現れ初めの卯の日に帰ります。新潟県では、人間を凍死させます。産女(うぶめ)と同一視するところもあり、「赤ん坊を抱いてくれ」と言って現れます。
ろくろ首
ろくろ首は、日本に伝わる妖怪です。ろくろ首には、首がのびるものと首が抜けるものの2種があります。姿かたちは人間と同じですが、夜遅く首が長く伸びるという妖怪です。「落語」の「ろくろ首」のお話を聞いた方もいらっしゃるかもしれません。
御隠居さんが、男の人に勧めた縁談とは、若くて綺麗な女性でしたが、結婚式が済んだ夜中に女性の首が伸び出しました。男は驚いて家を飛び出し、御隠居さんの家の戸を叩き、「首が伸びた」と叫びます。
男はなだめられて、戻ることにしました。男は心配して、「嫁さんは怒ってないでしょうか?」と聞くと、御隠居さんは、「いいや、首を長くして待っているよ」というオチで笑わせました。
まとめ
日本の妖怪の種類を一覧にて紹介しました。
妖怪と聞くと恐ろしい印象がありますが、由来やエピソードを知るとその妖怪の違った一面を発見できます。
また、かわいい、かっこいい妖怪や人々を守る優しい妖怪など、色々な役割の妖怪がいることも興味深いです。
日本古来から根付いている妖怪について、ぜひ色々な観点から調べてみてください。