家族の中で特定の人にだけ吠えるという場合は、普段、犬が家族という”群れ”の中で、一人ひとりをどのように捉えているかの違いで決定されます。
飼い犬と家族の関係で、よくあるシチュエーションを解説しながら、その原因と対策を考えてみましょう。
犬が特定の家族に吠える理由5個
■1. 飼い犬のほうが序列が高い
犬と飼い主さんの距離感が大変近いのは、「犬は大切な家族」で好ましいことです。もともとそんなに犬好きでなくても、犬を迎い入れ飼い始めた人なら誰もが思うことでもあります。
ただ犬と人間の思いは同じではありません。犬を飼うというのは、”見知らぬ子を迎い入れて養子にする”のと似ています。その子の本当の家族は、その犬の生みの親と兄弟ですが、犬を飼う家族の皆さんは、”養子”という形で、赤の他人の子供を預かっているということに近いのです。
子犬でも自分の本当の親か兄弟、姉妹かは見分けが出来るものですが、犬の家族とは”群れ”です。飼い犬が成長して、大人の犬に近づいた時、周囲がもてはやし、褒めちぎって、少々の失態は笑って済ませるような日々が続けば、大人になったその犬は、群れという家族のトップになることもあります。
兄弟や親と子で序列があるように、犬にとって群れの序列は大変重要です。この立場が不明瞭な場合、群れという家族のトップは、その犬となり、犬の都合で吠えられたり、機嫌次第で犬の態度が変わるようになったりしてしまうのです。
■2. 気分で飼い主の態度が違う
”気分屋の飼い主さん”というのは、非常に厄介です。初めて犬を飼う場合に、「子犬が可愛かったから」「寂しいから」という理由で飼い始めてしまったケースもあるでしょう。心と経済的余裕があれば、子犬を飼うことは出来ます。
しかし犬が成犬になって、自分の想像とは思わぬ結果になることはよくあります。子犬を見て可愛くても、今後5年以上、長い場合は10年近く付き合う相手なのです。
人の親と同じように、犬の親も一生懸命かつ冷静に子育てを無言で、常に態度も同じで粛々と行っていくものです。
しかし、人の場合、「今は静かにしてほしい」「今はかまってられない」など、その時々で自分の都合を優先し、態度が変わるケースがあります。
そうすると犬の態度は常に同じでも、人の都合は犬には理解できず、その都度、人の顔つきや態度が変わって、同じ行動なのに怒られたり、嫌がられたりしてしまい、犬がその人に不信感を抱くようになります。
■3. 嫌なことをされる
過去に嫌なことをされたり、犬が嫌な行動をよくする相手には、犬が苦手意識を持ってしまい、吠えるようになります。
例えば、怖い経験をさせられたり、お風呂や病院などの嫌なことをさせられたりなど。
その他には、幼い子供の場合、犬への態度が物に近い接し方になることがあります。大人であれば犬にも感情があるだろうと想像できますが、子供の接し方は時に乱暴です。
犬の成長は人間よりも短期間であるため、家族の中に幼い子供がいる場合は、犬が嫌がる様子がないかをよく観察して、子供に犬への接し方をよく教えておいたほうがでしょう。
■4. 家族間のトラブルが多い
飼い犬の感情が落ち着かなくなる背景の一つに、その犬が飼われている家庭の確執や家族同士のトラブルがあります。
野生の犬の群れでもケンカやいざこざはよくあるものですが、犬には人の怒鳴り声は、何を意味するのか理解できません。
こうした”群れ”全体の様子の変化に、犬は特に敏感です。大きな怒鳴り声、ケンカ、そういったトラブルは”群れが危険に晒されている”という合図になります。
家族がケンカしている時に、犬が落ち着かなり、吠える回数が増えるというのはよくあります。仲裁しようというよりも、不安に駆られて吠えている感じです。
家庭内がいつも平穏だとは限らなくても、飼い犬の見える場所、聞こえる場所での怒鳴り合いは良くありません。落ち着いて家族同士の冷静な話し合いを犬に見せるほうが、犬は安心します。
■5. 犬の顔をあまり見ない
盲導犬などの使役犬が相手を見極める動作としてよく知られているのは、「人の顔をよく見る」という動作です。犬は眼をよく観察して、相手の感情を読もうとしますので、散歩中でも頻繁に飼い主さんの顔を見ています。
このアイコンタクトが、犬にとっての会話です。しかし、大切なこの会話を、スマホ画面や人との雑談に費やしている人は、意外に多いのではないでしょうか?
犬も自分に関心を寄せてくれる人を、とても好きになる傾向が強いです。しかし、どんなに眼で合図を送っても、常に無視し続けていれば、犬にとってその人は仲間ではありません。ちょっとしたことで、犬はその人を嫌がるようになり、吠える場合もあります。
犬が特定の家族に吠える時の対策・対処方法5個
具体的に、家族の特定の人に対して吠えてしまう場合の、正しい犬との接し方を解説します。この方法は、成犬で犬を引き取って、あるいは保護犬を世話する際にも、とても役立ちますので、参考にしてみてください。
■1. 笑顔で見つめて距離を縮める
まずは、どんなに吠えられても、視線は犬の眼に向け、笑顔で見つめるだけでも犬は徐々に落ち着きます。笑顔というのは、犬にとっても警戒心を抱きにくい表情なのです。
声を出して笑うのではなく、微笑みだけで充分です。吠えたら笑顔というのを繰り返すと、人が犬を怖がっていないことが分かり、犬は安心して近寄ることができます。
次に、笑顔で見つめて、吠え方に少し変化が出てきたら、少しずつ犬との距離を縮めます。すぐ歩いて近寄るのではなく、1歩近寄っては立ち止まって座り、犬の目線に合わせるといったことを繰り返します。
この行動を「相手は仲良くなろうとしている」と犬は捉えるのです。初日はダメでも、これを2〜3日、または一週間続ければ、犬の手前まで近づいても犬が逃げなくなります。
そして、ようやく犬に近寄ることができても、いきなり犬の体を触ってはいけません。自分の手などを見せて、犬の鼻の近くに持っていき、様子を見ます。
ほとんどの犬は、ここで恐る恐る匂いを嗅ごうとするので、クンクンとやりだしたら、犬の心はかなり落ち着いて、警戒心を解いていることになります。
■2. 一緒に遊ぶ・散歩に行く
犬との信頼関係を作るために、一緒に遊ぶ時間を作るようにしましょう。日頃からコミュニケーションが取れていれば、犬の態度も変わります。
また、散歩に行くことも大切です。仕事などで忙しい方は、休日に運動代わりに散歩に行ってスキンシップを取ってみましょう。
■3. 犬が嫌な行動をやめる
犬が嫌がる行動は何なのかを把握し、その行為をやめるようにしましょう。
病院に連れて行くなど、ときには嫌がることもしなければいけないですが、嫌な行動のときだけ対応する存在にならないようにしてください。
■4. 香水などの匂いを付けない
犬と接する時に、特によく吠えられる人には、動物特有の体臭の他に香水や柔軟剤の香り、芳香剤、タバコの匂いがついている場合があります。
たとえ人にとっては良い香りでも、犬の嗅覚は人間の10万倍近くも敏感に出来ているので、かなり強烈な匂いです。吠えられる人は、こういった香りをまとっている場合があります。
■5. 犬と接する時の態度を統一する
犬から見られていることに気が付かず、感情的になる言動が多いという場合があります。家の中で犬を飼育していると、家族では感情が入って声のトーンもいろいろですよね。
その中でも、ひときわ声が大きい、あるいは太くまるで怒鳴り声のような会話というのは、犬は嫌がります。犬はやや高い、明るい声にはよく反応するので、犬に声をかけるときは声のトーンも少し工夫すると良いです。
犬が特定の人を噛む理由と対処方法
犬が人を噛むのは、犬にとって命がけな行動です。それ以上の仕返しもあるかもしれないからです。噛まれたという人は、その前後の自分の言動を思い直してみるといいでしょう。叱り方が暴力的だったり、言うことを聞かないからと激しく怒鳴ったりしていないでしょうか。
噛まれてしまったら、まずはそのケガを消毒しましょう。そして犬の眼をみてはいけません。仲直りしようと、距離を詰めるのは危険です。犬の興奮が収まるまでは、時間をかけて待つのが良いでしょう。
成長途中の若い犬では、歯が生え揃うまでは人の手をよく噛むことがあります。この場合は、犬の顔に手を出さないようにするだけで対処できます。
旦那が帰ってくると吠える理由と対処方法
喜んで吠えている場合も考えられます。犬は興奮すると、行動が不規則になり、ウロウロしたり、時々吠えたりします。
旦那さんが帰宅するときに、車の音、玄関の物音など、なにかしら合図はあるので、それに反応しているのです。そんな旦那さんでも、家の中で過ごしてるときは犬が吠えないのは、その人が犬には見えているからです。
その他には、突然旦那さんが帰ってきたときに、慣れておらず、吠えることがあります。その場合、旦那さんが帰宅する時間には、犬が玄関先で待つという「習慣」を身に着けさせると良いでしょう。
家族が席を立つ・動くと吠える理由と対処方法
これは、前触れのない物音が関係しています。生活音がやけに大きくなっていませんか?「ドン!」「バタン!」「ドサッ!」と動作が乱暴になっていないでしょうか。
犬は暮らしている中では、ほとんど物音を出しません。
生活音が大きい場合は、ドアの隙間にクッションを付ける、椅子の足に緩衝材を挟む、カーペットを敷くなど様々な工夫をすると良いでしょう。生活音を極力少なくすると、犬が生活音でビックリして吠えることはなくなります。
まとめ
犬との暮らしは、いろいろな楽しい思い出を作ってくれます。犬と良い関係を築くには、まず犬の本能や犬の感覚をよく理解する必要があります。どれも小さな工夫ですので、試してみてください。