出勤困難症や出社拒否症という言葉を耳にしたことがありますか?会社に行きたくないというその気持ちやあなたの生活パターンは、だらしがないのではなくこういった症状のせいかもしれません。
今回は、出勤困難症や出社拒否症とはどういうものか、原因や症状のチェック、対策などを解説していきます。
どうしても朝になると仕事に行けない…
朝目が覚めると、「仕事に行きたくない」「会社に行くのが面倒だ」と思うことはありませんか?誰しも面倒な案件があったり人間関係がイヤだったり、忙しかったりなどの理由から会社に行きたくない日、仕事が面倒な日というものは少なからずあるものです。
しかし、ストレスや過労などであまりにもそれが続くと、仕事に行きたくないせいで体が動かない、気持ちが落ち込む、体調が悪くなるなど様々な症状が表れ、本当に仕事に行けなくなってしまう人もいるのであなどれません。
出勤困難症・出社拒否症というのはあなたのメンタルが引き起こすものですから、症状が悪化する前に仕事や自分の気持ちとしっかり向き合い、原因や解決策を見つけていく必要があります。
出勤困難症・出社拒否症とは?うつ・甘え?
出勤困難症・出社拒否症を一言で説明するとすれば「大人の登校拒否」です。何らかの原因のせいで会社に行かなきゃ、行きたいという気持ちがどこかにあっても、出勤することができなくなってしまうことを言います。
出勤困難症・出社拒否症の原因には仕事のストレスや人間関係の不安、うつ状態などが挙げられます。仕事が順調でも、プライベートでの問題からうつ状態になってしまったことで、出勤が困難になることもあるので注意が必要です。
うつ病を甘えという人がいるように、出勤困難症や出社拒否症についても「甘え」で済ませてしまう人も存在しますが、ただ出社できないだけでなく、集中力ややる気の低下、強い不安や緊張、呼吸困難や腹痛といった心身の不調が表れる人もいるので、ひとくくりに甘えとは言い切れません。
無理をすると本当にうつ病を発症してしまうこともあるので、症状が表れているのを放っておいてはいけません。
労働者がメンタルヘルスを理由に休業・退職する割合
厚生労働省による平成30年の労働安全衛生調査によると、以下の状況でした。
過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいる事業所の割合は、6.7%。
過去1年間にメンタルヘルス不調により退職した労働者がいる事業所の割合は、5.8%。
また、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 58.0%となっており、予備軍になりそうな人も相当数いそうです。
そして、その労働者が強いストレスになっていると感じる主な事柄は以下のとおりでした。
「仕事の質・量」が59.4%
「仕事の失敗、責任の発生等」が34.0%
「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が31.3%
出勤困難症・出社拒否症の原因5個
前述の通り、出勤困難症・出社拒否症には様々な原因があります。ここからはその原因について詳しく解説していきます。
■1. 仕事のストレス
大きな原因として考えられるのは、仕事におけるストレスです。仕事内容や仕事量はもちろん、肩書きや負わされている責任の重さなどから来るプレッシャー、更に異動なども出勤困難症・出社拒否症の原因となる場合があります。
与えられた業務に終わりがあれば、それまで頑張ろう!と思えますが、終わりの見えない仕事の場合は「この仕事を死ぬまでやらなきゃいけないのか…」という強迫観念にとらわれてしまいます。
そして、責任感の強い人、真面目な人ほど、より良い仕事のクオリティを目指したい、完璧を目指したいという気持ちが強くなりすぎて、「できなかったらどうしよう」とストレスを強めてしまい出勤困難症になってしまうということもあります。
■2. 人間関係に対する不安
仕事内容や進度などは順調でも、職場における人間関係に不安な部分があると、出勤困難症や出社拒否症になってしまうこともあります。
職場にパワハラやモラハラ気味の上司がいる、苦手な人がいる、恋愛関係になった人がいるなど、人間関係にまつわる問題は多くあります。日々の大半を過ごす会社にストレスの原因となるような人がいたら…。常に緊張状態や不安を抱くことで、会社に行くのがイヤになってしまいますよね。
仕事がうまくいっているのに会社に行くのがこわい、という人は人間関係を見直すと原因がわかるかもしれません。
■3. 過労による疲れ
残業や休日出勤が続いていたり、仕事で体を酷使したりしていると、出勤困難症・出社拒否症になってしまうこともあります。
働きすぎにより心身共に疲れが溜まっているのに、それをうまく発散したりリフレッシュしたりすることができず、それでも仕事ばかりを続けていると、体も心も壊れてしまいます。
仕事ばかりしているな、と感じている人は、疲れが非常に溜まっている状態。早めに対処しないと限界を迎え、会社に行けないよりももっと深刻な症状を引き起こしてしまうかもしれません。
■4. 挫折体験
これまでの人生で大きな失敗や挫折をしたことがない、という人は大きな挫折を味わうことが原因で出勤困難症・出社拒否症になることがあります。誰にでもあり得る原因ですが、時に良い学歴や職歴を持つ、いわゆる「エリート」さんの中に多いです。
また、挫折が原因で出勤困難症になる人はプライドが高かったり、完璧を求めたりする傾向も強いです。
一度の失敗を自分で許すことができず、それを引きずり、悩む中で会社に行けなくなってしまう…。周囲からしたら「そんなの気にすることじゃない」「また頑張ればいいよ」ということでも自分で自分を責めて、追い込んでしまうのです。
■5. うつ症状(私生活が原因)
離婚や失恋、金銭面での問題、家族の不幸や病気、プライベートにおける人間関係など、私生活でのトラブルが原因で出勤困難症・出社拒否症になる可能性も低くはありません。
何らかの原因があり気分が激しく落ち込むうつ状態となってしまい、仕事にも支障がでるパターンです。
逆に、プライベートで問題がある分、職場に行くと落ち着く、気が紛れるという人ももちろんいますが、1つの問題が心身の状態に大きく影響してしまう人もいるので、職場は好きなのに仕事に行けない、という人は私生活を振り返ってみると良いかもしれません。
出勤困難症・出社拒否症の症状診断チェック
出勤困難症・出社拒否症になる原因は複数あることがわかりましたが、具体的にどのような症状が見られるのでしょうか。以下の項目で当てはまるものが多い人は、出勤困難症・出社拒否症の可能性が高いです。
・仕事に集中できない
・仕事に対するやる気が低下している
・会社に行こうとするとおなかが痛くなる
・通勤電車に乗ると呼吸困難を起こす
・会社の近くに行くと動悸やめまいがして動くことができない
・朝になると不安感や緊張感が強くなる
・頭痛や耳鳴りといった不調が続いている
・吐き気が止まらない
・下痢をする
・朝起きられない
・明日仕事があると思うとなかなか眠れない
・食欲が湧かない
・何に対してもやる気が出ず無気力な感じがする
・趣味に対しての意欲が薄れている
・大きな声で笑ったり喜んだりということが減った
・「自分のせいで」「自分が悪い」というネガティブな思考に陥りやすい
・意味もなくイライラしてしまうことがある
・集中して物事に取り組むことが困難だ
・お酒を飲みすぎてしまう
・他人の言動に敏感である
出勤困難症・出社拒否症の対策・克服方法10個
出勤困難症・出社拒否症の症状は人それぞれですが、症状が悪化し、うつ病やその他の障害を併発しないためにも、早めの対処が必要です。最後に、出勤困難症・出社拒否症の対策や克服方法をご紹介します。
■1. 気分転換をする
最も簡単にできるのは気分転換、リフレッシュです。出勤困難症・出社拒否症の原因は様々ではありますが、何かしらのストレスが溜まっていることには変わりありません。
旅行に行ったりスポーツで思いっきり体を動かしたり、おいしいものを食べに行ったりしてみましょう。
楽しい気持ち、幸せな気持ちになれるものやことを見つけて気分転換をすれば、案外スッキリとしてまた仕事に元気に行くことができるかもしれません。
■2. 好きなことに集中する
職場と家の往復ではストレスが溜まりますし、単調な日々に嫌気がさしてしまうこともありますよね。もし趣味があるのであれば、好きなことに集中する時間を設けましょう。
スポーツでもアニメ鑑賞でも何でも良いです。仕事終わりの楽しみがあれば、仕事のことも忘れられます。
また「趣味の〇〇を買うために頑張ろう」と、目標ができて仕事への意欲も回復すれば、趣味を楽しみ出勤困難症も克服できて一石二鳥です。
■3. 規則正しい生活をする
日々仕事に追われていると、睡眠時間が短かったり、朝ごはんを食べなかったり、食生活が乱れたりと、生活も荒れてきます。
睡眠不足はもちろん、栄養不足や運動不足も、ストレスを大きくし、出勤困難症へとつながっていきます。今の生活パターンを振り返り、不規則だなと感じるようであれば、可能な範囲で規則正しい生活を送る努力をしてみてください。
よく眠り、バランスの良い食事をとり、通勤の往復で少し長めに歩いたりするだけで、気分が大きく変わることもあります。
■4. 思い切って休む
気分転換や生活習慣の見直しなどを行っても出勤困難症のような症状が続くようであれば、思い切って有給を取りましょう。「すみません、今日どうしても仕事に行けなさそうで…1日だけお休みを頂けませんか?」と言えば、会社も大事な会議などのよっぽどの理由がない限り休みをくれるでしょう。
1日ゆっくり休んで「自分は出勤困難症・出社拒否症なのか」を探ったり、これからどうするか、どうしたいか考えたりすることで、案外気分が落ち着いて翌日から普通に出社できることもあります。
逆に、「やはり出勤困難症だ」と思えば、職場に相談して通院をするなど、様々な対策がありますから、症状が改善しないからといって気に病む必要はありません。頑張って翌日は出社し、勇気を出して職場に話してみてください。
■5. 信頼できる人に話を聞いてもらう
自分が出勤困難症かもしれないと、1人で悶々と悩んでいても解決策が見つからない、「甘えている」と余計に気に病んでしまうということもあります。
もし信頼できる人物がいるのであれば、思い切って「自分は出勤困難症かもしれない」と打ち明けてみましょう。
話を聞いてもらうだけで楽になる部分もありますし、一緒に解決策を考えてくれるかもしれません。客観的な意見、アドバイスを聞くことでなるほどと思えることもあると思います。
■6. 仕事に行く楽しみを見つける
仕事に行くのが楽しい!と思える小さな喜び・幸せを見つけることで、出勤困難症・出社拒否症が改善されることもあります。
例えば食べることが好きならば昼休みに色々なお店を回ってみる、お気に入りのカフェを見つけて常連になる、屋上でお弁当を食べる、朝スイーツを買って休憩時間の楽しみにする、仲の良い社員と会話をするなど、楽しみの内容は人それぞれ。
自分が「楽しい」と思えることがあれば、多少なりとも出社するのがイヤではなくなるのではないでしょうか。
■7. 「仕事は生きていくため」と割り切る
もし自分のメンタルが人より強いと思う、切り替えられる性格だと思うのであれば、「仕事は生きていくためにするもの」だと割り切ってしまうのも1つの方法です。
お金のため、生活のため、イヤなことも乗り切ればお金(給料)がもらえると思えば、多少のことは我慢できるでしょう。更に前述のような好きなことにお金を使う目標ができれば、より仕事に対し前向きになれる人もいるはずです。
とはいえ自分で思っている以上に強いストレスがかかっている場合もありますので、心身に少しでも異変があったら無理をしてはいけません。
■8. 原因を突き止めて対応する
出勤困難症・出社拒否症の原因は人それぞれですが、その原因をしっかりと突き止め向き合うことも重要です。つまりストレスの原因としっかり向き合うこと。そして、その原因を解消するために必要なのは何かを分析しましょう。
自分が努力してどうにかなるものなのか、時間が解決してくれるものなのか、はたまた何をどうしても解決できないものなのか…。
それがわかれば、今後の対応も変わってくるはずです。ストレスとなるもの、イヤなものからは目を背けたくなりますが、自分の心の健康を取り戻すためにもしっかりと向き合いましょう。
■9. 休職する
出勤困難症・出社拒否症の症状が酷く、1日休んだだけではどうにもならない場合には、心療内科などに行って医師の診断書をもらい、長期間休職するのも1つの方法です。
診断書があれば労働者の権利として傷病手当も受け取れます。通常の給与よりは少ないですが、しばらくは生活の心配もないでしょう。少し心と体を休め、今後どうしていくのかを考えるのも良いと思います。
■10. 転職する
会社での人間関係、環境があまりにも悪く、自分の努力だけではどうにもならないと思ったら、今の職場を離れるのも良いのではないでしょうか。転職をして違う環境に飛び込めば新鮮な気持ちになることができますし、頑張ろうと思うこともできるでしょう。
出勤困難症・出社拒否症も転職をすることも決して甘えではありませんが、次の職場でもまた同じようなことになると、「会社へ行かないこと」がクセになってしまうこともあります。
転職をする際には仕事内容や職場環境などをしっかりと調べ、「ここなら頑張れそう」と思える会社を選びましょう。とにかく今の職場を離れたいからと惰性で選ぶのは禁物です。
まとめ
今回は、出勤困難症・出社拒否症の原因や症状、克服方法などをご紹介しました。なんとなく会社に行きたくない、という気持ちから始まる出勤困難症・出社拒否症には原因があり、放っておいてストレスが大きくなると心身に様々な不調を来たし、酷い場合にはうつ病などを発症してしまうこともあるので注意が必要です。
社会人として自分の心の健康を守り、管理することが重要ですし、無理をしすぎたせいで自分自身が壊れてしまわないようにすることは、責任をもって仕事をするよりも大切なことです。もし会社に行くのが辛いと感じたら、無理せず様々な対処法を試してみましょう。