※動物看護師経験のあるライターが書いています。
愛犬を亡くしたあと、飼い主が感じる深い悲しみのことを「ペットロス」とよびます。ペットロスに陥ることは自然なことであり、動物の家族を亡くしたことがある人なら誰しも経験するものです。
愛犬の死から立ち直るには時間がかかります。考え方や感じ方によっても個人差はありますし、どこにも正解はなければ間違いもありません。
愛犬の死を受け入れられない・立ち直れないときの心理と起こりうる症状、実際にペットロスを乗り越えた人たちの経験談をもとに、その悲しみを少しでも和らげるための方法についてご紹介します。
死んだ愛犬に会いたい…寂しい
最愛の愛犬を失う悲しみには、深く苦しい感情が長い間つきまといます。
「頭ではわかっていても、心が追いつかない」
「愛犬のことばかり考えて、何も手につかない」
「愛犬がいない日々を生きるのが辛い、寂しい」
愛犬を亡くしたあと、これまでと変わらない気持ちで過ごせる人はいないはずです。ともに暮らした大切な家族ですから、愛犬の死を受け入れることができないのは当然のことです。
たとえそのお別れから何年経ったとしても「あの子に会いたい」「寂しい」という気持ちは決してなくなるものではありませんが、その悲しみが癒える日は必ず訪れます。
立ち直ったつもりでも、ふとしたきっかけで涙があふれて止まらないといった出来事もあるかもしれません。ですが、無理に悲しみを抑える必要も、寂しさを乗り越えようとする必要もありません。
前を向いたり立ち止まったり、ときには戻ったりしながら、ゆっくり心の整理をつけていけば良いのだと思います。
愛犬の死を受け入れられないときの心理状態
愛犬の死に直面したとき、その現実を受け入れられない人がほとんどであり、これは自然な反応です。飼い主は悲しみ、怒り、嫉妬、不安、罪悪感など様々な感情にさいなまれます。
亡くなった原因によっては、「もっと早く気づけなかったのか」「あの選択をして良かったのか」など自責の念にさいなまれたり、「なぜうちの子が」と、他の犬や飼い主を見かけては苦しくなったりすることもあるかもしれません。
「もっとたくさん一緒にいる時間を作れば良かった」「あのとき、もっと撫でてあげれば良かった」など、一緒に暮らした中での後悔、罪悪感を感じることもあると思います。
愛犬を、無意識に心の拠り所としている飼い主も多いはずです。精神的に支えられていた存在がいなくなってしまうことで、漠然とした大きな不安を抱えるケースも少なくありません。
複数の心理が錯綜する中では、周囲からの慰めの言葉や前向きな言葉さえ、受け入れられなくなってしまいます。
愛犬の死で起こりうる症状
愛犬の死という大きなストレスによって精神的に不安定な状態になると、突然悲しみに襲われたり、場所に限らず涙があふれてくることがあります。
ですが、涙が出てくる、「悲しい」という感情は自然な反応です。涙が止まらないこと自体は、ストレスから自分を守ろうとする反応と考えられているので、このような症状があっても無理に抑える必要はありません。
続いて、無気力や疲労感、拒食・過食、眠れないといった精神的ストレスからくる不調もあるでしょう。無気力状態が続くと、自律神経のバランスが乱れやすくなり、食生活や睡眠に悪影響をもたらします。
ペットロスでは一時的にこのような症状に陥ることは珍しくありませんが、長引くと病気を招くこともあるため、注意が必要です。
また、愛犬の姿や鳴き声を感じる幻覚、幻聴を経験する方もいます。落ち込みや罪悪感からふさぎこみ、外出することができなくなることもあるようです。
ペットロスの症状は1つではありませんし、その症状がすぐに現れるとも限りません。愛犬の死をきっかけに何らかの症状がでているときは、必要に応じて対症的に医療機関へ頼ることも必要です。
愛犬の死の後追い思考は危険?
亡くなった愛犬の後を追って「死んでしまいたい」と後追いを考える人もいます。
愛犬が生き甲斐そのものになっていたり、家族や子ども以上に愛情を注いで暮らしていた人にとっては、唯一無二のパートナーを失ったことになります。後を追いたいと願うことは、決して特異性のある思考ではないのかもしれません。
ですが、愛犬にとっても大切な存在であるあなたが、自分の後を追って自ら命を絶つことを、亡くなった愛犬は望むでしょうか。きっと、あなたに生きていて欲しいと望んでいるはずです。
お別れは悲しいことですが、犬は人より寿命が短い動物です。飼い主として愛犬を見送る側にいられることは、飼い主にとって幸せなことなのではないかと思います。
犬は、自分の飼い主が喜んでいる・楽しそうにしている姿が大好きです。あなたの愛犬は、あなたが不幸になってしまうより、自分のことを思い出しながら生きていてくれることを願うのではないでしょうか。
立ち直れない期間が長引く原因
ペットロスは飼い主に深い悲しみと傷を残しますが、多くの場合は時間の経過とともにその辛さも和らいでいきます。
ですが、立ち直ることができないまま症状が悪化すると「ペットロス症候群」となり、精神的な不調から病気を患ってしまうこともあります。
長期間立ち直れない原因の1つとして、自分の感情を押し殺してしまうことが挙げられます。
悲しみを共有できる人がいなかったり、人と会うことも嫌になってしまったりすると、自分一人で抱え込むことになってしまい、感情の逃げ場を無くしてしまうのです。解決はしなくても、自分の想いを言葉にして誰かに聞いてもらうだけでも、気持ちは楽になります。
「いつまでも悲しんでいてはいけない」「泣いていても愛犬は戻ってこない」などと、心のどこかで自分の感情を否定し、表面的に明るく振る舞わなければと思っていませんか。
悲しみに浸る時間も、ペットロスからの回復に必要不可欠な時間なのです。
愛犬の死の乗り越え方・克服方法6個
愛犬の死の乗り越え方として、いくつか方法をお伝えします。悲しみが癒えるまでにかかる時間は人それぞれですが、ただ悲しみに耐えるだけではかえってペットロスを長期化させてしまいます。
できることを少しずつ行い、ご自身のペースで気持ちの整理をつけてくださいね。
■1. とにかく時間の経過を待つ
悲しみから解放されるための特効薬はありませんが、必ず悲しみが癒える日は来ます。
愛犬を亡くした直後に、その死を乗り越えるなんて誰にもできないことですから、時間がかかるということを知っておいてください。
■2. 感情を押し殺さない
辛い感情を直視したくないと感じることもあるかもしれませんが、悲しいときは我慢せずその感情に浸る時間をつくることも大切です。
辛い気持ちを人に話し、共有することで感情とともに抱えている想いを自分の外に逃がすことができます。愛犬を亡くしたことがある人なら、その辛さを経験しているぶん、寄り添って話を聞いてくれるはずです。
身近に話せる人がいないといった方は、カウンセリングを利用するのも良いかもしれません。
■3. 愛犬への手紙を書く
人に話すことが苦手という人は、想いを紙に書きだすことも悲しみを癒す有効な方法です。天国にいる愛犬に向けて手紙を書くつもりで、抱えている気持ちを吐き出してみてください。
手紙にして想いを綴ることで、人に話を聞いてもらうことと同じような効果があります。言葉は通じなくても、その想いは必ず愛犬に届くことと思います。
■4. お墓参りをする
愛犬のお墓参りにいくと、不思議と気持ちが前向きになります。お花や好きだったおやつを持って、会いたいときに会いにいってはいかがでしょうか。
墓前で手を合わせることで、愛犬への想いを伝えることができます。ふさぎ込んでしまうと家にこもりがちになりますが、外に出ることで気分転換もできますよ。
■5. アルバムを眺めて思い出に浸る
愛犬の写真やビデオなどを見返し、楽しかった思い出に浸る時間を作ってみてください。
「悲しくなるから見れない」という方もいるかもしれませんが、楽しかった思い出をたどることで、愛犬が残してくれた喜びの大きさを改めて感じることができるのではないでしょうか。
別れの悲しい気持ちを残すために、愛犬はあなたの元にやってきたわけではないと気づかせてくれるはずです。
■6. 形見をつくる
愛犬の形見をつくるサービスもあり、利用する人も増えています。写真をもとにフィギュアやぬいぐるみ、クッションカバーなどを作ったり、被毛をカットして筆のチャームを作ったりすれば、愛犬の面影を感じながら生活を送ることができます。
生前愛用していた毛布や洋服、首輪などをリメイクして、使い続けられるものに形を変える方法もあります。
まとめ
愛犬の死は、そう簡単に乗り越えることができない経験です。ですがその悲しみは、時間とともに少しずつ和らいでいきます。
悲しみの深さは、愛犬と過ごした日々の幸せを物語っているのではないでしょうか。様々な感情に苦しむ時間は辛いものですが、悲しみと向き合う時間を作りながら、無理せず過ごしてください。
あなたが元気を取り戻し、愛犬との思い出とともに笑顔で生きていくことを、あなたの愛犬は願っているはずですから。