※ペットトレーナー、ペット食育士資格などを持つ業界経験20年以上のライターが書いています。
大切な家族でもある愛犬にはいつまでもそばにいて欲しいと誰もが願っています。でも残念ながら犬は人間の7倍ものスピードで歳を重ね、わずか10数年で寿命を迎えてしまいます。
死を前に徐々に変化を見せる愛犬に何をしてあげることができるのか、愛犬が何を望んでいるのか前兆行動に気がつくことで家族だからこそ出来ることがあります。
今回は死を間際に迎えた愛犬からの前兆について詳しくご説明させていただきます。
犬は自分の死期がわかる?
犬に限らず動物は自分の死期が近いことを感じ取ることができるといわれています。
犬の祖先であるオオカミは自分の死期が近づくと、獲物を口にせずに同じ群れの若いオオカミに譲り渡します。さらに死が間近に迫りくると群れと共に行動をせずに、群れから離れ単独行動をとるようになります。弱り切った自分が共に行動することで、群れに危険が迫ることを回避するためです。
犬も同様に自分の死期を感じ取ることができます。犬は家族同然に人間と暮らす中で医療を受けたり、流動食を食べたり、家族から手厚く介護を受けることでオオカミのように孤独な最期を迎えることはありません。
ただこの最後の時、犬からの前兆行動やサインを見逃してしまったり、あえて家族が気がつかない、受け止めないことは必ずしも有意義ではありません。
愛犬が死期を迎え前兆行動を見せた時は家族は静かに受け止め、愛犬の不安や辛さを少しでも軽減できるよう寄り添ってあげましょう。
犬の平均寿命
犬の平均寿命は13年前後といわれています。わずか10年ほど前は、小型犬の平均寿命は12、3年、中型犬は10年、大型犬は10年未満といわれていました。
しかしここ最近はサイズによる大きな違いは無くなり、室内犬であれば13年ほどが平均といわれています。
屋外で暮らす犬の平均寿命は10年未満で、室内犬に比べ半分ほどと短いことから、生活環境の変化が犬の長生きにつながっていることがよくわかります。
犬の平均寿命が延びた理由には、動物医療が高度化したことも大きく関係しています。子犬期に多い命の危険があるとされる伝染病も様々な方法で完治を目指し、その後健康に暮らすことができます。高齢になると多発する癌も放射線治療や抗癌剤などの高度医療によって手術や治療を受け、延命することもできます。
長寿な犬種として有名なプードルは18歳、20歳と平均寿命を大きく上回ることも増えています。
犬の死ぬ前の予兆や行動7個
家族の懸命な介護や治療の甲斐があっても愛犬の最後の時は必ず訪れます。愛犬の死期を受け入れたくないという思いは誰にでもあるものの、過度な延命や治療はかえって辛い時間を長引かせてしまいかねません。
愛犬が死期を前に見せる予兆を知っておくことで、お互いに気持ちの整理をつけてゆきましょう。
■1. 徐々に食欲が減って食べなくなる
犬は本能から自分の死期を感じ取り、自ら飲食を拒むようになります。完全な断食状態に陥り、大型犬の場合、一週間以上まるで何も口にしないということも珍しくありません。
犬は自分の体の中を空っぽにすることで内臓機能を停止させ、ゆっくりと死を迎える準備をしているためです。
この行動は家族の不安をますますあおり、動物病院では少しでも延命をと考え点滴や強心剤、食欲増進剤の投与という判断を下すこともあります。
でも犬自身の判断を無視して人為的に延命をしても、わずか数日か数時間の効果しか期待できません。愛犬がこのような前兆を見せた時はこれ以上無理強いをしないということも必要な判断です。
■2. 終日寝て過ごし、運動量が減少する
死期が近づくと昼夜を問わず眠って過ごすことが多くなります。あまりに静かに眠っているので家族は愛犬がこのまま旅立ってしまうのではと不安でならないでしょう。
でも苦しまずに眠っていられることも死期が間近に迫る場面では幸せなことです。死期を間近に迎え、持病の痛みや苦痛、痙攣を起こすことも多いので愛犬が穏やかに眠っている時はそっと見守っておきましょう。
■3. 物音や家族の声への反応が鈍くなる
徐々に聴覚も低下し始め、普段なら敏感に反応していたはずの家族の声や生活音にもまるで反応を示さなくなります。時には家族が体に触れてもまるで気がついていないような様子を見せることもあります。
これは死期が迫り即座に反応をするだけに体力も気力も残っていないこと、意識が朦朧としていることはもちろん家族に見守られ心から安心できているという証でもあります。
■4. 体に力が入らなくなり、自分で行動できなくなる
徐々に体力、筋力が低下し自分の体を思うようにコントロールすることができなくなります。食欲があり食事をしている最中に突然座り込んでしまったり、トイレの最中に体を支えきれなくなり転倒してしまうこともあります。
思うように行動できない事で思いもよらぬ怪我をすることもあるので、愛犬の行動を気にかけ、家族はそっと支えてあげましょう。
■5. 家族に過度に甘えたり、不安な様子や表情を見せるようになる
死期が迫ると徐々に聴覚や嗅覚、視覚の機能が低下しはじめ、体温も下がり始めます。
朦朧しつつも意識はあり、時には大声で鳴いたり、最後の力を振り絞って動き回ることもあります。これは漠然とした不安や恐怖に包まれ家族を探しているサインです。
時間が許す限り愛犬に寄り添い、名前を呼び安心させてあげましょう。
■6. 呼吸が不規則になる
徐々に呼吸が不規則になります。浅く短い呼吸を繰り返していたかと思うと、深くゆっくりとした呼吸に変わることもあります。
この先は投薬や点滴をしても大きな改善にはつながらないので、無理に通院などはさせずにそっと見守ってあげましょう。
徐々に体温も低下し始め、夏でも寒さを感じることもあるので毛布などで体を包み温めてあげると愛犬の辛さを軽減できます。
■7. トイレの失敗が増える
無意識に排泄をしてしまったり、寝ている間に排泄をしてしまうこと、排泄の途中で中断をしたりということが多くなります。体力や筋力、体の痛みから自力で体を支え、力むことができないのですから仕方がありません。
排泄は十分に気にかけ手助けや体のささえ、場合によってはオムツなどを上手に活用しましょう。
犬が死ぬ前に飼い主ができること5個
愛犬の死期を間近に感じ始めると、家族の気分もふさぎ勝ちです。でも残念ながら最後の時は必ず訪れるので、残された時間で家族ができることに目を向けてみましょう。
■1. 抱きかかえ散歩や日光浴をさせる
死期が近づく自分の思うように体を動かすことができなくなり、終日意識が朦朧とした状態が続きます。
でも犬は最後まで自力で行動しようとする習性があるので、天気のいい日や家族の休日には愛犬を抱きかかけ散歩や日光浴をさせてあげましょう。
たとえ自力で歩くことができなくても、外の空気を感じたり、日光の暖かさを感じることで愛犬はリラックスでき、気持ちが和らぎます。
中大型犬の場合、ペットカートに乗せ短時間でも屋外に連れ出してあげましょう。
■2. 口の渇きを潤す程度の水分補給を行う
死期が間近に迫っていることを感じ取ると犬は自ら飲食を拒むようになります。徐々に身体機能が停止に向かい、ゆっくりと死を受け入れるためです。
この時、家族が無理にでも給餌をしたり、薬剤を投与することでかえって愛犬に負担をかけ辛い時間を長引かせてしまうこともあるので愛犬の判断にゆだね、自然な流れに任せてあげることも大切です。
ただ飲食を止めることで口内が渇き辛そうな呼吸をすることもあります。愛犬が起きているタイミングに合わせ、口内を潤す程度に水分を補給してあげると愛犬の辛さを軽減できます。
水分補給の方法はコットンやタオルを湿らせ愛犬に咥えさせたり、歯茎に数滴垂らして上げましょう。
■3. 排泄物で体が汚れないように工夫し清潔に保つ
死期が近づくと自力で排泄ができなくなり、寝たきりの状態で排泄をしてしまうことがあります。筋力も低下しこれまでのように長時間排泄を我慢できず、少量ずつ流れ出ることもあります。
犬にとって排泄物で体や寝床が汚れることは何よりも不快なことです。犬本来の習性は死の間際になってもキチンと残っているので、排泄物で汚れてしまわないようにオムツを着用させたり、市販の水のいらないシャンプーなどを活用し清潔に保ってあげましょう。
シャンプーやシャワーをすると一気に愛犬の体力を消耗させてしまうので、拭き取りによるお手入れが最適です。
■4. 数時間おきの体位変換を行い床ずれを予防する
死期が迫ると体はやせ細り、筋肉や脂肪も減ってゆきます。長時間同じ姿勢で横たわっていると床ずれができ、患部が化膿したり痛みを伴います。
床ずれの予防には数時間おきに家族が寝がえりをさせてあげたり、骨や関節が当たる部分にはタオルやクッションを敷いておきましょう。
自力で移動をしたり、クッションやタオルがずれてしまう場合は市販のサポーターやペット用包帯などで患部を保護する方法も効果的です。
■5. 体に触れたり、名前を呼ぶことで不安を軽減する
犬は、死の直前まで聴覚や嗅覚といった感覚機能が稼働しているといわれています。残念ながら視覚は早々に機能を失ってしまうので、こまめに愛犬の名前を読んだり、寄り添い体に触れて安心させてあげましょう。
自分の死期が近づくということは不安や混乱の中で過ごすということでもあります。家族が傍にいるということを実感できるだけで大きな安心につながります。
死期の間際には聴覚も低下してしまうので、日ごろより大きな声で名前を呼び、体に触れてあげると愛犬にも伝わりやすくなります。
犬の最期の看取り方
愛犬の死期が近づき、最後の時間をどのように過ごすのか家族の中でも意見が分かれがちです。この点は決して簡単に結論が出るものではないのであらかじめ家族で時間をかけ、それぞれが納得できる方法を見つけ出しておきましょう。
もちろん家族全員の意見が一致しないのも当然のことです。これまで愛犬との接し方、過ごし方、愛犬の存在感は家族それぞれで異なっているのですから自分なりに納得のできる看取りを迎えることが大切です。
持病や寿命を迎えた高齢犬の場合、入退院や手術の機会も多くなり動物病院で最後を迎える犬も少なくありません。
愛犬の死期が間近にあると感じる時は、最後を自宅で家族と共に迎えるためにも治療を諦め、自宅療養という判断をすることも考えてみてください。
まとめ
犬は自分の死期を悟ると必ず自分なりの方法とタイミングで家族に別れを告げるといわれています。
意識がもうろうとしながらも家族の帰宅を待っていたり、家族の腕の中で旅だったりと、家族への深い愛情で最後の力を振り絞り別れを告げてくれます。
愛犬との別れは必ず訪れてしまいますが、最後は家族も優しい顔で愛犬に別れを告げてあげたいものです。