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ポンスキーと聞いてすぐにどんな犬かピンときた人は、かなりの犬通(いぬつう)です。ポンスキーとは、ポメラニアンとシベリアンハスキーを掛け合わせたミックス犬のこと。
「ポメラニアン」は小型犬で「シベリアンハスキー」は大型犬なのに、掛け合わせることができるの!?…と思われた方もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事ではちょっと不思議なミックス犬のポンスキーについて詳しく解説します。
ポンスキーとはどんな犬種?特徴は?
ポンスキーとは、純血のポメラニアンと純血のシベリアンハスキーを親にもつミックス犬です。
2種類の純血種を意図的に掛け合わせた犬を欧米では「デザイナーズ・ドッグ」と呼びますが、ポンスキーもその一種。デザイナーズ・ドッグはアメリカで人気が高く、ポンスキーもご多分に漏れずアメリカで人気の高いミックス犬です。
ポメラニンはぬいぐるみのように可愛くて、シベリアンハスキーはちょっとワイルドな風貌。その2つが合わさったポンスキーは、可愛いのにどこかミステリアスな見た目が魅力です。
とはいえ、ポンスキーの見た目や体格にはかなりの個体差があります。小さなシベリアンハスキーにしか見えないポンスキーもいれば、フサフサの毛が可愛いポメラニアンの顔にハスキーの隈取りがあるタイプも。
ポンスキーはあくまでもミックス犬なので、見た目や性質にばらつきがあるのは当たり前のことなんですよね。
ポンスキーの歴史
ポンスキーがいつ頃登場したのかについては、はっきりしたことはわかっていません。別々の純血種同士が交配すること自体は古くからありましたが、たいての場合は偶然によるものか、もしくは犬種を作出するうえでの過程でしかなかったはずです。
1980年代にラブラドールレトリーバーとスタンダードプードルを組み合わせた「ラブラドゥードル」が登場しましたが、これはあくまでも抜け毛の少ない盲導犬を作る目的から始まった交配。
しかし、2000年代に入ったあたりから、ハリウッドセレブがパグル(パグ×ビーグル)を飼い始めたことで、デザイナーズ・ドッグの人気が一気に高まりました。そして見たことのない犬、より個性的な犬を求めて様々な組み合わせのミックス犬が登場する中で、ポンスキーも生み出されたのではないかと推測できます。
ここ最近になって注目されるようになったのは、SNSでポンスキーの可愛い画像が評判になったからです。
ポンスキー成犬の寿命・大きさ・体重・毛色
ポンスキーはポメラニアンとシベリアンハスキーの間に生まれた一代限りの交雑種。寿命や大きさ・体重・毛色などには個体差があるため、親犬から推測することになります。
◆ポンスキー
体重/7~15kg
体高/25~40cm
寿命/13~14才程度
◆ポメラニアン
体重/1.8~3.5kg(欧米4~10kg)
体高/18~22cm
寿命/12~16才
◆シベリアンハスキー
体重/21~28kg
体高/54~60cm
寿命/12~13才程度
日本ではポメラニアンは小型犬のイメージが強いですが、欧米では10kg近くまで成長する犬も珍しくありません。実際のポンスキーはおそらく体重が10~15kgくらいあるタイプが多いのではないでしょうか。
毛色にはいろいろなバリエーションがあります。
・灰褐色×白
・黒褐色×白
・褐色×白
・白を基調に少しだけ褐色混じり
ハスキーに特徴的な顔の隈取は、あるものとないものの両方がいます。
ポンスキーの性格
ポンスキーの性格は、親犬であるポメラニアンとシベリアンハスキーのどちらに寄るかが大きく影響します。
◆ポメラニアンの性格
好ましい気質/活発、遊び好き、好奇心旺盛、フレンドリー
難しい気質/無鉄砲、警戒心が強くよく吠える
◆シベリアンハスキーの性格
好ましい気質/活発、エネルギッシュ、好奇心旺盛
難しい気質/慎重、頑固
親犬の性格がどの程度前面に出てくるかで、ポンスキーの性格には違いが生じるはずです。ポメラニアン、シベリアンハスキーともに、活発で好奇心旺盛なところは共通しています。おそらくポンスキーにも遊び好きな明るい性質は強く表れるのではないでしょうか。
しかしポメラニアンの「よく吠える」ところや、シベリアンハスキーの「慎重で頑固」な性質が受け継がれるかもしれません。ポンスキーは人懐っこくて温厚な犬というイメージがありますが、親犬から受け継ぐ性質は良いところばかりではないのです。
ポンスキーの子犬の販売価格・値段は?
日本国内ではポンスキーの子犬が販売されていないため、価格について正確なところは不明です。本家本元ともいえるアメリカ国内においては、およそ20~30万円ほどだとか。
アメリカで子犬を購入し、日本へ生体輸入をするという方法がないわけではありませんが、かなりの費用がかかることを覚悟しなければなりません。
輸入にかかる諸費用が仮に30万円だったとして、アメリカはグアムとハワイを除いて狂犬病清浄国に認定されていません(2020年現在)。ポンスキーの子犬をアメリカ合衆国本土から日本へ向けて送り出した場合、日本に入国してから検疫で必要な日数を留め置かれることになります。
その間の係留施設への輸送や係留期間中の飼養管理、獣医師の往診等にかかる費用は当然子犬の飼い主が負担。この費用が単純に20万円だったとしたら、この時点ですでに80万円かかっている計算になります。
ポンスキーの飼い方
ポンスキーには寒さに強いシベリアンハスキーの血が半分入っているので、屋外飼育が可能だと思われるかもしれません。しかし、実際は外飼いに向かない犬です。
一つには暑さに弱いからという理由が挙げられますが、シベリアンハスキーが屋外飼育に向かない一番の理由は、この犬種が常に群れで行動する性質を持っているからです。
屋外で1匹にされてしまうと、寂しさや不安から精神的に安定しない可能性が。その血を引くポンスキーは、暑さ寒さをしっかりコントロールできる空調のきいた室内飼育が基本と考えるべきです。
ポンスキーのしつけ
見た目がどんなに可愛くても、ポンスキーは基本的に中型犬並みの体格がある犬です。興奮して手が付けられなくなってしまうと、大きな事故につながりかねません。
ポンスキーにはソリや荷車をひく力の強いシベリアンハスキーの血が半分混ざっていることを忘れずに、「待て」「来い」「伏せ」などのコマンドを子犬の頃からしっかりトレーニングしましょう。
また、子犬の頃からきちんと社会化をしておかないと、ポメラニアンの悪い部分が出て無駄吠えや警戒心の強さに悩まされることになるかもしれません。
ポンスキーの注意したい病気・健康管理
ポンスキーがかかりやすい病気については、まだ多くの報告がなされていません。そのため、親犬の犬種であるポメラニアンとシベリアンハスキーがかかりやすいそれぞれの病気について注意する必要があります。
◆ポメラニアンがかかりやすい病気
・膝蓋骨脱臼……後ろ足の膝のお皿が正常な位置からずれて脱臼する病気
・気管虚脱……気管がつぶれることで、充分な量の空気を肺に送り込めなくなる病気
・脱毛症X……アロペシアXとも呼ばれる、胴部分の毛がごっそり抜ける原因不明の病気
◆シベリアンハスキーがかかりやすい病気
・股関節形成不全……股関節が発育の段階で形態的な異常を起こし、関節の緩みが様々な症状を引き起こす病気
・緑内障……眼圧が上昇することにより、目の痛みや視覚障害を引き起こす病気
・皮膚病……全身の皮脂腺の分泌が過剰、または皮膚の角化が進む病気
ポメラニアンとシベリアンハスキーは、ともにダブルコートの犬種です。寒さには強い反面、暑さにはかなり弱い性質はポンスキーもしっかり受け継いでいるはず。
気温が上昇する時期は熱中症の危険性が高まりますので、室温調整はもちろんのこと、散歩の時間帯にも注意しましょう。
ポンスキーの交配方法・作り方は?失敗もある?
ポンスキーを交配によって作る際に最も注意しなければいけないのは、両親犬の体格差です。
ポンスキーの作出が盛んなアメリカにおいても、基本的に使われる両親犬は大きめのポメラニアンと小さめのシベリアンハスキー。そして、シベリアンハスキーが母親でポメラニアンが父親であることが望ましい組み合わせです。
しかし、人々がほしがるポンスキーの特徴は、ポメラニアンのかわいい容姿にシベリアンハスキーの野生的なテイストが混ざった犬。となると、犬が基本的に母親の性質を受け継ぎやすいことを考えれば、ポメラニアンを母親にしたほうがよさそうな気がしますよね。
しかし、ポメラニアンが母親でシベリアンハスキーが父親の組み合わせは非情に危険。なぜなら小柄な母親の体内で大きな胎児は育ちにくく、奇形児が生まれる危険性が高まるからです。
さらには健全な出産が難しくなり、最悪は母親と子犬の両方が死亡してしまうかもしれません。
ポンスキーの抜け毛
ポンスキーの両親であるポメラニアンとシベリアンハスキーは、ともにダブルコートの犬種。その組み合わせから生まれたポンスキーも間違いなくダブルコートです。
1年を通してかなりの抜け毛がありますが、春と秋の換毛期にはすさまじい量の抜け毛が。普段からしっかりブラッシングをして、抜け毛のお手入れをしておかないと、家中が毛だらけになってしまうでしょう。
また、抜け毛を定期的に取り除いておかないと、通気性が悪くなって皮膚病の原因になるので注意が必要です。
ポンスキーのトリミング
ポンスキーはポメラニアンとシベリアンハスキーのどちらに寄るかによって、被毛の長さはかなり違ってきます。
ポメラニアンに寄ると被毛はフサフサと長くなりますが、コートが伸びる速度は遅いので基本的にトリミングは必要ありません。むしろ短くカットしすぎると、もとのフサフサに戻るまでに3年程度かかることもあります。
シベリアンハスキーに寄ると被毛は短めのため、トリミングは一切必要ありません。しかし極寒をしのげるほどの下毛がごっそり抜けますので、気合を入れて抜け毛の処理をする必要があるでしょう。
ポンスキーは輸入代行しかない?
日本国内にポンスキーのブリーダーはいないため、ペットショップで販売されることはまずありません。日本全国を探しても、ブリーダーを見つけることも難しいでしょう。
どうしても手に入れたいのであれば、海外から輸入するしか方法はなさそうです。自分自身で渡航してポンスキーを連れて帰るか、あるいは輸入代行を利用するしかありません。
いずれにしても犬の生まれた国で輸出手続きをし、日本国内へは輸入手続きをしないと入国させることができないのです。
ポンスキーの探し方は?ブリーダー・里親
日本国内で生まれたポンスキーを探すのはかなり困難です。仮に生まれていたとしても、安易に手をだすべきではないでしょう。
というのも、日本国内にいるポメラニアンはサイズの小さな個体が多いため、シベリアンハスキーと掛け合わせるのには向かないからです。それでも掛け合わせたとなると、母犬はシベリアンハスキーでなければなりません。
しかし、人気のあるポンスキーはポメラニアン寄りの特徴を持っていなければならないため、モラルのないブリーダーが、ポメラニアンを母親にしてかなりの負担をかけた可能性があります。
健全なブリーディングを心がけているきちんとしたブリーダーは、もともと無理のある組み合わせでの交配を行いません。もし子犬を見つけたときは必ず詳細を確認しましょう。
また、保護犬の里親に関しては、現況ではまずポンスキーは見つからないと考えるのが現実的ではないでしょうか。
まとめ
ポンスキーのように珍しい組み合わせのミックス犬はとても魅力的です。しかし、必ずしも「いいとこどり」になるわけではありません。親犬からは良いところも悪い所も受け継いで生まれてくるのです。