静岡県焼津市にある「焼津神社」へ取材に⾏ってきました。「ホームページの情報だけではよく分からない」「インターネット上の⼝コミや評判だけではよく分からない」という⽅は、ぜひ参考にしてください。
取材先の神社名:焼津神社(やいづじんじゃ)
取材する方:宮司 鈴木啓央さん
どのような神社ですか?
焼津神社の御祭神である日本武尊(ヤマトタケルノミコト)は、第12代景行天皇の皇子です。父の景行天皇から東国の平定を命じられた日本武尊は、この地で敵に欺されて草むらの中で四方から火を点けられてしまいます。
窮地に陥った日本武尊は、倭姫命から授かった天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)で草をなぎ払い、火打ち石で敵に向かって火を放ちました。それによって炎は向きを変え、勢いよく敵に向かって燃え広がり、無事窮地を脱することができたといわれています。この後、天叢雲剣は三種の神器のひとつとして知られる草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)とも呼ばれるようになり、現在では名古屋の熱田神宮にお祀りされています。
この伝説からこの地は「ヤキツ」といわれ、現在の「焼津(やいづ)」という地名の由来となりました。焼津神社の御創建は反正天皇4年(西暦409年)と伝えられており、1,600年以上の歴史を重ねています。
日本武尊の知恵と勇気、そして妃の弟橘姫命を守りながら戦った優しさを称え、焼津の守り神としてお祀り(おまつり)をしたことが焼津神社のはじまりです。ご参拝者の方には、焼津の海をはじめとした自然に触れながら、日本の長い歴史を感じることのできる場所となっております。
神社の見どころを教えて下さい。
本殿は慶長8年(1603年)、約400年前に徳川家康によって建てられたものです。「流造(ながれづくり)」という全国の神社で最も多い建築様式で建てられていますが、当社ならではの雰囲気を感じていただける本殿となっています。
また、社務所は令和2年7月に建て替えられました。社務所受付には神社所蔵の刀剣17振りのうち、3振りを展示しております。近年では刀剣に興味をお持ちの方も多く、そのため3振りづつをローテーションにて展示しておりますので、時期によって異なる刀剣をみていただくことが可能です。
そのほか、8月の大祭に使われる歴代の獅子頭(室町から現在)を展示しております。この獅子頭は当社にて古来から行っている「荒祭」に使用されるもので、一目みて「荒祭」の長い歴史を感じることができるはずです。
最も新しい当社の見どころとしては、拝殿の向かって左手にある、根本が2股になった松もございます。古くから根元を分かつ松は「相生の松」とも呼ばれ、夫婦円満や縁結びの御利益があるとも言われるものです。元々は林の中に埋まってしまっていましたが、周辺を整備したことで見ていただけるようになりました。今後ご参拝の際には、どなたでもご自由にご覧いただけますので、ぜひこちらにも足をお運び下さい。
ご利益を教えて下さい。
当社は、日本武尊の知恵と勇気、そして妃の弟橘姫命を守りながら戦った優しさを称えて創建された神社です。そのため特定の御利益ということよりも、古くから焼津の守り神として信仰され、地域を守り続けている長い歴史を感じることのできる場所となっております。
御朱印について教えて下さい。
焼津神社の御朱印には「延喜式内焼津神社」の文字が刻まれています。延喜式内とは、平安時代に編纂された全国の神社の一覧である「延喜式神名帳に記載されている神社」という意味です。延喜式内かどうかということは神社の歴史を見る上での一つの目安となります。また、神社の御朱印に加え、地元のイラストレーターが作製した月替わりの印も押していますので、そちらもぜひご注目下さい。
当社の御朱印帳は、3種類ご用意があります。焼津らしい”鰹縞(カツオシマ)”の模様をあしらったものや、当社独自の神楽である「青垣の舞」を舞う、舞姫神楽をモチーフとしたイラストをあしらったものなどありますが、どれも人気が均一です。
”鰹縞(カツオシマ)”は、漁師町である焼津において、古くから使われる模様のひとつ。漁師が漁に出る際は身につけていたもので、海難にあった際も身元を判別する役割もあったものです。焼津地域伝統の模様ですので、ぜひお越しになった際にはご覧になって下さい。
御朱印はどうやってもらえばいいですか?
社務所受付にお越しください。基本的には御朱印帳にお書きし印を押しますが、正月や8月の大祭期間などは書き置きで対応させて頂く場合もありますので、ご承知置きください。
お守りやお札はどんなものがありますか?
当社には、御守りやお札もさまざまご用意がありますが、7月から新たに授与を行う「美呼守り」をご紹介します。美呼守りは、身も心も美しくあって欲しいという願いを込めて、「巫女」に掛けた「美呼」を名称とし、美しい景色や美しい人など、美しい人や物を呼び寄せるよう祈願したものです。特に女性に適した御守りですので、ご参拝の際にはぜひご覧ください。
また、当社で行われる焼津祭りで使う”御神輿の屋根”が黒であることにちなんでいる、黒字に巴印の入った「巴守(ともえまもり)」も大変人気のある御守りです。当社では黒字に”金の巴印”の入った御守りと、黒字に”銀の巴印”の入った御守りの2種類を授与しております。
おすすめの行事やイベントはありますか?
毎年8月12、13日に行われる焼津神社の大祭は、「東海一の荒祭」として知られており、焼津の人々が心待ちにしているお祭りの1つです。令和3年はコロナ対策のため規模を縮小して行いますが、自粛等が収まった際には、県内外からも多くの方がお越しになる行事となっています。
また、お正月は元旦より三が日の間、歳旦祭に併せその年の大漁と海上の安全を祈願する行事があります。漁業者が各船の大漁旗を拝殿前に立てますが、その風景は迫力を感じられるものです。この行事は当社が鎮座する、漁師町焼津らしい風習のひとつとなっています。
参拝時間と参拝料について教えて下さい。
参拝は何時でも可能です。但し、社殿・社務所が開いているのは午前8時半から午後5時までとなっております。拝観料は必要ありませんので、周辺にお越しの際にもお気軽にご参拝ください。
近くでおすすめの観光地や飲食店はありますか?
漁師町の焼津ですので、海の幸をはじめとした沢山の美味しいものや、温泉などの観光地もあります。詳しくは、焼津市観光協会のホームページをぜひご覧ください。
これから拝観したい方へのメッセージをお願いします。
「さねさし さがむのをのに もゆるひの ほなかにたちて とひしきみはも(相模の小野で 燃えさかる炎の中 私の名を呼んで気遣ってくれた あなたよ)」この歌は、相模の走水から房総半島に渡る際、海の神を鎮めるため入水された日本武尊の妃、弟橘姫命(オトタチバナヒメノミコト)が最期に読んだものです。
古事記には、焼津では日本武尊が燃えさかる炎の中で妃を守り、走水では荒れ狂う海で妃が日本武尊を守ったという、互いに想い合う愛の物語が伝えられています。当社はこの物語からもわかる日本武尊の知恵と勇気、そして妃の弟橘姫命を守りながら戦った優しさを称えて創建された神社です。参拝を通して日本武尊と弟橘姫命の愛の物語に、思いを馳せてみられてはいかがでしょうか。
神社名:焼津神社(やいづじんじゃ)
住所:静岡県焼津市焼津二丁目七番二号
電話番号:054-628-2444
参拝時間:8:30~17:00まで。
URL:https://yaizujinja.or.jp/