神奈川県中郡大磯町にある「六所神社」へ取材に⾏ってきました。「ホームページの情報だけではよく分からない」「インターネット上の⼝コミや評判だけではよく分からない」という⽅は、ぜひ参考にしてください。
取材先の神社名:六所神社(ろくしょじんじゃ)
取材する方:禰宜 柳田崇道さん
どんな神社ですか?
当社の創建は2100年ほど前にさかのぼります。崇神天皇の頃(紀元前1世紀頃)、出雲地方よりこの地に氏族が移住し、この地域を「柳田郷」と名付けました。
彼らの祖神である櫛稲田姫命、素盞嗚尊、大己貴尊(大国主命)を守護神として、石神台、またの名を伊勢神台 (当鎮座地北西1kmの台地)に祀り、社殿を築き「柳田大明神」と称しました。地域の安寧は元より、子々孫々に到るまでの弥栄を祈願したのが始まりです。
大化の改新後、国の行政も次第に整い、国司の制度が始められてゆく中、元正天皇の御代養老二年(718年) 閏四月八日、石神台より現在の鎮座地に遷座し、奉遷暦勅をもって相模国八郡神祇の中心をなすべき旨宜下されました。
平安時代に入り相模の国府(今の県庁)が柳田郷に置かれると、柳田郷の地名も「相模の国府」と称せられるようになりました。
大化の改新以来、国司は任国に着くと、まず神拝と言われる国中の主たる神々を巡拝いたしました。しかし、巡拝には大変な日数と費用・人員を要します。そこで、主たる神々の御分霊を合わせ祀る社、すなわち「総社」を設ける習いとなりました。
相模国の場合、柳田大明神に、「一之宮寒川神社」、「二之宮川勾神社」、「三之宮比々多神社」、「四之宮前鳥神社」、「平塚八幡宮」の5社の御分霊を合わせ祀ったのです。これをもって「相模国総社」が成立しました。また、6ヶ所の神社合わせ祀る所から「国府六所宮」とも称せられるようになりました。
鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』には、次のように記されています。
治承四年(1180年)十月十六日、平家の大軍が平維盛を大将として富士川に攻寄った際、国府六所宮にて戦勝祈願を行う。同年十月二十三日、源頼朝公は北条時政等二十五名の功賞を行う。その規に依り、文治二年(1186年)、本殿の改造が行なわれる。建久三年(1192年)八月九日、源頼朝公の実子実朝の安産祈願の為神馬納「総社柳田」と記す。
以上のように、源頼朝公は総社六所宮に対する敬神の念が誠にあつく、また相模国を代表する神社として格別な崇敬を寄せております。
戦国時代には戦国の雄北条早雲の崇敬も大変あつく、御子氏綱公が永正年間(1504~1521年)に六所宮の御社殿御造営、また、四代左京大夫氏政公が御本殿の御修復を行い、この本殿が現在のものであります。
天文13年 (1544年) 12月23日付の北条氏康公の寄付状があり、相州六所領六十五貫七十八文とあります。また、徳川家康公も相模国総社六所宮に対する崇敬の念があつく、天正19年(1591年)、武運長久の祈願として六所領五十石(15,000坪)寄進の御朱印状がありました。三代家光公からは慶安元年 (1648年)、国家安全祈願として五十石の御朱印状があります。
以後、歴代の将軍の特別なる祈願と六所領の寄進があり、現在に到っております。
神社の見どころを教えてください。
境内の見どころは、小田原北条氏によって寄進されたご本殿と、ご本殿を支える野面積みの石垣です。ご神木に囲まれ、多くの錦鯉が優雅に泳ぐ御神池もございます。
ご利益を教えてください。
当社の御祭神は櫛稲田姫命、素戔嗚尊、大己貴尊(大国主命)の三柱の神様になります。
櫛稲田姫命は、古事記・日本書紀にある八岐大蛇の段に登場される女性の神様です。八岐大蛇を退治に行かれる素戔嗚尊の力になるべく、自らの姿を湯津爪櫛という櫛に変え、素戔嗚尊はその櫛を髪に挿し、大きな力を得て、無事に八岐大蛇を退治いたします。そして、お二人の神様は結婚いたします。これが日本神話に描かれる初めての結婚でございます。
そのような御祭神をお祀りする六所神社は、女性の災禍除、男性の困難打開、全ての良縁の神社としてあつい信仰をいただいております。
御朱印について教えてください。
六所神社の御朱印と六所龍神大神社の2種類は、御朱印帳にお書きしております。
書き置きの御朱印として、六所神社に伝来する平安後期に製作された御神像の御朱印を奉製いたしました。御神像は御祭神である櫛稲田姫命様と素戔嗚尊様の御姿と伝えられております。
平安時代後期の作で国司奉納と伝えられ、夫婦の御神像としても大変貴重であり、最古の御神像の一つとして、神奈川県重要文化財にも指定されております。
印は八岐大蛇の神話にちなみ、櫛稲田姫命様の奇魂(より強い御神徳・御力)である湯津爪櫛に、中央は天叢雲剣(素戔嗚尊)・右は稲穂(櫛稲田姫命)・左は八雲(夫婦円満)が意匠されております。
御朱印はどうやってもらえばいいですか?
授与所でお受けください。初穂料は500円になります。受付時間は午前9時から午後4時半までとなります。
お守りやお札はどんなものがありますか?
神話にちなみ、湯津爪櫛という御守りがございます。湯津爪櫛御守は、大神様の高い御神徳と強い霊力が籠る御守りです。女性が身に着けると、あらゆる厄災・災難の身代わりとなり、御神縁の良縁の道が開かれます。
女性から男性に真心を込めて贈ると、男性に霊力が湧き、困難打開の道が開かれます。男性から女性に真心を込めて贈ると、「かけがえのない大切な女性」の証となります。
初穂料は、800円になります。
おすすめの行事やイベントはありますか?
おすすめの祭典行事は、毎年5月5日に行われる「相模国府祭」です。現在、神奈川県無形文化財に指定されております。
「相模国府祭」の起源は平安時代にさかのぼります。朝廷から派遣された国司はまず、国内の有力神社を巡拝する習わしでした。しかし、総社の制により、巡拝していた各社を総社に合わせ祀ることとなり、その国司行政の祭礼として、一千有余年の伝統を今に伝える祭事であります。
「相模国府祭」は相模国内の六社が、当時の相模国府である現在の大磯町国府本郷の神揃山及び大矢場祭場に会し、天下泰平・五穀豊穣を祈る祭典です。
相模国内の六社とは、寒川町の一之宮寒川神社、二宮町の二之宮川勾神社、伊勢原市の三之宮比々多神社、平塚市の四之宮前鳥神社と一国一社平塚八幡宮、大磯町の総社六所神社です。
大矢場祭場は、神揃山より南へ300m程の場所にあります。「相模国府祭」の中でとくに有名なのが、座問答です。相模国成立の際、一之宮寒川神社と二ノ宮川勾神社が一之宮の座を巡る論争が儀式化された神事といわれています。
神座を表す虎の皮を上座へ3度ずつ移動させた後、三ノ宮比々多神社宮司により「いづれ明年まで」との仲裁が入り、来年に論争が持ち越されます。座問答が無事に執り納められると、一之宮より順次下山し大矢場祭場へと向かいます。
拝観時間と拝観料について教えてください。
御祈祷及び授与所の受付時間は、午前9時~午前4時半頃です。ご参拝は自由になります。
近くでおすすめの観光地や飲食店はありますか?
ぜひ、「相模国府祭六社巡り」をおすすめいたします。総社である当社のほかに一之宮の寒川神社から平塚八幡宮まで、車であれば1日で回れます。平安時代に国司が巡拝されたように、ご参拝いただければと思います。
当社からですと、隣町の二宮町に鎮座いたします二之宮川勾神社がもっとも近いです。次に伊勢原市の三之宮比々多神社、平塚市の平塚八幡宮、前鳥神社、そして寒川町の寒川神社の順でご参拝されますと、スムーズに回れるかと思います。
これから拝観したい方へのメッセージをお願いします。
神社にご参拝いただきました際には、木々に囲まれた静かな境内に身を委ね、ゆっくりとお過ごしいただき、大神様のお力をお受けいただければと思います。
六所神社の基本情報
神社名:六所神社(ろくしょじんじゃ)
住所:神奈川県中郡大磯町国府本郷935
電話番号:0463-71-3737
拝観時間:参拝は24時間可能。社務所は9時から16時半まで
URL:https://www.rokusho.jp/