兵庫県豊岡市にある「温泉寺」へ取材に⾏ってきました。「ホームページの情報だけではよく分からない」「インターネット上の⼝コミや評判だけではよく分からない」という⽅は、ぜひ参考にしてください。
取材先の寺名:温泉寺(おんせんじ)
取材する方:住職 小川祐章さん
どんなお寺ですか?
温泉寺は兵庫県豊岡市城崎町の大師山にある高野山真言宗のお寺です。
養老元年(717年)、救世の願いをかかげ諸国をめぐっていた僧侶の道智上人(どうちしょうにん)が城崎の地にいらっしゃいました。難病に苦しむ人々を目の当たりにし、救済のため城崎の鎮守・四所明神に祈願されると「温泉が湧く」という神託(夢のお告げ)を授かります。
道智上人はそのお告げを信じ、一千日間ご修行をされて温泉が湧き出しました。それが現在の「まんだら湯」です。お寺の開祖でもある道智上人の祈願により城崎温泉は湧出したので、城崎温泉の開祖でもあります。
そののち、道智上人は大和(奈良)の長谷寺の観音さまと同じ木材、同じ作者である観音像を得てお祀りし、寺を開創いたしました。天平10年(738年)に聖武天皇より「城崎温泉の守護寺」として山号「末代山(まつだいさん)」と寺号「温泉寺」を賜りました。以来、約千三百年の間、城崎温泉とその入湯客を見守る山陰の名刹です。
お寺(信仰)と温泉(療養・癒し)が一体不離であるという城崎温泉と温泉寺のつながりは、観光地として見ると不思議なことかも知れませんが、これこそが「城崎温泉」の最大の特徴であり、根源であります。
現在、城崎温泉にはロープウェイが設置されています。このロープウェイには珍しく途中に中間駅がありまして、それが「温泉寺駅」になります。7分間の空中散歩を楽しんでいただき、下車してすぐにお参りできます。約450段の石段の参道から自然を満喫しておいでいただくこともできますが、ロープウェイからですと浴衣に下駄の方もいらっしゃいますよ。
お寺の見どころを教えてください。
温泉寺には国指定重要文化財になったお堂や仏像があり、所蔵の古文化財も多くございます。
但馬地方最古の建造物である本堂は、城崎温泉を見下ろす山腹に南向きに建てられています。至徳年間(1384~87年)に温泉寺を復興させた清禅法印により造営されました。
五間四面のお堂で、和様、唐様、天竺様の三様式が絶妙に融和した折衷様式の入母屋造りのお堂です。 重厚な屋根のそり、主柱の均衡など建築美につつまれた南北朝時代を代表する建物です。国の重要文化財にも指定されました。
温泉寺のご本尊様、十一面観世音菩薩は、大和(奈良)の長谷寺の観音さまと同木同作の由緒正しき観音様で、 千三百年の歴史を持つ国指定重要文化財の仏様です。どっしりとした力強さで、高さは2メートルを超えます。温和なご表情は、私たちを温かく見守ってくださいます。
33年目ごとのご開帳の秘仏の仏様ですが、最近では2018年4月21日から2021年の10月末までがその期間にあたっておりました。次は2051年の春となりますが、毎年4月23・24日の両日に開山忌(温泉まつり)には御開扉があり、ご拝顔をすることができます。
本坊・持仏堂のご本尊様、千手観音像です。一般的な千手観音像が42臂(ひ)であるなか、現在834臂もの多くのお手をお持ちになった珍しい観音像です。
桧の一木彫で、平安期特有の温雅で穏やかな柔らかい作風が特徴です。伏し目がちな丸みを帯びたお顔立ちで、私たちを救ってくださる仏さまです。こちらも国指定重要文化財です。
「温泉寺宝物館」は「城崎美術館」とも呼ばれており、本堂のすぐ東側にあります。温泉寺所蔵の古文化財を展示しておりまして、平成に入ってから施設のリニューアルを行って、斬新な展示方法で体感しながら見ることができますよ。
また、温泉寺は自然豊かな地にございまして、色とりどりの鳥が四季折々にやってきて、目や耳を楽しませてくれます。秋になると鹿の切ない鳴き声が聞こえてきます。
ご利益を教えてください。
身体健全、病気平癒などの御利益はもちろんでありますが、御本尊の御利益は一願成就とされ、あらゆる願いを叶えてくださいます。
御朱印について教えてください。
本堂にて「御本尊」、山麓薬師堂にて「薬師如来」「福禄寿」、山頂奥の院にて「弘法大師」の御朱印を授与しています。
御朱印はどうやってもらえばいいですか?
山麓にある薬師堂、中腹の本堂・本坊にてお書きいたします。山頂奥の院での御朱印は書き置き対応としています。受付時間は午前9時~午後4時です。本堂のみ午後5時までです。
お守りやお札はどんなものがありますか?
温泉寺とも縁が深いコウノトリが描かれた「コウノトリの福音鈴」は、安産・子宝祈願のお守りです。鈴のなかで球が転がり、シャラシャラと優しい音がいたします。
鎌倉市の和雑貨卸会社と城崎温泉のコラボによるもので、温泉寺にてひとつひとつ祈祷させていただき、パッケージには御朱印も添えてございます。
そのほかに各種御守りがございますので、願いに合わせてお授かりください。
おすすめの行事やイベントはありますか?
毎年4月23日・24日に開催いたします「開山忌 (温泉まつり)」は城崎温泉にとってもっとも重要なお祭りです。道智上人の忌日である4月24日に全町をあげて道智上人と温泉への感謝を捧げ、町の繁栄を願う行事として執り行われております。
湯祈祷をし、道智上人の墓前にて供養を行い、本堂にて城崎温泉の繁栄を願い「大般若転読法要」をいたします。法要終了後には景品付きの餅まきも行われます。普段は公開していない本尊の十一面観音像の御開扉もいたします。
7月8日には温泉守護の「薬師祭り(薬師如来大祭)」があります。当日のみ授与する御札は浴室(脱衣場)へ祀るもので、おそらく日本唯一の御札でございます。
また、毎月28日の不動明王さまのご縁日には「月例の護摩祈祷」をいたします。とくに恋愛成就・子授け・安産などにご利益がございます。
拝観時間と拝観料について教えてください。
拝観時間は午前9時~午後5時までです。拝観料は本堂・本坊が300円(宝物館共通券400円)としています。そのほかの堂塔は無料でお入りいただけます。
近くでおすすめの観光地や飲食店はありますか?
城崎温泉の温泉街がございます。昔ながらの街並みを残し、「まち全体が大きな温泉宿」をモットーにお客さまをお迎えしています。柳並木が美しい大谿川(おおたにがわ)と石造りの風景は四季折々で違った風情を魅せ、作家の志賀直哉からも愛されていました。
また、城崎温泉には趣も特色も異なる7つの外湯が、歩いてまわれる距離にございます。浴衣で下駄を履いて無理なく温泉巡りが楽しめますよ。
そのほか詳しくは城崎温泉観光協会のホームページなどご参照ください。
これから拝観したい方へのメッセージをお願いします。
古くは城崎温泉に入湯の際には必ず温泉寺にお参りし、入湯作法を授かった後に外湯へ向かうのが慣わしであったという、城崎温泉と一体不離のお寺です。
古文化財の宝庫でもあり、御本尊の一願成就の霊験もあらたかなお寺です。道中お気をつけてお参りください。
温泉寺の基本情報
寺名:温泉寺(おんせんじ)
住所:兵庫県豊岡市城崎町湯島985-2
電話番号:0796-32-2669
拝観時間:9時から17時まで
URL:http://www.kinosaki-onsenji.jp/