奈良県高市郡明日香村橘にある「橘寺」へ取材に⾏ってきました。「ホームページの情報だけではよく分からない」「インターネット上の⼝コミや評判だけではよく分からない」という⽅は、ぜひ参考にしてください。
取材先の寺名:橘寺(たちばなでら)
取材する方:執事 古賀野さん
どんなお寺ですか?
橘寺は奈良県高市郡明日香村橘にある天台宗のお寺です。太子建立の七ヶ寺の一つです。
聖徳太子の時代よりさらに500年以上前の時代、「古事記」や「日本書紀」に伝わるお話ですが、第11代垂仁天皇が田道間守に「不老長寿の薬を探して私の前に持ってきなさい」と命を出されました。
約10年かかってトコヨの国から、「トキジクノカグノコノミ」を持ち帰りました。ところが垂仁天皇はすでに亡くなっていて、そのことを聞いた田道間守もそのまま亡くなってしまったそうです。
持ち帰ったトキジクノカグノコノミをこの辺りに、挿木したのか、蒔いたのか、植えたのか分かりませんが、たくさん芽を出したという伝説が伝わっています。このトキジクノカグノコノミこそが、ミカンの原種になる「橘」でした。
以来、この地には橘がたくさんなり、地名を「橘」と呼ぶようになり、お寺の名前の由来ともなりました。たいへん歴史の古いお寺です。
572年、欽明天皇の別宮で「橘の宮」のあったこの地に、第4皇子であった用明天皇と穴穂部間人皇女(あなほべのはしひとのひめみこ)を父母とされ、聖徳太子がお生まれになったと伝えられています。
本堂(太子殿)のご本尊は聖徳太子35歳の時、勝鬘経を講讃されたお姿とされる「聖徳太子座像」です。国重要文化財になりました。
お寺の見どころを教えてください。
のんびり、ゆっくり季節の風景を満喫できます。正門から本堂に続く参道を挟んで、右に本坊と観音堂、左に鐘楼、経堂、蓮華塚があります。ところどころで四季折々の花を楽しんでいただけますよ。
春には定番の桜ですね。棚田の上に咲く桜は外から眺めても、中に入って花に包まれて見るのも良いです。奈良県内では幹が一番太い大木の古い桜がございます。正門(東門)から石段を登ってくると満喫でき ます。
夏の太陽が照っている間、次から次へと咲いてくれる銀盃草(ギンパイソウ)は
お日様が大好きな元気者です。
秋に見事な紫色の実をつけるのが紫式部の花です。可憐な小さいピンクの花が一つずつ紫の実を結びます。
冬はお寺の名前の由来ともなった「橘」がしっかりと実をつけます。見た目は普通のミカンとそっくりですが、橘の実は酸味が強くて、そのまま食べるのには不向きなんですよ。マーマレードなどに使うと良いそうです。
東門を入って左手にある往生院の格天井は、現代画家らが競作した260点の花の絵で彩られています。格子のひとつひとつが美しく、圧巻ですよ。寝転んで天井を見上げてウットリされてる方もいらっしゃいますね。こちらで写経もできます。
「黒駒像」は太子様の愛馬の像になります。本堂の右前にございまして、災難厄除のお守りになっています。新春に馬を見ると長寿になると言われています。
「二面石」は飛鳥時代の石造物です。人の心の善悪二相を表したものと言われています。触っていただくことも可能ですよ。右の顔、大阪万博記念公園にある「太陽の塔」の顔に似ていませんか?
ご利益を教えてください。
御利益については、「ここは何々にきく寺」とか、「御利益はこれです」とか、そういったものはとくにございません。
聖徳太子様は、何でも聞いてくれます。
太子様は飛鳥時代の皇族で、偉大な政治家でもあり、仏教を厚く信仰し興隆に努めました。太子様によって制定された「十七条憲法」は仏教を敬うように定め、政治に役立てようと、仏教に影響された教えが記されています。
「和を以って貴しと為し 忤うこと無きを宗とせよ」
太子様は、「心をおだやかにたもち、相手の気持ちを考え、人と人との和を良くしていくことが大切である。相手に逆らうことなく、いさかいをおこさないことが大切である。」と教え導いてくださいます。
御朱印について教えてください。
「新西国三十三観音霊場」と「聖徳太子御遺跡第八番」の2種類があります。初穂料は300円です。
「新西国三十三箇所」は聖徳太子様の「和の道」を基調とし、新聞の読者の人気投票に基づいて、33箇所の観音霊場が選定された観音巡礼です。観音堂が第10番札所となります。
「聖徳太子御遺跡」は、聖徳太子様にゆかりのある28ヶ寺の霊場めぐりのことです。現在は36ヶ寺まで増えております。
橘寺オリジナルの御朱印帳「橘」(1,200円)、大きなサイズの「和」(2,000円)もご好評をいただいております。
御朱印はどうやってもらえばいいですか?
お寺を拝観していただき、本堂の左横に御朱印受付がありますので、そちらでお願いします。
お守りやお札はどんなものがありますか?
オリジナルの「聖徳太子」「田道間守」「橘寺」のお守りなどがあります。
とくに今年(令和4年)は聖徳太子御生誕1450年となり、聖徳太子お守りが注目を集めています。1400年を超えて今を生きる私たちが聖徳太子様に心を寄せることで、その理想に思いを馳せ、歩むべき未来を考える絶好の機会となるよう祈念いたします。
おすすめの行事やイベントはありますか?
「星祭り」は年の変わり目の節分に行われています。1年間の国家安泰・五穀豊穣・皆様方の無病息災及び厄除けを祈願し、護摩供により御祈祷をいたします。
毎年4月と10月に開催される「聖徳太子お会式」では、多くの信者の方にお手伝いいただき、ご参加いただいています。百味御食(ひゃくみおんじき)の御供えの後、太子殿(本堂)にて報恩法要が執り行われます。
拝観時間と拝観料について教えてください。
午前9時から午後4時30分まで受け付けをしています。拝観料は大人400円、中高生300円、小学生200円です。
近くでおすすめの観光地や飲食店はありますか?
目的によって行きたい場所が変わってくると思います。「橘寺の前は通るが、1回も入ったことがない」など、散歩を楽しむ方もいらっしゃいますからね。
橘寺の近くには「石舞台古墳」「飛鳥寺」「岡寺」などがあります。飛鳥駅近辺や石舞台古墳の近くには、観光地がたくさんあります。定番スポットになりますが、明日香村が一望できる「甘樫丘」や、石造物の代表的な遺跡「亀石」、「万葉集」がテーマの「万葉文化館」など、お出かけになる方が多いようです。
とくに飲食店のおすすめというのはございませんが、橘寺の近くですと、オシャレな古民家カフェ「珈琲 さんぽ」や、広々とした造りのカフェ「フラット(歩楽都)」がありますね。
これから拝観したい方へのメッセージをお願いします。
橘寺に行ってみたいと思って来られるなら、ほんの少しでも良いので、事前に調べてから来られると、いろいろなことにちょっとずつ興味が湧いてくると思います。なんとなく来られる場合でも、時間を考えずにふらっと立ち寄って、何か感じてもらえたら良いと思いますよ。
見どころも多いですし、歴史を感じてゆったりと拝観していただければと思います。時間に余裕を持って、お参りに来てください。
橘寺の基本情報
寺院名:橘寺(たちばなでら)
住所:奈良県高市郡明日香村橘532番地
電話番号:0744-54-2026
拝観時間:午前9時〜午後4時30分
URL:https://tachibanadera-asuka.jimdofree.com/