京都市左京区にある「詩仙堂丈山寺」へ取材に⾏ってきました。「ホームページの情報だけではよく分からない」「インターネット上の⼝コミや評判だけではよく分からない」という⽅は、ぜひ参考にしてください。
取材先の寺名:詩仙堂丈山寺(しせんどうじょうざんじ)
取材する方:副住職 石川裕之さん
どんなお寺ですか?
詩仙堂丈山寺は京都市左京区にある曹洞宗の寺院です。江戸時代初期、文人の石川丈山が寛永18年(1641年)に隠居のために建てた山荘が始まりで、現在は福井県にある曹洞宗の大本山永平寺の末寺の寺院となっております。
石川丈山は安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将・文人です。石川家は代々徳川家に仕え、丈山は家康公に対し忠誠心を持って勤めており、厚い信頼を寄せられていたと伝えられています。
1615年(慶長20年)、丈山が33歳で大坂夏の陣に参加した際、軍の命令に反し先陣を切って敵に攻め入った咎めを受けて蟄居を命じられます。それを機に武士を隠退しました。
隠退後は主に朱子学を極め、禅を学んだと伝えられ、59歳の時に草庵「凹凸窠」(おうとつか)を造営しました。90歳で没するまで悠々自適の生活を送り、漢詩や書、作庭に励んだと伝えられています。
「凹凸窠」(おうとつか)とは「でこぼこした土地に建てた住居」という意味で付けられましたが、のちに堂内の一室に中国の漢・晋・唐・宋の時代の詩人36人の肖像画を掲げている部屋を「詩仙の間」と言うことから、現在「詩仙堂」と呼ばれるようになりました。
また、当寺は四季折々の景色や日本ならではの風情が楽しめる場所として、過去には英国王室チャールズ皇太子と故ダイアナ妃が訪れたことでも有名ですね。
お寺の見どころを教えてください。
詩仙堂は過度な派手さはなく全体的に質素な佇まいで、茅葺き屋根で作られた本堂や門など随所から「詫び・寂び」の世界観を感じていただけるかと思います。
入口の小さな門「小有洞」(しょうゆうどう)をくぐると、竹林に挟まれた木漏れ日の注ぐ石段があります。石段を登ったところには中門「老梅関」があり、そこをくぐると詩仙堂の建物があります。
書院正面には「唐様庭園」と呼ばれる中国の山水画をイメージした庭園が広がっており、座敷に座り、ゆっくりとした時間を過ごすことができます。
春夏秋冬、いつお越しいただいても、季節の移り変わりを感じていただける場所です。とくに初夏のサツキの花が咲く頃、秋の紅葉の時期、冬の雪景色は必見ですよ。
また、庭園は歩きながらの散策もでき、四季折々の草花や「僧都」(そうず)もご覧いただけます。「僧都」とは、詩仙堂が発祥の地と言われる通称「ししおどし」のことなんですよ。
現在は日本庭園の装飾としてポピュラーになった「ししおどし」(鹿脅し・猪脅し)ですが、読んで字のごとく、もともとは田畑を荒らす鹿や猪を追い払うための仕掛けでありました。庭園に取り入れたのは丈山が最初だったそうです。丈山は静寂な庭に心地良い音のアクセントを得られて好んでいたそうです。
最近、SNSなどで人気のかわいらしいお地蔵様も庭園内におられ、拝観の方々の目を楽しませております。
ご利益を教えてください。
詩仙堂の御本尊様は三十三観音のひとつ馬郎婦観音(めろうふかんのん)であり、所願成就・学業成就に御利益があると言われております。
馬郎婦観音の言い伝えは、1200年以上前の中国、唐の時代にまで遡ります。当時の中国・長安の西、鳳翔地方の若者たちは伝統的な教養として六芸の「馬術」と「弓術」の修練に励んでいました。その頃、外来思想の仏教が浸透していましたが、若者たちは仏教が説く三宝(仏・法・僧)に耳を傾けず、蔑視さえしていたのです。
ある日、妙麗な一人の婦人が現れ、若者たちがこぞって求婚しました。すると婦人は求婚を引き受ける代わりに『観音経』や『金剛般若経』の暗唱など、全28項目の課題を与えました。そして1人の若者が課題を達成したのです。しかし、婚礼の席に花嫁は現れず、にわかに息絶えてしまいました。
それから数日後、紫の衣に身を包んだ老僧が現れ、花嫁を埋葬させた場所へ連れて行くと、棺の中から一連の金の鎖状の骨が出てきたのです。
「これは観世音菩薩の化身である。仏教を信じようとしない、きみたちの閉じた心の扉をひらくために、方便として婦人の姿をかり、ここから天空へ飛び去ったのである」と老僧は説いたのです。
その後、この観音は広く信仰され、わが国の京都大徳寺に伝えられたところから、鎌倉時代にはこの観音の信仰が行われたものと考えられています。
非公開ではありますが、お越しの際は本堂にてお手を合わせていただければ幸いです。
御朱印について教えてください。
御朱印は通年書置きの物をご用意しております(初穂料300円)。
御朱印関連では、詩仙堂オリジナルの御朱印帳を2種類販売しております(1,500円)。こちらの御朱印帳は、当寺を代表する初夏のサツキ・秋の紅葉の見頃をイメージしたものとなっております。
御朱印帳の表面は書き置きの朱印を差し込めるファイル型、裏面は朱印を直接書き込めるものとなっております。
御朱印はどうやってもらえばいいですか?
拝観受付にてお申し出いただければお渡しいたします。
お守りやお札はどんなものがありますか?
お守りの販売はありませんが、毎年正月三が日と節分に御祈祷したお札をお分けしております。
おすすめの行事やイベントはありますか?
堂内には石川丈山ゆかりの掛軸・書物・扁額などが一部展示されております。展示物には石川丈山が弟子の師匠に対する戒めを教えた『七ヶ条の覚』一軸や『福禄寿』の書一軸などがあります。また、丈山遺宝の六勿銘や天造几や扁額類など、貴重な作品を展示しています。
その他に狩野探幽が描いた寺宝「丈山壽像」や、丈山の所持の「木崑崙」「残月硯」「竹如意」、詩集では丈山作の『覆醤集』など、多くの書物が詩仙堂に保管されています。
多くの作品は普段非公開となっておりますが、5月23日の石川丈山の命日を記念して、毎年5月25日〜27日の3日間、「丈山翁遺宝展」を開催し、詩仙堂に遺る80点程の遺宝を一般公開しております。
拝観時間と拝観料について教えてください。
拝観時間は午前9時〜午後5時(最終受付は午後4時45分まで)です。拝観料は大人500円 高校生400円、小・中学生200円です。石川丈山命日の5月23日は拝観休止日です。
近くでおすすめの観光地や飲食店はありますか?
詩仙堂の近辺には、圓光寺・金福寺・曼殊院などの寺院があります。比叡山のふもと、一乗寺の街は豊かな自然と古い歴史を持つ多彩な魅力にあふれたエリアです。詩仙堂のほかにもいろいろな場所へ足をお運びいただければと思います。
詩仙堂への道中には、和菓子や洋菓子で人気有名店の「一乗寺中谷」があります。昔ながらの伝統を受け継ぎながらも、和洋折衷の新しい感性のスイーツを生み出していらっしゃいます。店内には懐かしい雰囲気のカフェスペースも併設されています。
※要予約や休まれている施設などもございますので、事前にご確認ください。
これから拝観したい方へのメッセージをお願いします。
詩仙堂は自然豊かな場所であり、普段の喧騒や忙しさを忘れ、心静かに過ごせる場所です。時の過ぎるのを忘れ、ゆっくりとした時間を過ごしていただければ幸いです。
皆さまに気持ち良く感じていただけるよう、庭園の清掃など心掛けております。お時間ございましたら、ぜひご参拝ください。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のためマスクの着用、手の消毒、咳エチケットにご協力お願いいたします。
詩仙堂丈山寺の基本情報
寺院名:詩仙堂丈山寺(しせんどうじょうざんじ)
住所:京都市左京区一乗寺門口町27番地
電話番号:075-781-2954
拝観時間:午前9時~午後5時 (受付終了午後4時45分)
URL:https://kyoto-shisendo.net/