和歌山県の高野山にある「金剛峯寺」へ取材に⾏ってきました。「ホームページの情報だけではよく分からない」「インターネット上の⼝コミや評判だけではよく分からない」という⽅は、ぜひ参考にしてください。
取材先の寺名:金剛峯寺(こんごうぶじ)
取材する方:宗務総長公室 中村光観さん
どんなお寺ですか?
金剛峯寺は、和歌山県伊都郡高野町にある高野山真言宗の総本山のお寺です。正式には高野山金剛峯寺(こうやさんこんごうぶじ)と申します。
金剛峯寺とは「高野山」と呼ばれる東西6キロ、南北2キロにわたる盆地一帯を指します。一体全てが「金剛峯寺」の境内地です。一般的なお寺のように建造物と境内がある「総本山金剛峯寺」だけではなく、とても広いんですよ。
高野山は、平安時代のはじめに真言宗の開祖弘法大師空海によって修禅の道場として開かれた日本仏教の聖地です。歴史の中で何度も衰退し、平清盛や北条政子、豊臣秀吉といったさまざまな人物が協力して復興を成し遂げてきました。
明治時代には仏教を廃する「廃仏毀釈」が起きました。高野山でも寺院の統合廃寺が促され、青厳寺(せいがんじ)と興山寺(こうざんじ)を合併し、「総本山金剛峯寺」といたしました。
高野山全体を大寺に見立てて建てられた山内の子院は、「塔頭寺院」(たっちゅうじいん)となりました。現在では117ヶ寺が存在し、そのうち52ヶ寺は宿坊として、高野山を訪れる参詣者へ宿を提供しています。
戦後は塔頭寺院もそれぞれ独立した宗教法人となり、また包括宗教法人である高野山真言宗の事務所が金剛峯寺内に置かれ、今に至ります。
平成16年7月には『紀伊山地の霊場と参詣道』として、世界遺産に登録されました。
お寺の見どころを教えてください。
高野山は世界遺産に登録された建造物や多くの寺院が密集しており、1日では廻りきれないほど広く見どころ満載です。なかでも二大聖地と呼ばれる「壇上伽藍」(だんじょうがらん)と「奥之院」(おくのいん)が全体の概略となります。
盆地の中央に位置する「壇上伽藍」は主要な法会の行われる高野山の中心で、高野山全体の本堂にあたる「金堂」や、そのほか「根本大塔」など諸堂が建ち並びます。
東の端に位置する「奥之院」は、20万基以上の墓石が参道に建ち並び、空海上人が今なお永遠の禅定を続けてらっしゃいます。これを「入定(にゅうじょう)」と言います。
そのほか山の正倉院と呼ばれる開館100年の「霊宝館」、写経体験と一般向けの「授戒」を受けられる「大師教会」、東照宮と同様に家康と秀忠の霊廟である「徳川家霊台」、女人禁制であったころの名残を残す「女人堂」など、さまざまな趣深い名所が多くあります。
また、高野山は春の桜は4月中旬頃から、そのあとに石楠花、夏は麓より7~8℃涼しく、秋は10月下旬から見ごろの紅葉、冬は雪景色など季節感のあるところです。
ご利益を教えてください。
ありとあらゆるお願い事を奥之院のお大師さまに祈願します。また、個人の菩提を弔う分骨の納骨なども行われています。別名、日本の総菩提所と呼ばれています。
御朱印について教えてください。
令和2年に「女人高野」が日本遺産に登録され、「女人堂」が注目を集めています。高野山は、明治5年まで女性の立ち入りが厳しく制限されていました。対して女性の参詣が自由であった寺院は「女人高野」と呼ばれ、「女人堂」もそれに含まれていました。
現在、「女人堂」では3種類の御朱印がございます。元来の「女人堂」で受けられる「大日如来」のほかに、お祀りされている「辯才天」、「神変大菩薩」(役小角 )が加わっています。
そのほか、金剛峯寺が管轄する場所ではすべて御朱印を受けられます。塔頭寺院毎や関連施設の御朱印もあります。初穂料は御朱印帳をお持ちいただければ300円です。
御朱印はどうやってもらえばいいですか?
金剛峯寺の管轄で壇上伽藍と奥之院は御供所(ごくしょ)で、霊宝館、金剛峯寺、大師教会、徳川家霊台、女人堂であれば、受付で申し込めばお参りや拝観後に受け取ることができます。
お守りやお札はどんなものがありますか?
人気がございますのが金剛峯寺オリジナルお守りの「共生守り」です。ピンクと緑がございまして、初穂料は700円です。
平成27年に「高野山開創1200年記念大法会」に向けて、記念事業の一つとして奥之院のお大師さまの御廟(偉人の霊を祀る場所)の屋根の檜皮葺き替えが行われました。
長年お大師さまをお守りした檜皮の切れ端を再利用してビニールに封入し、財布などにも入れやすいようにデザインされました。このことは「いのち」を大切にする当宗の理念にも繋がりますし、SDGsにも繋がる事業と言えなくもないですね。
ほかにも目的に応じてお求めできます。お守りでは、肌見守り、身代わり守、共生守、子宝安産守、学業守、子ども守、良縁守など。お札は家内安全、當病平癒、開運厄除等、また奥之院や伽藍では、護摩祈祷を申し込むこともできます。
おすすめの行事やイベントはありますか?
4月10日の「大曼荼羅供(だいまんだらく)」は高野山でもっとも起源が古く、重要な法会です。伽藍内の「大会堂」より山内住職が「金堂」まで行道(お練り)します。さまざまな金襴の衲衣(のうえ)と呼ばれる袈裟を着用され、きらびやかに繰り広げられます。
8月13日夜、奥之院参道では「ろうそく祭り」が行われ、亡者の御霊を偲ぶ数万本のろうそくが灯されます。
そのほか、旧暦の3月21日に行われる「旧正御影供(きゅうしょうみえく)」とその前日の夜、年に一度だけ内拝できる「旧正御影供御逮夜」(2022年は4月20日が御逮夜、21日が旧正御影供)、5月3~5日に行われる「春季結縁潅頂」、6月15日の「宗祖降誕会」、10月1~3日の「秋季結縁潅頂」と同日夜の「萬燈会(まんとうえ)」などなど、年間行事はたくさんありますね。
毎日朝6時と10時半から奥之院で行われる「生身供(しょうじんく)」も、一見の価値がありますよ。
コロナ禍で中止が相次いでおりますが、また多くの方がいらっしゃるのを心から願っております。
拝観時間と拝観料について教えてください。
各所8:30~17:00(受付16:30) です。ただし、霊宝館は夏季は変動します。
内拝可能なのは、壇上伽藍は根本大塔と金堂(各500円)、金剛峯寺(1,000円)、霊宝館(1,300円)、大師教会(写経1,500円、授戒1,000円)、徳川家霊台(200円)。
霊宝館以外の共通内拝券はお得です(2,500円)。
近くでおすすめの観光地や飲食店はありますか?
高野山内の散策がすでに観光地となります。
近くといってもバスで1時間ほどかかかってしまいますが、立里荒神社(たてりこうじんしゃ)、天野大社(丹生都比売神社)、龍神温泉、天川村などでしょうか。
山内の飲食店でおすすめは、さんぼう、梵恩舎、角濱ごまとうふ総本舗、光海珈琲、花菱などです。塔頭寺院で昼食(事前予約)という方法もありますよ。
これから拝観したい方へのメッセージをお願いします。
トレッキングをなさる方なら女人道(にょにんみち)や町石道 (ちょういしみち)を巡ったりするのもありです。麓より寒いので、1枚余分に羽織れるもの、また天候の変化が激しいので、雨対策などにもお気を付けください。
お車でもいいですし、南海電鉄からお得な切符などもありますので、それぞれのお好みで旅行計画を立ててお越しください。関西圏なら日帰りでもOKですが、冬は冬用タイヤ・滑り止めを忘れずに。また土日祝日は混み合い、とくに秋の紅葉期は麓から渋滞することもあるのでご注意ください。
コロナ禍で参詣者も観光客も激減しています。近年はインバウンドが6割を占めていただけにかなりのダメージを受けています。高野山にお越しの節は、3日くらいゆっくり滞在されて、存分に楽しんでいただきたいです。
金剛峯寺の基本情報
寺院名:金剛峯寺(こんごうぶじ)
住所:和歌山県伊都郡高野町高野山132
電話番号:0736-56-2011
拝観時間:8:30~17:00(受付16:30)
URL:https://www.koyasan.or.jp/