彼氏依存症？依存しやすい人の特徴15個と原因・克服方法【専門家解説】

※この記事は、臨床心理士の資格を持つライターが心理学の知見に基いて書いています。

「誰かに依存している」と聞くと、「自立できておらず、甘えている」というネガティブな印象を持たれやすいです。しかし、他人に全く頼らないことは孤立した人間を意味します。

自立の発達や、自他共に利益のある対人関係を築くためにも、依存は大切です。ほどほどに他者に頼り、頼られるという関係が一番大切と言えます。

では、もし過度に誰かを頼っているという状態になったら、どうなるのでしょうか？それは、頼られる相手にとっては重荷であり、頼っている本人の発達・成熟において悪影響を及ぼします。過度な依存は「依存症」と呼ばれ、問題です。

どうやったら、依存症から抜け出せるのか、効果的な克服方法をこの記事では考えていきます。

「彼氏依存症」とは彼氏に過度に頼ってしまう状態です。同じ恋人でも、彼氏依存症はよく聞くけど彼女依存症という言葉はあまり聞きません。女性が男性よりも依存的であることは多くの心理学の研究で指摘されています。一般に、男性の方が女性よりも独立心を求められるという社会風潮が、このことには影響していると考えられます。

「彼氏に頼っている彼女」と聞くと、可愛らしいというイメージを持たれるかもしれません。でも、それが「彼氏依存症」となると話は異なります。彼氏の発言や行動が世界の全てになり、彼女本人が自分のことも決めることができなくなっているとしたら…。それは彼氏にとっても彼女本人にとっても非常に危険な状態です。

彼氏依存症の人の中核的な特徴として、自分に自信を持てないことが挙げられます。一般に、何か自信がない時に他の人に頼りたくなりますよね。彼氏依存症の人の場合、それが日常的となってしまっているのです。

自分に自信を持てないため、ちょっとしたストレスでもきつく感じてしまいます。どっしりと構えることができず、非常に繊細でもろいです。そのため、ちょっとしたことでもすぐに彼氏に助けを求めたり、相談したりしてしまいます。

自分に自信を持てないことは、ありのままの自分を肯定できないという問題にもつながってきます。自分の価値を見いだせないのです。そのため、彼氏に尽くすことで自分の価値を見出そうとします。献身的な彼女と聞けば、素敵に聞こえるかもしれません。でも、彼女の行動の理由は自己否定感の払拭であるため、それは健全な行動とは言い難いものです。

自分でも自分のことが好きになれないため、他者と対面する際には、自分をいい方向に取り作ろうとしてしまいます。その結果として、本音で話せないことにつながります。また、どう言えばいいのか考えまごついてしまうため、上手に話せない人もいるかもしれません。

一般に、彼氏ができると友達付き合いが悪くなり、疎遠になると言われます。でも、彼氏依存症になりやすい人の場合、元々友人が少ないです。しかも、その友人に対してもなかなか本音で話せません。そのため、万が一にも彼氏と別れたら自分には本当に誰もいなくなってしまうという怖さを抱くことになります。

そんな自分でもなかなか好きになれない自分を彼氏は好きになってくれたと、彼女は感じています。彼氏だけは自分の存在を肯定してくれた、それは彼女の人生において何よりも嬉しい経験でした。そんな彼氏を彼女は何よりも大切に思い、執着的に好意を寄せます。同時に、彼氏に自分も同じように大切にされたいと思います。

彼女にとって自分を唯一認めてくれる彼氏は、誰よりも、何よりも大切な存在です。それは彼氏の発言や行動が自分の考え方や行動の基準となってしまうほどです。彼氏が喜んでくれるのなら、彼女は何でもしようとします。たとえ高額なプレゼントをねだられるという普通の恋人関係でもありえないようなことを要求されたとしても、それで彼氏が喜んでくれるのなら…と、彼女は何とかしようとするでしょう。

無理なことを言われたとしても、それだけ彼氏は自分のことを信じ、頼ってくれているのだと感じすらします。一般の価値観よりも彼氏の方が彼女には大切なのです。

服装や化粧、他にも自分に変えられることなら、すぐに彼氏の好みに合わせてしまいがちです。例えば、「今日の服、かわいいね」と言われたら、その服は今後のデートではよく着るようになります。また「このスイーツ好きなんだ」と言われたら、彼氏のためにそのスイーツを作ろうと頑張って挑戦します。

できるだけ彼氏の好みに合わせようとするため、何でも彼氏に相談してしまいます。例えば、本来洋服は自分の好みやTPO等に合わせて着るものです。でも、彼氏依存症の彼女の場合、自分で洋服を決めることができず、彼氏に相談してから買います。

また、彼氏が以前褒めてくれたものに似た洋服を探そうとします。そうすることで彼氏が自分のことをもっと好きになってくれると思っているのです。

一般に彼氏彼女という関係になると友人関係とは異なり、特に用事がなくてもたまにメールやラインを送ったりすることはあるでしょう。時には寂しくなり、声が聞きたいから電話したということもあるかもしれません。

でも、彼氏依存症の人の場合は異なります。ほんのわずかな間でも彼氏と離れているのが耐え難く、少しでもつながっていたいと思うため、頻繁にメールやラインを送ります。普通なら送りすぎているんじゃないかな、引かれないかなと思うほど送ったとしても、彼女にとっては足りないぐらいです。それほど、彼氏と物理的に、精神的に離れていることは彼女にとってはつらいことなのです。

彼氏依存症の人は頻繁に連絡を送るだけではなく、返信がすぐに返ってこないと心配するという特徴があります。普通なら、連絡に気づいていないだけだとか、男友達と遊んでいるだけだとか、仕事・アルバイト中だと考えるでしょう。でも彼氏依存症の人は、まさか自分のことを嫌いになったんじゃないのかな、何か事故に遭ったのではないかなと思い、不安になります。

スマホをいじりやすいのは彼氏への連絡を送るからという理由だけではありません。彼氏からも何か連絡が来ないかな…、そう期待してついついスマホに手が伸びてしまうのです。朝起きて無意識のうちにスマホを確認したり、夜寝る前にスマホを確認するのはもちろん、彼氏と会っていない時間はスマホチェックを欠かせません。

また、スマホには彼とのやり取りや今までの思い出の写真なども入っています。そういった彼氏と確かにつながっていた証を見ることで、彼氏のいない時間の孤独感を埋めようとするのです。

もし恋人から急に会おうと言われたら、どうしますか。特に用事がなければ、会うでしょう。でも、こちらにだって都合というものがあります。そのため、急に会おうと言われても会えないことだってあるでしょう。でも彼氏依存症の人の場合は違います。せっかく彼氏が会おうと言ってくれたのだから会う！となるのです。急に会おうと言われるのは、彼氏が自分のことをそれだけ想ってくれている証だと感じるのです。

そのため、彼氏から急に言われても大丈夫なようにするため、彼女はできるだけ彼氏以外の予定を入れないようにします。また、仮に他の予定が入っていたとしても、彼氏が自分に会おうと言おうものなら彼氏のためにその予定を断ります。

彼氏が自分の行動の中心となるのは、彼氏以外には楽しいことも、生きがいも見いだせないからです。本を読んだり、ウィンドウショッピングをしたり、一人でも楽しいことはいくらでもあります。友達とカラオケに行ったり、買い物することも楽しいでしょう。でも、彼氏依存症の人にとっては彼氏がいないと意味がありません。彼氏がいないと、彼女にとっては退屈な時間に過ぎないのです。

一般に、孤独感が強いと孤独を忘れようとして依存に走りやすいです。例えば、アルコール依存症がその顕著な例です。孤独を忘れようとしてアルコールにふけり、楽しい気分に浸ろうとするのです。しかし、孤独と依存の関係は鶏と卵の関係と同じです。孤独を和らげようと依存に走ることで、かえって孤立した状況を作りやすくなってしまいます。

これは、彼氏依存症の人の場合にも当てはまります。一人でいるのがつらいからと彼氏の元へ居続けるほど、彼氏以外の人間から社会的に孤立してしまうことにつながります。その結果、孤独感をさらに感じやすくなるため、彼氏依存症が悪化することになります。

彼氏に依存しやすい人の特徴（1）でも述べたように、彼氏に依存する原因の中核は自信のなさです。本当に自分に自信を持てるのなら、例えば彼氏に頼らなくても、自分のことを自分で決めることができます。もし彼氏が自分とは違う考え方をしていても、そういうこともあると違う考えの多様性を認めることができます。

でも、自分に自信がないため、彼氏の考え方や意見、行動を指針にしないと自分のことを決めることができなくなっているのです。

もし彼氏以外に楽しみや生きがい、趣味を持っていたら、それに熱中できます。そのため、彼氏中心の世界にはなっていません。彼氏依存症の人にとっての唯一の楽しみ、それが「彼氏」なのです。普通の人ならおかしいと思うかもしれません。でも、それが彼女にとっての当たり前となってしまっているのです。

自分ではどうにもできない強い孤独感を解消しようとして、彼氏に頻繁に連絡を取ったり、会おうとするのです。しかし、彼氏に依存しやすい人の特徴（15）で見てきたように、彼氏と一緒にいるほど、彼氏と一緒にいられない時の孤独感は更に強まります。

そのため、彼氏と付き合うほど彼氏に依存してしまい彼氏依存症がよりひどくなるという悪循環に陥っているのです。

彼氏の愛し方が分からない、彼氏への好意の伝え方を彼女が知らないのも、結果として彼氏依存症の行動を引き起こすことになります。彼氏に連絡をたくさん送る、彼氏が好きなものに合わせる、彼氏とできるだけ一緒にいようとする、それらは好意の一つの形ではあります。でもそれは、良く言えば純粋な、悪く言えば拙い好意です。

彼氏は彼氏であり、彼女は彼女です。別人である以上、一心同体とはいきません。そのことを本当に理解し、お互いの似た部分、違う部分を尊重しながら愛するということが、彼女にはできないのです。

自分に依存してくる彼女に対して、最初は彼氏も嬉しいと感じるでしょう。自分の好みに合わせてくれて、自分に頻繁に連絡をくれる彼女。彼氏からしたら、さぞや可愛いことでしょう。

でも、考えてみてください。一日に何度も何度もメールやラインが来たら、どうでしょう。自分が言った何気ない可愛いという些細な一言で、毎回デートでは同じ服を来て来たら…。連絡をすぐに返さないと、彼女が泣きついてきたら…。可愛らしいを通り越して、付き合っていくのが大変になってきます。そんな彼女を彼氏は重荷に感じてしまうでしょう。

好きになった女の子が彼氏依存症になると、最初から予想している人はあまりいないでしょう。そのため、自分の好きな本来の彼女が変わってしまったと、彼氏が感じることもあるでしょう。人によっては、主体性がない人は嫌いな人もいるかもしれません。でも、彼女と別れるのは難しいです。

彼女のことを重荷に感じ、自分が好きになった女の子のイメージが変わり始めると同時に、彼女の危うさに気づき始めます。常軌を逸した彼女の好意の寄せ方に、不安を感じ始めます。例えば、すぐに連絡を返さないと泣いたり怒ったりする彼女に対して、まるで管理されているような恐ろしさを抱きます。

万が一、自分が別れ話を切り出そうものなら自殺するかもしれない、そんな彼女をどう扱えばいいのか、彼氏も分かりません。

ただし、類は類を呼ぶではありませんが、彼氏依存症の彼女の好意を受けとめられる人もいます。他の何も求めず、ただ自分のことだけを一途に求めてくる彼女を愛おしいと思える彼氏。彼女がいてほしいというのなら、いくらでも一緒にいてあげる。美談のように聞こえるかもしれません。しかし、これは彼氏のほうも彼女依存症のような状態になっています。このように、互いに依存しあい、二人の中で世界の全てが完結しているような状態を、心理学では共依存と呼びます。

彼氏と彼女の二人の中で世界が完結しているため、それを阻む他者は二人からは邪魔者にしか見えません。そのため、他者が介入することができないので、これは一番危険なパターンです。例えば、二人でいることを優先するあまり、二人の世界に引きこもってしまうことにつながることもあります。そのため、学業や仕事を放っておいて、二人きりで居続けようとすることします。万が一、片方が死んでしまった場合には、後追い自殺をする危険性もあります。

依存症は一人ではなかなか治せません。彼氏や第三者から見た彼女の行動が異常であったとしても、彼女にとってはそれは当たり前の行動だからです。彼女にとっては彼氏依存症は問題とはなっていません。彼氏に依存している状態は彼女にとって心地よいから、彼女は彼氏に依存している状態につい甘んじてしまいます。

そのため、彼女に依存症を克服させようと思うのなら、まずは彼女の「彼氏依存症」を絶対に治すと彼氏が決意することが必須となります。

どんな問題でもそうですが、彼女自身が自分の行動は常軌を逸したものであることを自覚しましょう。しかし誰だってそうですが、自分のことを異常であるとは思えません。そのため、できるのならば彼氏が彼女の目を覚ましてあげてください。直接「君は依存症だ」と言うと、彼女は反感を覚えます。

そのため、まずは彼氏の友人・知人の話として彼女の行動を客観的に伝えてみましょう。彼女自身が「そうだよね、それはおかしいよね」と言ったら、実は彼女も同じ行動をしているということを伝えましょう。メールやラインなど客観的に形に残っているものを使いながら指摘するのも効果的です。

彼氏と彼女は同じ存在ではありません。彼氏と彼女は別人なので、彼女がどんなに一緒にいたいと思っても、ずっと一緒にいるということは不可能です。離れていたとしても、せめてラインやメールでつながっていたいと彼女がどんなに思っていたとしても、彼氏にだって都合がありますので、すぐには返事を返せないことだってあります。

ずっと一緒にいることはできない、ラインやメールでつながることもできないということを納得してもらうために、彼氏と彼女が別の存在であるという当たり前のことを、彼女には改めて理解してもらうことが大切となります。

彼氏依存症の中核は自信のなさであるので、彼女が自分自身を好きになることは彼氏依存症の克服につながります。しかし、彼女は自分自身のことが嫌いです。そのため、彼氏の口から彼女の良さを伝えてあげましょう。

彼女の良さを伝える際、できれば彼氏以外の人と接しているときの彼女の良さを伝えるようにしましょう。そうして、できるだけ彼女の目や世界を外に向けさせるようにしてください。

あえて、彼女が彼氏と会わない日を作りましょう。これは単に会う予定を入れないということではなく、「会わない」という予定を入れるということです。絶対に彼氏と会わない日を作ることで、彼女に彼氏から物理的に距離を置くようにさせましょう。

彼女が彼氏と会わない日に耐えられるようになってしばらくたったら、事故や怪我以外では絶対にお互いに連絡を取らない日を作ってみてください。彼女から連絡を送らないだけではなく、彼氏からの連絡が来なくても平気になるようにしましょう。

彼氏と合わなく、さらにスマホを触らない日をたまには作りましょう。現代人はどうしてもスマホを必須品のように思ってしまいます。でも、昔はスマホがないのが当たり前でした。スマホがなくても、やっていけます。

またスマホを持っていると分からないことはついすぐに調べてしまいます。スマホから離れることで、自分の考えを見つめ直すことができます。

彼氏と会わず、スマホも触らないと手持無沙汰になると思います。そこで、友人や知人、親戚などと会話したり、遊びに行くことも一つの手です。彼氏と一緒ではなく、彼氏以外の人と過ごすことに彼女は最初は抵抗を感じるかもしれません。

でも、とにかくまずは彼氏以外の人と会話したり、会いましょう。同性相手に恋バナをしたりするのもいいです。あるいは、スマホで調べたかったちょっとした分からないことや悩み事を話してみたりするのもいいでしょう。他の人と会話したり、遊びに行ったりすることで、様々な考え方、価値観があることを学ぶことができます。

新しい趣味を作るのも、彼氏と一緒にいない時間を苦痛に思わずに過ごすために必要なことです。趣味は何でも構いません。彼氏と同じ趣味でもいいですが、彼氏がいなくてもすることが可能な趣味であるほうが好ましいです。

お勧めなのは読書、特に恋愛ものです。今まで自分なりに行ってきた好意の伝え方以外の、他の好意の伝え方を学ぶことができます。そのことは、今まで以上の楽しい付き合いをすることにつながります。

習い事に行くことで他者と接し、世界や視野を広げることができます。また、習い事をすることでスキルアップを図れます。できることが増えることは自信につながりますので、自分の魅力が増えたように感じられて良いことです。

また、ボランティアをするのも時間つぶしにいいです。ボランティアをすることで誰かから「ありがとう」と言われると、嬉しくなりますよね。誰かに必要とされることは大切なことです。小さなありがとうでも積み重ねていけば、自己肯定感を高めることにつがなります。

彼氏依存症を克服することと、彼氏彼女の関係を止めることは違うことです。彼氏依存症を克服するのは彼氏のためでもあり、彼女自身のためです。そのため、彼氏依存症を克服することを恐れないでください。

彼氏依存症を克服するには、まずは自分を愛することがスタートです。彼氏が好きになってくれた彼女、すなわち自分のことを彼氏のように大切に思ってあげてください。そうすることできっと、今まで以上に彼氏と素敵な関係を築くことができるでしょう。