学校にも行かず、働かず、部屋で1日中過ごしているなら、もしかしたら引きこもりの状態になっているかもしれません。引きこもり人口は増加傾向にあり、国も対策を立てるほどの問題になっています。
そこで今回は、引きこもりの原因と、引きこもりになりやすい人の性格的特徴を解説。引きこもり解決策のヒントも紹介します。
引きこもりの定義とは?
厚生労働省では、引きこもりの定義を以下のように説明しています。
「仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態」を「ひきこもり」と呼んでいます。
厚生労働省では6ヶ月以上と定義していますが、「では5ヶ月なら引きこもりではない」とは言い切れないのが実情です。家から外へ出ず、改善される見通しがつかない場合、引きこもりと言っても良いのかもしれません。
厚生労働省の調査によると、20歳から49歳の引きこもり経験率は11.8%。10人に1人以上の割合で引きこもりの経験があるという結果です。また、引きこもり存在率は約32万世帯と言われています。引きこもりは決して他人事ではなく、自分の身にも起こるかもしれない身近な存在なのです。
引きこもりの原因や理由12個
引きこもりの原因は様々です。また、「こうしたら引きこもりになる」「こうすれば引きこもりにならない」という明確な答えはありません。しかし、引きこもりの原因になり易い要因は存在します。そこで、引きこもりの原因を紹介します。
■1. 親から過度な期待をかけられる
引きこもりの原因は家庭環境に大きく影響を受けると言われています。本来家庭は心身を休ませ寛ぐ場所のはず。しかし、家庭内に問題があると、内でも外でも精神的苦痛を感じ、それが原因で引きこもりになることがあるのです。
引きこもりの原因となる家庭環境の1つが、親から過度な期待をかけられている状態です。親は誰でも子供に期待するものですが、それが大き過ぎると負担になります。「頑張れ」「やればできる」「もっと努力しろ」「これでは足りない」など、常に上を求められると、子供は「今の自分ではダメなんだ」と、自己否定するようになります。
ありのままの自分では愛されないと誤解し、親への不信感を募らせます。そして、ついには心を閉ざし、引きこもるようになってしまうのです。
■2. 親が無関心無干渉
親の過度な期待や過干渉は子供によっては強い苦痛を感じます。しかし、それ以上に辛いのは、親の無関心と無干渉です。親が自分のことに忙しく、子供と機械的に接すると、「愛されていない」と子供は感じてしまいます。収入を得て子供を育てるための忙しさでも、親がそれに精一杯になってしまうと、子供に愛情が伝わらないのです。
親から無関心無干渉された子供は、自暴自棄になります。自分が大切な存在だと思えず、「どうでもいい」と投げやりになってしまうのです。そして、全ての意欲を失い、これが引きこもりのきっかけになります。引きこもりの入口で親が心配しても、「どうせ自分に関心がないくせに」と、既に心を閉ざしているので聞き入れてもらえません。また、親の無関心が過ぎると、子供が外に出ないことに気付くのが遅れますが、これも引きこもりの原因です。
■3. 夫婦仲が最悪
夫婦仲が悪く、常に家庭内の雰囲気が最悪なのも、引きこもりの原因になります。常に親の顔色を窺うようになり、場合によっては「自分のせいで両親の仲が悪い」という誤認識をしてしまいます。当然家庭で安らぐことなどできず、常に緊張を強いられます。夫婦仲の悪い両親を見たくなくて、自室に引きこもりがちになり、本格的引きこもりに発展します。
更に、両親は子供にとって最も身近な将来のビジョンですが、その関係性が最悪の場合、自分の未来に悲観的になってしまうのです。未来に希望が持てなければ、意欲は失われて、引きこもりの原因になります。夫婦仲悪く最悪な家庭内環境が子供に及ぼす影響は大きいのです。
■4. 頑張り過ぎて息切れする
今まで自他共に認める優等生が、急に引きこもりに転ずるケースもあります。これは、本人が自覚している以上に頑張り過ぎてしまい、自分のキャパを超えて心がポッキリと折れてしまうのが原因です。頑張り過ぎることがいつの間にか大きな負荷となり、その反動で別人のように引きこもりになってしまうのです。
親が過度な期待をかけて頑張らざるを得ない場合、本人の中でずっと「辛い」という思いがあります。しかし、自主的に頑張っていると、実は大きな負担になっていると無自覚なので、本人も「頑張りたいのに気力がわかない」と、より一層苦しんでしまいます。
■5. 受験の失敗
ゴールを目指して努力していたのに、その想いが報われないことがあるのが受験です。志望校に合格すべく、ギリギリのところで踏ん張って頑張っていた場合、受験の失敗が大きな挫折となり、「努力は報われない」と無気力になってしまいます。これも、引きこもりの原因です。
大きな挫折にぶつかると、再び頑張る気力がわかないのです。滑り止めの学校に合格しても、学校生活を楽しめず、「本当の居場所はここじゃない」という思いが強まります。そして、現実逃避をするように、引きこもっていくのです。
■6. 就職活動の失敗
就職活動の失敗も、大きな挫折です。特に、学業優秀で受験で結果を出してきたタイプが、社会に出る就職活動で躓くと、今までの自分を否定されたような気持ちになり、大きな挫折感を持ちます。真面目な人程「自分は社会に受け入れられない存在だ」と、強い劣等感を持ってしまいます。
就職活動はテストの点数が良ければ受かるという明確な基準がありません。そのため、「努力不足」ではなく「人格否定」と受け取ってしまい、外に出るのが恐くなってしまうのです。学校と社会では価値観が変わってしまう現実が受け入れ難く、引きこもりの原因となります。
■7. いじめ
いじめも引きこもりの大きな原因です。受験や就職活動で成功し、意欲的に新生活を送っていても、運悪くいじめに遭遇し、そこから逃げざるを得ない状況に追われて引きこもりになります。
しかも、いじめで引きこもりになるタイプは「いじめられる自分が悪い」と思い込みやすく、いじめられている自分を知られるのが嫌で、誰にも相談できません。そのため、家族はなぜ急に引きこもりになったのかがわからず、「頑張れ」「怠けるな」と、心無い言葉を本人に言ってしまい、心を閉じて益々引きこもってしまいやすいのが問題です。
■8. 学校に馴染めない
受験や就職活動の失敗といった大きな出来事がなくても、引きこもりになるケースがあります。具体的ないじめなどの問題がなくても、学校で仲の良い友達ができなかったり、仲間内で諍いが起きて居場所がなくなったりした場合、大きな精神的負荷がかかります。そして「学校に行きたくない」という思いが強まり、場合によっては家を出ようとすると体調に異変が起こり、気持ちと体が伴わなくなることもあるのです。
最初は「行きたくない」「少しだけ休もう」と、数日間休みます。しかし、休み明け更に学校にいづらくなり、また休むのを繰り返す内に不登校、引きこもりへと発展してしまうのです。
■9. 職場に馴染めない
大人でも、職場に馴染めないと引きこもりの原因に成り得ます。ただ馴染めないだけではなく、上司や先輩など仕事を教わる立場の人と折り合いが悪かったり、パワハラやセクハラなどがあるブラックな職場だったりすると、本人には辛い状況です。
しかし、それが初めての職場だと、「馴染めない自分の方がおかしいのか」と自己嫌悪に陥り自信を失います。そして、解決策を見出せず、出社できなくなり、引きこもりの原因になるのです。
■10. 人間関係で躓く
精神的負担は引きこもりの原因になりますが、全般的に人間関係で躓き、それがきっかけになることが多いです。現代はいつでもネットで繋がることができますが、それは裏を返せば常に強制的に繋がっており、逃げ場がないことを意味します。
そのため、人間関係の小さな躓きも家庭に持ち帰りやすく、悩みが深くなってしまうのです。家にいてもLINEなどで上手くいかない人間関係を突き付けられ、外に出るのが辛くなり、引きこもりの原因になってしまいます。
■11. ゲームやネット依存
ゲームやネットにハマり過ぎると、可能な限り家にいて、そればかりしたいという気持ちが強まります。切り替えて会社や学校に行ける内は問題ありませんが、深みにはまり依存状態になると、学校や会社よりもゲームやネットを優先するようになってしまいます。そして、休みがちになり、それがいつしか引きこもりに発展してしまいます。
■12. 発達障害の二次障害
引きこもりの原因が発達障害からくる二次障害の可能性もあります。発達障害とは、生まれつきの脳機能障害で、人とは物の見方が違ったり、感覚が違ったりします。繊細でストレスの弱い特徴を持っている人も多く、普通の人なら気にせずスルーできることが、発達障害の人には大きな負担になります。
しかし、当人も周囲も発達障害に気付かず、配慮のないまま無理をし続けると、外に出るのが耐えきれなくなり、家で荒れたり引きこもりになったりといった目に見える問題が出てきます。これを二次障害と言います。
この場合、どのような特徴を持つ発達障害なのかを理解し、適切な対処が必要なのです。しかし、引きこもりの原因が発達障害だと気付かないケースも多く、「これくらい努力で乗り越えられる」と更にプレッシャーをかけられてしまうと、益々引きこもりは酷くなります。
引きこもりの原因や理由の特徴【男性編】
引きこもりの男性の割合は70%とされ男性の方が多いようです。男性が引きこもりになる原因には、対人関係が上手くいかないというのがあります。会社などで孤立したり、対人トラブルが多いと人との関わりが面倒になりがちです。周囲に人がいるにも関わらず、話しがし難くいと孤独感より一層増すとされます。
男性は女性よりもプライドが高めなので、どうしても自分と人とを比較しがちです。自分の能力などが人より下回っている場合、必要以上に劣等感を抱えることになります。男性の場合、こだわりが女性よりも強い面もあります。
また男性は親の稼業を引き継ぐことが多く、親から過度の期待をかけられる傾向にあります。それに応えられないと、親に対して申し訳ない気持ちが増し挫折感がより一層増します。これらのことが主な原因となり家から出るのが億劫になり引きこもることになります。
引きこもりの原因や理由の特徴【女性編】
引きこもりの割合が低い女性ですが、女性なりの理由があるようです。女性が引きこもりになる原因には、ストレスを溜め込み過ぎるというのがあります。ストレスによって体調不良になりがちで、睡眠も不足するとされます。特に冬場などは布団から出にくくなり、会社などを休みやすくなります。それが常態化するわけです。
女性は失恋のショックが大きい人が多く、なかなか立ち直れないとされます。これが人への不信感を呼び、人と接するのが億劫になります。何事も無気力になるようです。職場などで陰湿ないじめにあったり、仲間外れにされ精神的な苦痛を強いられることも多いと言えます。そこから家を出ることに恐怖感を抱いたりします。
女性の場合、周りの人から嫌われている自分に嫌悪感を抱きやすい面もあります。これらのことが主な原因となり家から出るのが面倒になり引きこもるとされます。
引きこもりの原因や理由の特徴【大人・社会人編】
引きこもりは男女別の原因の他に社会人特有のものもあります。社会人では近年、中高年の引きこもりの割合が増加しているようです。働き盛りとされる30代~40代で仕事に挫折して、引きこもる人が多いとされます。周りの同年代の人がバリバリと働いているのを見ると、より挫折感が増すようです。
職場での様々なハラスメントも精神病になるきっかけになり、退職するケースが多くなります。ハラスメントで退職すると、そのまま家にこもる可能性が高くなります。インターネットの普及も一因の一つに数えられます。昨今、インターネット上で稼ぐことができ、買い物からゲームまで全てをネット上で完結することができます。人と接することが苦手な人にとって、外出することにあまりメリットを感じなくなります。特に引きこもる原因などがなくても、なんとなく引きこもり、それが常態化することもあるようです。
引きこもりの原因や理由の特徴【小・中学生編】
引きこもりの原因には小・中学生特有のものがあります。一番に挙げられるのが不登校とされ、80%以上の子供が経験していると言われています。不登校になる要因には、学校でのいじめを含む学校生活、親の離婚などの家庭環境、本人の性格的な問題、受験の失敗などが考えられます。不登校の身体的な症状には、通学時間になると腹痛や頭痛が起こすとされます。何に対しても無気力になったり、発達障害を伴うこともあります。
この他の原因としては、近年ゲームやインターネットへの依存があります。大人にも言えることですが、子供の場合、自制心が弱いので、特に依存度が高くなるようです。自分に嫌悪感を抱いている場合、ゲーム上の別人格に自分を投影し満足して、そこから抜け出せなくなっていることも考えられます。これらのことが引きこもりの理由と言えます。子供の時期に引きこもりになると社会性が乏しくなり、成人後も就職などで苦労することになります。
引きこもりになりやすい人の性格的特徴8個
引きこもりの原因は様々ですが、同じ状況下でも乗り越えてしまう人と、引きこもりになってしまう人が存在します。この差は、周囲の環境と、そして本人の気質によって生じます。引きこもりになりやすい人には、どんな性格的特徴があるのでしょうか。
■1. 感情を外に出さない
引きこもりになりやすい人は、内に感情を込める特徴があります。喜怒哀楽の感情を外に出すのが苦手なのです。特に、辛いこと、苦しいこと、悲しいことは人に相談せず自分で抱え込んでしまいます。その理由は、周囲を困らせてはいけないと考えているからです。
引きこもりになる原因に「親から過度な期待をかけられる」とありましたが、この場合常に親からの評価を気にして「良い子でいなければならない」と、弱い自分を隠すようになります。また、家庭環境が悪いと、家族を信頼しないため、「相談しても意味がない」と、助けを求めるのを諦めてしまうのです。
■2. 不満を溜め込む
感情を外に出すのが苦手だと、ヘルプ発信ができず、不満を溜め込んでしまいます。そして、問題を抱え込んでいる内にどんどん大きくなり、その反動が引きこもりという形で表れてしまいます。引きこもりやすい人は、普段不満や愚痴、弱音など吐かないのです。
だから、問題の早期解決が難しくなります。引きこもりの原因は色々ありますが、何事も早い内に手を打てば、問題を拗らせる前に解決できるものです。しかし、引きこもりしやすい人は、感情を外に出さずに不満を溜め込んでいるので、辛い状況が周囲に見えずスルーされてしまいます。これも、引きこもりの原因です。ギリギリまで不満を溜め込んで、結局引きこもるしかない状況に自分を追い込むのが、引きこもりしやすい人の特徴なのです。
■3. 真面目で頑張り屋
「怠けもの」「自分勝手」と誤解されがちな引きこもりですが、引きこもりしやすい人は、真面目な頑張り屋が多いです。真面目に頑張り続けた結果、引きこもりの状態まで精神が疲労してしまいます。簡単に外に出られない程、ダメージを受けてしまうのです。
一方、楽観的で本当の怠け者は、引きこもりに追い詰められるほど努力を継続しません。適当に休んで適当に手を抜くのが上手だからです。引きこもりしやすい人は、努力の力加減ができない位、真面目な頑張り屋です。
■4. 口下手
外に気持ちを発信したいと思っても、口下手だと上手く伝えることができません。そのため、家庭でも会社や学校でも、本当の気持ちを相手に伝えられず、精神的負担を蓄積していきます。また、口下手な人は言い返すのも苦手なので、相手から不本意な発言をされても、反発できず飲み込んでしまいます。
これも、問題を大きく拗らせる原因となります。人の気持ちを察するには限界があり、口下手だと、自分がどうしたいのかが相手に伝わりません。そのため、周囲も負担に感じていると気付けないのです。
■5. 不安感が強い
引きこもりになりやすい人は、普通の人より不安感が強い特徴があります。ちょっとしたことでも心配し、考えても仕方のないことで不安になってしまいます。だから、人間関係に躓くと、「場の空気を壊してしまうかも」「受け入れてもらえないかも」と不安になり、外に出る勇気がなくなってしまうのです。そして、引きこもりに発展してしまいます。
■6. 他者からの評価を過剰に気にする
「自分は人からどう見られているのか」を強く意識するのが、引きこもりになりやすい人の性格的特徴です。他者からの評価を過剰に気にしてしまうのです。だから、親の過剰な期待に応えようとするし、如何なる場面も真面目に頑張り過ぎてしまいます。これが精神を疲弊させ、ある日を境に頑張れなくなってしまうのです。
しかし、他者からの評価を過剰に気にする性格のため、引きこもり状態の自分に対し「ダメな人間だと思われるに違いない」と、ネガティブに考えてしまいます。不安感が強いのも相まって、「もう自分は見限られる」と絶望し、外に出られなくなるのです。
■7. 自己肯定感が低い
引きこもりになりやすい人は、自己肯定感が低い特徴があります。自己肯定感とは、「自分は愛される存在だ」「必要で大切な存在だ」と無条件に思える心理を指します。そして、自己肯定感は幼少期に養われます。そこにいるだけで親から無条件に愛され、大切に扱われることで、「自分はこの世界で掛け替えのない大切な存在」と自己肯定感が育つのです。そして、自分で考えて決断し、自分の人生を活き活きと送れます。
一方、自己肯定感が低いと、「本当にこれで良いのか」「自分は人から嫌われているのではないか」と、自信を持てません。そのため、周囲の評価を過剰に気にして、人に合わせる行動ばかりしてしまいます。すると、自分の気持ちは置いてけぼりになりますから、気付いた時には強いストレスに大きなダメージを受け、外に出られない引きこもり状態になってしまうのです。
■8. 自己効力感が低い
自己肯定感だけではなく、自己効力感が低いのも、引きこもりしやすい人の特徴です。自己効力感とは「自分ならできる!」と根拠がなくても思える心理です。自己効力感があれば、ポジティブなイメージを持ち、できると信じて行動できます。初めての場面でも、困難な場面でも、挫けず強い気持ちで臨むことができるのです。
しかし、自己効力感が低いと、「自分には無理だ。できない」というネガティブなイメージしか持てません。引きこもりしやすい人は、真面目な努力家が多く、負のイメージを努力で補っているのですが、何かをきっかけに挫折すると、ネガティブ思考が全開になってしまいます。自己効力感が低いので、挫折するとそこから立ち上がれなくなってしまうのです。
引きこもりの解決策・脱出方法6個
引きこもりの解決策として、「本人のペースを尊重し見守る」という方法があります。しかし、いつまでもただ見守るだけでは、返って引きこもりを長引かせてしまう場合もあるのです。では、どうすれば良いのでしょうか。
■1. 本人をそのまま肯定する
引きこもりは怠けているように見えますが、本人は「外に出たいけど出られない」と苦しんでいます。そして、「こんな自分はダメだ」と、自己嫌悪して、身動きがとれなくなっています。また、外で自分を否定され、精神的に大きなダメージを受けているケースも考えられます。そのため、非難されると過剰に恐れているのです。
この状態で「こうしたら?」という提案をされても、否定されているとしか受け取れません。だから、まずは今の状態の本人をそのまま肯定してあげましょう。口を開いてくれるなら、どんな話でもひたすら聞いてあげるのです。
引きこもり、心を閉ざした状態だと、話を遮られただけで「どうせ聞いてもらえない」と諦めの気持ちが強くなります。とにかく、ひたすら話をきいて「そうだね」と共感し、全てを肯定してあげるのが先決です。
■2. 家族が愛情を持っていることを伝える
引きこもり中は、「どうせ自分なんて誰にも愛されない」「価値がない」と考えがちです。でも、それは「愛されたい」という気持ちがある証拠。だから、家族が愛情を持っていることを、言葉と態度で伝え続けましょう。
「あなたは大切な存在」と言葉で伝え、栄養を考えて3度の食事を用意しましょう。体の健康を損なうと、精神状態も不安定になるので、バランスの良い食事はとても大切です。家の中もこまめに掃除し、過ごしやすい環境づくりをしてあげましょう。
「愛されている」という確信が、信頼関係を結びます。信頼関係ができれば、家族の言葉に耳を傾けるようになります。
■3. 家庭内で会話できる環境を増やす
引きこもりを解決するためには、徐々に人とのコミュニケーションを増やさなければなりません。最初のとっかかりとして、家庭内で会話できる環境を増やしていきましょう。家族としては、「早く引きこもりを解決してあげたい」という気持ちになるでしょうが、まずは雑談からが良いでしょう。家族とのちょっとした雑談がホッとした一時になれば、少しずつ気持ちが外に向けられるようになります。
雑談をしながら、外の情報を当人に教えてあげましょう。今日どんなことをしたかという他愛のない内容で良いのです。家族との会話を介して外の世界と触れ合い、外への関心を高めていってください。
■4. 外部との接触機会を作る
家庭内でくつろぐ時間ができたら、次は少しずつ家の外に出る機会を作っていきましょう。引きこもりの人は、外の世界に出るのに強い不安感を持ちます。人の目を気にするので、日中は「知っている人に会いたくない」と拒まれるかもしれません。家の窓を開ける、玄関の掃除をする、人通りの少ない夜中に散歩に出るなど、少しずつレベルアップしていくのがコツです。
■5. 場合によっては引っ越しも検討する
もしも、引きこもりの原因が明確になっていて、本人が今の環境のまま外に出ることを強く恐れるなら、ガラッと環境を変えるために引っ越しを検討するのも1つの解決策です。とは言え、引っ越しは簡単にできるものではなく、また、必ずしも引っ越しで解決するとは限らないのが難しいところです。
■6. 専門機関に相談する
引きこもりの解決策を実行しても、改善の兆しが全く見られないこともあります。この場合、自己流で対処せず、早い内に専門機関に相談することをおすすめします。引きこもり問題はとても難しく、専門家の助けがなければ解決できないケースも多いのです。本人も周囲も気付いていない、発達障害や精神疾患が原因で引きこもりになっている可能性もあります。適切な相談窓口に連絡することで、打開策が見つかるかもしれません。
現在厚生労働省はひきこもり対策事業を推進しています。専門機関は複数ありますが、どこに相談すべきか迷った時は、まずはひきこもり地域支援センターに問い合わせると良いでしょう。社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士など、専門資格を持ったコーディネーターが、引きこもりの解決策を一緒に考えてくれます。
引きこもりがダメと言われる理由
精神的に追い詰められて凶悪犯罪を起こす人も中にはいるかもしれません。稼ぎがないので、暮らしていくために万引きなどをする人もいます。それでも大多数はそのような問題を引き起こすわけではないと言えます。
特に引きこもることで、人に迷惑をかけることは少ないのですが、社会的な生産性がないのは事実です。また働き盛りの世代の人が引きこもるということは、納税面や保険制度維持に少なからず影響があります。その数が増えるようでしたら、引きこもりを解消するために国が動かなくてはなりません。
日本は高齢化して社会の生産性が落ちている中、働けたり学べる要素を持っているのに家に閉じこもっていることは良いとは言えません。社会的にはNGと見なされるわけです。
引きこもりは本当に悪いこと?
引きこもりと言うと暗くネガティブなイメージがあり、明るくハツラツとした暮らしとは言えません。長期間にわたる引きこもりは、何らかの問題を引き起こします。本人にとって人生の充実感が得られていないと、一般的には見なされがちです。
しかし短期間の引きこもりなら、人生選択の息抜きになったりします。ある種の安全弁のようなものになり、自分を見つめ直すチャンスにもなります。世の中の人全員がエリートで成功者というわけではないので、多様性のある生き方が求められても良いはずです。
また人の価値観は様々で、どう生きるのが良いかという押しつけは違った問題になります。必ずしも悪いとは言い切れないのではないでしょうか。一元的に悪いと決めつけるのは早急な気がします。
引きこもりのメリット
引きこもりになるとおしゃれをして外出することがなくなり、その分、着飾る服や靴などはかう必要がなくなります。暑さ寒さに合わせた普段着があれば事足ります。女性の場合、紫外線を浴びる機会が減るので、シミなどの肌の劣化が減ることになります。余計なUV避けクリームなどを買う必要がなくなります。外出しない分、汚れないので、風呂や洗濯の回数が減ります。
人付き合いをしていないので、交際費はゼロにできます。もちろん人付き合いに伴う、軋轢を感じることは全くないはずです。遠方の人と会うこともなく交通費はかかりません。移動はせいぜい近所のコンビニなので、交通事故に遭う確率は低くなります。結局のところ、嫌な思いをせず、無駄な出費がなくなるわけです。
引きこもりのデメリット
毎日に変化が少なく曜日感覚がわからなくなり、時間の経過を気にしなくなります。全く人と話さないので、感情の吐け口がなく、ちょっとしたことを深刻に考えてしまうようです。社会の変化や世の中の動きについて行けなくなります。インターネットのニュースで動きをつかんでいてもリアル感がなく、よその国の状況というような感覚になります。
仕事をしていない人が多いので、無収入ということが考えられます。たまに人と会った時に、声が出にくかったり、会話がスムーズに進まなくなるようです。会話は頭を使う行為でもあるので、頭の回転が鈍くなる可能性もあります。あまり歩かない分、筋力が落ちるはずです。家にいるとインターネットや照明、エアコンなどの電気代が増えると言えます。引きこもるとこれらのデメリットがあるはずです。
引きこもりの捉え方
何らかの精神的な痛手から引きこもりになっている人がほとんどで、以前は何事にも無力で人生の落伍者的な見方がありました。しかし、このところ引きこもの人の中に無気力から脱して、在宅ワークなどでお金を稼いでいる人がいます。
また世の中の働き方が多様化しているので、精神的な痛手がなくても在宅ワークをしている人もいます。そのような人がインターネットで買い物をすることはよくあることです。外出する機会は減るかもしれません。通勤時間もなく自由に使える時間が増えるわけです。もしかすると人生が充実しているのではないでしょうか。
はた目には引きこもりと見なせても、本来の引きこもりとは意味合いが違ってきます。家にいるからと言って、そのような人全てを引きこもりとは捉えられません。引きこもりの定義はあいまいになりつつあります。
さらに引きこもりが存在できるのは、世の中や社会にその背景があるはずです。貧困や戦争が頻発している国では、引きこもってなどいられません。能動的に行動していないと暮らして行けないのです。安全に引きこもっていられる場所もないでしょう。引きこもりがいられる社会は、ある意味豊かな社会の側面でもあるわけです。
引きこもりだった芸能人・有名人
以前に引きこもりだった芸能人などでは、千原ジュニア、瀬戸康史、宮本亜門、星野源、YOSHKI、なだぎ武、マツコ・デラックス、IKKO、真鍋かおり、指原莉乃、柴田淳、安藤美姫などの方々が挙げられます。
まとめ
引きこもりにもタイプは様々ですが、共通しているのは外に出られない自分に対して焦っていることです。一見怠けているように見えても、実は外に出られない自分と葛藤しています。それを理解し、共感して手を差し伸べるのが大切です。
引きこもりは本人だけではなく、家族にとっても辛い状況です。引きこもりを予防するためにも、日頃から家族の会話を大切にしましょう。そして、万が一引きこもりになってしまったら、家庭内だけで頑張らず、外へ助けを求めてくださいね。