夫婦が離婚を考える時は、どのような時でしょうか?
一般的には、浮気やDVが発覚した場合に、離婚の話し合いが行われるものです。しかし、そんな中「性格の不一致」を理由に離婚を考える夫婦も、非常に多いのが事実です。要は「気が合わないから」別れるということです。
端から見ると、「結婚する前に、どんな性格かくらいは、わかってたんじゃないの?」と言いたくなってしまいそうですが、付き合い立てで、ラブラブな頃は「性格の不一致」はマイナスどころか、むしろプラスに感じられるものなのです。「この人は、自分に無いものを持っている」ということが、憧れやトキメキとなるわけです。それが長時間一緒に暮らす事で徐々に色褪せてきてしまい、相手の中に、自分とは違う部分があると「許せない」と感じられるようになってきてしまうのですね。
でも、ちょっと待ってください。「性格の不一致」を理由に別れるということは、逆に、性格が全く一致している相手となら、一生ケンカもなく添い遂げられるということなのでしょうか?
いえいえ、そんなことはないでしょう。まず、第一に、この世に性格が全く一致する相手など、存在しないと考える方が自然です。もちろん、近い、遠いはあるかも知れませんが。どんなに性格が違っていても、お互い、本当に相手のことを愛していれば、考え方一つで離婚はいくらでも避けられるのです。
それでは、具体的にどのような考え方を確認すれば、夫婦が離婚で別れるような事態を避けることができるのでしょうか?
1.男女の脳の違いについて知識を深めよう
アナタとパートナーとの間で起こっている「性格の不一致」は、実は個人的な性格そのものの不一致というより、「男女の性質の違い」から来る不一致なのかも知れません。同じ人間といえども、男と女では、脳の作りが全く違うということが、最近の研究でどんどん明らかになってきています。この違いを理解し、互いに受け入れることができた場合、かなりの確率で離婚を避けることができるでしょう。
なぜなら、今後どのような異性と再婚したとしても、結局また同じ問題が発生することに気づくでしょうし、相手のイヤなところが、個人的な性格によるものではなく、性別から来る特性なのだと気づいた瞬間、「許せない」と思っていたことが「それならばしょうがない」という意識に変わるからです。
■よくある具体的な事例
具体的な事例を説明しましょう。会社で仕事をし、疲れきっている旦那と、家で一日家事や育児を頑張り、ヘトヘトになっている妻がいたとします。そんな妻の元へ旦那が帰って来たら、どうなるでしょうか。妻は、旦那が帰ってきた途端、「ちょっと聞いてよ!今日は、あんなことがあって、こんなことがあって、私はあんなこともやって、こんなこともやって…」と愚痴をこぼし始めます。ここで、旦那の方も「えー?それは大変だったね!実は俺もさー、あんなことがあって、こんなことがあって、あーして、こーして…」と、同じように愚痴をこぼし始めたら、事態はむしろ良い方向に進む可能性が高いです。女性は、相手と愚痴をこぼしあい、お互いの辛さについて共感しつつ、おしゃべりで盛り上がることが大好きなのです。
しかし、実際のところはどうでしょう。多くの家庭では、帰ってくるなり愚痴をこぼし始めた妻に対し、旦那は「勘弁してくれ」と思うはずです。そして、妻の口数の多さに辟易し、「お願いだから一人にしてくれないか」と言って部屋にこもってしまうのではないでしょうか。あるいは、話しかけても上の空だったり、「それはお前が悪い」と、余計なアドバイスをされてしまったりして、さらに怒りを増幅させてしまう女性も多いことでしょう。
■男性と女性の対応の違い
ストレスが溜まった時、女性はそれを口にし、おしゃべりをして共感しあうことで自分を癒そうとしますが、男性は逆に口数を減らし、ネットやテレビを見つつボーッとすることで、疲れを取ろうとする傾向があるのです。つまり、妻の話をロクに聞きもせず、さっさと部屋に引きこもってしまった旦那は、決して妻のことを愛していないからコミュニケーションを拒んだわけではなく、そうしなければ自分自身の疲れを取ることができないために、仕方無く距離を置いただけなのです。
このように相手の行動の裏には、男女それぞれ、性別特有の事情が隠されているのだと知っていれば、無闇に相手を非難するようなこともなくなり、「性格の不一致」を理由に離婚となるような事態を避けることができるというわけです。
2.何を「辛い」と思うか、感覚を理解し合おう
「性格の不一致」をどのような時に感じるか。それは、相手が自分の思い描いているような役割を果たしてくれない時でしょう。
たとえば「夜は毎晩、夫婦で一緒に寝たい」と考えている奥さんがいたとします。この奥さんにとって、夫というものは妻と一緒に寝るのがあたりまえのことであり、常識なのです。その一方、旦那さんは「一人きりでないと、安眠できない体質」であったとします。すると、どうしても意見がぶつかってしまいますよね?
一般的には、夫婦は同じ寝室で寝ることが多いため、ここは妻の意見が尊重されるべきかも知れません。しかし、そのために夫が毎晩睡眠不足で仕事に行けないということがあっては、生活が崩壊してしまいますから、妻は仕方無く我慢をし、夫婦は別々の寝室で寝ることを選ぶでしょう。ただ、妻の方は、せっかく結婚して夫婦として暮らしているのに、独身の時と同じく、夜はやっぱり一人ぼっちで眠るなんて寂しいなぁ…と毎日ちょっとずつ孤独感を背負っていくことになります。
■どちらが良いという答えはない
「他人と一緒に寝ることの辛さ」と「他人と一緒に寝られないことの辛さ」は、どちらが辛いでしょうか。こればかりは、答えを出すことができません。人は自分としてしか生きてきた経験が無いため、他人の感覚は想像の範囲でしか理解することができないのです。
しかし「理解しようとする」ことはできますし、理解しようと努力している態度を相手に示すことはできます。お互いの感覚を理解し合うためには、どうすればよいのでしょうか?そのためには、自分がこれまでの人生において経験したことのある「辛さ」を色々と思い出し、なんとなくピン!と来るまで、1つ1つ照らし合わせてみることが有効です。
■お互いの感覚は異なる
夫と一緒に寝たいと思っている妻は、好きな人と隣同士で寝ることに関しては全く平気なのかも知れません。しかし、別のシチュエーションだったらどうでしょう。乗り物に乗った状態では寝られないかも知れませんし、音楽が流れている状態では寝られないかも知れませんよね。「好きな人の隣で寝る」ことと「電車の中で寝る」ことは、もちろんイコールではありません。しかし、どんな状況に置かれた時に安眠できなくなるかは人それぞれなのです。
もし「そういえばあの時、眠れなくて困ったっけなぁ…」という、「眠れなかった」経験が妻の方にあれば、この夫婦はラッキーです。なぜなら、「夫が私の隣で眠るということは、もしかして、私が電車の中で眠る努力をさせられている感覚に近いのかな?」と想像を働かせられる余地があるからです。
逆について考えてみましょう。夫の方が全く寂しがり屋でない場合、妻の「一緒に寝られない」という辛さを理解してあげることは、困難かも知れませんね。しかし、この夫がとにかく孤独を好み、集団でワイワイすることをとんでもなく苦手とするのなら、望みはまだあります。少々強引ではありますが「妻が一人ぼっちで寝ることを我慢する辛さは、俺が毎晩女子会に参加させられることを我慢する辛さと同じくらいなのかな?」と、そんな風に想像を働かせてみたってよいわけです。方向としては全く逆ですが、要は自分にとって「辛いこと」を、相手の辛さと重ね合わせ、共感しようと努力する姿勢が大切なのです。
3.相手なりに頑張っていることを、認めよう
「性格の不一致」で離婚することを考える夫婦の中には、「自分が頑張っていることを認めてもらえなかった」という思いを抱えている人も多いです。毎日、真面目に一生懸命やるべきことをやっているのに、どうしてその頑張りを「認めてもらえない」などということが起きたのでしょうか?
■頑張りを絶対的な尺度で評価しない
たとえば、50メートルを7秒で走れる人と、10秒で走る人がいたとします。7秒で走れる人が、少し楽をして8秒で走りました。その一方、10秒でしか走れなかった人は、いつもの何倍も頑張った結果、9秒までタイムを縮めました。8秒と9秒では、記録としては8秒の方が速いです。では、8秒の方の人が、1秒分、相手よりも頑張ったのでしょうか?そうではありません。7秒の人は、むしろ怠けていたくらいで、この場合「頑張った」のはどちらかというと、8秒で走った人の方なのです。それでも、他人から評価されるのは1秒でも速く走った人の方だったりするわけですよね?「勝負の世界」とは、そういうものですが、このような理不尽な状況が、夫婦間において起きてしまった時には、それ相応の解決策が必要です。
泣き続ける赤ちゃんを、50分も連続で抱っこしていたら、ヘトヘトになってしまう奥さん。夜には全身が痛くなってしまい、旦那さんに抱っこを変わってもらいます。一方の旦那さんは身体が丈夫で、5時間抱っこしていても全然平気です。それでも、仕事をして帰ってきたと思ったら、今度は育児を任されるので、奥さんに対しては露骨に不機嫌な態度で接してしまうかも知れません。
奥さんは「私は今日、2時間も抱っこし続けたんだから、そんな顔しないで!」と言って、なんとか頑張りを認めてもらおうとするでしょう。50分でヘトヘトになるのに、2時間も抱っこしていたら、それは限界を倍以上も越えていますから、当然の訴えです。しかし、旦那さんにしてみたら「2時間程度で何を言ってるんだ…」といった気分です。「もしかして、たいして疲れてもいないのに、疲れたフリをして、なんでもかんでも俺に押し付けようとしているんじゃないか?コイツは楽をしたいだけなんだ!」なんて、言いたくなってしまうかも知れません。あるいは、「本当に赤ちゃんを愛しているのか?愛していないから抱っこするのがイヤなんだろう」なんて、疑心暗鬼に陥ってしまうこともあるかも知れませんね。
■相手を認め、思いやる
抱っこの話は、あくまでも1つの例です。ただ、このように、相手が何かに対して、すぐに根をあげてしまったことで、腹を立てた経験のあるアナタ。そんなアナタには、アナタの愛した相手が、本当に楽をしたいだけの怠け者だったのかどうかを、よく見極めてもらいたいと思います。嘘をついて楽をしようとしているのではなく、相手なりに一生懸命やっても、その程度しかできないのだとしたら、たとえ結果が小さなものであったとしても、きちんと評価をしてあげるべきです。
人は頑張ったことを他人に認めてもらえないと、そのうち頑張ることそのものを放棄しはじめてしまうのです。そうなってしまってからでは、本当に夫婦仲の修復が難しくなってしまいますので、まずは相手の「真面目さ」を信じるところから始めるようにしましょう。アナタが愛した相手なのですから、相手は決して「不真面目」な人間ではないはずです。
4.自己犠牲はバランスを考えて
相手の辛さや頑張りを全て理解し、共感しあった上でも、夫婦には次々と愛を試すような試練がやってきます。それは、ただ「今日という休日をどう過ごすのか」という問題1つとってもそうですし、「夕飯は何を食べるのか」という問題にしてもそうです。
旦那さんは、休日になったら友達とサーフィンに出掛けたい。その一方で、奥さんは、家族で近所の公園にでも行ってのんびりピクニックをするのが理想的な休日の過ごし方だったとします。両方の願望を同時に叶えることは不可能なので、この場合、どちらかが「自己犠牲」を払う形で、夢を諦めることになります。自己犠牲というと大袈裟に聞こえるかも知れませんが、たとえ休日の過ごし方1つと言えど、これが毎回ともなってくれば、やはり自分は「犠牲」を払っているという気分になってくるものです。
■どちらか一方が我慢しすぎる状態は注意が必要
「相手のために何かしてあげたい」と考えがちな人は、自分が犠牲を払うことで、相手の夢を叶えてあげようとする傾向があります。しかし、自己犠牲はあくまでも、自分で納得できる範囲で行うべきなのです。なぜなら、自分の許容量を超えてしまうと「こんなに譲ってあげたのに!」と相手を責める気持ちが芽生えてきてしまうからです。
「勝手に我慢してただけだろ!」なんて言われてしまう前に、自分の要求は、素直に伝えましょう。こんなのワガママかも知れないと卑屈になる必要もありませんし、面倒な争いを避けようと後ろ向きになる必要もありません。「今週はピクニックにしない?たまにはピクニックにも行きたいな」と、上手に願望を伝えられるようになることが、仲良し夫婦への第一歩なのです。
さらに、自己犠牲のバランスは、必ずしも5:5で保たれていることを目指そうとしないでください。自分自身の感覚で、3:7を超えてきてしまったら、その時は、自己アピールをするべきですが、4:6くらいの範囲にとどまっていると感じたら、たとえ自分の方が譲っている割合が多くても、その状況を受け入れる、広い心を持ちましょう。
まとめ
以上、「性格の不一致」別れてしまう前に、夫婦で考えてもらいたいことを紹介してきました。いずれの項目にも共通して言えるのが、相手の感覚を理解しようと努力する姿勢の大切さです。自分にとっては楽なことでも、相手にとっては苦痛な場合があると理解し、可能な範囲で共感するという作業を怠らなければ、どんなに性格の違う夫婦であっても、歩み寄って笑顔で生きていくことが可能なのです。
自分に合わせてもらうことばかりを強要せず、また逆に、どこまでも相手に合わせて自分を犠牲にばかりもせず、多少の不平等は大目に見ながら、バランス良く、お互いの願望を叶えていくことを意識しましょう。