今の日本はニート大国です。働かず、求職活動もしない若者が多く、日本の問題となっています。しかし、好きでニートをしている人は少数派で、本人たちは「ニートから社会復帰したい」と悩んでいます。それなのに、なぜニートであり続けてしまうのでしょうか。
今回は、ニートになる人の原因と特徴を解説し、社会復帰対策のために何をすべきかを紹介します。
ニートの定義と意味とは?
厚生労働省は、ニートに近い状態の若年無業者について以下のように定義しています。
「非労働力人口(就業者でも失業者でもない人々)のうち、年齢15~34歳、学卒、未婚者であって、家事・通学をしていない者。」
内閣府が定義するニートとは、若年無業者の内、就職希望を表明していない人、もしくは就職希望を表明しながら実質求職活動を行っていない人です。学生でもなく、働いてもいなければニートと思われがちですが、真剣に就職活動をしている人は、ニートに該当しないのです。
一方、定義としてはニートとなる若者の中には、「病気や怪我が原因で、不本意ながら求職活動すらできない状態」という人も一定数含まれています。
ニートの統計人数
ニートの人口はどれくらいなのでしょうか。内閣府では、「就業構造基本調査」を特別集計し、ニートの人口を以下のように推定しています。
・平成4年:66.8万人
・平成9年:71.6万人
・平成14年:84.7万人
参照:ニートの現状とその対策-我が国と欧米主要国の若年雇用対策-
平成4年から平成14年にかけて、ニートの人口は大幅に増加しましたが、その後はほぼ横ばい状態です。ちなみに、15~34歳の総人口に占めるニートの割合は、約2%となっています。
ニートになる人の原因8つ
ニートになる人には、どのような原因があるのでしょうか。ニートに陥りやすい原因について解説します。
■1. 親にニートを養う経済力がある
まず、絶対条件となるのが、親にニートを養う経済力があるという点です。どんなにニートに陥りやすい要因があっても、実際にニートをする環境が無ければ、働いて自分を養うしか方法はありません。例え、ワーキングプア状態になってでも、生きていくためには何かしら労働するしか選択肢がないのです。
しかし、頼れる先があり、そこに成人1人を養うだけの経済的余裕があれば、保護を受けられます。もちろん、親も本人も最初は期間限定のつもりです。しかし、一度甘い環境に置かれると、そこから脱却するのは容易ではなくなります。「生活には労働が必要」という状態に迫られなければ、重い腰は上がらず、結果的にニートとなる原因になってしまうのです。
■2. ニートで家にいても居心地が良い
親にニートを養う経済力があるだけではなく、「やりたい仕事が見つかるまで、ゆっくり探せば良いのよ」と寛容で、且つ衣食の世話もしてもらえ、1日自由に過ごせる環境にあると、益々ニート状態が定着しやすくなります。「状況を変えたい」という思いがあっても、今の状況が居心地良ければ、切羽詰まった問題にはなりません。妙な余裕が生まれ、「じっくり探せばいい」と、ニート状態の自分に危機感がなくなってしまいます。
楽で居心地が良ければ、そこに収まってしまうのは必然。働かない上に、のんびりくつろげる居心地の良い家庭だと、どうしても甘えが出てニートが長引く原因になります。
■3. 過保護過干渉で育てられ精神的自立ができない
親が過保護で過干渉だと、本人が「ニートを脱出したい」と思っても、なかなか上手くいきません。子供の頃から過保護過干渉で育てられてきたため、精神的自立ができておらず、親の意見に振り回されてしまうのです。過保護で過干渉な親は、子供を過度に心配し、子供の判断に口を出します。
ニートの親は「何が何でも働け」というタイプが少なく、子供がせっかく働く気になって、「失敗しても良いから頑張ろう」という気持ちになっても、「続かなければ意味がない」「あなたにその仕事は向かない」など、無用のアドバイスをしてやる気を削いでしまいます。
過保護で過干渉な親は、子供が自分の元を離れて失敗する位ならば、何もしなくても良いから自分の監視下に置きたいというタイプが多いです。そういった親子関係を長年構築してきたため、本人も「親の制止を振り切って行動する」ということができません。結局、親子共依存状態となり、自立の機会を失い、ニートの原因となるのです。
■4. 過去の人間関係にトラウマがある
仕事をする上で、人とのコミュニケーションは必須となります。しかし、過去人間関係にトラウマがあり、人と接することに恐怖心があると、ニートの原因になります。イジメや酷い裏切りなど、人間関係のトラブルがトラウマになってしまうと、人の前で極度に緊張し、本来持った能力を発揮できません。就職活動を頑張ってもことごとく落とされ、人より努力しているのに認められない現実にくじけてしまい、「自分は働くこともできないダメなやつだ」と、働く意欲を失ってしまいます。
運良く社会に出られたとしても、元々人に対して強い苦手意識がある為、コミュニケーションが上手くとれません。常に大きな負荷を感じて働き続け、ある日ついに心が折れてしまいます。相当頑張った挙句の挫折は心に大きな傷を残し、社会に出る勇気がなくなってしまうのです。
■5. 中退や不登校など学生生活で躓きを経験した
ニートになる人は、社会に出る前から躓きを経験しているケースが多いです。厚生労働省が行った「ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書」では、ニートの約3割が中退経験者であり、全体の37.1%が不登校経験者です。
進学率は同世代の水準からみて特に低いとはいえないが、高校、大学・短大、専門学校の各段階での中退者はあわせると3割を超え、在学中の1ヶ月以上の長期欠席経験者も高校で16.6%、大学・短大で25.8%いる。そして全体の37.1%が不登校を経験している。
学生時代に大きな躓きを経験すると、大人になってもそれを引きずり、ニートの原因となり得るのでしょう。
■6. 就職活動を失敗した
一方、学生時代は順風満帆でも、就職活動で失敗し、それが原因でニートになるケースもあります。今まで懸命に勉強し、結果を出してきたにもかかわらず、就職活動ではその努力を評価されずに落とされるという経験は、積み上げてきたものが壊されるような大きなショックを与えます。子供の頃から「勉強を頑張れば将来が明るい」と言われ続け、それを信じて頑張ってきたため、人生に裏切られたような感覚を覚え、立ち直れなくなるのです。
このタイプは、将来のためにコツコツと努力してきたため、就職活動が上手くいかなかったからといって、いきなり人生設計を修正変更することが容易ではありません。目指してきた未来予想図が壊され、精神的に大ダメージをくらい、ニートになってしまいます。
■7. 社会に出て初めて挫折を味わった
就職活動に成功しても、実際に社会に出てから挫折を味わい、そこから立ち直れないのが原因でニートになる場合もあります。学生と社会人の価値観の違いに順応できず、働いて初めて挫折を味わうと、「評価されない自分」「失敗してしまう自分」を受け入れられません。受け入れられないので苦難を乗り越えられず、上手くいかない原因を社会のせいにしてしまいます。
そして、「自分を認めてくれないような会社にはいられない」と退職するのですが、入社間もなく退職した、実務経験も浅く、挫折に弱く、それでいてプライドだけは高い若者が、新卒で入社した企業より条件の良い仕事を見つけるのは困難です。その結果、「やりたい仕事が見つからない」と、ニートになってしまいます。
■8. ニートの脱出方法がわからない
ニートがニートであり続ける最大の原因は、「ニートから脱出したい」と思っても、その方法がわからないことです。ニートは決して働く意欲がゼロではなく、怠け者でもありません。ただ、自分の能力を発揮し、やりがいを感じながら働く方法がわからないのです。なぜわからないのか、理由はいくつか考えられます。
・決定的に経験値が足りない
・情報収集力が足りない
・周囲の適切なサポートが足りない
・自分の能力や適性がわからない
まず、ニートは社会人経験が乏しいため、どのような職種や働き方が自分に向いているのかがわかりません。そして、世の中にはどのような仕事があるのか、どうすればそれになれるのか、自分にどんな能力があって何が足りないのかもわかっていません。経験値だけではなく、致命的に情報収集力が足りず、「どうにかしたいけど、わからない」と立ち止まった状態です。
ここで、周囲からの適切なサポートがあれば良いのですが、そのような環境下ならば、早々にニートを脱出できています。子供を保護することはできても、どのように自立を支援すればわからない親が多いのです。結局、誰もニートを脱出する方法がわからず、ズルズルとニート期間が長引いてしまいます。
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ニートになる人の特徴5つ
ニートになる人にはどのような特徴があるのでしょうか。内閣府が発表している「子供・若者白書」では、若年無業者が求職活動をしない理由、就職を希望しない理由について調査しています。
その他を除いて最も多い理由が「病気・怪我のため」で、次いで多いのが「学校以外で進学や資格取得などの勉強をしている」と、実はニートの中で多いのは「働ける状況ではないためニート」「計画的ニート」です。しかし、これに次いで「探したが見つからなかった」「知識・能力に自信がない」「希望する仕事がありそうにない」「急いで仕事につく必要がない」という理由が続きます。
この調査結果から、ニートになる人の特徴が見えてきます。
■1. 自己肯定感が低い
ニートになる人は、自己肯定感が低い特徴があります。自分に自信がないため、「自分なんかどうせ雇われないだろう」と、就職活動する勇気が出ないのです。また、一念発起して仕事を探しても、何度か落とされただけで「やっぱり自分はダメなんだ」と諦めてしまいます。
「子供・若者白書」でも、「探したが見つからなかった」「知識・能力に自信がない」という理由が挙げられていますが、自己肯定感がないと、「探しても見つからない→自分に自信が持てない」というスパイラルに陥り、どんどん意欲が喪失してしまうのです。
■2. プライドが高過ぎる
高過ぎるプライドも、ニートになる人の特徴です。まず、就職活動で「自分が選ばれずに落ちる」という壁にプライドを傷つけられ、乗り越える事ができません。運良く就職できても、誰でも最初は新人で教えを乞う立場なので、職場では叱られることもありますが、プライドが高過ぎるとそれが耐えられず辞めてしまいます。
そして、「自分に合う仕事が見つからない」「自分の能力を活かせる仕事を探したい」と、プライドを守るために自分なりの理論を展開し、最終的には求職活動もやめてしまいます。
「子供・若者白書」でも、求職活動しない理由に「希望する仕事がありそうにない」という回答があります。本来ならば「希望する仕事がない=自分のスキルが足りない」と考え、希望条件を下げたり、自分のスキルアップのために勉強したりしますが、プライドが高いと「社会が自分の実力を評価しない」と考え、今の自分のままで希望の仕事を見つけようとします。自分の実力を過大評価しているため、現状を打開できないのです。
■3. コミュニケーション力が低い
ニートになる人は、全般的にコミュニケーション力が低い特徴があります。そして、コミュニケーション力が低いニートは、同時にひきこもりにもなりやすいです。「子供・若者白書」の調査では、ひきこもりになったきっかけについて以下のような結果が出ています。
ひきこもりになったきっかけ
・職場になじめなかった:23.7%
・病気:23.7%
・就職活動がうまくいかなかった:20.3%
・不登校(小学校・中学校・高校):11.9%
・大学になじめなかった:6.8%
・受験に失敗した(高校・大学):1.7%
ひきこもりは求職活動をしていないので、ニートにも当てはまります。「病気」という特別なきっかけを除き、ひきこもりになるきっかけは、人間関係に躓くコミュニケーション力の弱さが大半です。どんな仕事でも、人との関りが必ず発生する為、コミュニケーション力が弱いのは、社会人として致命的なのでしょう。
■4. 他力本願で受け身体質
ニートになる人は、基本的に他力本願で受け身体質です。学生時代優秀だったタイプも、具体的な目的を自分で考えて取り組んでいたわけではなく、子供の頃からの親の教育方針に従ってきただけ、もしくは漠然と「学歴があればなんとかなる」と勉強のみに注力してきたタイプが多いのです。そのため、一度挫折すると、そこからどう起き上がれば良いのかわからなくなってしまいます。
勉強しているだけで評価がついた学生とは違い、社会人はある意味サバイバル。自分で考えて行動しなければなりませんが、ニートになる人はそれが酷く苦手なのです。だから、「ニートから脱出したい」という思いがあっても、どうすれば良いのかわからず、自分から動けません。ニートでいられる環境があれば、それに準じてしまいます。
■5. 自分の人生への希望や意欲がない
具体的な行動が無くても「ニートを脱却したい」という思いがあるなら、まだ希望はあります。しかし、ニートの中には、自分の人生への希望や意欲がなく、若くして諦めてしまっている人が多いのが特徴です。無気力になると、当然求職活動をする気も起きません。「今は親もいてニートでいられるけど、将来の保証はない」というのは頭で理解していても、その問題に対して真剣に考える気力がないのです。
自分の人生がどうなろうが、周囲からどう思われようが、気にならない位投げやりになっています。そして、この無気力さがニートから脱却できない最大の原因でもあります。
ニート問題は解決できる?
将来を担うべき若者の実に80万人以上がニートというのは、日本にとって大問題です。また、ニート個人で考えても、社会から孤立した状態は辛いですし、いつまで働かずに食べていけるのかという現実問題があります。
政府もニート問題に対して、「若者自立・朝鮮戦略会議」を行い「若者自立・朝鮮プラン」をまとめたり、若者の具体的自立支援策を計画したりしていますが、国単位で取り組んでもニート問題は簡単に解決できるものではありません。
ニートにも「楽を選んでニート」から「生きる気力も失ったニート」まで、様々なタイプが混合しています。また、ニートという定義に入る前から既にひきこもり状態の人もいれば、働きたくても病気で働けない人もいるのです。ニートという定義はあっても、決して一括りにはできません。そのため、画一的な支援だけでは根本的解決は難しいのです。
ニートからの復帰対策4つ
ニート問題の根本的解決は困難ですが、「ニートを脱出したい!」という強い気持ちがあれば、未来はいくらでも変えることが可能です。そこで、ニートからの復帰対策を紹介します。
■1. ニート支援を受ける
ニートを脱出したいけど、何から始めればわからない人には、ニート支援事業の手を借りるのが賢明です。ただ仕事を紹介するだけではなく、以下のようなサポートを受けることができます。
・カウンセリング
・自分に適性のある仕事の相談
・ビジネスマナー等就職支援講座
・面接対策
・就職後のアフターフォロー
ただ仕事を見つけるのではなく、あなたに合った仕事を一緒に考えてくれ、長く働ける職に就けるよう、トータル的にサポートしてくれるのです。
■2. アルバイトでも良いので働く
ニートを脱出したいけど、いきなり正社員になるのは厳しいと考えるならば、まずはアルバイトでも良いので「働く」というのを目標にすると良いでしょう。アルバイトをしながら就職活動をするのも良いですし、アルバイトから正社員雇用する制度のある仕事を選ぶのもおすすめです。外に出て金銭を稼ぐことで、あなたの新たな目標が見つかるかもしれません。
アルバイトをすればニートからフリーターになるわけですが、フリーターにはまた別の問題があります。最終目標を正社員とするならば、計画的にアルバイトをするのがポイントです。「アルバイトが忙しくて正社員の求職活動ができない」というのは本末転倒なので気を付けましょう。
■3. 仕事に直結する資格をとる
ニートでいられる環境を活かして、勉強に時間を注ぎ、仕事に直結する資格をとるというのもニート復帰の方法です。通信教育で取得できる資格ならば、外に出る気持ちになれないニートでも取り組めます。
数多くの資格がありますので、まずはあなたが興味を持てるものがあるかを探してみましょう。好きなことならば勉強が苦にならず、楽しんで学べれば、それが社会復帰する意欲に繋がります。
■4. 在宅の仕事をする
ニートなだけではなく、長期間引きこもり状態で、社会に出る勇気がなかなか出せないようならば、家に居ながらにして収入を得るという選択肢もあります。在宅の仕事をするのです。インターネットが発展した現代では、パソコン1台あれば在宅でできる仕事が数多くあります。特別なスキルが不要な仕事から、要資格の仕事まで、在宅の職種は幅広いです。まずは、どんな在宅の仕事があるのか調べてみましょう。そして、できそうなものがあればトライし、やりたいけどスキルが足りないようなら勉強すれば良いのです。
在宅で仕事をして、少しでも収入を得られれば、「自分で稼いだ」という自信に繋がります。そのまま在宅ワークで生計を立てられるようになる可能性は大いにありますし、これをバネにして社会に出る気力が湧いてくるかもしれません。
※未経験でも就職して働きたい人は、大手リクルートが運営する就職Shopからの就職がおすすめです。
まとめ
ニートを取り巻く問題は複雑で多種多様です。大切なのは、ニート問題を一括りにせず、個人の問題として捉えること。ニートでいる理由も、ニートから社会復帰する方法も、全てはオーダーメイドです。まずは、小さな一歩から踏み出してみましょう。「ニートを脱出したい」という思いがあれば、きっと社会復帰できる日が来ます。