忖度の意味とは？使い方の具体例と間違いを簡単解説！類義語・対義語・英語

「忖度」は2017年の流行語大賞に選ばれ、誰もが1度は耳にしたことがある有名な言葉ですが、本当の意味を知っているでしょうか？

今回は、忖度の意味や使い方を改めて解説！忖度する人、しない人の特徴を紹介し、忖度しない生き方について考えます。

忖度の読み方は、「そんたく」です。忖度という言葉について、簡単に表にまとめました。時間のないときでも、この表を見れば忖度の意味や使い方の要点がわかりますので、役立ててくださいね。

広辞苑では、忖度の意味は「他人の心中をおしはかること。推察。［相手の気持ちを－する］」と説明されています。

「おしはかる」には、「1つのことを元に、別のことの検討を付ける」という意味があります。忖度とは、その人の言動から、本音や本当の目的の検討を付ける行為を意味するのです。

忖度の語源は中国の詩集にあるようです。周代の詩の一文に「他人有心、予忖度之。」があり、「人の気持ちを推測する」という意味になります。

ドラマだと、主に部下が上司に対して過剰に心の裏を読んで、自分の評価を上げるために、自分の気持ちを押し殺してでも目的を達成しようとする場合に「忖度します！」と使われます。

また、ニュースでは政治の裏金や討論に対して、「忖度があったのではないか」と、忖度に悪いイメージがあるかのように使われることが多いです。しかし、忖度の本当の意味に上下関係や不正は関係なく、相手を思いやる気持ちが込められています。

「忖度なし（忖度しない）」は、忖度の行為をしない、すなわち相手の気持ちを考慮せず、自分の好きに行動することを意味します。忖度の本当の意味である「相手の気持ちを思いやりおしはかる」行為をしないと捉えると、身勝手で自分本位な行動が「忖度なし」となります。

しかし、今は自分より上の立場にへりくだり、過剰に合わせる行為に対しても「忖度する」という使い方をされております。メディアから認知が広がったため、本当の意味よりも、こちらの意味として認識している人が多いです。

そのため、「忖度なし」とは、立場やしがらみに囚われず、自分の意見を主張するという意味が込められるケースが多くなります。

このように忖度の意味が多様化しているので、「忖度なし」の意味は、言葉の前後や状況によって微妙に変化します。

忖度の類義語は、表で示した通り、「憶測」や「推察」など、いわゆる推理を意味する言葉が並びます。忖度とは、相手の言葉をそのまま鵜呑みにするのではなく、本当の目的や関心事をおしはかる行為ですが、類義語を見ると、自分の思考内での判断であることが良くわかります。

例えば類義語の「憶測」には、「自分で勝手に推測すること」という意味があります。一方「推察」には、人の気持ちを思いやる、おしはかるという意味があります。比べると憶測には自分勝手な要素があるのに対して、推察は相手への優しさが意味に含まれていますが、どちらも自分の思考の範囲を超えないところが共通しています。

忖度も同じです。必ずしも、自分の想像があたっているわけではありません。一生懸命忖度しても、全く的外れなケースもあります。忖度とは主観的な気持ちなのです。

忖度の対義語には、「思いやり」に反した意味合いを含む言葉が多いのが特徴です。

例えば「身勝手」は、相手の気持ちを考えず自分本位に行動する意味があり、「利己的」は相手ではなく自分の利益だけを重要視する意味になります。また、「独善」には、正しいことを考える意味がありますが、相手を全く関与しないのが条件となります。

対義語から見ると、忖度は相手の気持ちを優先する意味が強いと良くわかります。自分の目的や気持ちは二の次で、相手のことを第一に考えるのが忖度なのです。

しかし、目上の人の気持ちをおしはかり、自分の立ち位置の安全を確保する、おべんちゃらに近い忖度は、相手の気持ちを思いやっているようで、実は自分の身を何よりも考えた行為です。忖度の使われ方が多様化した今、対義語である利己的が、忖度と共通する場合も出てきています。

忖度は相手の様子を見て本当の気持ちを汲み取り、時には自分を二の次にして思いやろうとする行為で、日本独自の精神です。そのため、忖度をそのまま英語で表現する単語はありません。

忖度を英語で表現したいならば、忖度の類義語である推測や憶測、または「空気を読む」「相手の気持ちを考える」など、文章化してから英語に訳すとスムーズです。

忖度を別の言葉で表してから英語表現すると、次のようになります。

・conjecture（推量）
・guess（推測）
・speculation（憶測）
・thoughts（推考）
・read the air（空気を読む）
・think about how someone feels（相手の気持ちを考える）

意訳すると、yes-man（イエスマン）と表現することもできるでしょう。

現在では日本語でも忖度の意味が多様化しています。忖度を英語表現するときは、前後の文章を良く読み、忖度がどのような意味で使われているのか、英訳しやすい表現に直してから訳しましょう。

忖度にはどんな使い方があるのか、例文と一緒に解説していきましょう。忖度の根底には思いやりがあります。ですので、相手の意図を組んで自主的に行動するような場面で、忖度は使われます。まずは、2つの例文を挙げましょう。

＜正しい使い方の例文＞
・妻の気持ちを忖度して、誕生日プレゼントをダイヤのネックレスにしたら「ありがとう！すごく嬉しい！」と喜ばれた。
・妻の気持ちを忖度して、誕生日プレゼントをダイヤのネックレスにしたら「今月カツカツなのに！」と叱られてしまった。

どちらも「忖度」の使い方は正しいですが、妻の反応は真逆ですね。前者は忖度が的確だったケースで、後者は忖度したのに妻の気持ちを上手く汲み取れていなかった失敗例になります。忖度とは主観的な感情であり、あくまでも推測なので、例文のように当たったり外れたりするのです。

忖度は間違った使い方を良くされます。例えば、以下のような場合、忖度の使い方としては間違いになります。

＜間違った使い方の例文＞
・（部長から具体的な指示があった場合）部長を忖度して、納品日の前倒しをしました！

忖度とは気持ちの先回りでもありますので、仕事で具体的に「こうしてください」と指示があった場合、「忖度」は使いません。「指示に従った」「迅速に対応した」という表現が正解になります。

忖度を使いたいなら「相手の気持ちを読む」「優しい思いやりの心」の両方がそろったときが良いでしょう。せっかくなので、忖度の面白い使い方をいくつか紹介します。

＜面白い使い方の例文＞
・（赤ちゃんが号泣したとき、夫に向かって）「つまらないと泣かれておられる！忖度して言われなくても抱っこせよ！」
・（家事で忙しく動いている横でゴロゴロしている夫に向かって）「ねぇ、忖度って知ってる？」

近しい相手に対して、「ちゃんとやってくれよ」「言われなくても動いてくれよ」と思ったとき、忖度という言葉でユーモアを取り入れれば、ギスギスせずに要求に応えてもらいやすくなります。

「忖度」という言葉を一躍有名にしたのが、2017年の森友学園の国有地売却をめぐった問題です。この時、記者会見で籠池康博理事長が「口利きはしていません。忖度をしたのでしょう」と発言し、マスメディアで急激に「忖度」という言葉が注目されました。要は、「こっちは何も指示していない。財務省が忖度して自主的に動いた」という主張をしたかったのです。

忖度本来の意味は、相手の気持ちをおもんばかること。しかし、森友学園の忖度発言をきっかけに、忖度には次のようなイメージがついてしまいました。

・立場が下の人が、上の意向を過度に汲み取り、ゴマすりする行為
・「相手が勝手に忖度した」と、政治家が言い逃れしたい時に使う言葉

忖度の意味をシンプルに「推察」とするなら、良いも悪いもありません。それでも、森友学園での発言は、忖度に対して「せこい」「ずるい」「責任逃れ」というマイナスのイメージを強く植え付けたのは確実でしょう。

「忖度」は前述した森友学園の忖度発言から一気に認知が広がり、バラエティやドラマのマスメディア、ツイッターなどのSNSで、多くの人が注目して実際に使われ、2017年ユーキャン新語・流行語大賞に選ばれました。

流行語大賞は、株式会社自由国民社が毎年12月に発表していますが、選考について以下のように説明しています。

以下引用

この賞は、1年の間に発生したさまざまな「ことば」のなかで、軽妙に世相を衝いた表現とニュアンスをもって、広く大衆の目・口・耳をにぎわせた新語・流行語を選ぶとともに、その「ことば」に深くかかわった人物・団体を毎年顕彰するもの。

引用：https://www.jiyu.co.jp/singo/
出展：株式会社自由国民社

選考委員会によると、森友学園の発言がきっかけで、忖度の認知度があっという間に広がったスピードの破壊力を選考理由に挙げています。

忖度は昔からあった言葉ですが、本来の意味である「推測する」「思いやる」という使い方ではなく、森友学園問題で露呈した「上を過度に気を遣い先回りする行為」が、職場などで良く見られる光景と重なり、日本人の関心を強く引いたのだと考えらえます。

忖度の使い方が多様化される今、忖度する人はいくつかのタイプに分かれます。

1つめは、気配り上手で思いやりのある優しいタイプです。かゆいところに手が届く対応ができ、相手の表情や仕草で気持ちを察して行動できます。万人から好まれるのが特徴です。

2つめは、自分の利益のためなら手段を択ばないタイプです。忖度する相手を損得基準で選ぶのが特徴です。自分にメリットがある相手には忖度し、気に入られようとします。一方、利用価値がない相手には決して忖度しません。

3つめは、年功序列の体育会系タイプです。自分より年上、立場が上の人には絶対服従で、過剰に忖度します。一方、自分より下と認識する相手には、自分が上にしているような忖度を求めます。

4つめは、1人では何もできない奴隷型タイプです。誰かに依存することで安心感を得るため、依存対象を過度に忖度することで、自分を守ってもらおうとします。

忖度はコミュニケーションを円滑にするものでもあります。そのため、忖度が全くできない人は、人間関係でトラブルを起こしやすくなるので注意が必要です。忖度ができない人には、次のような特徴があります。

・頑固で自分の意志を曲げない
・正義感が強い
・空気が読めない
・自分本位
・白か黒かはっきりさせたい
・矛盾が嫌い
・物事に正確性を求める
・疑問があれば解明したい

忖度ができない人は、思考に柔軟性がなく臨機応変な対応が苦手です。正確性が求められる経理などには向いていますが、相手によって態度や発言を変えることが求められる営業や接客は不向きになります。

忖度ができるかできないかは、性格の善し悪しとは全く関係ありませんが、その人にとって居心地が良い場所は変わってきます。どちらにも長所短所があり、本人の素質が活かされるには、適材適所が不可欠です。

仕事や会社、職場の場合、忖度による弊害は大きくなります。特に考え方が古く、新しい技術に対応できないのに忖度を求める上司だと、不必要な作業や打ち合わせが増え、仕事の効率を著しく低下させてしまいます。また、上司が絶対的権力を握っていると、利益よりも忖度を優先する社内接待状態となり、結果的に大きな弊害をもたらします。

それでも、会社や職場での忖度がなくならないのは、人間関係を円滑にしたい思いが強いのと、忖度しなかった場合に出世の道が絶たれる可能性があるからでしょう。会社に属していれば、上司ににらまれたり、スタンドプレーで周囲から厄介がられたりする状況は辛いですよね。できれば、良好な人間関係の中で働きたいと思うのは当然です。そのために、忖度が必要になってくるのです。

「忖度不要」という社風にならなければ、利益と効率を優先するのは、かなりの勇気と実力が必要です。「本当はいらないのに」と思いながらも、忖度で発生するやり取りをこなす方が楽なので、忖度はなくなりません。

日本で忖度しない生き方は難しいですよね。空気を読むことが美徳とされる文化があるため、忖度せず自分の主張を通し、自分のやりたいような言動をとると、「自分勝手」「協調性がない」というレッテルを貼られてしまいます。しかし、忖度ばかりしていると、自分が本当にしたいことに辿り着けません。

今の日本においては、まだまだ忖度は不可欠と言える場所は多いでしょう。しかし、何から何まで忖度する必要はありません。また、「忖度しない！」と、モットーを貫く必要もありません。もっと柔軟に、臨機応変に対応すれば良いのです。さらに、時代も少しずつ変わってきているので、自由な生き方を選ぶ人は増えています。

あなたの目標は何でしょうか？それを成し遂げるために何が必要かを考えて行動すると良いでしょう。目標に近づけるなら忖度し、遠のくなら忖度せず自分を貫くのです。あなたにとって負担にしかならない忖度なら、今日から止めてしまいましょう。

本来忖度は「相手の気持ちを推測する」というシンプルな意味です。しかし、認知が広がった経緯が原因で、別の意味が付属されるようになりました。誤解して「忖度は悪」と誤解している人もいるでしょう。

しかし、忖度は決して悪いことではありません。相手の気持ちを思いやって察するのは、日本人ならではの繊細な精神でもあります。状況を見ながら、忖度が必要かどうか自分で判断できるようになれば、人とウィンウィンの関係を結べるでしょう。