ここでは「ライフライン」という言葉について、その意味や使い方、関連する知識について説明します。
日本は世界でも有数の災害大国ですが、地震や洪水などの災害が起こる度に、このライフラインという言葉をメディアで見たり聞いたりします。そのため、それが何を指しているかは、多くの人が漠然と何となくはわかっているでしょう。
でも、あらためて「ライフラインって何?」と聞かれると分からない人もいるかもしれません。さらに「災害のときはライフラインに対してどうすればいいの?」と問われれば、明快に答えられる人は少ないのではないでしょうか。その言葉の意味から説明していきましょう。
ライフラインの意味とは?
ライフラインの意味とは「生活や生存に必要なものを供給する設備や経路」のことです。
人間の住むところ全般に使われますが、特に都市部において必要な設備を指して使います。
簡単にわかりやすく具体例を挙げると、水道、電気、ガス、電話、インターネットなどを各家庭に送る施設です。鉄道や道路など、交通設備を含める場合もあります。つまり、都市で人々が生活するために必須な機能とその設備がライフラインです。
1995年の阪神淡路大震災のときにメディアで多用され、同年度の新語・流行語大賞のトップテンに入賞しました。この言葉が急速に広まったのはその後です。
地震や水害などの大規模な災害では、ライフラインの一部、あるいはその全部が破壊されて、水、食料、エネルギー、情報などが遮断され、被災者の生活と生存を脅かすことがあります。そのため、災害時にはライフラインの復旧が最優先で取り組まれます。
ライフラインとインフラの違い
ライフラインとインフラの違いは「ライフラインはないと不便なもの、インフラはあると便利なもの」です。見方が違うだけで、おおよそのところは同じものと考えて良いでしょう。
インフラは「インフラストラクチャー」の略で、もともとの意味は「下支えするもの」です。ここから、都市の産業や生活を支える基盤設備を指すようになりました。つまり「これがあれば都市的な産業や生活をすることができる便利な設備」がインフラです。
ライフラインやインフラは時代によって、また地域によって変化します。1950年代までは、日本の一般家庭への電気の普及率はそれほど高くありませんでした。インフラが整備されていなかった、とも言えます。電気製品への依存度が低かったので、電気はまだライフラインとは呼べなかった、とも言えるでしょう。
しかし、現代の日本人の生活に電気はなくてはならないインフラ、つまりライフラインになっています。
ライフラインの例文・使い方
・ライフラインの使用状況を調べたところ、近い将来、電気の不足が心配されます。
・放送の予定を変更し、ライフラインに関する情報を優先した。
・ライフラインのうち、水道と電気は利用が制限され、インターネットは完全に止まっている。
・多少の事故では止まらないように、ライフラインには何重にも安全装置が組み込まれている。
・地震の後、ライフラインが復旧するまで一か月かかった。
・災害時のライフラインのストップに備えて、水やソーラーライトなどを備蓄しておく。
・老朽化したライフラインの修復が後回しにされている。
ライフラインを支える仕事・職業一覧5個
■1. 電力会社
電力会社とは、電気を販売する会社です。具体的には、発電、送電、配電などを行ないます。電気は、火力、原子力、水力、風力、太陽光などで発電され、送電線を通って各家庭に配電されます。
日本では発電から送配電までを同じ会社が行っていますが、欧米では、発電と送電を別の会社が行うことに決まっています。昔は、地域毎に決まった電力会社からしか電気は買えませんでした。しかし、2016年4月から電力が自由化され、新規参入した電力会社からも電気を買うことができるようになりました。
災害時には、東日本大震災のときのように発電所を直撃することもありますが、多くの場合、トラブルは送電線の不具合で起こります。逆に言うと、平常時に送電が止まらないのは電力会社が維持管理していてくれるからなのです。
■2. ガス会社
ガス会社はガスの販売を行なう会社です。具体的には、ガスの製造、配送などを行ないます。日本ではエネルギーとして使用されている主なガスは2種類あります。都市ガスとLPガスです。
都市ガスの主な原料は海外から輸入される液化天然ガス、略称LNGです。主成分はメタンガスで、このガスは本来匂いはしません。しかし、匂いがしないとガスが漏れたときに気付きにくくて危険なので、わざと悪臭が付けてあります。
都市ガスは、一般にはガスタンクと呼ばれているガスホルダーに貯蔵され、地下に配管されたガス管で各家庭に供給されます。
LPガスは、プロパンやブタンというガスを主成分にしていて、一般にはプロパンガスとも呼ばれます。圧縮すると簡単に液体になります。液化すると体積がとても小さくなるので運びやすく、ボンベに入れて各家庭に運びます。都市ガス同様本来匂いのないものに悪臭を加えてあります。
■3. 水道局
広い意味では、水道は、水を供給し、処理する全てを指す言葉です。しかし、一般的には水道といえば、水の供給、つまり「上水道」だけを指す場合も多くなっています。
上水道は、飲める水を水道管を通して家庭やその他の施設に供給する設備です。川や湖、地下水などの水源の水を浄化して利用します。
これに対して「下水道」は、家庭排水や産業排水、雨水などを集め、浄化処理をしてから川などに排水する設備です。
一般家庭では使わないのであまり知られていませんが、「中水道」というものもあります。これは、産業排水などを処理してもう一度利用するものです。飲むことはできません。主に工業用に使われたり、大きな施設の水洗トイレや掃除などに使われます。日常的に目にするものとしては、噴水などにも使われています。
■4. 通信会社
通信会社とは、電話、インターネットなどの情報通信サービスを行なう会社のことです。概念などを述べるより、会社名を示した方がわかりやすいでしょう。日本で言えば、NTT、KDDI、ソフトバンクなどです。
音声やデータなどの情報を運ぶので「通信キャリア」あるいは単に「キャリア」と呼ばれることもあります。専門用語では「電気通信事業者」と呼びます。電話線、光回線、携帯電話の基地局などの通信設備を持つ会社を指す場合が多いですが、インターネットプロバイダなどのそういった設備を持たない会社を含めていう場合もあります。
特に携帯電話は目に見えない無線なので、普段そのありがたみに気付かないことも多いものです。しかし、災害などで使えなくなったとき、現代人がどれほど情報通信に依存しているかがはっきりわかります。
■5. 鉄道会社
鉄道会社は鉄道による旅客や貨物の運送を行なう会社です。日本の法律用語では、鉄道事業者と呼びます。鉄道設備を保有する会社と列車の運行を行なう会社が別れている場合もありますが、ほとんどは両者を同じ会社が行なっています。
鉄道会社の主な仕事は「鉄道を施設し維持管理すること」と「列車を決められた時刻通りに運行すること」です。列車を正確に、そして乗客にとって安心、安全、快適に走らせることが大きな目的になります。
鉄道会社は、鉄道設備を施設し列車を運行するほかに、路線沿線の町作りにも関わります。駅ビルなどの商業施設の運営や不動産開発などを行ない、鉄道と沿線地域が相互発展することを目指します。
プロ野球球団のいくつかの経営を鉄道会社が行なっているように、娯楽施設の運営に力を入れている場合もあります。災害対策としては、橋やトンネルなどの構造物の耐震強化、帰宅困難者への対応などが進められています。
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災害でライフラインが止まる順番
大きな災害では全てのライフラインが一挙に止まります。水道と電気を比べると、電気の方が止まりやすいようです。
被災者へのアンケートでは、断水を経験した人と停電を経験した人とでは、停電を経験した人の方が多くなっています。水道管が地下設備なのに対して、送電線の多くが電柱を使って空中に施設されているからでしょう。地上では、倒壊した建物にあたったりして、送電線の切れる機会が多くなります。
ガスは、都市ガスとLPガスでは事情が異なります。都市ガスはガス管が地下に埋設されているので、止まりやすさは水道と同程度と考えて良いでしょう。LPガスは、生産が止まらなくても、交通が遮断されていては配送することができません。
言うまでもありませんが、いつでも必ず電気のほうが水道よりも先に止まるというわけではありません。状況によって停電だけが起こる場合も、断水だけが起こる場合もあります。
災害でライフラインが復旧する順番
災害で水道、電気、ガスが止まった場合、予想される復旧の順番は早い順に「電気、水道、ガス」です。1995年の阪神淡路大震災でも2011年の東日本大震災でも、復旧はこの順番でした。また、内閣府による東京の被害想定によれば、復旧目標日数は、電気で6日、上水道で30日、ガスで55日です。
災害時に止まりやすいのも電気なら、復旧しやすいのも電気ということになります。これは送電線の多くが地上に施設されているからです。
都市ガスの場合、水道と同じように地下に配管されますが、水道よりもガスの復旧に時間がかかります。これは、水と違ってガスは爆発の恐れがあるので、取り扱いがより慎重を要するからです。
情報インフラについては、携帯電話の普及した現在、移動中継基地のようなものを派遣できれば電話はすぐに復旧できるはずですが、電気がなければ充電もできません。
災害時にライフラインが絶たれるときの確保対策8個
■1. 飲料水の確保
人間が生きていくためには飲み水が絶対に必要です。食べ物がなくても、家がなくてもすぐに死ぬことはありませんが、飲み水がなければ確実に死にます。
断水したときにはすぐに給水車が来ると思うかもしれませんが、給水車自体を確保できても、道路が通れなければ被災者のもとに届きません。また、どこに届くかいつ届くかという情報もなかなかわかりません。役所のホームページなどで確認できると思うかも知れませんが、肝心の電気も止まっている可能性が高いのです。
飲料水の量の目安は1人1日3リットル程度です。水の保存期間はおよそ3日とされていますが、期間を過ぎればすぐに飲めなくなるということはありません。交換しながら保管するのが面倒な人には、数年保管できる防災用の水も売っています。
■2. 風呂に水を溜めておく
飲料水以外でも、水が必要になる場合は多いものです。近くに川などがあっても、災害時には流れが止まったりすることもあります。
飲料水以外で、水がなくて最も困るのはトイレの水洗です。風呂に水がためてあればある程度対応できます。その他、火事の消火や、災害で乱れた家を掃除するのにも風呂の水が使えます。
■3. 懐中電灯をすぐに手の届くところに置いておく
災害時に必要なものをまとめて「防災袋」に入れておくのは、非常のときの用心として有効ですが、懐中電灯はすぐに取れるところに置きましょう。
懐中電灯が必要になるのは、暗くてものが見にくいときだからです。手探りでわかる場所にあれば便利です。予備の電池も一緒にあればより安心です。ソーラーライトやキャンプ用のランプなども有効です。
■4. 停電したらプラグを抜きブレーカーを落とす
これは事故や落雷で停電したのなら不要な操作です。しかし、地震や水害などで家の中が乱れたときは、念のため家電製品のプラグを抜きブレーカーも切っておきましょう。
電気が復旧したときに、切れた配線や故障した家電に急に電気が通ると、発熱して火事の原因になることがあります。また、送電線の切れたところには、感電の恐れがあるので近付かないようにしましょう。
■5. 携帯ラジオ
ラジオは持ち運びやすく消費電力が少ないので、災害時の情報収集には便利です。防災用としてさまざまな機能が付いたものもありますが、シンプルなものの方が壊れにくく省エネで、災害時には信頼できます。予備の電池も用意しておきましょう。
災害時には不確実な情報や、さまざまなデマが流れることがあります。その点、ラジオの情報は確実です。避難情報や給水車、停電や断水、ガスの復旧情報などがわかる上に、音楽や落語を聞くこともできます。
■6. ガスボンベ式の卓上コンロ
電気もガスも止まっているときには、特に温かい食べ物が恋しくなるでしょう。卓上コンロがあればずいぶん料理の幅が広がります。さらに圧力鍋や保温鍋があれば、ガスボンベを節約できます。
料理の他、蒸しタオルを作って体を拭いたりすることもできます。水は節約するべきですが、気持ちが荒んだり落ち込んだりしたときには、お茶を入れるのも無駄ではありません。
■7. 携帯電話充電用のバッテリー
災害時には電話で家族の安否の確認などをしたいものです。携帯電話なら無線ですから、移動基地局のような設備を用意してもらえば、通信自体はすぐに復旧します。
しかし、停電していては充電することができません。防災用に携帯電話が充電できるバッテリーが販売されています。
災害時には被災地に通信が集中して、電話やインターネットがつながりにくくなることがあります。そういうときのために、NTTは災害用安否確認サービスを提供しています。
電話を使った声の伝言板「災害用伝言ダイヤル171」とインターネットを使った「災害伝言板web171」です。毎月1日と防災週間には体験利用もできるので、家族や知り合いと試してみると良いでしょう。
■8. アナログ固定電話
あまり知られていませんが、アナログ回線を使った固定電話は停電しても使えます。これは、電話回線にはごく低い電圧の電気が流れていて、それを使って通話するのです。
そのため、電話線と電話局が無事なら停電していても通話することができます。固定電話でも、FAXや液晶表示、コードレス電話などの機能が付いたものは停電すると使えません。
また、アナログ回線ではなくインターネット用の光回線などに接続したものは、固定電話でも停電時には使えません。
公衆電話も停電しても使えます。最近数が少なくなっていますが、防災上からも公衆電話が全廃されることはありませんので、日ごろから場所を確認しておくと良いでしょう。
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まとめ
ライフラインとは「生活や生存に必要なものを供給する設備や経路」のことで、具体的には、水道、電気、ガスなどです。
電話やインターネットなどの情報通信、道路や鉄道などの交通を含める場合もあります。災害時にはライフラインの一部、あるいは全てが止まる場合があります。災害が起こったときは、復旧するまでの準備をしておきましょう。