「ばっかり食べはお行儀が悪い」「ちゃんと順番に三角食べしなさい」と言われたことはありませんか?日本では出されたメニューを少しずつ食べるのが良いという考え方がありますが、そもそもいつから始まったのでしょうか。
今回は、三角食べの意味と歴史について解説!ダイエットとの関係についてもお話します。
三角食べの意味とは?別の言い方は?マナー?
三角食べとは、出されている食事を順番に均等に食べる方法です。
例えば、「白米、みそ汁、焼き魚」というメニューならば、「白米→味噌汁→焼き魚(順不同)」と、少しずつ順番にグルグルと食べるのが三角食べです。
メニューが増えれば「四角食べ」「五角食べ」になるのですが、品数に関係なく「三角食べ」で統一されています。
別の言い方では、「口内調味」が最も近い表現です。
口内調味とは、口の中に2つ以上のメニューを入れて、咀嚼することで混ぜ合わせる食べ方。主に白米+α(主催や副菜、汁物)の組み合わせがメインです。「ご飯に合うおかず」は、口内調味の代名詞と言っても良いでしょう。三角食べとは厳密には意味が少々変わります。
なお、「三角食べはマナー」「ばっかり食べ(1品ずつ平らげる食べ方)は行儀が悪い」という説もありますが、価値観の多様化や常識知識の更新により、意見は分かれています。
三角食べの歴史はいつから?日本の文化?
三角食べの歴史は意外と浅いです。始まりは1970年代に、給食を食べる際に一部地域で「少しずつ順番に食べる」という指導が行われたのが起源と言われています。
そのような指導が行われた理由は、給食を完食させたいのが狙いという説が有力です。順番に食べさせることで、子供に人気のないメニューが大量に余るという事態を回避したかったのかもしれません。
歴史をたどると、三角食べは日本独自の正式なマナーではありません。そもそも、日本食は丼やうどん、そばなど、1点豪華主義的なメニューが多数あります。懐石料理などは1品ずつ順番に食事が出てきて、1つずつ平らげるものですから、「三角食べはマナーが良い」という根拠にはなりません。
恐らく、給食で三角食べ指導を受けた年代が、「それがマナーだ」という認識になり、「三角食べが正しい」「ばっかり食べは行儀が悪い」という固定概念が作り上げられたのではないでしょうか。
なお、2007年に文部科学省が発行した「食に関する指導の手引き」では、「主菜とおかずは交互に食べる」という記載がありましたが、2019年の「食に関する指導の手引-第二次改訂版-」にはなくなっています。
三角食べの効果と良い理由は?血糖値改善?
三角食べは正式なマナーではありませんが、栄養学的に良い効果を含め、以下のようなメリットがあります。
・硬さの違うものを食べるので、自然と咀嚼回数が増えて、満腹感が得られやすくなったり顎が鍛えられたりする
・食事スピードがゆっくりになるので、血糖値の急激な上昇を抑えられる
・口の中で味が混ざり合い、味覚が育つ
・出されたメニューを均等に食べられるので、栄養バランスがとりやすい
・白米を食べるためのふりかけなどが不要になるので、総合的な塩分量が減らせる
近年では野菜類を先に食べ、血糖値の吸収を抑える「ベジファースト」という食べ方も良いとされています。三角食べにベジファーストを加えることで、さらに血糖値の急上昇を防止する効果が高まるのでおすすめです。
三角食べは間違い?デメリットは?汚い・体に悪い?
三角食べは給食で推奨されていた食べ方ですが、実は以下のようなデメリットがあります。
・汁物や飲み物と食べ合わせると、流し込む形になり咀嚼が減ってしまう
・白米との相性を考え、塩分過多になるケースもある
・炭水化物の量が増える傾向にある
・メニューによっては口内調味の相性が悪い
健康に良い食事をするためには、三角食べだけにこだわるのは、かえって良くありません。「なぜ、三角食べが良いのか」の意味を知り、正しい食べ方をするのが重要です。
「食に関する指導の手引き-第二次改訂版-」では、「食育推進に当たっての目標」について、以下のような記載があります。
以下引用
(7) 栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす
(8) 生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩等に気をつけた食生活を実践する国民を増やす
(9) ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす
出典:文部科学省「食に関する指導の手引き-第二次改訂版-」
これらを踏まえた上での三角食べなら、デメリットよりもメリットが大きくなるでしょう。
三角食べのやり方
三角食べは出されたメニューを少しずつ均等に減るように食べるのが基本ですが、厳密なやり方はありません。「全てを均等に食べる」にこだわると、味の相性が悪いものを我慢して組み合わせることになり、食事が苦痛になってしまいます。
柔軟性を持って、あなたが「これを一緒に食べると美味しい」と思うメニューがあれば、口内調味をしながら食べれば良いでしょう。
血糖値やダイエットを気にしているなら、ベジファーストを取り入れるのがおすすめです。メニューの中に繊維質の多い野菜があれば、まずはそれを大目に食べます。その後、残りのメニューをゆっくり少しずつ食べれば、血糖値の上昇は緩やかになります。
ついつい食べ過ぎてしまう場合は、飲み物や汁物を先に多めに食べるのが良いでしょう。先に水分が入ることで、満腹感が得られやすくなります。特に温かい飲み物、汁物は熱々の内に楽しめるのがメリットです。
また、できるだけお箸で食べるのが良いでしょう。なぜならば、スプーンやフォークよりも1口の量が少なく、ゆっくり食べられるからです。
三角食べができない人の性格は?嫌い・苦手?
三角食べができない人の中には、発達障害で偏った食事行動を取ってしまう人もいるでしょう。
他には、生まれつき人よりも感覚が鋭い状態である感覚過敏の人もいます。味覚や嗅覚、口の中の触角が過敏な人は、普通の人よりも口の中で味や食感が混ざり合う感覚が大きいので、三角食べや口内調味が苦手なケースが多いです。
普通の人にとっては「口の中で混ざって味が丁度良い」ですが、感覚過敏だと「複数の味や食感が口の中でバラバラになって、なんとも不快(まずい)」と感じてしまいます。少しずつメニューを食べ、口の中の味が頻繁に変わるのが辛い人もいるでしょう。これは、性格とは全く関係ありません。
三角食べを「当然のマナー」と捉えると、1品ずつ食べる人は「お行儀が悪くて嫌い」と感じるかもしれません。しかし、三角食べは正式なマナーでないですし、人によっては辛い場合もあります。無理に合わせなくても良いですが「そういう人もいる」と知っていた方が良いでしょう。
三角食べは子供の食育指導に良い?和食のみ?
元々給食指導から始まった三角食べですが、実は給食だからこそ「ゆっくり食べる」がデメリットになるリスクがあります。特に低学年で三角食べを推奨すると、食べる時間が足りなくなったり、給食をこぼしてしまったりする子供も増えるでしょう。
また、食べ合わせの問題もあります。和食メニューのときの牛乳は相性が悪く、無理な三角食べは苦痛につながる可能性もあります。
更には、子供の食事への自主性を奪う危険性もあります。「一緒に食べたら美味しいかもよ」という提案なら問題ありませんが、「順番に食べなさい」は食べ方の自由を奪う過度な指導と言えるでしょう。
文部科学省からも、学校教育が担うものの位置付けは以下の3点で、三角食べの指導については一切書かれていません。
以下引用
(4) 朝食を欠食する国民を減らす
(5) 中学校における学校給食の実施率を上げる
(6) 学校給食における地場産物等を使用する割合を増やす
出典:文部科学省「食に関する指導の手引き-第二次改訂版-」
給食を取り巻く環境は大きく変化しています。現在の給食で三角食べが指導されるのは非常に稀。「嫌いなものも1口食べてみよう」「自分が食べられる量をよそって完食を目指そう」など、個人差に配慮したものになっています。
家庭では子供の個食が問題になっています。食べ方よりも「一緒に食べる楽しさ」を心掛けるのが良いでしょう。
三角食べはダイエットになる?太る?
三角食べをしたからといって、ダイエットにつながるものではありません。「三角食べを取り入れて工夫すれば、ダイエットになる場合もある」が正解です。
「三角食べは太らない」という誤った理解をして、早食いしたり必要以上に食べたりすれば、当然太ります。
もちろん、前述したベジファーストを取り入れ、ゆっくり食べて満腹感を得ることで総量が減れば、ダイエット効果は出るでしょう。それに加えて、栄養バランスを考え、運動も組み合わせる必要があります。ダイエットとは総合的なものなのです。
三角食べへの海外の反応は?アメリカは?
日本では当たり前に行われている三角食べや口内調味ですが、国によっては馴染まないようです。
例えばアメリカでは「白いご飯を食べる」という文化に乏しく、味付けは1品ずつ楽しめるものが基本となります。アメリカのライス料理は、チキンライスなど味付けしたものが主流です。フランスでは一品ずつ食べるのが食事の常識です。
元々口内調味の概念のない食文化を持つ国では、「美味しいからやってごらん」「日本は三角食べするんだよ」と言われても、戸惑いや抵抗感があるのは当然でしょう。子供の食育と同じで、無理強いはいけません。お互いの国の食を尊重し合い、興味を持って楽しむのがベストです。
まとめ
三角食べは一時期「食事のマナー」として広まっていました。昭和生まれの人は「三角食べしなさい」と言われた人が多いでしょう。しかし、マナーや常識、食の知識は時代によって変化します。現在の学校給食では、三角食べの指導はほとんどありません。
とは言え、三角食べや口内調味は日本の食文化だからこそ生まれた食べ方と言えます。メリットやデメリットを理解しながら、食を楽しむ1つの要素として捉えると良いでしょう。