精神的にはとても疲れているけど、何か症状が出ているわけでもないと、会社を休みたくても休みにくさを感じるものです。しかし、精神的な疲れは早めの回復が大切です。
そこで今回は、精神的な理由で仕事を休む時の伝え方と対処法を解説します。
精神的に疲れた…休みたい…
精神的な疲れはしんどいですが、発熱するわけでもなく、動こうと思えば動けてしまうと、「休みたいけど理由がない…」と思い、頑張って仕事に向かってしまう人も多いでしょう。
しかし、「精神的に疲れている」と自覚できている時点で、あなたはメンタル不調であり、本当は休息が必要な状態です。個人差はあるものの、無理を重ねると心身にさまざまな症状として表れるケースがあります。
それでも、頑張ることを美徳とする同調圧力が強い日本では、「休みたいけど休めない…」となってしまいがちです。「病は気から」という言葉がありますが、精神的に力が出ない状態での無理は、とても辛く苦しいものです。
精神的な理由で仕事は休める?
労働者は労働基準法によって守られています。理由に関わらず、基準を満たしていれば一定の有給休暇が取得でき、使用する際の理由は自由です。
「精神的に疲れたから会社を休みたいな…」と思った場合、有休があるならば、労働者の権利として何の問題もなく休めます。1~2日ゆっくり休めば回復しそうならば、有休を使って会社を休めば良いでしょう。
しかし、「精神的に疲れているのでお休みします」と、ストレートに伝えるのは、返って面倒になるかもしれません。
企業規模によっては国からのストレスチェック制度に準じているため、精神的な疲れを理由にすると、うつ病リスクなどを心配され、深く理由を聞かれる可能性があります。短期間ならば「発熱」「風邪症状」など、体調不良を理由にした方がスムーズです。
精神的な理由で休んだ時の評価は?クビになる?
「精神的な理由で休んだ」というだけでは、一般的には評価に影響はありません。会社の評価基準に則って適性に評価されるものなので、休んでも基準を満たしていれば問題ありません。
しかし、あなたを評価する上司が「休むなどけしからん!」というタイプで、しかも上司の一存で評価が大きく変わるならば、下がる可能性はあります。万が一のために、会社の評価基準をチェックし、コンプライアンス部署に連携をとれるよう準備しておくと良いでしょう。
クビについては、有休制度等の範囲内で休むのであれば心配ありません。療養が必要で長期的に休む場合は、会社の就業規則によります。会社に私傷病休職制度があるならば、休職ではクビにはなりません。
休職制度がなくても、雇用の限定のない採用であれば、配置転換での復職検討が先となります。尚、精神的な疲れ等理由を問わず、復職が不可能となった場合は、雇用計画不履行となるためクビにできます。
精神的な問題を抱える日本の患者数
日本は精神病大国です。精神疾患用病床数は世界でダントツの1位。患者数は年々右肩上がりで、厚生労働省のデータによると、以下のように推移しています。
・平成14年:258.4万人
・平成17年:302.8万人
・平成20年:323.3万人
・平成23年:320.1万人
・平成26年:392.4万人
・平成29年:419.3万人
出典:厚生労働省
メンタルヘルス上の理由での休職者や退職者の有無は、事業所別の数値だと以下のようになっています。
・5000人以上:いる(91.3%)、いない(8.7%)
・1,000-4,999人::いる(92.3%)、いない(8.7%)
・300-999人::いる(67.0%)、いない(33.0%)
・100-299人::いる(37.5%)、いない(62.5%)
・50-99人::いる(16.2%)、いない(83.8%)
・30-49人::いる(8.7%)、いない(91.3%)
・10-29人::いる(3.8%)、いない(96.2%)
出典:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(1)」
休む時の伝え方や連絡は?電話・メール?
休む時の伝え方は、会社の規定に従うのがルールです。特に定められておらず、1~2日の休息ならば、電話で伝えるのが良いでしょう。就業前に休む旨を確実に伝えられます。
しかし、精神的な疲れが酷いと、会社への電話がとても大きな負荷になるかもしれません。「電話をするのも辛い」という場合は、メールで連絡しましょう。上司と直接LINEでつながっているなら、「先ほどメールさせていただきましたが、本日〇〇を理由にお休みさせていただきます」と、重ねて連絡するのが無難です。
上司のLINEがわからないけど、職場の同僚のLINEなら知っている場合は、念のため「メールで休みの連絡をしたけれど、上司に伝わっているか確認してほしい」とお願いするのもあり。「きちんと休みの連絡が伝わったかな…」という不安を解消できます。
休む時の伝え方の例文
休む時の伝え方を、例文で紹介します。
◯1~2日休む場合(理由は体調不良とする)
「おはようございます。〇〇です。突然で申し訳ないのですが、昨日の夜から体調不良が続いているので、本日はお休みをさせていただきます(2日の場合は「念のため明日までお休みをさせていただきます」)。何卒、宜しくお願い致します。」
◯長期的な休みが必要な場合
「おはようございます。〇〇です。突然で申し訳ありませんが、酷い体調不良で受診をしたいため、本日お休みをさせていただきます。宜しくお願い致します。」
→受診し、診断を受けてから再び連絡。
「突然お休みを頂戴し、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございます。本日受診してまいりましたが、医師から〇〇という診断を受け、〇日程仕事を休む必要があるとのことでした。現在〇〇の症状があり、診断書もいただいております。〇日までお休みをいただきたいのですが、会社での手続等必要なことはありますか。」
精神的な理由で何日休める?長期間休める?
私傷病休職制度がある会社ならば、精神的な理由でも診断書と医師の見解があれば、手続きを行い、休職という形で長期間休むことができます。まずは、会社の規定をしっかりチェックしましょう。
休職制度がない場合、有給休暇の日数までなら問題ありません。しかし、それを超える場合は、会社があなたの休みの状況を「雇用計画不履行」と捉えるか否かで休める日数が変わってくるでしょう。
どちらにしても、一定期間の休みを取る場合は、会社の責任者との話し合いや、仕事の調整が必要になります。
仕事を休む時の注意点
あなたが会社を休むことで、仕事に支障が出ないようにすることが大切です。短期間の休みでも、重要な仕事がある場合は、電話やZoomなどを使ってしっかり引継ぎをしましょう。精神的疲労がピークで対応が難しい場合でも、最低限の連絡を可能な限りしておきましょう。
会社を休む際は、仕事の連絡をしないのがルールです。それでも、「何かあったら連絡してください。休んでいてすぐに出られないかもしれませんが、できるだけ対応させていただきます」と一言伝えておきましょう。気遣いを見せることで、休み明け出社しやすい雰囲気が作れます。
精神的な理由で仕事を休む時の対処法5個
風邪などの病気とは違い、精神的な疲れは「寝てれば治る」「薬を飲めば治る」とは限りません。精神的な疲れを癒し、繰り返さないためにはコツがあります。そこで、精神的な理由で仕事を休む時の対処法を紹介します。
■1. 罪悪感を持たず休息に専念する
会社の休みが決まっても、「迷惑をかけて申し訳ない」と罪悪感を持つと、返ってストレスが溜まってしまいます。
休みの連絡ではポーズとして「すみません」という態度を見せることが必要ですが、いざ休みに入ったら、意識的に「休むのは良いこと」とポジティブ思考になりましょう。休むのはあなたの権利ですから、会社の心配はせず、ゆっくり休んでくださいね。
■2. 精神的疲労の原因を考える
休息して心に余裕ができたら、精神的疲労の原因を考えましょう。原因を特定し取り除けば、あなたの精神的疲労を軽くできます。精神的な疲れが職場環境なのか、プライベートなのか、両方なのか、自分とじっくり向き合い、心当たりを書き出すと良いでしょう。
もしも、考えるのも辛いようなら、そこに大きな原因が隠されています。しかし、「辛い」と思ったら思考を止めて、再び休息してください。精神的に弱くなっている状態で無理に向き合うと、更に強いストレスがかかってしまいます。
■3. 具体的解決策を検討する
原因について書き出したら、今度は具体的解決策を検討しましょう。プライベートな問題ならば、あなたの一存で改善が可能です。
しかし、職場や仕事に問題がある場合は、会社との相談が必要になります。仕事量の調整や担当の変更等で解決できるなら、上司に相談してみましょう。場合によっては部署異動や転職という選択肢もあるかもしれません。
■4. セルフチェックでうつ病等の精神疾患リスクを確認する
自分の状況を正確に把握するためにも、うつ病等の精神疾患のリスクをセルフチェックしましょう。
以下のサイトでは、職場のストレスセルフチェックができます。
「5分でできる職場のストレスセルフチェック」(こころの耳)
https://kokoro.mhlw.go.jp/check/
精神的に疲れているとき、自分の状況を客観的に見るのは難しいものですので、是非活用してください。
■5. 必要ならば受診も視野に入れる
セルフチェックでよくない結果が出たり、自分でも「おかしい」と感じるほど気分の落ち込みが酷かったりする場合は、受診も視野に入れましょう。
受診対象として心療内科と精神科があります。心の異常のみなら精神科、体にも症状が出ているなら心療内科、どちらかわからないなら心療内科が良いでしょう。
会社を休んでいる時の過ごし方
精神的な疲れで身体的には元気かもしれませんが、まずは安静にしてしっかり休息することが重要です。ただし、生活リズムを整えて、早寝早起きを心掛けましょう。バランスの良い食事でしっかり栄養をとることも忘れてはいけません。
元気が出てきたと思っても、いきなり活動するのはハイリスクです。心身の様子を見ながら、少しずつソロっと動き出しましょう。調子が良ければ、適度な運動も効果があります。日の光を浴びながらのウォーキングなどがおすすめです。
会社を休む時に使える公的支援制度
有休日数を超えて会社を休む場合、最も心配なのが収入面ですよね。日本では病気などで会社を休む時に使える公的支援制度が充実しています。
・病床手当(健康保険加入者が休職中に最大1年6カ月まで給与の一部が支給される制度)
・労災手当(疾患に労災が認められた場合、賃金の支給が受けられないときに平均賃金の80%が保証される制度)
精神的疲れが職場環境にあった場合、悩みを相談できる機関もあります。
・総合労働相談コーナー
・こころの耳電話相談(メール相談)
・労働条件相談ホットライン
・職場のトラブル相談ダイヤル
・こころの健康相談統一ダイヤル
その他、休業明けの復職で不安を抱える人のためのリワーク支援もあります。相談窓口は各地域の障害者職業センター、精神保健福祉センターなどです。
使える支援はしっかり使って、安心してゆっくり休息に努めましょう。
まとめ
「精神的に疲れて休みたい…」と思うのは、心からのSOSです。早めに対策を打った方が、早期回復できます。自分の心に耳を傾け、無理をしないように心がけましょう。