私たち人間が聞くと「落ち着ける音」や「イライラする音」があるように、犬にも「好みの音」や「不快になる音」があります。
いまや飼い犬の9割以上が室内飼育される時代。犬と人が同じ空間で生活するのが当たり前になったからこそ、犬と音の関係について考える必要があるのではないでしょうか。
犬の聴力
犬は聴力の優れた生き物です。犬が音を聞き取れる範囲は人の400倍、音を聞き取れる方向は人の2倍の32方向といわれています。
さらに可聴域(音として捉えられる周波数)で比較すると、人間の耳は約16~2万ヘルツ。これに対し犬の可聴域は約60~5万ヘルツです。
つまり、私たち人間が音として聴くことはできない高周波の音域まで、犬は聞き取れているわけですね。
愛犬が何もない場所に向かって吠えているのは、もしかしたら人間には聞き取れない音に反応しているのかもしれません。
玄関ドアの向こう側を歩く人の足音、配管を流れる水の音、道を挟んだ向こう側の家で泣いている赤ん坊の声など、犬の耳が捉えている世界は私たちが認識しているものとはまったくの別物です。
壁の方をやたらと気にしている愛犬の姿に「まさか霊現象⁉」と思いきや、なんのことはない、お隣の人が鼻歌を歌いながら料理をしているだけかもしれません。
犬が好きな音や音楽10個
■1. 飼い主の足音
大好きな飼い主が近づいてくる足音は、犬をワクワクさせる素敵な音です。「散歩に連れていってくれるかもしれない」「オヤツをもらえるかもしれない」「なでなでしてくれるかもしれない」というように、楽しいことを連想させるのではないでしょうか。
反対に、用事があって急ぎ足になっている飼い主の足音を、犬はあまり好みません。犬達は飼い主の足音の違いをよく知っているのです。
■2. 機嫌が良い時の飼い主の声
自分の名前を呼ぶ声だけではなく、犬は飼い主の楽しそうな声全般が大好きです。声のトーンには飼い主の機嫌が如実に表れているからではないでしょうか。
飼い主の機嫌が良い時は、いつより長くお散歩に連れ出してもらえたり、オヤツを少し多めにもらえるかもしれません。犬は良いことも悪いことも、いろいろなことを関連付けて記憶しています。
■3. 家族が帰ってきた時の玄関ドアを開ける音
出掛けていた家族が帰って来た時の、玄関ドアを開ける音が犬達は大好きです。学校や会社に行っていた家族が帰ってきたときはもちろん、ちょっとそこまで買い物に出掛けて帰ってきた時まで、とにかく犬は家族が帰ってくる音を喜びます。
家族が帰ってきて嬉しいだけではなく、「いい子でお留守番していたんだから、ご褒美にオヤツをください」あるいは「さあ、お散歩に連れ出してください」という期待があるのかもしれませんね。
■4. ドッグフードやオヤツの袋を開けるカサカサ音
犬達の大好きな音ナンバーワンの呼び声高いのが、ドッグフードやオヤツの袋を開けるカサカサという音です。子犬の頃からおいしいオヤツをもらえる前に、必ず聞こえてくるのがこの音だったからでしょう。犬達はカサカサにかなり良いイメージを持つようです。
ところが犬には関係ない袋を開けても、カサカサするたびに犬達が反応してしまうのはちょっと困りもの。飼い主としては気づかないふりをするしかありません。
■5. ピーピー鳴る笛入りのオモチャ
犬用のオモチャやぬいぐるみには、中にピーピー鳴る笛が仕込まれているものがたくさんあります。オモチャ遊びが大好きな犬は、ほぼ例外なくこの音に興味津々。捕まえた獲物が発する声に似ているとも言われ、オモチャ好きの犬はこの音にかなり興奮します。
どんなにぐっすり眠っていても、ピッと鳴ったとたんに飛び起きて遊びだすことも。独占欲が強いタイプの犬が、この音をより好む傾向にあるようです。
■6. 犬のご飯を用意する音
犬達は飼い主が犬のご飯を用意する時の音をよく知っています。ドッグフードの袋を開ける、計量カップで量る、器に盛りつけるといった一連の手順では、必ず同じ音がするからではないでしょうか。
特にドッグフードを器に入れる時のカラカラパラパラという音が、犬はとりわけ大好きです。待ちきれない顔をした愛犬のためにご飯を用意する瞬間は、飼い主にとっても楽しい時間ですよね。
■7. リードを持った時の音
犬達はお散歩の時間をとても楽しみにしています。だから、飼い主がリードを手に取った時の音を聞き逃しません。散歩に連れていくタイミングではなかったのに、たまたまリードに触れてしまっただけでも、犬達は音を聞きつけて大はしゃぎします。
そのため、多くの飼い主は散歩ではない時にリードを持つ時は、音をさせないよう細心の注意を払わなければなりません。
■8. 掃き出し窓を開ける音
犬達はリビングなどの大きな掃き出し窓を開ける音が大好きです。犬の目線は低いため、腰窓を開けても外が見えません。しかし床から天井まで高さがある掃き出し窓なら、犬の高さでも外を感じやすいからなのでしょう。
外の様子は見えなくても、窓が開くことによって外界のにおいが感じやすくなります。掃き出し窓が開く音は、犬にとって外界への扉が開くのと同じです。
■9. 静かなピアノの音
飼い主さんが静かな曲をピアノで弾き始めると、足元で静かに寝そべるワンちゃんは多いものです。これはおそらく、穏やかなピアノの音が犬の耳にも心地良いからではないでしょうか。
反対にヴァイオリンを弾き始めると、音に合わせて歌うワンちゃんがいることも知られています。ヴァイオリンの音は人間の声に近いといわれ、もしかしたら人間を群れの一員と認識している現代の犬達は、仲間の声に応えて遠吠えがしたくなるのかもしれませんね。
■10. テンポがゆったりとした音楽
犬が好きな音楽は、精神的に落ち着けるゆったりとしたテンポの曲だといわれています。静かなクラシックは多くの犬に好まれますが、中にはレゲエやソフトロックを好む通な犬も。
人間と同様に、犬にも音楽の好みがあるのかもしれません。いろいろなジャンルの音楽を聴かせてみると、愛犬の好みが見えてきそうですね。
犬が好きな音のおすすめYoutube動画5個
■1. 犬のストレス解消を解消するBGM
犬が自然と眠るように作られた音楽で、静かな旋律は人間の眠気も誘ってくれそうです。新しい環境で犬の緊張がなかなかとけない時など、こういった静かな音楽を部屋に流しておくと、リラックスを早めてくれるかもしれません。
■2. ペットをリラックスさせるための音楽
シタールあるいはギターのような弦楽器の旋律が静かに流れ、気持ちを落ち着かせてくれる動画です。8時間以上の長時間連続再生ができるため、お留守番の時にこの音楽を流して出掛けると、飼い主不在の寂しさが和らぐかもしれません。
■3. 犬が寝ることを目的に設計されたBGM
ヒーリングミュージックのような荘厳な旋律が、興奮の冷めない犬の精神を鎮めてくれそうな音楽です。犬を寝かしつける時はもちろん、雷や花火で落ち着かない時や、遊んでもらえず寂しそうにしている時などにも、静かに流しておくと効果があるかもしれません。
■4. 犬の不安を最小限に抑えるための音楽
草原にいるかのような鳥の声と、静かな旋律が交互に繰り返されていきます。この動画のおもしろい点は、「効果のあったワンちゃん」と「効果のなかったワンちゃん」がはっきり分かれていること。
おそらく、鳥の声に本能が刺激されてしまうタイプの犬は、これを聞くと落ち着くどころか興奮するのかもしれません。しかし効果のあがったワンちゃんは、てきめんに落ち着きを取り戻しているようです。
■5. 音楽で犬を癒すためのBGM
心地良いピアノの旋律が、静かに流れていくタイプのBGMです。人間用ではないとの注意書きがされていますが、人間が聴いてもリラックスすること間違いなし。愛犬を寝かしつけるために流したのに、飼い主の方が先に寝てしまいそうです。
犬に音を聞かせる時の注意点
愛犬に音楽を聞かせる時は、必ず音量に注意してください。どんなに犬を癒すタイプの音楽でも、音が大きすぎるとただのストレスです。
ヒーリングミュージックだろうがハードロックだろうが、犬に聞かせる時の音量は「小」一択。犬は人間の何倍も耳の良い生き物です。「小さすぎるかな?」という程度の音量以外はただの騒音でしかありません。
また、イヤホンやヘッドホンなどを使って犬に音楽を聴かせるのは絶対にNG!
頭や耳によくわからないものを装着される違和感は、犬にとっての嫌がらせでしかありません。癒すつもりが虐待になっていたら、元も子もないのです。
まとめ
愛犬が好きな音は、飼い主が想像しているものとはまったく違うのかもしれません。犬は基本的にゆったりと落ち着ける旋律を好むようですが、中には速いリズムを好むツワモノも。
また、人間にとってはリラックスできる環境音でも、犬に聞かせるとかえって興奮することもあります。愛犬の好む音を探すなら、いろいろなタイプの音を幅広く聞かせてみるのが一番です。