たとえ、あなたが社会的な問題には関心がなくても、インターネットでニュースのサイトを見たときなど、コメント欄に何だかものすごく外国や外国人を攻撃している文章を目にしたことがあると思います。やたらと嫌って、そして怒っています。
さらに、日本に住む貧しい外国人を擁護する意見にも猛烈に反対します。特にマスコミや有名人の意見に噛み付きます。大変な剣幕です。韓国や中国の話題に対して攻撃が激しいようです。注意してみると、そういうコメントはたくさんあります。
いったいいつの間に日本はこんなに右傾化してしまったのだろうか、と思ってしまいますが、ネットを離れたリアルな世界では、そんな印象はありません。どういうことでしょうか?
ネトウヨ(ネット右翼)の定義・意味とは?
ネトウヨとは、ネットで活動する右翼のことを意味します。「ネット」と「右翼」を組み合わせた造語です。ネットスラングですから厳密な定義はありませんが、愛国主義的で排外的な主張をネットで展開している人を指しています。
この言葉は2000年前後から広がったといわれています。悪口として否定的な意味で使われることが多いため、ネトウヨと自称する人は少ないといいます。
SNSなどで、左翼的、リベラル的、あるいは反日的な発言をすると、批判のコメントが一斉に集中する、いわゆる炎上の状態になり、これに閉口した人が抗議の意味で使い始めたといわれています。
この時期は、インターネットに「2ちゃんねる」などの匿名掲示板が普及し始めた時期と一致しています。どうやら、これらの掲示板が過激な発言や炎上的な集中攻撃に許容的であったことが、ネトウヨを勢い付かせる原因の一つになったようです。
ネトウヨとは誰?どんな人たち?
ネトウヨの一般的特徴は、中高年男性、テレビは信用せず、非社交的というものです。以前は、ネトウヨはその発言内容や言葉づかいから、低学歴・低所得の若い男性がイメージされていました。
ところが、フェイスブックの属性情報を元にした分析では、右翼的発言をした人は30代から50代がほとんどで、半数ほどは自営業や経営者でした。つまり、実はネトウヨは中高年に多く、貧困とも無関係であるようです。
また、ネトウヨはテレビをあまり見ず、情報の入手には印刷物とインターネットを利用する傾向があります。インターネットユーザーでありながら、アニメオタクや歴史オタクは少ないのも特徴です。趣味としては、ミリタリーや武術に興味が強いようです。
リアルの右翼と比較したネトウヨに顕著な特徴としては「非社交性」が挙げられます。ネトウヨは、近所付き合いが少なく、他人を信頼せず、孤独感が強いという特徴がみられるのです。
ネトウヨの心理
インターネットで過激な愛国思想や拝外主義を唱える人たちの心理の裏には、左翼思想や地域社会では解消できない不安感や孤独感があります。
ネトウヨの人はよく「目覚める」という言葉を使います。自分は以前はテレビなどのメディアに洗脳されて「間違った歴史観」を持っていたが、ある日、真実に目覚めた、というのです。
社会学者の濱野智史はこれを、冷戦後、左翼的、あるいはリベラル的なイデオロギーへの期待が低くなったために、その代わりに右翼的、ナショナリズム的なイデオロギーへ移っていったのだと分析しています。
ネトウヨの特徴の一つとして非社交性を挙げましたが、背景として、都市における共同体の崩壊もあるでしょう。よくいわれるように、都市においては地域社会というものが成立しにくく、地方のような濃密な地域の交流がありません。昔は会社が共同体の代わりをしていたのですが、近年はそれも望めなくなってきました。
そのため、自分が何にも帰属していないという不安感を消すために、地域を飛び越して一足飛びに国家に結び付こうとするのだ、という分析もあるのです。
ネトウヨとネトサヨの違い
ネトウヨは「ネット右翼」の略ですから、当然、ネトサヨは「ネット左翼」の略です。意見としては正反対です。ところが、両者の発言の構造は驚くほど似ています。内容は正反対なのに、形式はほとんど同じなのです。
ネトサヨはより侮蔑的に「パヨク」とも呼ばれますが、パヨクの人たちは何でもかんでも安倍首相のせいにします。これはネトウヨが何でもかんでも韓国人・朝鮮人のせいにするのと全く同じです。どちらも根拠を訊ねても結論を繰り返すだけです。しつこく追及すると罵倒が返ってきます。
なぜこんな極端な人たちが現われたのでしょうか。リアルな社会では、こういう人たちは普通は相手にされません。根拠をたずねるとキレるのでは、変人扱いされるだけです。ところが、ツイッターやラインでは、短い文字数で結論だけを書くのが普通です。極端な意見でも読んでもらえます。この辺りが、ネトウヨやパヨクがはびこる原因でしょう。
高齢者・中高年にネトウヨが増加する理由
先に述べたように、実はネトウヨは中高年が多いのです。高齢者も増えています。その理由は、都市における孤立感、左翼思想の停滞、経済成長の失速などで、日本が自信を失って来たことが一因でしょう。
現在の中高年は、戦後の高度経済成長期に少年期青年期を過ごし、自信に満ちていました。しかしそれはバブル経済の崩壊でぽっきり折れてしまいました。
また、戦後の知識人は社会主義者でなくても、多くはマルクスの共産主義思想の影響を受けていました。しかし、ソビエトの崩壊で左翼はすっかり元気がなくなってしまいました。都市における孤立感についてはすでに述べました。
こういったことが、右肩上がりで元気だった日本を知っているだけに、大きな挫折感や喪失感を彼らにもたらしたと考えられます。そのとき、彼らが「国家」にすがろうとしたのは、無理もないことかもしれません。
彼らがしばしば言う「目覚めた」という言葉は、そのような「新たなよりどころ」を見付けた、ということを表わしているのでしょう。そしてインターネットでは、自分に都合の良い意見だけを読み、他を無視することが簡単にできます。それが思い込みを強化するのです。
ネトウヨは支離滅裂で説得できない?
基本的にネトウヨは説得できません。自分と違う意見を聞く気がないのだから、仕方がありません。なぜ、人の意見を聞かないかというと、聞く必要がないからです。
パヨクも同じですが、ネトウヨのような極端な主張をする人は、リアルな世界では相手にされません。ところが、インターネットではどんなに極端な意見でも賛成する人がいます。
もちろん反対する人もいますが、そういうコメントは無視できますし、似た意見の人が多く集まるSNSや掲示板なら、賞讃が集まります。
居心地がいいわけです。わざわざ、耳に痛い意見を聞く必要はないのです。孤独が癒され、ますます思い込みが強化されるという悪循環に陥ります。こうして、異なる意見には耳を閉ざし、対話することが不可能な人ができ上がります。
ネトウヨの卒業方法・治し方
もしも今あなたが「自分はネトウヨだったかもしれない」と反省しているのなら、もうほとんどネトウヨは治っていると思って良いでしょう。
これまでに述べてきたように、ネトウヨの最大の問題点は、自分の主張がいかに極端で不合理かということに気付けないというところにあるからです。
自分の主張に疑問を持てれば、その時点でネトウヨは半ば卒業したと思って良いでしょう。逆に言うと、ネトウヨ思想に疑問を持たず、狂信・盲信しているかぎりネトウヨは治りません。
何かのきっかけで「自分のこれまでの主張にはおかしいところがあるのではないか」と思ったら、すこしネトウヨ仲間から距離をおいてみましょう。できればしばらくインターネットに接続するのをやめ、スマホも使わないのが理想的です。
現実にはそうもいかないでしょうが、少なくともネトウヨが集まるSNSや掲示板、ツイッターを見ないようにしましょう。
それでも、リベラルな意見を目にすると反射的に反発してしまうようなら、右翼左翼に関らず、政治的な発言は避けるようにしてみてください。何か趣味を持ち、それに没頭すると良いでしょう。高尚な趣味である必要ありません。
家族(父親・母親)がネトウヨのときの対処方法
家族や親しい人がネトウヨになってしまったら、政治的な話はしないようにしましょう。相手の方から仕掛けて来たらスルーし、できれば席を立ちましょう。
相手を説得しようとしてはいけません。ますますかたくなになるだけです。先に述べたように、ネトウヨから脱出するには自分で主張のおかしさに気付くほかはありません。
たとえ家族であっても他人からの説得によって意見が変わることは、まずありません。かえってパヨク呼ばわりされるのが落ちです。
多くのネトウヨはインターネットのヘビーユーザーで、自分と同じ意見ばかり、それも投稿動画を中心に見ています。そして、そのような意見は次から次へと投稿されるので、疑いを持つような機会はほとんどありません。
「自ら進んで洗脳されている」ような状態です。治療しようと思うなら、少しの間、スマホもパソコンも使わせないのが一番ですが、そんなことは不可能でしょう。つまり打つ手はありません。
ネトウヨと言われる有名人・芸能人
インターネット上でネトウヨと呼ばれることのある有名人・芸能人です。
・百田尚樹(作家)
・小藪千豊(タレント)
・田崎史郎(ジャーナリスト)
・竹田恒泰(評論家)
・桂ざこば(落語家)
・櫻井よしこ(ジャーナリスト)
・千原せいじ(タレント)
まとめ
さまざまな調査によると、インターネット利用者に占めるネトウヨの比率は1%を下まわるだろう、といわれています。現実には大きな勢力ではありません。
それなのに、ネトウヨが問題視され、批判されるのは、発言の数が大変に多く、内容が過激なので目立つからでしょう。つまり、何となく目ざわりだからです。
インターネットが普及し始めた頃、この技術を使えば、検閲や自主規制のない情報に、誰でも平等に触れることができるようになる、といわれていました。
ところが実際にインターネットが一般化すると、自分の気に入る発言ばかり選び、他の発言は無視する、ということが簡単にできてしまい、偏った極端な意見を持つ人が多くなりました。これはネトウヨやパヨクに限らないことで、私たち一人一人が注意しなければいけないことです。