相変わらずインターネットの世界では、新たなネットスラングが泡のように生まれては消えていきます。2020年に入って爆発的に、といってもインターネットのヘビーユーザーの間でですが、広まったのが「チー牛」です。
何のことやらわかりません。スラングですから、わからなくても当然とも言えます。
しかし、「マジレス」や「あたおか」なら、略してあるのを復元すれば、何となく意味はわかります。チー牛は、そもそも何の略なのかが良くわかりません。
チー牛という言葉について詳しく見ていきましょう。
チー牛の意味とは?読み方は?
チー牛とは、「三色チーズ牛丼、特盛温玉付きを頼みそうな顔」を意味しています。
「牛」は、牛丼に由来しますから、読み方は「ちーぎゅう」です。
「三色チーズ牛丼、特盛温玉付きを頼みそうな顔」がどんな顔か、実は簡単に知ることができます。いびりょ氏という人が描いたイラストが元になっています。それを元に、そういう顔をした人はどんなキャラクターか、ということが推理されました。
とある会社が実施する2020年インスタ流行語大賞にも選ばれたものの、2020年年末からインスタにはチー牛のハッシュタグはほとんど投稿されておらず、インスタでは定着しなかったと言えそうです。
チー牛の心理・性格悪い?
チー牛は性格が悪いなんて言われることもありますが、チー牛の性格や生活の特徴は次のようなものです。煙草を吸わない、酒を飲まない、ギャンブルに興味がない、精神的に幼稚、覇気がなく無気力、実家に暮らしている、ネットでは元気など。
これらは、別に専門的なプロファイリングを行なったわけではなく、いい加減なものですが、何となく説得力があります。チー牛には、最初は差別的なニュアンスがありましたが、流行にともなって差別的な感じは薄まっています。
チー牛の元ネタ・モデルは?
元になったいびりょ氏のイラストが公表されたのは2008年で、本人によると自画像だそうです。オリジナルが公表されてから10年後の2018年7月ごろ、5ch(旧2ch)の掲示板「なんj 昼のニート無職部」に画像が貼られて、急速に話題になりました。
ちなみに、「なんj」は、「なんでも実況」の略です。チー牛は、性格が暗くてコミュ力の低い、いわゆる「非モテ」「陰キャ」の典型的な顔のイメージとして語られています。
注文されているメニューについて、正確に言うと「三色チーズ牛丼」というメニューは存在しません。
おそらく、牛丼チェーン店すき屋のメニュー「3種のチーズ牛丼」のことでしょう。さらに正確に言うと、2014年からは「とろ〜り3種のチーズ牛丼」に改称しています。
チーズの種類は、モッツァレラ、エグモント、レッドチェダーの3種類です。すき家広報担当は、このネットスラングを認知しているそうです。
チー牛は陰キャ?イケメン?
何の前提もなくチー牛と言えば、それは陰キャのことと思って間違いありません。チー牛系のイケメンというのは言葉の意味が矛盾しているわけです。
ところが、イケメンが謙遜のつもりか自分のことをチー牛と言ったりする場合があり、そのため正真正銘の陰キャが「もしかして俺ってイケメン?」と勘違いする事態も発生しています。
また、チー牛のイラストはさまざまな変形やコラージュを加えられて多くのバリエーションが作られていますが、その中にイケメン風チー牛などもあり、誤解に拍車をかけています。イケメン風チー牛はチー牛ではありません。
典型的な非モテとされるチー牛ですが、モテる可能性はないでしょうか。チー牛の印象は、一言で言えば「男らしくない」ということになります。男らしさというのは「競争社会を勝ち抜く力」と考えられますから、世の中が穏やかになって、厳しい競争にさらされなくなれば、チー牛の評価が高まる可能性もあります。
チーズ牛丼顔の特徴
チー牛の性格については、すでに述べましたが、外見的な特徴はどうでしょうか。イラストからわかる、また想像されることは、次のようなことです。
・表情に乏しく元気がない。
・度の強い眼鏡をかけている。
・眼鏡には指紋がたくさん付いている。
・たぶん大人なのだが、表情のせいもあって幼く見える。
・身長が低い。
・口がとがり気味なのは、口呼吸の癖で、アデノイド顔貌と呼ばれるもの。
・ファッションはどうでも良く、母親が買った服を着ている。
・斜めがけの鞄。
・ぼさぼさの黒髪で髪の毛がべたべた。
動きとしては、次のようなことです。
・ぎこちない。
・フラフラしてる。
・リズム感がない。
・つま先で歩きがち。
そして、これは少し考え過ぎではないかとも思われるのですが、「チー牛のこのような特徴は、虐待やいじめなどで、子供の頃から激しいストレスにさらされた者に多く見られる」という分析もあります。
人間は自分の言動をからかわれたり、激しく批判されたりすると、自分に自信がなくなります。そして、表情が暗くなり、口数が少なくなり、主張しなくなります。何事にも消極的になり、特に人との関わりに慎重という以上に臆病になります。
そうすると、喋ったり、表情を豊かに感情を表したりする機会が少なくなるので、ますます表情が乏しくなり、喋るのが下手になります。悪循環です。チー牛のキャラクターはこのようにして生まれるのだろうという分析です。
もっとも、これは話が逆である可能性もあります。つまり、そのような経験によってチー牛の顔になるのではなく「少年期の経験によってコミュ力が低下して陰キャとなった人」というのが先にあって、それをチー牛のイラストに当てはめただけ、なのかもしれません。
チー牛顔女性の特徴
チー牛顔女性とは、チー牛のような顔をした女性のことです。髪が長くなって女性の服装に変わったくらいといってもいいでしょう。性格や行動は似たものです。
チー牛の関連用語としては、「ポカホンタス女」あるいは「ポカホンタス女子」が挙げられます。
どのような女性かというと、留学などの短期の海外滞在で急速に欧米文化にかぶれてしまった女子。あるいは、白人の男性と付き合っていることを自慢する女性のことです。
黒髪ロングで濃い目のメイクというその外見が、ディズニーアニメ「ポカホンタス」の主人公を連想させるので、こう名付けられています。
特徴として、会話の間に妙に発音の良い英語を挟んで「あっ、ついうっかり英語が出ちゃった」というような顔をしたり、やたらと「欧米ではこうなっている、日本は遅れている」という主旨の発言をする、などがあります。
彼女たちは自信満々なので、性格的にはチー牛とは似ていませんが「二次元のキャラクターから連想される嫌な感じの人物」という点で、チー牛に対比されるようです。
チー牛顔を治す改善方法5個
チー牛顔を治すには、前に述べたチー牛の特徴の逆を目指せば良いことになります。
■1. 眼鏡をやめてコンタクトにする
メガネをやめてコンタクトにするのは、最も簡単な方法です。コンタクトにするだけで見た目のイメージがガラッと変わりますよ。
もっと軽快な感じのメガネフレームにかえるという方法もありますが「軽快な感じ」がどんなものかすぐにわかるなら、すでにチー牛は抜け出しかけているでしょう。
■2. 口を閉じて鼻で息をする
口を開けていると、ぽかんとした印象になります。反応が鈍くてのろまな感じになるのです。癖になっているとなかなか治せませんが、意識して閉じるようにしていれば、いずれは治ります。
鼻が詰まり気味なら耳鼻科で治療しましょう。鼻うがいなども効果的かもしれません。
■3. 髪の毛を整える
どうすれば良いのかわからなければ、美容室にいって「さっぱりとした感じに」とお願いしましょう。髪はこまめに洗い、くしを入れます。髪がはねるようなら、べたつかない程度に整髪剤を使いましょう。
整髪剤の使い方もそのとき教えてもらってください。整髪剤をつけるかどうかで髪型や印象が変わります。
■4. 表情を付けはつらつとした感じを出す
これが最も難しいかもしれません。テレビなどで、誰かこの人は感じが良いな、と思う人を見つけてビデオに撮り、表情を真似してみてください。
うまくできているかどうか、友達に批評してもらえればなお良いでしょう。そんなことに付き合ってくれる友達がいるようなら、チー牛にはならないかもしれませんが、友達にも手伝ってもらってください。
■5. 明瞭な発音ではっきりと話す
ネットで検索して、演劇などの発生訓練をやってみましょう。口を大きく開け、歯切れの良い、聞き取りやすい発音で喋るだけで、ずいぶん印象が変わります。
全体的に言えることは、清潔感を出し、元気に振る舞う、ということです。
チーズ牛丼がすき家で頼みづらい?売上は?
チー牛という言葉は、否定的な感じで使われるので、すき屋でチーズ牛丼が頼みにくくなってしまった、という人がいます。ナイーブ過ぎです。そういう妙な自意識は、却ってチー牛感を高めます。食べたければ堂々と頼みましょう。
チー牛という言葉が広まってからも、すき屋の広報部によれば「とろ〜り3種のチーズ牛丼は人気ナンバーワンのトッピング商品」だそうです。
また各種のランキングサイトでも、すき屋のメニューの中で、チーズ牛丼は常に上位を占めていて、チー牛のネガティブイメージは売り上げには影響していないようです。
まとめ
チー牛とは「三色チーズ牛丼、特盛温玉付きを頼みそうな顔」のことで、いびりょ氏のイラストが元になっています。ネット上で、この顔の「人物像」が、面白おかしくプロファイリングされて、でっち上げられました。
いい加減なものですが、案外、雰囲気が出ているので話題となり、「いるいるこういう奴」という感じで、ネット内に急激に広まりました。
チー牛という言葉は、ネットではよくあるように、陰キャを攻撃するための悪口としても使用されました。その一方で、チー牛の人物像を想像したり、イラストに変化を加えてバリエーションを作ったりという、ある種「創造的」な方向にエネルギーが使用されているところが、興味深い点です。