※ブリーダーなどペット業界経験豊富なライターが書いています。成犬のトイレのしつけを何匹も成功させた経験の持ち主です。
子犬を飼ったばかりの飼い主が、最初に直面するのはトイレのしつけです。しかし、実は成犬の飼い主の中にも、愛犬のトイレ問題で頭を悩ます方が少なくないような…。
今や、飼われている犬の8割以上が室内で暮らす時代。愛犬のトイレが上手くできないと、快適なドッグライフの妨げになるのは間違いありません。
この記事では、成犬のトイレのしつけ方について解説します。
トイレのしつけを覚えない…うまくいかない…
愛犬がどんなに可愛くても、毎度毎度トイレの失敗を片付けていると、イライラしたりうんざりするものです。余裕がある時はまだいいですが、犬達は忙しい時を狙いすましたかのように、とんでもない場所でオシッコやウンチをするのがお約束。
しかし、愛犬のいる生活をより快適なものにするには、やはりトイレの問題は一日でも早く解決しておきたいところです。たとえ完璧とまではいかなくても、たまに失敗する程度まで成功率を上げられたら、飼い主さんのストレスがかなり減らせるのではないでしょうか。
成犬のトイレのしつけは簡単?難しい?
犬にトイレのしつけをするのは、子犬期から始めるのがベストです。しかし、成犬の飼い主さんもあきらめる必要はありません。根気よく正しい手順を踏むことで、成犬にトイレをしつけることは可能です。
とは言え、子犬とまったく同じというわけにはいきません。なぜなら、成犬は子犬に比べていろいろなことを経験している分、トイレに関する誤った認識を、まずはリセットしなければいけないからです。
だからこそ、成犬のトイレのしつけは簡単ではありません。一つ一つ丁寧に愛犬と向き合う覚悟が必要です。難しそうだとあきらめてしまったら、愛犬のトイレ問題は解決しないまま。あきらめる前に、一度本気でトライしてみてはいかがでしょうか。
トイレの場所と広さは?
愛犬にトイレを憶えさせるには、安心して排泄できる場所にトイレスペースを設置することが重要です。
◯設置する場所の条件
・寝床の真横はNG
・人の出入りが少なく、テレビから離れた静かな場所
・犬が普段過ごす場所とトイレが近い
◯理想的な大きさ
トイレのしつけが上手くいかない原因の一つは、トイレが小さ過ぎること。犬は排泄の際にくるくる回るため、楽に回れるスペースが必要です。
また、小型犬=レギュラーサイズではありません。的が大きいほど矢が当たりやすいように、トイレが大きいほど失敗は減らせます。犬にトイレのしつけをするなら、「いかに成功させるか」より、「いかに失敗させないか」を考えましょう。
犬のトイレのしつけ方3ステップ[室内編]
■①認識しやすいトイレ作り
まずは犬にとって「ここがトイレだ」と認識しやすいトイレスペースを作ります。
●小型犬でもスーパーワイドが理想。最低でもワイドサイズを用意。
●床との段差を設けて認識しやすくなるよう、トイレシーツは必ずトイレトレーにセット。
●広めのサークルを用意し、トイレトレーとクレートを設置。(ベッドタイプの寝床はトイレと間違えるのでNG)
●犬が生活するスペースから、敷物・座布団・クッションなどはすべて撤去。(トイレと間違えやすいため)
■②排泄しそうなタイミングの見極め
トイレサークルに犬を入れるのは、普段犬が排泄する頻度の高いタイミングです。失敗してから入れるのではなく、失敗する前に入れることが重要。
●普段、どのタイミングで犬が排泄するのかしっかり観察。
●犬が排泄するタイミングになったらサークルの中へ。排泄したら褒めてから外に出し、お気に入りのオモチャなどで遊んであげる。→ちゃんとトイレで用を足すと良いことがあると理解させるため。
●トイレサークルの外で排泄しないよう、トレーニング中は目を離さない。
●再び排泄する時間帯やタイミングが近づいたら、「おトイレしようね」と声をかけながらサークルに入れる。
■③自分からトイレサークルに入るよう誘導
●排泄後にサークルから出す習慣がついたら、サークルの扉を開けたままにし、犬がどう行動するか観察。
●排泄のタイミングが近づいても犬が自らトイレに行かない時は、さりげなく誘導してサークル内へ。
●犬が自発的にサークル内のトイレで用を足したら、たくさん褒めてしっかり遊んであげる。
トイレのしつけ期間はどのくらい?
成犬のトイレトレーニングは、これまでの排泄習慣を塗りつぶし、新たに上書きしなければなりません。おおむね1〜3ヶ月ですが、飼い主の方のしつけによってかなり差があります。
成犬になると一朝一夕で覚えるのはかなり困難。飼い主さんは焦らず、はじめから長期戦になる前提でトイレのしつけを開始しましょう。
今日できるようになるか、明日はできるようになるか、と心の中でカウントダウンするのは禁物。過度に期待すればするほど、愛犬がトイレを失敗するたびに、がっかりすることになるからです。
犬は大好きな飼い主のネガティブな感情にとても敏感な生き物。飼い主の気持ちが沈んでいると、トイレトレーニングが犬にとって楽しい時間になりません。「急がば回れ」の精神こそが、成功への近道です。
トイレトレーニングで失敗する理由4個
■1. トイレの失敗を怒る
愛犬がトイレを失敗した時、飼い主が怒ると成功から益々遠ざかります。思わずカッとなりそうになっても、ぐっとこらえましょう。
「排泄」という行為そのものを怒られたと勘違いすると、その意識を変えるのはかなり困難。トイレをしつけるどころではなくなります。愛犬がトイレに失敗した時、感情のまま怒ったり叱ったりするのは、悪手中の悪手ですよ!
■2. トイレサークルに入れるタイミングが悪い
排泄のタイミングではないのに、無闇にサークルに入れるのはNG。なんだかよくわからないのに閉じ込められた――これはサークルに対して嫌なイメージがつく原因です。
「この場所は嫌い!」と感じる場所では犬は落ち着くことができず、トイレで排泄するどころではありません。犬が排泄しそうなタイミングで入れるからこそ、「トイレサークル」と「排泄」が結びつくようになるのです。
■3. 失敗の瞬間に思わず大声を出す
愛犬がトイレ以外で排泄した瞬間、思わず「あぁっ!」と大声を出してしまうことってありますよね。経験の浅い子犬とは違い、成犬はこれまでにいろいろなことで怒られ、その際に「あっ!」という声を聞いているかもしれません。
すると、「あっ!」という咎めるような響きの声に萎縮してしまうことも。「排泄」=「飼い主が怒る」=「大声」と認識すると、トイレトレーニングの大きな妨げになります。
■4. 排泄を止めようと勢いよく駆け寄る
犬が今まさにトイレ以外の場所で排泄しようとしているのを見つけると、思わず駆け寄って止めたくなりますよね。しかし、ここはぐっとこらえて見なかったことにしましょう。
排泄という行為は、犬にとって無防備な瞬間。その瞬間に勢いよく駆け寄ってしまうと、犬を驚かせることに。排泄を途中で止めてトイレに連れて行ったところで、続きは期待できません。
トイレのしつけ直しで成功するコツ3個
■1. 掃除用具一式をまとめておく
犬がカーペットにオシッコをしたとします。飼い主はあわてて雑巾を取りに洗面所へ走り、現場へ戻ってカーペットをごしごし。次に消臭剤はどこへ置いたか探し回る…。このあわただしさが飼い主を苛立たせます。
犬のトイレトレーニングを始めたら、「チリ紙」「雑巾」「消臭剤」をワンセットにして、部屋に置いておきましょう。サッと掃除用具が取り出せる。たったこれだけのことで、案外イライラせずにすみますよ。
■2. 失敗した場所は物理的に近づけないようにする
犬が粗相をした場所は、きれいにしたら消臭剤を使うことがありますよね。
実はこれ、同じ場所でさせないための効果は期待できません。犬の嗅覚は人間の3千倍~1万倍。消臭剤で誤魔化せるレベルではないのです。
ではなぜ消臭剤を使うのかといえば、悪臭で人間が不快にならないため。何度もオシッコをされてしまう場所は、家具や植木鉢を置くなどし、物理的に近寄れないようにするのが一番です。
■3. ご褒美はトイレのそばに置いておく
トイレが上手に出来たら、間を置かずにすぐに褒めてあげましょう。そのためには、ご褒美はトイレサークルのすぐ近くに置いておくのが一番です。
オモチャにしろオヤツにしろ、直後にさっと取り出せると、「トイレで排泄する」=「良いことがある」のイメージが付けやすくなります。
このイメージがきちんと理解できると、「トイレ以外の場所で排泄する」=「良いことは起こらない」と意識を誘導しやすくなります。
引越し後にトイレをしつける方法
トイレのしつけが出来ていている犬でも、引越し先では急に失敗続きになることは珍しくありません。
これは、馴染みのない場所に犬が混乱し、いち早く自分のニオイを付けてまわっている可能性があります。
引越し先に犬を慣れさせるには、最初は狭い範囲に陣地を作ってあげるのが一番。以前の家では室内を自由にさせていたとしても、引越し先では一時的にケージで犬のスペースを囲み、その中にトイレと寝床を入れておきましょう。
トイレトレーニングが出来ていた子なら、新居に慣れてくると同時にトイレの問題も解決することがほとんど。しかし上手くいかないようなら、愛犬のオシッコがついたトイレシーツをトイレトレーにセットし、「ここがトイレ」だと示してあげると、わかりやすくなりますよ。それでもまだ失敗が続くようなら、もう一度トイレトレーニングをして思い出させてあげましょう。
老犬にトイレをしつける方法
老犬にトイレをしつける時は、トイレサークル内すべてにトイレシーツを敷き詰めます。トイレトレーの使用はケースバイケース。足取りがおぼつかないようなら、つまずくリスクを減らすためにも、無理に使う必要はありません。
トイレサークルに入れるタイミングは、成犬のトイレトレーニングと同じです。1日のうち、どのタイミングで排泄することが多いかをしっかりと観察し、確率が高そうな時をねらってトイレサークルに入れましょう。
上手に排泄できたら、たくさん褒めて喜ばせてください。老犬になっても飼い主から褒められることは、犬にとって何より嬉しいことです。楽しい気持ちは学習意欲を向上させ、トイレトレーニングがしやすくなります。
老犬にトイレトレーニングをする時は、成犬の時以上におおらかな目で見守ってあげることが大切。どんなに失敗しても、絶対に「怒る」「叱る」「イライラする」は厳禁です。
トイレのしつけに役立つアイテム・グッズ
愛犬のトイレトレーニングを成功させるためにも、お役立ちグッズやアイテムを上手に利用しましょう。
ただし、あまりにも効果を期待しすぎるのは禁物です。効果があるかないかは、やってみなければわかりません。「効果があったらラッキー、なかったら次を探そう」このぐらいの気持ちで利用するのが一番です。
■トイレの学習シーツ
犬をシーツに引き寄せ、排泄の場所だと認識させる「誘引・認識香料」を使用したペットシーツです。効果が感じられなくても普通のペットシーツとして使えるので、あっても損はないですよ。
■認識しやすいトイレ
トイレが低めの壁に覆われているので、「ここからここまでがトイレスペース」と認識しやすいトイレトレーです。ペットシーツを噛みちぎって遊んでしまうタイプも、スノコ付きなら安心です。
まとめ
成犬のトイレのしつけは、「気長に根気よく」が合言葉です。室内トイレで用が足せるようになると、老犬になった時にも困りません。
これからの時代は犬も長生きします。愛犬が老犬になってからも快適な生活が送れるよう、今のうちにひと踏ん張りしておきましょう。