※ブリーダーなどペット業界経験豊富なライターが書いています。
一昔前は、どこか掴みどころのない存在だったミックス犬。その人気は衰えるどころか、ここ数年は右肩上がりです。
現在、100種類以上が確認されているミックス犬ですが、人気の主流は「ぬいぐるみ」のように見た目のかわいい犬。中でもチワプーは上位にランキングされる人気ぶりです。
ところがチワプーにはなぜか「可愛くない」という評判も…。この記事では、そんなチワプーの特徴について解説します。
チワプーとはどんな犬種?特徴は?
チワプーは「チワワ」と「トイプードル」を掛け合わせたミックス犬です。「プーチー」という呼び名もありますが、どちらかと言えば「チワプー」の方が浸透しているような…。母犬がプードルだと「プーチー」になり、チワワだと「チワプーになる」、というわけでもなさそうです。
ミックス犬をブリーディングする場合、体格が大きい方の犬種が母犬に選ばれるのが基本。そのため、普通に考えたらチワワとトイプードルの組み合わせはトイプードルが母犬です。
しかし、チワプーに関しては「母トイプードル×父チワワ」と「母チワワ×父トイプードル」の両方が混在しています。
日本ではトイプードルを極小化するブリーディングが盛ん。その結果、チワワとの体格差が縮まり、チワワを母犬にすることへのハードルが低くなったのではないでしょうか。トイプードルの平均的な出産数は2~3匹なので、このあたりもチワワと大差ありません。
チワプーの歴史
チワプーをいつ誰が何の目的で作り出したのか、はっきりした起源はわかりません。おそらくは他のミックス犬と同様に、2000年以降にアメリカで巻き起こった、デザイナーズドッグブームに端を発しているのでしょう。
しかし、本家アメリカで人気の高いデザイナーズドッグは、基本的に中型犬~大型犬です。「チワプー」のような愛玩犬としてのミックス犬は、日本ほど需要がありません。
では、なぜ日本においてチワプーが高い人気を獲得できたのかと言えば、「チワワ」と「トイプードル」はミックス犬がブームになる前から、すでに人気の小型犬種だったからです。その二つの組み合わせなら、確実に万人に好まれるミックス犬になることは、想像に難くなかったのでしょう。
チワプー成犬の寿命・大きさ・体重
ミックス犬チワプーの大きさや寿命は、親犬であるチワワとトイプードルのデーターから推測することになります。
◆トイプードル
寿命/15才前後
体高/24~28cm
体重/3~4kg
◆チワワ
寿命/12~16才
体高/15~22cm
体重/1~3kg
◆チワプー
寿命/15才前後
体高/20cm前後
体重/3kg前後
チワプーの毛色
チワワとトイプードルは、ともにカラーバリエーションが豊富です。特にチワワはJKCの規定でマール(明るい地色に黒のパッチ)以外は、全ての色調と色の組み合わせが認められています。
チワプーに多くみられるのはブラウン系の色味ですが、黒、白、ブラック&タンなど毛色は様々です。
チワプーの性格
チワプーの性格は、チワワとトイプードルどちらの性質が強く表に出るかで違いがみられます。
◆チワワによく見られる性格
・勇敢で無鉄砲
・警戒心が強く臆病
・飼い主に対しては愛情深く甘えん坊
・好奇心旺盛で元気いっぱい
◆トイプードルによく見られる性格
・明るく活発
・比較的温厚で人や犬に対し友好的
・しつけに失敗するとワガママになりやすい
・表現力豊か
チワプーの性格は、完全にどちらかに寄るわけではありません。トイプードルに似て明るく活発でありながら、ふいにチワワ似の警戒心が顔を出すこともあります。
チワプーの子犬の販売価格・値段は?
ここ数年のミックス犬人気で、チワプーの値段は高騰しています。ペットショップの展示販売でも価格は30万~40万。ブリーダー直販では、25万~60万といったところです。
価格の違いは主に親犬のサイズが大きく影響しています。父犬・母犬ともに1.5~2kg程度だと、子犬には40~50万円以上の値が。また、両親犬ともに遺伝性疾患の検査にクリアしていると、やはり価格は高くなります。
毛色がトイプードル譲りのレッドで、成長した後の予想体重が2kg以下。さらには両親犬ともに遺伝子検査をクリアしているチワプーは、80万円以上の値がつけられることも珍しくありません。
チワプーの飼い方
チワワの血を引くミックス犬は、骨格が細めになる傾向にあります。そのため室内は滑りにくくし、転倒やスリップ防止の工夫が必要です。
また、飛び降りは関節を傷める原因になるので、ソファーなどは低めのものを選びましょう。
チワプーのしつけ・育て方
チワプーの子犬を迎えたら、まずはトイプードルとチワワどちらの性質が色濃く出るか、観察しましょう。そのうえで、適切なしつけを考えます。
◯チワワの性質が強そうなら…
警戒心の強さが度を越さないよう、子犬の頃からしっかりとした社会化が必要です。時期を逃してしまうと、他の犬と遊べない犬に育つかもしれません。
◯トイプードルの性質が強そうなら…
主従関係を正しく理解させるしつけが必要です。「良い」「悪い」をしっかり教えないと、賢いがゆえに飼い主の甘さに気づいてしまい、ワガママな性格に育つかもしれません。
チワプーの餌の量
チワワとトイプードルは、比較的食べムラの多い犬種です。そのため、チワプーも食べムラには注意が必要。
ドッグフードを食べないからと、喜んで食べるオヤツばかりを与えれば、栄養バランスが崩れて健全な成長に悪影響を与えるかもしれません。ただでさえ骨格が細くなりがちなチワプーは、しっかりと栄養を摂って健康な骨や筋肉を作らないと、病気やケガを引き起こしやすくなります。
チワプーの餌の量は、健康状態と適正な体型を維持できているかを確認しながら決めるのが一番です。
チワプーは吠える・噛む・うるさい?
チワプーはチワワとトイプードルのどちらに似ても、無駄吠え・噛みつきの可能性はあります。しかし、吠えてうるさいからと叱る前に、まずはその理由をしっかり考えましょう。
チワワの性質が強い場合、何かに怯えているのかもしれません。その場合は怯えの原因から遠ざけるとともに、子犬の頃からしっかり社会化させ、警戒心が強くなり過ぎないように育てましょう。
トイプードルが強い場合、飼い主に吠えたり噛みつくことで何かを要求しているのかもしれません。その要求に従っているとワガママの度が過ぎ、せっかくの賢さが台無しになることも。きちんとした主従関係を理解させるには、飼い主が一貫性のある態度でチワプーに接することが大切です。
チワプーの病気・健康管理は?
チワプーは、チワワとトイプードルがかかりやすい病気に気をつけなければなりません。特に両犬種に共通する病気は、チワプーも発症しやすいと考えましょう。
◆チワワがかかりやすい病気
・尿路結石症/膀胱や尿道に結石がたまる病気
・低血糖症/血液中の糖分が不足した状態
・僧帽弁閉鎖不全症/心臓の僧帽弁が正常に閉鎖しなくなる病気
・角膜炎/瞳の表面を覆う角膜に炎症が起きた状態
◆トイプードルがかかりやすい病気
・レッグ・カルベ・ペルテス病 /大腿骨の骨頭が壊死する病気
・免疫介在性多発性関節炎/免疫異常で自分の関節を攻撃する自己免疫疾患
・停留精巣/生後8ヶ月頃までに睾丸が陰嚢まで降りてこない状態
・外耳炎/垂れ耳の犬に多い耳道の炎症
◆チワワとトイプードル両方がかかりやすい病気
・膝蓋骨脱臼(パテラ)/膝蓋骨が正しい位置から内あるいは外に外れる状態
・水頭症/脳脊髄液の増加で脳室が拡大し、脳が圧迫される病気
・気管虚脱/気管がひしゃげて空気の通りが悪くなり、呼吸が苦しくなる病気
チワプーのトリミング・カット・抜け毛
チワプーの毛量は総じて多めです。チワワに似ると毛質はストレート寄り、トイプードルに似ると巻き毛になります。また、トイプードルと同じシングルコートは、抜け毛はかなり少なめですが、チワワ似のダブルコートを受け継ぐと、抜け毛は多くなるでしょう。
トイプードル似の巻き毛がモコモコ伸びるなら、1~2ヶ月ごとのトリミングが必要です。しかしチワワのような毛質の場合、どの程度伸びるかしっかり見定めてからトリミングしましょう。トイプードルと同じ感覚でトリミングすると、なかなか毛が伸びず、もとのボリュームに戻るのに時間がかかることがあるからです。
また、チワプーの毛質は成長とともに変化することがあります。子犬の頃はトイプードルそっくりだったのに、成長とともにチワワのような毛質になることも珍しくありません。もちろん、その反対もです。
ぬいぐるみのようにかわいいチワプーが「可愛くない」と言われてしまうのは、子犬の頃とは違う顔立ちや毛質に変化することが原因なのかもしれません。
チワプーのデメリット・注意点
チワプーを飼うなら、次のことに注意しましょう。
●血統書がないので、遺伝性疾患の可能性があっても病気の確定に時間がかかる。
●子犬の頃に予想した大きさ、顔かたち、毛質とは違う犬に成長するかもしれない。
●骨格と体格のバランスが悪い犬に成長すると、関節の病気や骨折をしやすい。
チワプーがミックス犬である以上、成長した姿はすべて予想でしかありません。「かわいい」「可愛くない」は個人の主観によるものが大きいですが、病気やケガのリスクは深刻です。チワプーを飼う時は、必ず親犬の情報を確認しましょう。
チワプーの探し方は?ブリーダー・里親
ミックス犬が人気犬種ランキングの上位を獲得し、チワプーもペットショップで展示販売されるようになりました。しかし、親犬の情報を確認するためにも、きちんとしたブリーダーから子犬を迎えるのが一番安心です。
また、とても残念なことですが、昨今は人気の犬種であろうと飼育放棄される犬が後を絶ちません。チワプーも保健所や動物愛護団体などに保護されていることがありますので、子犬にこだわらない方は、ぜひ保護犬の引き取りを検討してください。
ただし、里親には所定の条件が求められます。しっかり確認してから立候補するようにしてください。
まとめ
チワプーなどのミックス犬は、人間が想像した通りには成長しないことがよくあります。思っていたより大きくても小さくても、また、抜け毛が多くても少なくても、それがその犬の愛すべき個性です。